クリミア危機やアメリカ大統領選挙のさいのロシアの動きから、フェイク・ニュースを作るのにどのような政治的動機があるのかはよくわかる。だが、経済的動機からフェイク・ニュースを作る人間が多くいることも見逃してはならない。そのことは、マケドニア(現在の北マケドニア)のヴェレスでの事例を見れば明らかである。

 ヴェレスは、人口5万5000人の小さな町である。あまり活気があるとは言えない。テレビのチャンネルは2つしかなく、美しい教会がいくつかあるくらいで目立つ建物もほとんどない。歴史上の人物としては、オスマン帝国の宰相を務めた人物が何人かいるくらいで、歴史的に有名な事件といえば、14世紀終わりのセルビア人とオスマン帝国の戦いがあるくらいだ。

 しかし、そんな小さな町、ヴェレスが、2016年のアメリカ大統領選挙では、世界のなかでも特に大きな影響力を持つことになった。失業中の10代の若者たち(1)が何人も、ハイプ・マシンでフェイク・ニュースを拡散させるだけで突然、大金持ちになった。

フェイクニュースが広がる経済的動機

 ヴェレスの若者たちは、ソーシャル・メディアのアドネットワークを通じアメリカの有権者に向けてフェイク・ニュースを拡散するためのウェブサイトを何百という単位で作り、またそのウェブサイトの宣伝をした。

 グーグルなどの企業は、インターネット利用者に向けて広告を表示し、その広告に合った「質の高い」ユーザーをどれだけ引きつけたかに応じて、ウェブサイトの制作者に報酬を支払う。

 ヴェレスの若者たちは、良いウェブサイトを作り、ソーシャル・メディアでうまくそのサイトのコンテンツを宣伝すれば、大金を稼げることを知った。自分たちの書いた記事を数多くの人が読み、シェアすればするほど、得られる報酬の額が増えていくのだ。

偽情報は、真実よりも「シェア」される

 私たちが調査で確認したのと同様、若者たちもやはり、フェイク・ニュースは真実のニュースよりも多くの読者を引きつけるのだと知った。フェイク・ニュースは真実のニュースよりも70パーセントも多くシェアされた。

 若者たちは、拡散のため、ソーシャル・メディアに偽のアカウントも作った。拡散のための有効な方法を確立してからは、フェイク・ニュースはますます多くの人たちに広まるようになった。それまでに届かなかった層の人たちにまで届くようになったのだ。

 間もなく投票に行くはずのアメリカの有権者たちの多くが、拡散されたフェイク・ニュースを読むことになった。選挙の数ヵ月前からアメリカには大量の嘘が流し込まれ、反対にヴェレスには大金が流れ込んだ。選挙を前にしたアメリカは嘘の洪水に沈み、ヴェレスの街には、BMWの新車が多数走りはじめた。

 ヴェレスの件はほんの一例にすぎない。2019年に、世界中のフェイク・ニュース関連のウェブサイトが上げた収益は2億ドルを超えた(2)。フェイク・ニュースは今や、ビッグ・ビジネスである。フェイク・ニュースの問題を解決するには(詳しくは第12章を参照)、まずその経済的効果を認識しなくてはいけないだろう。

【参考文献】
(1) Samanth Subramanian, “Inside the Macedonian Fake-News Complex,” Wired, February 15, 2017.
(2) Global Disinformation Index, The Quarter Billion Dollar Question: How Is Disinformation Gaming Ad Tech?, September 2019, https://disinformationindex.org/wp-content/uploads/2019/09/GDI_Ad-tech_Report_Screen_AW16.pdf.

(本記事は『デマの影響力──なぜデマは真実よりも速く、広く、力強く伝わるのか?』を抜粋、編集して掲載しています。)

 

全米震撼のベストセラーが日本上陸!

 本書では、私が過去20年のあいだに、実際にソーシャル・メディアを立ち上げ、また研究対象、投資対象、ビジネス・パートナーとしてソーシャル・メディアと関わることで知り得たことを述べていきたいと思う。

 20年の道のりは決して楽ではなかった。信じがたい発見も多くしたし、ソーシャル・メディアが民主主義を蝕む酷いスキャンダルに直面もした。

 有用な情報も多く伝えてくれるが、明らかな嘘が瞬時に拡散されていくのを何度も見た。抑圧と闘う道具にも使えるが、同時に抑圧を促進する道具としても使えることを知った。

 言論の自由を守ることの重要性と、それがヘイト・スピーチの蔓延につながりやすいこともよくわかった。

 そして何よりも重要なのは、ソーシャル・メディアのなかの仕組みがわかったことだ。私たち人間の脳がソーシャル・メディアに引きつけられやすい性質を持っていることや、感情、社会、経済、様々な要因が私たちをソーシャル・メディアに結びつけていることも知った。

 本書を読めば、ソーシャル・メディアの背後にあるビジネス戦略がわかるだけでなく、ソーシャル・メディアのデザインを変えれば社会がどれほど大きく変わり得るか、ということもわかるはずだ。

全米で絶賛の声が続々!



 


 
 
 
 
『何事も失敗の原因の本質は根拠なき楽観!』

『気を付けよう、甘い言葉と暗い道』
 
             Renaissancejapan


トランプはDSと戦っていて、暗殺・戦争をしない?冗談もほどほどに
https://blog.goo.ne.jp/renaissancejapan/e/f68d57be8bbd0c7a359c62ec32aa3b6b


         ↑

すべて事実、反論あればどーぞ。 FACTベースで照って議論しましょう。