【アブダビ=上田志晃】岸田文雄首相は17日、アラブ首長国連邦(UAE)の首都アブダビでムハンマド大統領と会談する。これに先立ち16日に首脳会談を開いたサウジアラビアと同様に、水素やアンモニアなどを活用した脱炭素技術の提供で合意する。中東への影響を強める中国に対抗する。
サウジアラビアのムハンマド皇太子㊨と会談した岸田首相(16日、サウジアラビアのジッダ)=ロイター
サウジとUAEにとり石油依存の経済からの脱却が国家課題だ。首相は今回の中東訪問で脱炭素の技術支援に焦点を当てる。
サウジのムハンマド皇太子との会談後、記者団に「産油国と消費国という関係から脱皮し、脱炭素の時代での新たなグローバルパートナーシップへと進化させる」と強調した。
同国とは外相どうしの戦略対話の創設にも合意した。安全保障や経済など国際情勢について中長期的に話し合う。
日本の先端技術を用いて中東を新しいエネルギーの世界的な供給地とする方針を確かめた。サウジ側の提案で「ライトハウス・イニシアチブ」と呼ぶ戦略の立ち上げで一致した。
同戦略に沿った官民の共同事業や工程を記した合意文書を17日にも公表する。燃やしても二酸化炭素(CO2)を排出しないアンモニアの共同生産を盛り込む。
製造時に発生したCO2を地下に貯留する「ブルーアンモニア」をめざす。日本が将来の需要や適正な価格設定の算定を助言する。
電気自動車(EV)用の電池などに不可欠なレアアース(希土類)の鉱山開発への共同投資も文書に入れる。日本が鉱山探査の知見を提示し、サウジによる初期調査を技術支援する。中国などに集中する供給源の分散につなげる。
気候変動対策の必要性は中東の国々も共有する。サウジは2060年、UAEは50年にそれぞれ温暖化ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げる。
欧州が推進する性急な再エネへの転換には警戒もある。日本は段階的な「移行」に重きを置く。
5月の主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)の共同宣言は日本が主導するかたちで「国の状況を考慮して、多様かつ現実的な道筋を通じた移行を支援する」と明記した。