ブリュッセルにある欧州委員会本部=ロイター
【ブリュッセル=辻隆史】
欧州連合(EU)の加盟国からなる閣僚理事会は27日、環境対策を進めるための3法案を承認し、成立した。
アパレル事業者に売れ残った衣料品の廃棄を禁じる規制を設けたほか、太陽光発電など再生可能エネルギーに関する製品には域内の生産目標を定める。
環境に配慮した商品の設計を義務付ける「エコデザイン規制」は、域内で事業展開するアパレル事業者に対し、売れ残った衣料品の廃棄を禁じる。
ユニクロを展開するファーストリテイリングも規制の対象となる。
エコデザイン規制は自動車や防衛関連など一部分野を除くあらゆる製品に適用される。流行品を低価格で大量消費する「ファストファッション」による衣料品の大量廃棄を食い止める狙いがある。
アパレルメーカーは売れ残った衣料品を再利用したり、修繕して寄付に回したりする対応を迫られる。中小企業には猶予期間を設ける。
EUが掲げる気候変動対策を進めるための「ネットゼロ産業法」は、太陽光発電や蓄電池などクリーン技術に関わる重要製品の4割をEU域内で生産する体制をめざす。
加盟国は太陽光や風力発電、原子力発電、ヒートポンプ、水素などの技術を「戦略的プロジェクト」と位置づけて政策支援できるようになる。
再生エネに絡む公共調達の際は、サイバーセキュリティーなどの要件を新たに課す。大量に流入する中国製品への対策が念頭にある。
企業が排出するメタンガスの削減を推進する法律も成立した。域内に石油やガスを輸出する企業に、EUが課す排出基準を満たしていることの証明を義務付ける。企業は自社が排出したメタンの量を測定し、EUに報告する。
油田などで不要なガスを焼却する際に発生する「フレア」など、これまで見過ごされがちだったメタン排出源に規制をかける。メタンは二酸化炭素(CO2)に次いで排出量が多い温暖化ガスとされる。
6月上旬にあるEU立法機関の欧州議会選は、環境政策の方向性にも影響する。
フォンデアライエン欧州委員長率いる現在の欧州委員会執行部は、野心的な政策を提案してきた。
環境意識の高い市民のニーズに沿い、選挙後の新執行部も気候変動分野の新規制を推進する可能性がある。
EU加盟国で存在感を増す極右政党やEU懐疑派が勢力を伸ばした場合は、現執行部が取り組むグリーン転換の見直しを求める意見が強まるとみられる。
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