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原発、揺らぐ「脱炭素電源」 欧米で建設停滞相次ぐ

2024-06-02 09:17:48 | 環境・エネルギー、資源


英南西部で仏電力公社EDFが建設中のヒンクリーポイントC原発=ロイター

 

米欧で原子力発電所の建設の延期や断念が相次いでいる。

安全対策強化によるコストに加え、資材費や人件費上昇がのしかかる。世界の原発建設の中心は中国やロシアに移り、西側の退潮が目立つ。期待された「脱炭素電源」としての役割を果たせるかの岐路にある。

 

仏電力公社EDFが英南西部で建設中のヒンクリーポイントC原発に逆風が強まっている。

「原子力は再生可能エネルギーに費やせるはずの莫大な資金を吸い上げている」。5月に著名な環境活動家が加わった反対派は気勢をあげた。

 

同原発は工事の遅れが顕著だ。EDFは2月に129億ユーロ、日本円で2兆円超の減損損失を計上すると明らかにした。

英国で新たな原発が稼働すれば1995年以来となる。この間に熟練作業員は減った。さらに近年の資材費や人件費の上昇が追い打ちをかけ、巨大構造物である原発の新設は難しくなった。

同原発は2基で計300万キロワットを超え、1号機は2027年6月の運転開始を想定していた。

10年の計画始動後、東日本大震災などの影響で英国でも原発の安全性への要求は高まり工事の難易度も増した。英国の新たな規制上の求めを満たすには7000カ所に及ぶ設計変更が必要で、従来より鋼材を35%、コンクリートを25%増やすことを迫られた。

EDFによると運転開始時期は29年に遅れ、さらに1〜2年ずれ込む可能性がある。建設費も最大260億ポンド(およそ5兆2000億円)から同340億ポンドに膨らむ。

「50年までに世界全体で温暖化ガス排出量の実質ゼロを達成し、産業革命前に比べた気温上昇を1.5度に抑える目標を実現できる範囲にとどめるうえで、原子力は重要な役割を果たす」

アラブ首長国連邦(UAE)で23年11〜12月に開いた第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)。米英を中心に20カ国以上の有志国が連携し、温暖化ガスをほとんど排出しない原発を世界で現状の3倍にする目標を打ち出し、日本も名を連ねた。

今になって改めて米国などが原子力の重要性を訴えるのは、思うように原発の建設が進まない焦りの裏返しでもある。

「プロジェクト終了が最も賢明な決定だ」。23年11月、米新興ニュースケール・パワーは米西部アイダホ州で進めてきた米国初の「小型モジュール炉(SMR)」の建設を断念すると発表した。

計画では1基7万7000キロワットの原子炉を6基設置し、初号機は29年に稼働の予定だった。建設費などの高騰で事業の採算が見込めなくなった。

SMRは小型ゆえに既存の原発より工期が短く、建設費も抑制できるとされてきた。半面、1基100万キロワットを超す大型の原発に比べ経済性は低く、競争力を疑問視する声もあった。

西側諸国の停滞は原発を巡る世界の勢力図を変える。米国は稼働可能な原子炉が90基を超す世界一の原子力大国だが、かつての勢いはない。

世界原子力協会によると建設中の原子炉の数は中国の26基に対し、米国はゼロ。建設計画も中国は40基超だが米国では目立った事業はなく、両国の差は歴然だ。30年代前半までに中国の原発の発電量が米国を逆転するとの見方もある。

米国では炉心溶融を起こした1979年のスリーマイル島原発事故を受け、長く原発新設が途絶えた。2023年に新規でおよそ30年ぶりにボーグル原発3号機が運転を始めたが、4号機と合わせてコストは想定の2倍以上に膨らんだ。

米政府は廃炉の予定だった原発の再稼働を支援する方針を3月に打ち出した。中西部ミシガン州の原発に約15億ドル(約2300億円)を融資する。新設が進まないなかでの苦肉の策だ。

「エネルギー安全保障の強化は英国がプーチン(ロシア大統領)のような暴君にエネルギーを巡る身代金を二度と要求されないことを意味する」

英政府は1月、50年までに原発を現状の4倍に増やす行程表を掲げ、訴えた。とはいえ今の状況では、米欧で新たな原発を続々と建てるには相当なてこ入れが必要になる。 (塙和也、生川暁)

 

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※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

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山本真義
名古屋大学未来材料・システム研究所、名古屋大学大学院工学研究科電気工学専攻 教授

ひとこと解説

この記事の通り、世界は原発の必要性に気が付いたが新規建設、再稼働には大きなコストがかかることで苦しんでいます。

日本も東日本大震災の風評を経て未だ長期停止中の原発が多く存在します。

欧米ではこの苦境を原発稼働の延長という形で対応しています。

北米ではイリノイ州のドレスデン原子力発電所2、3号機の稼働を20年延長申請し、稼働期間は80年となる予定です。

またフィンランドはその電力の1割を賄うロビーサ原発の運転延長を認可し70年の稼働となります。

日本も原発の再稼働、新規建設を進めなければ日経記事(5月31日)にあった再エネ賦課金の値上がり等による電気代の最高値の更新がさらに進んでいくでしょう。

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日経記事2024.06.02より引用
 
 
 

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