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旭化成、低温・高温対応の電池電解液 技術供与で実用化

2024-06-10 10:55:33 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業


旭化成は低温や高温にも対応できる電解液の実用化を目指す

 

旭化成は7日、低温や高温でも使用できるリチウムイオン電池向けの電解液の技術検証に成功したと発表した。

電池メーカーなどに技術を供与し、2025年に実用化を目指す。低温時も高出力を維持でき、高温への耐久性も高いという。電池性能向上によって電気自動車(EV)での搭載電池の削減やコスト低減にもつなげられる。

 

ニッケルなどを使わない「リン酸鉄リチウムイオン(LFP)」系電池で、一般的なリチウムイオン電池の使用推奨範囲より低温のマイナス40度、高温では60度での性能を検証した。

従来の電解液と比べ、高温で充放電を繰り返しても電池容量を維持するほか、低温でも高い出力を維持した。

 

リチウムイオン電池では低温時では電池容量や出力が下がりやすく、高温下では電池の劣化が加速するのが課題だった。

誘電率が高い溶媒を活用しながら調合技術などを工夫し、低温や高温でも性能が落ちないようにした。EVなど電動車向けの利用を想定し、電池メーカーに技術ライセンスを供与し実用化につなげる。

 

 
 
 
日経記事2024.06.07より引用
 
 

データセンターにリチウムイオン蓄電池 鉛から転換へ

2024-06-10 10:41:55 | エレクトロニクス・自動車・通信・半導体・電子部品・素材産業


米テスラ社製産業用蓄電池パワーパック(写真=IIJ提供)

 

日経ビジネス電子版


高さ2メートルほどの白い筐体(きょうたい)の上部に、大きく入る「TESLA(テスラ)」のロゴ。リチウムイオン2次電池(LIB)を使う米テスラ社製産業用蓄電池Powerpack(パワーパック)だ。

通信大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)は2019年、千葉県白井市のデータセンター(DC)にパワーパックを導入した。目的の1つが、空調に使う消費電力の抑制だ。

 

DCでは莫大な電力を使う。夏の日中は特に、大量の機器を動かすだけでなく、その発熱を抑えるため、空調にも多額の電気代がかかる。IIJの堤優介データセンター基盤技術課長は「全社で排出する二酸化炭素(CO2)や消費エネルギーの8割がDC由来だ」と説明する。

そこでIIJは、割安な夜間に購入した電気をためておき、昼間に使うためパワーパックを導入した。20年8月の検証では、電力会社から供給される電力量を最大10.8%抑えられたという。テスラ社製を選んだのも、電力制御がしやすかった点が決め手だった。

 


IIJの白井データセンターキャンパス。屋根の部分には太陽光発電用のパネルが並ぶ。こうした再生可能エネルギーを安定的に使うために蓄電池は不可欠だ(写真=IIJ提供)

 

ただLIBは、鉛蓄電池などに比べて導入コストが高い。そのためIIJは、LIBを、停電時に電力供給を確保するためのUPS(無停電電源装置)としても活用できるようにして、投資対効果の向上を狙った。

DCにとって電力は命綱だ。停電が起きた時、非常用発電機が稼働するまでの数分間さえ、電力供給は止められない。UPSはその時間をカバーするための電源となる。

 

従来、DCではUPSに鉛蓄電池を使うことが一般的だった。しかしLIBの方が、エネルギー密度が高く省スペース化が期待できる。

米調査会社フロスト・アンド・サリバンによれば、LIBは鉛蓄電池に比べて70%、軽量・小型化できるという。さらに耐用年数も鉛蓄電池の2倍に当たる15年間ほどと長く、交換頻度も抑えられる。IIJが15年間の運用期間を通じた総コストを試算した結果、節電効果分も含めると鉛蓄電池と同程度だったという。

 

IIJはそうした点も踏まえて、LIB導入に踏み切った。空調用UPSであれば、サーバーなどの機器向けのUPSに比べて比較的設置条件が緩く、LIB導入しやすい点も後押しとなった。

今後、再生可能エネルギーが普及することを見据え、IIJはLIBの蓄電能力を電力の需給調整に活用することで収入を得ることも狙っている。23年度からは、関西電力が主導する仮想発電所(VPP、バーチャルパワープラント)構想にも参画し商用展開を始めた。15年間の運用期間中に、LIB導入にかかった投資額の約4割に相当する報酬を得られる見込みだという。

 

IIJは現在、白井市のDCで1棟にLIBを導入しており、24年度中をめどに2棟目にも導入予定だ。今後3棟目を増築すれば、同じ仕組みの導入を検討したいと意気込む。

導入費用の高さが課題のLIBだが、価格は少しずつ下がってきている。市場調査会社の富士経済(東京・中央)は、UPSやESS(電力貯蔵システム)、BTS(携帯電話基地局)などの用途に使うLIBの平均価格が25年に1ワット時当たり19.2円と、20年比8%減になると予測する。

 

NTTグループのDC事業を統括するNTTグローバルデータセンター(東京・千代田)は「以前は価格面で鉛蓄電池一択だった。だがLIBの価格は低減が進み、鉛蓄電池に迫ってきている」と見る。

同グループは、NTTコミュニケーションズが展開する川崎市内のDCで既にLIBを空調用UPSとして導入しているほか、千葉県に持つDCへも導入を検討中だ。

 

世界に目を向けると、LIBは今後DCへの活用が増えていくと見られている。フロスト・アンド・サリバンの調査によれば、DCで使われるLIBの市場規模は、30年には7億8100万米ドル(約1180億円)に膨らみ、23年比で3倍以上になるという。

また、DCで使われる電池全体の市場に占めるLIBの割合は、23年には2割程度だが、30年には4割に、35年には過半数に達すると見込まれている。

 

ただ日本では現状、「DCにLIBを導入した事例は少ない」(国内事業者)。その壁の一つが、法規制だ。

 

規制緩和の動きも普及を後押し

例えばLIBのセルに含まれる電解液は燃えやすく、消防法では石油や灯油などと同じく危険物に指定されている。一定の設置容量を超えると、消火設備を追加する必要などがあり、設計や建築のコストがかさむ。

業界団体は「設置する事業者からすれば費用増加の要因になっており、足かせになっている。必要以上に厳しいルール下では設置は進まない」と反発する。国内外でDCを展開する米国の事業者からも「日本はLIBの法規制が厳しい、珍しい市場だ」という声が漏れる。

 

ただLIBの普及を受け、規制緩和の動きも出てきた。23年6月に政府がまとめた規制改革の実施計画には、「リチウムイオン蓄電池の普及拡大に向けた消防法の見直し」という項目が盛り込まれ、議論が重ねられてきた。

23年9月には、LIBなどを扱う施設の周囲の保有空地や消火設備に関する規則が緩和された。

 

総務省消防庁の「リチウムイオン蓄電池に係る危険物規制に関する検討会」で委員を務める小林恭一東京理科大学教授は「何十年も前に設けられた基準は、当時の技術が前提にされており、今の技術とは合わない」と指摘する。

安全性への配慮は必要だが、技術の進歩に合わせて規制を改定することが不可欠となる。

 

データ容量が膨張し、消費電力も増大していくDC。スペースの効率的な使用や再生エネルギー活用が求められる中、少しずつLIBを導入しやすい環境が整えられつつある。

(日経ビジネス 中西舞子)

[日経ビジネス電子版 2024年3月28日の記事を再構成]

 

 
 

日経ビジネス

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日経記事2024,06,07より引用

 

 


「もしトラ」はトヨタの危機 アナリスト分析を3分解説

2024-06-10 10:35:42 | 米大統領選2024

11月の米大統領選挙で再選を狙うトランプ氏は、有罪評決を受けてもなお意気軒高です。

「もしトラ」が日本の自動車産業にもたらす3つのリスクとは。ナカニシ自動車産業リサーチの代表アナリスト、中西孝樹氏の寄稿をNIKKEI Mobilityの深尾幸生編集長が紹介します。

スキマ時間に刺さる音声コンテンツ「NIKKEI PrimeVOICE」は専門メディア編集長6人がイチ押し記事をお届けします。

 

NIKKEI Mobility編集長 深尾幸生
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自動車、エレクトロニクス、IT、素材などの各業界を担当。2017年から5年間はフランクフルトに駐在し、EVに急旋回する欧州の自動車メーカーや部品大手、スタートアップを取材した。
 
脱炭素に突き進む電力会社や政府の動きも追った。著書に「EVのリアル 先進地欧州が示す日本の近未来」。
 
 
 
 
 
 
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経常黒字、4月は2兆505億円 債券利子や配当金が増加

2024-06-10 10:30:03 | 日本経済・金融・給料・年金制度



財務省が10日発表した4月の国際収支統計(速報)によると、海外とのモノやサービスなどの取引状況を示す経常収支は2兆505億円の黒字だった。

前年同月から8.2%増加した。海外からの債券利子や配当金の受け取りが増え、第1次所得収支の黒字幅が拡大した。

 

経常黒字は15カ月連続。経常黒字額は比較可能な1985年以降で4月としては最大だった。

経常収支は輸出から輸入を差し引いた貿易収支や、旅行収支を含むサービス収支、外国との投資のやり取りを示す第1次所得収支などで構成する。

 

第1次所得収支の黒字幅が前年同月比で26.7%増の3兆8328億円となり、経常黒字を押し上げた。海外での金利上昇や株高を受けて債券利子や配当金の受け取りが増えた。海外子会社からの配当金といった直接投資収益も増えた。

貿易収支は6615億円の赤字と、前年同月から赤字幅は4.4倍になった。輸入額は8.5%増の9兆897億円、輸出額は2.4%増えて8兆4282億円となった。

 

資源高や円安により原油などの輸入額が膨らんだ。輸出は自動車のほか半導体関連の製造装置や電子部品が好調だった。

サービス収支は7215億円の赤字だった。赤字幅は前年同月から29.3%拡大した。研究開発費などを含むその他業務サービスや、保険・年金サービスの赤字が大きかった。

 

訪日外国人の消費額から日本人が海外で使った金額を引いた旅行収支の黒字は42.5%増えて4467億円となった。

季節調整値で見た経常収支は2兆5241億円の黒字で前月から25.5%増えた。

 

 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

 

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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト

分析・考察

季節調整値でみると、むしろ経常黒字額は+0.5兆円程度拡大しています。

内訳を見ると、季節調整値でも主因は記事にある通り第一次所得収支が+0.3兆円弱拡大していることですが、貿易赤字も▲1600億円弱縮小しており、サービス収支赤字も▲1500億円弱縮小していますので、第二次所得収支以外は全て経常黒字拡大に寄与しています。

このように同じ経常収支でも、季節調整値でみるとかなり見え方が異なることには注意が必要でしょう。

 
 
日経記事2024.06.10より引用
 
 

欧州議会選、極右伸長 フランス・オーストリアで第1党

2024-06-10 10:14:36 | NATO・ウクライナ・ロシア・中国・中東情勢


9日、欧州議会選の候補者に投票するルーマニア市民=AP

 

【ブリュッセル=辻隆史、パリ=北松円香】

6〜9日に実施された欧州議会選(定数720)で、極右や右派など欧州連合(EU)に懐疑的な勢力が伸長する見通しとなった。フランスやオーストリアなどで国内第1党になったもようだ。

マクロン仏大統領は選挙結果を受け、仏国民議会(下院)の解散を表明した。

 

 

欧州議会が各国のデータを踏まえて9日夜に公表した議席獲得予測によると、極右を含めてEU統合の理念に懐疑的で、EU主導の野心的な環境政策やリベラルな政策に反発する勢力が伸びる。

 

 

議会には第1会派の欧州人民党(EPP、中道右派)や欧州社会・進歩同盟(S&D、中道左派)など主に7つの党がある。

フランスの極右・国民連合(RN)などが所属する会派「アイデンティティーと民主主義(ID)」の議席は現状の49から57に拡大する。イタリアのメローニ首相らが率いる右派の欧州保守改革(ECR)も議席を増やす。

 

欧州の物価高や治安、移民政策などが主要な争点となり、ポピュリズム(大衆迎合主義)的な手法をとる極右などが支持を集めた可能性がある。IDはより厳しい移民の制限を主張したほか、EUの環境政策への批判を強めていた。

マクロン氏は9日、欧州議会選で極右RNの躍進と与党の劣勢を受けて国民議会を解散すると発表した。初回投票は6月30日、決選投票は7月7日に実施する。

 

一方、欧州議会では中道路線の二大会派など、欧州統合を推進する親EU派は全体では過半数の勢力を確保しそうだ。

フォンデアライエン欧州委員長が率いるEPPは15増の191議席となる。第2会派のS&D、マクロン氏が所属する中道の「欧州刷新(RE)」はそれぞれ議席を減らす。親EU3会派の合計では議席減となるが、議会の過半数を維持する。

 

これまで欧州議会は親EUの会派が協調して安定勢力を維持してきた。懐疑派勢力が勢いを増せば、EUの環境政策や緊縮的な財政政策などへの修正圧力が強まる。議会選の結果は、今秋に任期が切れる欧州委員会の執行部人事にも影響する。

EUは月内に首脳会議を開く。首脳は選挙結果を踏まえ、加盟国の人口規模などを加味した特定多数決で新委員長候補を指名する。議会は多数決で承認するため、就任には議会の過半数の信任がいる。フォンデアライエン氏は続投をめざす意向を示すが、親EU会派からの造反も予想される。

 

欧州議会はEUの立法機関で、執行機関の欧州委員会などと並ぶ主要機関の一つ。EU市民が直接、選挙で代表を送り込める唯一の機関でもある。欧州委が提案した法案の成立には多くの場合、議会の承認が必要となる。

5年に1度の欧州議会選は比例代表制で、EU加盟国は国ごとに選挙を実施する。加盟国の人口規模に応じて議席が国ごとに配分される。候補者は当選後、欧州議会の会派に入って活動する。

 

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

 

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安川新一郎
東京大学未来ビジョン研究センター特任研究員/グレートジャーニー合同会社代表

ひとこと解説

ドイツの哲学者マルクスガブリエルは、「世界史の針が巻き戻る時」という著書で、ヨーロッパは国民国家としての最盛期19世紀に戻ろうとしていると予言していました。

ヨーロッパ、特にEUは「世界大戦への応答として生じ」、その戦争の記憶が遠ざかる今、古き良き19世紀に戻りたい感情から右派ポピュリズムが各国で活発になっていくという指摘です。

環境規制や人権といった遠い課題よりも、インフレ対策、治安、移民政策等身近な問題に訴える右派は存在感を増していくでしょう。

バイデン大統領と同様、欧州のリベラルな政治家も、右派の台頭を押さえ込むためにも自らも保護主義的移民規制的な動きを示さざると得なくなっていくと思われます。

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渡部恒雄笹川平和財団 上席フェロー

別の視点

欧州の極右の政治家は、アメリカのトランプ前大統領とそれを支持するMAGA(アメリカを再び偉大に)運動に共鳴して連帯感を持っています。

2016年の大統領選挙の直前、トランプ氏は、ヒラリー・クリントン氏に世論調査で負けていても、その年の6月にイギリスで欧州連合離脱(ブレグジット)を国民投票で決定したように、世論調査では不利でも本番で逆転すると訴え、実際にその通りになりました。

米国のトランプ支持のMAGA勢力にとっては、欧州議会選における移民排斥と脱欧州連合を強める極右の伸長は良い知らせでしょうし、反トランプ勢力にとっては気になる動きでしょう。

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岩間陽子
政策研究大学院大学 政策研究科 教授

分析・考察

歴史に残る欧州議会選挙でした。

直近では新EU委員長人事に影響しますが、それ以上に各国現政権に及ぼす影響が大きくなります。

仏ではマクロン大統領が下院解散を宣言。

今秋議会選挙のあるオーストリアでも極右が1位抜け。

ドイツでも秋に重要な州議会選挙がありますが、ここで政権与党が惨敗したため、おそらく難民問題で軌道修正を迫られてきます。

緑の党が、特に若者世代でここまで凋落したことで、

EUレベルでも各国レベルでも、環境政策の優先順位に関する見直しが進むでしょう。

多くの国でポピュリスト右派政党を除くと、政権が組めない、あるいは寄せ集めで不安定な政権しかできないという、まさに戦間期的状況が到来しそうです。

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小山堅
日本エネルギー経済研究所 専務理事 首席研究員

分析・考察

事前の予想通り、右派勢力が伸張した。

主流派は過半数を維持したものの、右派勢力の伸張はEUの政策に一定の影響を及ぼしていく可能性がある。

国民負担を伴う政策、例えば気候変動政策などについても、右派勢力は批判的な目を向けている。

また、より重要なのは、エネルギーや気候変動政策は、基本的には加盟国のレベルで実施されていく点だ。

各国の政治・経済・社会的な実情を踏まえ、どのようなエネルギー・気候変動政策が行われていくのか、これまでの政策とどのように変わり得るのか、に注目していく必要がある。

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伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 常務理事

ひとこと解説

日本時間8時13分時点の暫定結果によれば、中道右派のEPPが176から189、右派のECRが69から72、極右のIDが49から58に議席を増やす一方、中道左派のS&Dは139から135に微減、中道のRenewが102から83、菅協会派が71から53に大きく議席を減らしました。

ドイツで第2位の14議席を獲得したAfD、ハンガリーで第1位の10議席を獲得したフィデスは無会派の右派。

全体で見ると、極右の伸長というより、右傾化の印象が強い結果です。

前議会でグリーン関連の法制化を推進した左派の連携が弱まるもの、法制化は一通り完了しており、次の立法サイクルでは安全保障と競争力強化に重点が移ります。

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福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士

分析・考察

最近の世界動向を見れば驚きはないですが、実際にEUのどの部分の政策に影響を及ぼすか、ですね。

辞書的には、極右とは権威主義、自国中心、排外主義、ジェンダーなど価値観での保守、で特徴づけられる政治傾向です。

その点でいえば、この10年以上世界のルールメーカーたらんという野心を隠さなかったEUは、むしろ「ヨーロッパ中心主義の牙城」だったとも言える。

それが弱体化すると、自国以前にヨーロッパの地盤沈下が進んでしまいそうですね。

すると対ビッグテックのデータ政策や対中国などの強硬的な姿勢が減るということは当面予想しにくく、挙げられている環境政策や移民政策でのブレーキ、がまず懸念されるところなのでしょうか。

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日経記事2024.06.10より引用