一ヶ月前くらいに読み終わってたので今更なんですが、『暗闇から-土方歳三異聞』を記事にしてるからには、こっちのレビューも書いときたいな、と。
表題作『降りしきる』他6編の短編集。新選組ものは『降りしきる』のみ。
『組!』でいえば、第25回「新選組誕生」のあの夜の、お梅と土方の話です。
2人とも途方もなく不器用で、お梅の哀しさと土方の優しさ、それが交錯することもなく過ぎてゆく日々……
その日、土方はお梅に「帰れ(けえれ)」と繰り返す。
「好きできたわけでじゃない」と嘯きつつ、お梅は小娘のように意地を張って、屯所を動かない。それは芹沢鴨を待つためではなく、明日の朝、土方をからかうために…。
篠突く雨が更に2人の心を隔てているようで、最後まで決して重なることのない想いが、もどかしくて切なくて焦れったい。
もちろん、光の朝を迎えることがあるはずもなく、
2人の心が触れ合ったのはほんのわずか、暗闇の中、お梅の最後の時。
最後の時だけ少し静かになる雨も、再び雨音を高くしていく…。
雨音と闇、光は蝋燭の灯火と白刃のみ。美しい京女と武骨な東夷。
この上ない道具立てが絶品な一品です。
土方の出番は多くないので、『暗闇から』のような強烈な印象はないものの、彼の不器用な温かみが心に残りました。
鴨暗殺の鍵となる平間重助と土方の遣り取りがあって、『暗闇から』へ通じているのがわかりますが、短く、でもとても重要な会話から始まった2人の関係は、意外な形で終息を迎えます。
司馬作品を除いては、『暗闇から』の土方がマイベスト。
『会津斬鉄風』もかなりクールでいいんですけどね……。
読み終わった後、こんな詩を思い出しました。ちょっとろまんち?
巷に雨の降るごとくわが心にも涙ふる。
かくも心ににじみ入るこのかなしみは何やらん?
やるせなき心のために雨の歌よ
やさしき雨の響きは地上にも屋上にも
消えも入りなん心の奥にゆえなきに雨に涙す。
何事ぞ 裏切りもなきにあらずや?
この喪そのゆえの知られず。
ゆえしれぬかなしみぞげにこよなくも堪えがたし。
恋もなく恨みもなきにわが心かくもかなし。
(ベルレーヌ 言葉無き恋歌-金子光晴訳)
冒頭はご存知の方が多いんではないかと。
ふと頭に浮かんだので特に意味はないんですけど、なんとなく……。
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表題作『降りしきる』他6編の短編集。新選組ものは『降りしきる』のみ。
『組!』でいえば、第25回「新選組誕生」のあの夜の、お梅と土方の話です。
2人とも途方もなく不器用で、お梅の哀しさと土方の優しさ、それが交錯することもなく過ぎてゆく日々……
その日、土方はお梅に「帰れ(けえれ)」と繰り返す。
「好きできたわけでじゃない」と嘯きつつ、お梅は小娘のように意地を張って、屯所を動かない。それは芹沢鴨を待つためではなく、明日の朝、土方をからかうために…。
篠突く雨が更に2人の心を隔てているようで、最後まで決して重なることのない想いが、もどかしくて切なくて焦れったい。
もちろん、光の朝を迎えることがあるはずもなく、
2人の心が触れ合ったのはほんのわずか、暗闇の中、お梅の最後の時。
最後の時だけ少し静かになる雨も、再び雨音を高くしていく…。
雨音と闇、光は蝋燭の灯火と白刃のみ。美しい京女と武骨な東夷。
この上ない道具立てが絶品な一品です。
土方の出番は多くないので、『暗闇から』のような強烈な印象はないものの、彼の不器用な温かみが心に残りました。
鴨暗殺の鍵となる平間重助と土方の遣り取りがあって、『暗闇から』へ通じているのがわかりますが、短く、でもとても重要な会話から始まった2人の関係は、意外な形で終息を迎えます。
司馬作品を除いては、『暗闇から』の土方がマイベスト。
『会津斬鉄風』もかなりクールでいいんですけどね……。
読み終わった後、こんな詩を思い出しました。ちょっとろまんち?
巷に雨の降るごとくわが心にも涙ふる。
かくも心ににじみ入るこのかなしみは何やらん?
やるせなき心のために雨の歌よ
やさしき雨の響きは地上にも屋上にも
消えも入りなん心の奥にゆえなきに雨に涙す。
何事ぞ 裏切りもなきにあらずや?
この喪そのゆえの知られず。
ゆえしれぬかなしみぞげにこよなくも堪えがたし。
恋もなく恨みもなきにわが心かくもかなし。
(ベルレーヌ 言葉無き恋歌-金子光晴訳)
冒頭はご存知の方が多いんではないかと。
ふと頭に浮かんだので特に意味はないんですけど、なんとなく……。
あの「けえれ」とだけ繰り返す土方の不器用な男模様が絶品です。
この話が下敷きにあったので、大河でもお梅に恋するのは土方だろうと思っていました。沖田で肩透かしを食ったくちです。
「降りしきる」の沖田なら藤原君、ぴったりですね。
久々にベルレーヌの詩を目にしました。
なつかしさに、甘酸っぱいなにかが混ざります。
記事の台詞のところに“けえれ”と追加しました
(ルビ振りたかったんですが、何故か出来なくって…)
ホントに絶品。舞台装置も登場人物の設定も台詞も、全てが絶妙です。
北原作品は記事の2点以外は『歳三からの伝言』を読んでいますが、女性作家にしては湿っぽくなく、クールな目線で土方を描いているのがいいですね。
これ読んでいるとき、お梅と総司は大河版でした(笑)
山本土方は何故かちょっと合わなくって、他の人で…
詩は唐突に頭に浮かびました。
完全に覚えていたのは冒頭2行のみで、本で内容を確認すると、残されたものの心情がよく表されていると思ったので全文掲載してみました。