月は東に

Get Out Of That Rut & Savor Life

NODA・MAP『贋作・罪と罰』@シアターBRAVA!・2/9マチネ 2F-A-40

2006-02-10 15:22:02 | Stage Review
NODA・MAPが名古屋に来るのはいつのことなんでしょうねぇ(遠い目)……蜷川さんはお越しいただいてるんですけどねぇ、野田さーーん(泣)
“夢の遊民社”としては2回ほどお越しいただいていますが、なんせ15年~20年も前のことなので、もちろんスルー劇団名と野田さんのお名前くらいは存じ上げてましたけど………。

というわけで、大阪まで観に行ってきました。
(1ヵ月近くも前の話だけど
キャストやストーリーその他諸々をお知りになりたい方は『贋作・罪と罰』公式へ飛んでって下さい。
もう皆様ご存知でしょうが、3月にWOWOWで、『走れメルス』『透明人間の蒸気』『贋作・罪と罰』というすげー3本が放送されますね。『走れメルス』『透明人間の蒸気』は再放送なので見逃した方は是非観ましょう。『贋作・罪と罰』も生舞台を観れない方は是非観ましょう。
ってWOWOW観れない私が勧めるのもなんですが
早く契約したいんだけど、オットがスカパーかWOWOWか決めかねてて、待ちぼうけ状態。個人的には、スカパーの“歌舞伎専門チャンネル”&“時代劇専門チャンネル”に非常に惹かれます

『贋作・罪と罰』の初演は1995年(@シアターコクーン/もちろん未見)ドストエフスキーの『罪と罰』を下敷きにした、幕末の物語です。
テーマは【“理想”という名の下に人を殺すのか?】
「1メートルの距離で人殺しを見たことがある」という野田さんの、大学時代の実体験もモチーフになってます。(当時、学生運動は下火になりつつあったそうですが、野田さんが学生運動に参加していたということではありません)
この初演は、オウム事件と重なったそうで、野田さん自身「上演のタイミングが悪かった」とおっしゃってます。
初演の評判はよく知りませんが、これを見てオウム事件を思い浮かべたひとは多かったのかな?
逆に「殺すな」ってメッセージの方を強く感じたんですが。
事件といえば、今回は“ライブドア”を意識しちゃいましたよ。
才谷(坂本竜馬)@古田さんが、「とにかく金、金、金」「金で大政を買う」主張が(もちろん人の血を流して時代を変える人々に反してのことだけど)「世の中金さえあれば」という誰かさんの言葉に重なってしまいました
結果、ホリエモンは逮捕、才谷は、ひとが殺し合いひとの血が流れるのを阻止した代わりに、自分の血を流すことに……(厳密には完全なる阻止ではないけど)


劇場の真ん中に正方形のグレーの舞台が設置されてまして(客席に対して斜めになってるからダイヤモンド型ですが/ちょっとわかりにくいな)通常の舞台はとっぱらわれて客席になってます。
後は真ん中以降と2階席が客席。2階席の後ろ半分のブロックは未使用。そこからでは舞台が全然観れませんもんね 
私は2階席の1番前だったんですが、2列目以降だったら見難かったかも手前のダイヤモンドの端っこにいる人物を見ようと思うと、1番前でもちょっと乗り出さないと見えなくって~~

舞台の周りには、様々な椅子。役者さんの待機場所にもなってます。必要に応じて椅子は舞台に移動。
あとは蛍光灯のようなポール。これよく曲がったり倒れたりするけど壊れなくって(壊れたらこまるけど)不思議~~。主に柱や引き戸の役割担当。
椅子とポールで、舞台が、英の部屋になったり居酒屋になったり警察になったりお墓になったりバリケードになったりで、あわただしさもあるけど、この演出は楽しめました。
このやたらと動く大道具(?/小道具じゃないよねえ)の移動は役者さんのお仕事
効果音も役者さんのお仕事。舞台下の椅子に座って、椅子の座面と算盤で戸の開け閉めを表現したりしてました。
舞台の左右を移動する薄いカーテンとか、ぷちぷちシートも多用してたけど、ちょっとチープな感じ。
あ、経済的と言えばいいのか(汗)


2時間休憩なしの長丁場でしたが、あっという間。
スピーディーでスリリングで、光る言葉、和む言葉、胸打つ言葉、前半とはうって変わった清冽な終盤。

「牢が開く時を待て。俺がその牢を開けてやる。新しい時代と共に」 

この才谷(竜馬)の言葉を糧に、牢の中で彼に語りかけ彼を待つ英。
才谷が自分の父親に殺されたのも知らずに。

「彼の方角と書いて彼方と呼ぶのよ。だからお前のいる所は、これからはいつもあたしの彼方よ」 

“記憶の彼方”とか“遥か彼方の未来へ”といった表現に見られるように、“彼方”というのは過去にもなり未来にもなりえますよね。
英にとって才谷は、“彼方”そのものだったのかな。
進むべき道を閉ざされて身動きできない英に手を差し伸べた才谷。
その“彼方”に自分の未来を見つけようとする英。
“過去”も“未来”も才谷につながっている。
そう思うと、この台詞は、より美しく響きより悲劇性が際立ってくるのではないでしょうか。

ラストでは、舞台の上で英の独白と才谷の死が同時進行。
才谷は天に向って腕を突き上げたまま死んでいく。
その傍らで語り終えた英が、ふと何かに気づいた表情が印象的でした。あれ、なんだったんだろう。

終演後は、わーーーっていう嵐のような拍手ではなくて、柔らかく包み込むような拍手が長く続きましたね。
最後のカーテンコールのあと、古田さんがたか子嬢の肩に腕をまわして、仲良くいいムードで舞台からはけていく2人が微笑ましかったです。


野田さんのおばちゃんキャラは最高。うぜえ(笑)
「いじわるばあさん」やって欲しいと思っちゃった
お歳のせいかロングランの疲れか、声がかすれて聞き取りにくいところが結構あったんですが、存在感は圧倒的でした。
将軍役(今回野田さんは4役)で、大政奉還の上奏で見せた威厳はさすが。

段田さんは、今回のキャスト陣で唯一台詞が全部聞き取れました(汗)
セット上の問題もあるんですけど、声が全方位に飛んじゃうんですよね。おまけに台詞のスピードは速いわ量は多いわで、滑舌のいいたか子嬢でさえ、台詞がわからないとこがあったくらいで
その中で、段田さんは落ち着きのある老練な人物を、しっかり演じられてたと思います。

宇梶さんを舞台で観るのは初めてだったんですが、台詞が聞き取りにくいのひとことに尽きる(汗)
疲れてるのか元々の声質なのか濁声に近く、発声法を変えたほうがいいんじゃないかと思ってしまったくらいで……。
役も、結局何をしたかったのかよくわからない人物で、印象があまり残ってないのが残念です

たか子嬢の英はぴったり。すごく意思のある目とか、それに反してクールな表情とか潔癖さとか、女塾生という硬質な雰囲気がよく出ていたと思います。
初演での大竹しのぶさんは知らないのでなんとも言えませんが、“英”としてはたか子嬢のほうがイメージにあってるのでは?大竹さんはもっと女の部分が強そうな気がする。
終盤の才谷と英の遣り取りは、うるうる来ちゃいましたね。
あんな素敵なラブシーンは久々でした。
才谷が英をぎゅっと抱きしめて、しばらくして英が才谷の背中に手を回すんだけど、この間がよかったなあ。
私の席からはたか子嬢の顔しか見えなかったので、古田さんの表情が見たかったわーー

古田さんは、才谷梅太郎じつは坂本竜馬っていう役どころも台詞もカッコイイんだけど、お太り気味のため(笑)ばりばりのカッコよさはなし
だからこそ、そこかしこでかますボケやギャグが違和感ないのかな。
でも、すごく包容力を感じました(歳と身体のせいか?/失礼)
滑舌それほど良くないし噛むし台詞間違えたりするけど、彼は技巧的な巧さではなく、想いをを伝える感情的・情緒的な部分に抜群の上手さがあるいい役者だと思います。
お願いだから、もうちょっと痩せてください

WOWOWでも1回観たいよーーーー



★余話1
くすくす笑える和み部分も結構あり(中村まことさんの「あ、マーガリン出しっぱなし」とか/笑)
古田さんがたか子嬢に色々かますんだけど、役柄上まったく笑えないんですよね。
あれは相当きつかったと思うわ~~~。こっちは大爆笑だっつーのに。
笑いをこらえてるといった表情は一切見えず、いつも厳しく凛としていて、たか子嬢の女優魂を見ました。


★余話2
激しい台詞の応酬のため、唾も飛びまくり。
2階席からでも、たか子嬢の唾がよく観えました。貴重かも(笑)


★余話3
ちょっと前に、たか子嬢が『いいとも』で「古田さんにカンチョーされた」と言ってたそうですが……(オットが増刊号で観てた)
古田新太の勇気に拍手 じゃない、梨園のお嬢様になにすんねん
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3 コメント

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ミュージカル版も良いですよ! (アヤン)
2006-03-02 11:47:24
水無月さん、こんにちは。コメントさせていただくのは確か2度目だと思います。



NODA MAP再演「贋作・罪と罰」の感想興味深く読ませていただきました!

古田さんの才谷がどんなだったか興味があったので、なんとなくわかって嬉しいです。

初演は見たのですが、半分くらい寝てしまい(汗)今回は観るのを断念しました。

WOWOWでの放送を楽しみにして待っているところです!



さて、この脚本をミュージカル化した「天翔ける風に」という作品があるのですが

それもとってもお勧めです!2月にNHKBS2で再放送されましたがご覧になりましたか?

才谷と溜水がとても良い男に見えます(笑)



前にこの配役についてなどちょこっと自分のブログで書いたので、大した内容じゃないのですが

トラックバックさせて頂きます。(初トラバなので上手くいくのか…(汗))



色々今後も観劇の感想楽しみにしてます!

(あ、この後の記事のBTBレポも楽しかったです!)
返信する
やはりダメでした…(恥) (アヤン)
2006-03-02 12:01:58
連続コメントすみません…。

やはりトラバ失敗、というかやり方がわからず(お恥ずかしい)でした。

又勉強しなおしてきますね(笑)

とありえず、トラバしたかったURLを名前欄に貼りましたー(汗)
返信する
アヤンさんへ (水無月)
2006-03-06 00:49:51
コメントありがとうございます!

レスが遅くなってしまってすみません

確かMさん宅(別に伏字にしなくてもいいんだけど)では“師匠”でしたよね(笑) 



古田さんの才谷は記事で詳しく書いてませんが、いい味出てます。

あの役は、カッコイイ部分とおちゃらけ部分のバランスの取り方がウマい古田さんに合ってると思います。

WOWWOWをお楽しみに



>「天翔ける風に」

題名は聞いたことがあるというレベルです~~(汗)

おまけにウチはBSが観れません~~(泣)

でも教えていただいてありがとうございました。



トラバの件はgooブログの方が原因の可能性大です。

最近調子が悪くて、コメントが表示されなかったり、記事が消えたりしてます

アヤンさんの所為ではないと思うので、気にしないで下さい。

なるべく早めにそちらにお邪魔させていただきます!
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