月は東に

Get Out Of That Rut & Savor Life

『12人の優しい日本人』@シアター・ドラマシティ・1/14マチネ(ネタばれあり) 補26-5

2006-01-21 23:05:08 | Stage Review
プレオーダー全滅、一般発売日にぴあ店頭でGETしたのは補助席、それもサイドではなく最後尾。チケット取れただけでも超ラッキー、と思っていたらWOWWOWで生中継決定だってさ(笑)

一番後ろでもハコ自体がそれほど大きくなかったので、舞台が遠いとは感じませんでしたね。舞台全体が見渡せたし。
とにかく、キャストが動きまくってて、真ん中で誰かと誰かが丁々発止でも、隅っこで誰かが小ネタを繰り広げてるから、前の方のひとは観辛かったかも
パイプ椅子だけどぶ厚いクッションが敷かれていて、お尻が痛くなることもなく、固定座席ではありえない、足を延ばせるスペースを充分に確保しての(椅子を思いっきり後ろに移動/だって誰もいないもん)2時間ちょっとの観劇は、快適であっという間でした。
2時間ノンストップの観劇は慣れてないときついのか、体調が悪くなって途中退場される方が4、5人いらっしゃいましたね。出入り口が近かったから、劇場職員と退場される方の会話が聞こえたんだけど、全て「すいません、ちょっと気分が……」でした。


私は映画版も、サンシャインボーイズの舞台も未見、三谷さん推奨のこれも未見。
観劇前に映画版を観ておいたほうがいいかどうか、友人に聞いたところ「たぶん観ないほうが楽しめる」とのことだったので、結末も知らずにほぼ無の状態で観ることにしました。
オットが舞台以外をかなり前に観てまして、感想くらい聞いておこうと思ったら殆ど忘れてやがりました
ただ、非常に面白かったことだけは確かなようです。

舞台は90~92年と3年続けてやってるし映画もあるので、いまさらネタばれもなにもないんですが、それでも「何も知らない状態で観たい」という方はこの後は読まないほうがよろしいかと……。


出演者が誰一人途中で舞台から引っ込むことなく、2時間15分間出ずっぱり。(ほんの何秒か、コーヒーやプリンやピザを取りに部屋の外へは出るけど)
暗転なし場面転換なしBGMなし!(BGMはラストに少しだけ)
裁判所の一室で交わされる会話だけでの、飽きることのない舞台展開に、三谷さんの脚本の完成度の高さと演出の妙を強く感じました。
もちろんそれに役者の力も加わってるんですが……。

舞台のテーマはひとこと“日本に陪審員制度があったなら”(笑)
2009年には導入されるそうですね。
90年の初演時にはおそらく、日本で陪審員制度が現実になるなんて誰も思っていなかったのでは?(少なくとも一般市民は)
外国には“陪審員制度”なるものがあることを知ったのは、中学生のとき。
当時大好きだった(今でもだけど)とある漫画(わかるひとには、どんな漫画なのかすぐわかります/笑)の裁判の場面に出てきました。
かなりあやふやな判断基準(物的証拠ではなく加害者や被害者の見た目や態度の印象や、生い立ちなど)で、陪審員はシロかクロか判断するんかよやばいよこれ、と当時は単純に思ってましたが、
OJシンプソン事件なんかもあったりして、やっぱりこの制度は功罪を考えると“罪”の占める率の方が高いのかと考えたり……。
って話がそれたわ

陪審員として無作為選出の一般市民は、全員がこれでもかってくらい住む世界が全く違います。
名前も知らない、赤の他人同士。
そんな人たちが12人も1室に閉じ込められているというシチュエーションだけで面白い。
陪審員制度が施行されたらどんな感じになるのかわかりませんが、この『12人~』みたいなことになったら面白いけど……怖いわ(笑)。

審議にかけられる被告は若い女性で、別れた夫を突き飛ばしてトラックに轢き殺させたという容疑。被告の女性、トラックの運転手、目撃者のおばちゃんの3人の証言を検証して、真相を探っていきます。
実際この3人は舞台にはいないけど、12人の会話の中で次第にこの3人の姿も実にリアル浮かび上がってきました。
それは12人の陪審員も同様。
12人の自己紹介もなく始まって「誰が誰やねん」と思ったのも束の間、会話がすすんでいくうちにどんどん12人の横顔が見えてくる。
よーく聞けば説明的な台詞もあるんですが、会話の中に自然に入ってるので違和感もなければわざとらしさも全く無し。
脚本が凄いんでしょうね。

被告は有罪か無罪か?
評決が一致しないと審議は終わりません。
話し合いが始まると満場一致の“無罪”
とにかく早く帰りたい陪審員ばかりの中で、なんとなく納得出来ない2号@生瀬さん。
彼は、無罪だったらいいなと思って手を挙げたと告白し、結局“有罪”に変更。
彼のおかげで、他の11人は帰れなくなります。

ここから始まるシチュエーションコメディ。
派手な演出もなく、ライティングが変わるだけでもない、12人の延々と続く会話だけでどんどん三谷幸喜の世界に引き込まれます。
観ていて思ったのは「ああいるいる、こんなひと」
あるいは友人の誰かを思い浮かべたり、自分は誰に当てはまるんだろうとか、こんなやつとは友達になりたくないとか考えたり

まるで学級会を観てるようでした
私は小中高と学級委員やら何やらで、会の進行と纏め役を務める機会が多かったんですが、それがすっげーイヤでした
みんな意見は言わないし、無駄話してるし、しかたなく議長の私が何かしら提案すれば思いっきり反対するし、だったらてめえらの提案はねーのかと突っ込めばまた黙りやがるし
てなわけで、陪審員長の1号@浅野さんにかなり同情
1号はソフトなゆるがなさを湛えた好人物。決して声を荒げることなく、穏やかにことを進めようと、仕切りたがりの12号@山寺さんにまとめ役を譲ったりと、12人の中では唯一平和的バランス感覚を感じました。浅野さんの上手さが活きるキャラですね。

あとはもう、こいつらなんなの(笑)ってなくらい、個性的です。
さすが、と思ったのは浅野さんの他に、2号@生瀬さんと9号@小日向さん。
11号@江口洋介は、それほど台詞が多くないんですが、ピンポイントで入ってくると演技はともかく(失礼)やっぱり長い手足が舞台に映えてカッコいいんですよ、妙に存在感もあって…彼が円卓から離れて、端っこの椅子に座ったり、水を飲みにいったりすると思わず目で追ってしまいました
別にファンじゃないんだけどね。
根拠もなく頑に無罪を主張し続ける4号@筒井君と10号@堀内さんを助ける、正義の味方(?)な役どころは彼に合っていたと思います。

4号が「(被告が)どうしても悪い人には思えない」、10号が「とにかく何かひっかかる」と主張し、決して“有罪”に転じない様子は、かなり意固地で子供っぽく見えます。
でも2号のように、自分の意見を押し付けて同意を求め他人の意見も変えさせようとするわけではなく、「理由はないけど無罪だと思う」と言い続けることって、非常に勇気がいることだと思いました。
自分の直感を信じ続けることって功罪ありますが、すごく大切なこと。
2号や9号のような(2号はちょっと違うか)論理的思考は日本人はあまり得意とするところではないけれど、私としては、根拠の無い直感を信じる“優しい日本人”という存在は受け入れたいですね。
論理的討論ができなくても、自分の主張を持っている。
論理的思考を否定するつもりは毛頭ありませんが(無いと困るし)反対意見しか言わない、ましてや自分の考えすらないひとたちに比べれば、“優しい日本人”の存在のなんと愛らしいことか。
観終わって、そんな気持ちになりました。

ただ驚いたのがすっごい呆気ない幕切れ!
被告の“有罪”を叫び続けてた2号が、11号の「彼女は(被告)あんたの奥さんじゃないだろう」の一言であっさり“無罪”に意見転換
2号の主張の強さに、私は別居中の彼の奥さんが被告なのかと、中盤くらいから疑ってたんですけどね、さすがにそれはなかったわ
だから、2号の“無罪”にはちょっと疑問符です。
2時間15分の長丁場の最後には、何か「やられた!」なものがあるかと、期待しすぎたのかも。
あるイミ「こんなあっさり終わるか!?」と思わせたところが「やられた!」になるのか(笑)

あとは、11号が自分の職業を弁護士、と言った時に「そりゃありえねー」と思ったのは私だけではないでしょう(笑)

温水さんはいい味出してましたが、あのキャラちょっとウザいかも
円卓の周りにある椅子が、客席の真正面の1個だけ子供用みたいにちっちゃいんですよ。
舞台見た瞬間、“あれは温水さん用”と判断(笑)
その椅子に座る彼はとってもラブリーでした

女性陣は、8号@砂羽さん、10号@堀内さんはキャラ立ってけど、5号@石田ゆり子がいまいち
TVで目にしても上手い演技をしてるのを一度も観たことがないので(暴言)舞台はどうなのって思ったけど、やっぱり上手いとは思えませんでした。

終演後のアナウンスは12号@山寺さん。
これ日替わりかな?


感想はこんなとこです。
ちょっとツッコミも入れてますが、2006年の観劇の幕開けにふさわしい、素敵な作品だと思います。
(前日に歌舞伎みてるけどね。現代のストレートプレイとしてということで)
以下小ネタ。


・ミロだのプリンアラモードだのバナナジュースだのアネハだの(笑)
 甘栗だのレギュラーサイズには見えないピザだの……ああ楽しい
 (ごめん見た人にしかわからない)
・あの豪奢なプリンアラモードを、3号@伊藤さんは毎日口にしてるんですよね(完食ではないけど)
 公演終わったら、見るのもいやだろうなあ。
 誰が作ってるんだろ。劇場上のホテルからお取り寄せ?
 だとしたら、東京と大阪でつくりが違うのかしら。
・6号@堀部さんの職業が、愛知万博のマンモス展示に関わる営業マン(笑)という設定。
 三谷さん、なぜ愛知万博なんですか?観にいらっしゃったんですか?
 地元民の私ら夫婦は大爆笑でしたよ
 おまけに6号は、“マンモスの毛”持ってるし
・8号@砂羽さんが、ジャケットを脱いで何かするんかなーと期待させて、
 でも何もなく再びジャケットを着るという小ネタに、オットのツッコミ。
 「池乃めだかのパクリやんか」
 ……確かに
 オットは、砂羽さんがジャケットを脱いだ直後に笑い出してて、客席の笑いが小ネタ終了後に
 起こったのを見て
 「こいつら関西人やないで」(反応が遅すぎる、ということらしい)
 ……全員が関西人というわけじゃなかろうよ現にウチらは愛知県民。


★余話
観劇のマナーについて。
コンビニの袋ガサガサはやめろ。
小声で短い会話ならまだいいけど、会話の内容がほぼ全部聞こえる音量で、2分も話し続けるのははめろ。(一応注意したら会話は止まったけど)
一番腹立ったのが、隣の席のまーーーったく笑わないカップル。
どうもできたてカップルらしくて、初デートなのかすっごい緊張してる感じがひしひし伝わってきて、なんでここをデートの場所に選んだのか理解不可能。
非常に勝手な憶測だけど、江口ファンの彼女のために、彼が必死で取ったチケなのに一番後ろだし、
江口主役じゃないし、知らないひとが延々しゃべっててわけわかんない風な彼女が気になって気が気じゃない彼……って感じ
それともホントに面白くなかったのか?
作品の見方はひとそれぞれだから、好みの舞台じゃなければ笑えないのかもしれないけど、でもこの舞台で笑わないって…………
いやとにかく、この舞台を生で観たくて観たくて、でもどうしてもチケ取れなくて悔しい思いをしてるひとが何人もいるのに、チケを取れたてめえらが全然楽しんでねえのはどういうことだ、って襟首掴んで怒鳴りたかったよ。
コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『新選組!! 土方歳三 最後... | トップ | 『THE有頂天ホテル』@M... »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おはようございます。 (ますごい)
2006-01-22 10:09:09
「12人の怒れる男」は、10年以上前に観ていて

(理由はやっぱり三原順)

水無月さんが観た舞台の映画版を、

昔トヨエツのファンだった時に友人が

送ってきてくれてみました。

私の好みには合わなかったけど、多分舞台で見たら

面白いのだろうとは思いました、当時。

だから舞台を見ても感想を忘れていた

ダーリンを責めないでー



観劇のマナーは、私も偉そうにはいえないんですけど

確かに袋の音とかは困りますよね。

話し声より無視しにくい。

映画館で何故ポップコーンが定番なのかってことですよね。

雪が残ってて晴れているのでとっても眩しい東京より。
返信する
わはは! (あさぽん)
2006-01-22 14:15:31
水無月さんのツボと怒りポイントが

面白かったです。

何箇所か激しく同意でした。頷いちゃったよ。

といってもまだ見てないので舞台のこととは

別のとこでです(笑

石田さん・・・(汗



wowowがますます楽しみになりました。

ありがとうございます。
返信する
おみつさまへ (水無月)
2006-01-25 02:06:38
レス遅くなりました~

「12人の怒れる男」は詳しい内容は忘れてるくせに、オットにとってはとにかく面白かったのだそうです。

いつ観たかも忘れてるくらいなので、怒りを通り越してあきれたさ(笑)

おみつさまの優しい言葉に免じて、許してつかわそう(偉そうに)



ここ最近、マナーに関して結構憤ることが多くて、思わず書いてしまいました。

歌舞伎をご覧になるマダムでも結構ひどいんですよ。

近々らぶりんの舞台のレビューを書くので、そこで小ネタとして記事に取り上げるつもりです。
返信する
あさぽんさんへ (水無月)
2006-01-25 02:18:47
わーーコメントありがとうございます!!!

はやくそっちへ行きたいよ~~~



うん、あさぽんさんの激しく同意のとこがどこだかわかります(笑)



>石田さん・・・(汗

もともと好きじゃない女優さんなので、ネガティブな見方になっちゃいました。



WOWWOWは存分にお楽しみください!
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Stage Review」カテゴリの最新記事