11月2日(木)
扁平状のがんはタチが悪い
圧倒的に多いのは、がんが膀胱内に突出しているタイプです。
これにも、イクラのように表面がブツブツしたがんが
カリフラワーかイソギンチャクのように突出して茎の部分が細くて
プラプラしているタイプ(乳頭状の有茎性腫瘍)と、
茎が太くて岩のようにガッチリした腫瘍が突出しているタイプ(結節状の広基性腫瘍)があります。
前者の乳頭状の有茎性腫瘍の場合は、悪性度でいうとグレード1~2のがん細胞が中心です。
つまり、悪性度が低いのです。
「見た目にも、一緒に内視鏡で病巣をみた患者さんが、海底のサンゴのようですね」
というほどきれいだといいます。
こういうタイプのがんは、「根が浅く、表在性の場合が多いので、膀胱を摘出しないでも
がんを削り取るだけで治療ができることが多い」のです。
ただし、乳頭状のがんでも、崩れて壊死してきたり、結石のようなものがへばり付いてくると、
茎も太くなってくることが多く、「グレード1より2の細胞が多くなり、3の要素も出てきます」
と鳶巣さんは説明しています。
がんとしての性質が変化していくようなのです。
一方、茎が太くて岩のようにがっちりしたがん、つまり結節状の広基性の膀胱がんになると、
グレード3が中心になります。
つまり、同じように膀胱内に突出したがんでも、悪性度が高く、筋層に浸潤していることが
多いのです。
「筋層浸潤にもいろいろなタイプがあり、ピンポン玉大の内腔突出型のがんが
筋層に食い込んでいることもあれば、頭がつぶれて扁平で深く入っているものもあります。
扁平になったものは、スキルス胃がんと同じでタチが悪いのです」と鳶巣さん。
胃のスキルスがんも、胃壁を這うように急速に広がっていくタチの悪いがんです。
つまり、茎があって飛び出しているタイプはタチがよく、頭がつぶれて扁平になると
タチが悪くなるのです。これは、膀胱がんに限らず内腔に突出するがんに共通した現象だそうです。
したがって、「表在性であっても、フラットなものは意外に根が深いことがあるので、
治療を急がないといけない場合もあるのです」と鳶巣さんは語っています。
そして、膀胱を残して治療した場合、再発が極めて多いのも膀胱がんの特徴です。
[膀胱がんの病期分類]
表在性がんの治療
再発をいかに防ぐかがポイント
膀胱がんの治療は、どこまでがんが食い込んでいるかによって異なります。表のように、膀胱がんはその深さによって国際的にTISからT4にまで分類されています。このうち、膀胱を取らずに治療ができるのは、がんが粘膜下層までにとどまる表在性の場合、つまりT1までです。膀胱がん全体の約7割が表在性のがんですから、膀胱をとらずに治療できる人はかなり多いわけです。
さて、この場合は、尿道から内視鏡(膀胱鏡)を挿入し、病巣部を高周波の電気メスで削るように切除していきます。これが、「経尿道的膀胱腫瘍切除術」(TURBT)という方法です。手術時間は1時間ほどで、3~4日の入院が必要です。これで、がんのほとんどは切除できますが、問題は再発です。「再発しない人のほうが珍しい」といわれるほど、膀胱がんは再発が多いのも特徴なのです。そこで、TURBTとセットで再発の予防が行われます。
[膀胱鏡を用いて行う経尿道的膀胱腫瘍切除術の方法]
[膀胱がんの治療ガイドライン]
再発予防に膀胱内注入療法
再発予防法として、世界的に標準となっているのが、BCGの膀胱内注入療法です。BCGは結核の予防接種に使われることで有名ですが、膀胱がんの場合は、1アンプル(80ミリグラム)を40CCほどの生理食塩水を加えた懸濁液として、全量を膀胱内に注入します。これを週に1回ずつ、6~8回繰り返すのが一般的です。
これは、一種の免疫療法で、がんを殺す効果も再発予防効果も高いことが、すでに世界的に証明されています。TURBTで小さながんの取り残しがあっても、BCGで消すことができるのです。ところが、問題点はいまだ日本では独自のデータがないこともあり、保険適応になっていないことです。日本で、現在認められているのは、抗がん剤の注入療法です。そのため、アドリアシン(一般名アドリアマイシン)やミノマイシン(一般名ミノサイクリン)を膀胱内に注入する方法を行っている施設もあります。経尿道的切除直後に抗がん剤を膀胱内に注入する方法が再発予防の目的で有効であるとされています。
「大量の膀胱がんがあって、削り取ったときに細胞がバラバラになって膀胱内ががん細胞の鹸濁液のような状態になることがあります。こういう場合、削った直後に抗がん剤を入れて、再発予防を期待する考え方です」と鳶巣さん。さらに「経尿道的切除後に長期にわたり抗がん剤を注入する方法については、まだその有効性が確率していません」といいます。やはり長期的にみると多くの事例でBCGの膀胱内注入が、再発予防の世界標準と考えられるのです。
膀胱がんはなぜ再発が多いのか
膀胱を残して治療した場合、膀胱がんはきわめて再発率が高いのが特徴です。「再発しない人のほうが珍しく、よほどおとなしいがんか、1~2センチ以下の小さながん、単発のがんなどに限られる」といいます。
では、なぜ再発しやすいのでしょうか。その原因として、もともとがんができやすい畑なのか、あるいは畑が同じでもがんから種が落ちるのか、が昔から議論されています。現在、優勢なのは種まき説だそうです。
膀胱は尿を溜めたときには大きく膨らみますが、排尿するとペチャンとつぶれて小さくなります。つぶれたときには、膀胱壁の粘膜上皮がお互いにくっつきます。このときに、種がまかれて、がんが発生するのではないかというのです。
扁平状のがんはタチが悪い
圧倒的に多いのは、がんが膀胱内に突出しているタイプです。
これにも、イクラのように表面がブツブツしたがんが
カリフラワーかイソギンチャクのように突出して茎の部分が細くて
プラプラしているタイプ(乳頭状の有茎性腫瘍)と、
茎が太くて岩のようにガッチリした腫瘍が突出しているタイプ(結節状の広基性腫瘍)があります。
前者の乳頭状の有茎性腫瘍の場合は、悪性度でいうとグレード1~2のがん細胞が中心です。
つまり、悪性度が低いのです。
「見た目にも、一緒に内視鏡で病巣をみた患者さんが、海底のサンゴのようですね」
というほどきれいだといいます。
こういうタイプのがんは、「根が浅く、表在性の場合が多いので、膀胱を摘出しないでも
がんを削り取るだけで治療ができることが多い」のです。
ただし、乳頭状のがんでも、崩れて壊死してきたり、結石のようなものがへばり付いてくると、
茎も太くなってくることが多く、「グレード1より2の細胞が多くなり、3の要素も出てきます」
と鳶巣さんは説明しています。
がんとしての性質が変化していくようなのです。
一方、茎が太くて岩のようにがっちりしたがん、つまり結節状の広基性の膀胱がんになると、
グレード3が中心になります。
つまり、同じように膀胱内に突出したがんでも、悪性度が高く、筋層に浸潤していることが
多いのです。
「筋層浸潤にもいろいろなタイプがあり、ピンポン玉大の内腔突出型のがんが
筋層に食い込んでいることもあれば、頭がつぶれて扁平で深く入っているものもあります。
扁平になったものは、スキルス胃がんと同じでタチが悪いのです」と鳶巣さん。
胃のスキルスがんも、胃壁を這うように急速に広がっていくタチの悪いがんです。
つまり、茎があって飛び出しているタイプはタチがよく、頭がつぶれて扁平になると
タチが悪くなるのです。これは、膀胱がんに限らず内腔に突出するがんに共通した現象だそうです。
したがって、「表在性であっても、フラットなものは意外に根が深いことがあるので、
治療を急がないといけない場合もあるのです」と鳶巣さんは語っています。
そして、膀胱を残して治療した場合、再発が極めて多いのも膀胱がんの特徴です。
[膀胱がんの病期分類]
表在性がんの治療
再発をいかに防ぐかがポイント
膀胱がんの治療は、どこまでがんが食い込んでいるかによって異なります。表のように、膀胱がんはその深さによって国際的にTISからT4にまで分類されています。このうち、膀胱を取らずに治療ができるのは、がんが粘膜下層までにとどまる表在性の場合、つまりT1までです。膀胱がん全体の約7割が表在性のがんですから、膀胱をとらずに治療できる人はかなり多いわけです。
さて、この場合は、尿道から内視鏡(膀胱鏡)を挿入し、病巣部を高周波の電気メスで削るように切除していきます。これが、「経尿道的膀胱腫瘍切除術」(TURBT)という方法です。手術時間は1時間ほどで、3~4日の入院が必要です。これで、がんのほとんどは切除できますが、問題は再発です。「再発しない人のほうが珍しい」といわれるほど、膀胱がんは再発が多いのも特徴なのです。そこで、TURBTとセットで再発の予防が行われます。
[膀胱鏡を用いて行う経尿道的膀胱腫瘍切除術の方法]
[膀胱がんの治療ガイドライン]
再発予防に膀胱内注入療法
再発予防法として、世界的に標準となっているのが、BCGの膀胱内注入療法です。BCGは結核の予防接種に使われることで有名ですが、膀胱がんの場合は、1アンプル(80ミリグラム)を40CCほどの生理食塩水を加えた懸濁液として、全量を膀胱内に注入します。これを週に1回ずつ、6~8回繰り返すのが一般的です。
これは、一種の免疫療法で、がんを殺す効果も再発予防効果も高いことが、すでに世界的に証明されています。TURBTで小さながんの取り残しがあっても、BCGで消すことができるのです。ところが、問題点はいまだ日本では独自のデータがないこともあり、保険適応になっていないことです。日本で、現在認められているのは、抗がん剤の注入療法です。そのため、アドリアシン(一般名アドリアマイシン)やミノマイシン(一般名ミノサイクリン)を膀胱内に注入する方法を行っている施設もあります。経尿道的切除直後に抗がん剤を膀胱内に注入する方法が再発予防の目的で有効であるとされています。
「大量の膀胱がんがあって、削り取ったときに細胞がバラバラになって膀胱内ががん細胞の鹸濁液のような状態になることがあります。こういう場合、削った直後に抗がん剤を入れて、再発予防を期待する考え方です」と鳶巣さん。さらに「経尿道的切除後に長期にわたり抗がん剤を注入する方法については、まだその有効性が確率していません」といいます。やはり長期的にみると多くの事例でBCGの膀胱内注入が、再発予防の世界標準と考えられるのです。
膀胱がんはなぜ再発が多いのか
膀胱を残して治療した場合、膀胱がんはきわめて再発率が高いのが特徴です。「再発しない人のほうが珍しく、よほどおとなしいがんか、1~2センチ以下の小さながん、単発のがんなどに限られる」といいます。
では、なぜ再発しやすいのでしょうか。その原因として、もともとがんができやすい畑なのか、あるいは畑が同じでもがんから種が落ちるのか、が昔から議論されています。現在、優勢なのは種まき説だそうです。
膀胱は尿を溜めたときには大きく膨らみますが、排尿するとペチャンとつぶれて小さくなります。つぶれたときには、膀胱壁の粘膜上皮がお互いにくっつきます。このときに、種がまかれて、がんが発生するのではないかというのです。