膀胱がん  勇気とともに

56歳で、膀胱を埋め尽くす10cmものガンが見つかった夫との日々

手術のため入院

2011-11-30 22:53:39 | 手術
2011年 11月30日(水)

入院患者は車で行ってはいけないので
朝早くから、私が運転して60km余りの道のりを行く。


さすがに大学病院!
患者の波、波、波!

手続きにけっこう時間がかかり、病室へ。
今回は個室が空いていないとのことで、大部屋に入る。


大部屋は、抗がん剤治療の泌尿器科の患者で集められていて
30代ぐらいの若い人もいた。

横のおじさんは、抗がん剤治療の回数が、かなり多いらしく
点滴の際、血管が痛いと、しきりに看護師に訴える。
「何回もやってると、血管がぼろぼろになってくるからねぇ・・・」
と看護師。



相対的に、大学病院の看護師さんたちは、とてもよく教育されていて
分け隔てなく、献身的に仕事をしている。
丁寧に、優しく応対してくださり、頭が下がる。


麻酔医から、明日の説明を一緒に聞く。
全身麻酔のリスクの説明が主。
グラグラしている歯はないか?
挿管の際、折れるかもしれない
などの説明がある。


その後、主治医から手術の説明が予定されていたが
17時以降になるとのこと。
どうしてもはずせない仕事があったので
その間に車を走らせ、仕事を終えて、急ぎ病院に戻った。


17:45から主治医の説明

①前からフォローが必要と言っていた
 膀胱壁が分厚くなっている箇所に
 10mmの乳頭状の腫瘍ができたため
 膀胱壁と共に切除する

②切除する範囲は、9-3時ぐらいの予定(つまり180度)
 端まで病巣がないか、しっかり確認する

③切除により、膀胱のサイズが小さくなるので
 頻尿になるが、膀胱は3~6か月で徐々に延びてくるため
 150ccくらいの尿量は溜められるようになり、頻尿も
 改善してくるだろう

④一時的に、血尿が出る可能性がある

⑤手術は、12月1日15時から行う
 所要時間は、2~3時間の予定
 病室には17~19時か20時に戻ってくる

⑥今回の腫瘍は、腹膜の真上にあるため
 腹膜の一部も切除する

⑦まだ研究段階の、蛍光膀胱鏡を使った
 「ひかり力学的診断」と共に、開腹手術をしたい
 肉眼では見えない病巣を、取り残さないよう
 全力を尽くす
 (ヘモグロビン合成過程に、酵素が集まる性質を
  利用して、腫瘍部分を赤く光らし見つける)
 そのための内服薬で、GOTが少し上がるかも

⑧今まで6回やってきたGC療法の効きが
 今、少し悪くなってきた時期であり
 ちょうどそういう時に、新たな腫瘍が出てきた
 と考えられる(8月の検査の画像ではなかった)
 そこで今回、術後の体力が回復したら
 今までのGC療法に、タキソテールを加えた
 化学治療を考えている
 時期は、一旦退院して、2週間後くらいに
 再入院してもらい行う

⑨術前検査では、血液も心臓なども異常はなかった


<夫からの質問>

1.骨盤に放射線を当てる、という話もあったが?
  →その件については、検討した結果、放射線の
  副作用(腸の動きが悪くなる)もあるので
  まずは、抗がん剤でやり、放射線はその結果を
  見て、考えたい

2.骨盤に放射線を、ということは、骨盤への転移の
  可能性もあるのか
  →8月の画像では、ない
   しかし、腹部動脈(腎臓と腎臓の間)横の
   リンパ節が、少し大きいのが、再発時から
   変わっておらず、これにはGC療法が効かなかった
   ということなので、タキソテールに期待したい

3.今回の腫瘍は、最初のと同じ「尿路上皮内がん」か?
  →それは取ってみて、組織検査をしてみないと判らない

4.尿膜管がんと同じ場所だが、その可能性は?
  →今は何とも言えないが、たぶん違うだろう

5.腹部にガスが溜まりやすいが・・・
  →大建中湯をぜひ試してみてほしい






手術を明日に控え、今夜から絶食。
長い夜が始まる。



「また、明日ね」
病院を出たら、もう真っ暗だった。







親孝行

2011-11-25 22:24:32 | 普通の日々
2011年 11月25日(金)

勤務先に、再々発のことを告げ
入院中の代理のDrも頼んで、気が楽になったのか
いつもの淡々とした夫に戻る。
時々、にっこり笑い、精神的にも
落ち着いているよう。

しかるべき事態になったら、そのとき対処する!
と堂々と言って、この6年過ごしてきたのだもの
初志貫徹で、いつものスタイルに戻す、という
強い意志が感じられる。
立派だなぁ!!


明日は学会発表らしく、ここ2日ほど
珍しく夜中1時ごろまで起きて、パソコンに向かっている。

また、母の年賀状を作ってあげる、と約束したらしく
2人で力を合わせて、それも仕上げた。
印刷も終えて
「頑張ったねぇ! 親孝行やねぇ!」
と言うと
涙声になって
「親孝行か? ほんまか?!」
とすごく喜んだ。











シリアスな一日

2011-11-23 13:22:10 | 再々発
2011年 11月23日(水)

今日、夫が友人の泌尿器科ドクターと
電話で話していた。

再び1cmの乳頭状の腫瘍ができたということを
知ったときは、さすがに
が~ん!ときた、と。
自分の感情をめったに人に言わない夫にしては
珍しい発言。

元々、壁が腫れている部分があり
その部分のフォローが必要と言われていたが
今回も、その部分が問題だと。

放射線を骨盤にあてろ、と言われているが
そこに飛びやすいんですかね・・・と。


最強で、最良だったGC療法はもう限界で
代わりに、タキソテールという薬に変える
という話とともに
「このまま温存でいってもいいですよね」
とセカンドオピニオンを求めていた。


★タキソテールは、従来の抗がん剤とは作用する場所や
作用のしかたが異なるので、他の抗がん剤が効かなくなった
がんにも有効なうえ、併用による相乗効果が期待できる。
現在、転移・再発乳がんの化学療法や進行した肺がんの
化学療法では、標準的な薬剤の一つになっている。

主な副作用
・足首や手のむくみ
・感染リスクの増加を伴う白血球の減少
・出血リスクの増加を伴う血小板の減少
・髪が薄くなるまたは抜ける
・下痢
・食欲不振
・悪心・嘔吐
・発疹
・末梢神経の炎症またはダメージによる
 手足のしびれ及び、うずき

それほど一般的でない副作用
・口や唇のただれ
・水分貯留による体重増加
・疲労
・筋肉痛
・間質性肺炎

まれな副作用
・深刻なアレルギー反応
・手足の赤み、腫れ及び痛み






ここ2~3日、さすがに様子がおかしい。
怒りっぽいし、いろいろ考えている様子。

そりゃそうだろう
もし私がその立場なら
きっと、頭に「がん」のことがこびり付いて
離れないに違いない。



手術でどんな事態になるかわからないし
術後も、抗がん剤に加えて、放射線治療で
どのくらいの入院日数になるかもわからない
と、さすがにシリアスな顔つきで漏らす。


勤務先には、このこと言うのうっとしいなぁ・・・と
うんざりした表情だった。









手術

2011-11-22 22:51:45 | 手術
2011年 11月22日(火)

今日、大学から電話があり
来週の水曜から入院して
手術することに決まった。

今までやったのは、ファイバーでの手術(TUR)だったが
今回、初めて開腹するという。
腫瘍の壁のところの腫れが問題なのだろう。
今回は、開腹して
膀胱の一部を切除するとのこと。

全身麻酔による手術で
化学治療に加えて
放射線はやったことはないが
今回はやったほうがいい、と言われたとのこと。
入院も1週間の予定だ。



手術の日に、私に絶対来てほしい!と言う。
その日は、私もはずせない重要な仕事が入っているが
「全身麻酔するんや!」
といつになく激しく言う。
全身麻酔と腰椎麻酔の差を、ちゃんと認識していなかったけれど
全麻は、呼吸も止めるんだ!
と改めて思った。


自分がステージⅣのがんということを隠さず
けっこう誰にでも
「ボク、がんなんですわ~」
と言ってきた夫。

いつも飄々(ひょうひょう)としてきた夫だけれど
今日は、さすがに重たいものが伝わる。
安易に慰めるわけにもいかず
かと言って、軽い話題をするわけにもいかず
沈黙が流れる。


膀胱がんは、再発の多いがんで知られるが
何回も再発を繰り返しているうちに
変異して、悪性になるといわれる。




来週の月曜の診察時に、詳しい説明があるようだ。
一緒に行こうか?
と聞いたら
「来たかったら、来たら?」


行こうかな・・・












山陰旅行へ

2011-11-18 23:53:01 | 普通の日々
2011年 11月18日(金)

本当に久しぶりに、夫婦2人だけで旅行に出かけた。
近年夫は、単独で山に行くことが多く
私は友人や娘や母と、あちこち旅行していた。
時には、夫婦で友人の山荘におじゃまさせていただくことも
あったけれど、夫婦2人だけで過ごす旅は
ほとんどなかった。


山陰にとても素晴らしい宿がある。
おいしい、温泉がいい、安い
と3拍子揃っていて、大のお気に入り。
そこで、夫婦で行くことに!

金曜日は、午前の仕事を済ませて
夕食までに、楽々到着。
源泉かけ流しの温泉に入り
夕食は、期待通りすばらしいものだった!

抜群の鮮度の海の幸や
いろいろなお料理、すべてすばらしい。
夫もたいへん喜び、ニコニコ顔。
たくさんのお料理を、すべてたいらげた。
ビールや冷酒もすすんでいた。

翌日は少し観光して、山の麓にあるペンションへ。
ここは前日とうって変わって洋食。
口コミ通り、ここも満足。

連日雨で、とても寒かったが、山のすがすがしい空気に
洗われたような気がした。


旅行中、病気の話題は一切しなかった。
夫は、何事もなかったように
楽しく、おどけて
笑いがあふれていた。









再々発!!

2011-11-16 22:50:47 | 再々発
2011年 11月16日(水)

11月9日に行った検査(CT、膀胱鏡など)の結果を
今日知らされた。

再々発だった!
膀胱の、前とは違うところに10mmのが出来ているとのこと。
そこの膀胱壁が腫れているのが・・・
と言葉をにごす。

左手はずっとしびれているらしいし
頻尿だし
左足の腫れもなくならず
貧血も依然ひどく
病気に関することを、ほとんど言わない夫でも
「体力がもうないねん」
と最近、ちょくちょく言っていた。


それでも「ボクは健康なんや!」
と言い続ける内心はどんなだったのだろう。。。




これからのことは、どんな治療がいいか、大学で検討して
下さっているとのこと。
GC療法はもうせず、別の治療で効き目があるのを
探している、との話だった。

がんばろう!!!






自分を騙す天才?!

2011-11-10 10:52:44 | 普通の日々
2011年 11月10日(木)

先日、驚くことがあった。
医療保険の話をしていて
「なんで医療保険なんか、入らなあかんねん」と夫。
「保険って、万一の時のお守りみたいなものやん」
「お母さんは入ったらえーで。
 でもボクは病気なんかせーへんで。
 がんも治ったし、身体の中にがん細胞ひとつもあらへん。
 健康なんや! だから保険なんか必要ないし、ムダや!」

思わず絶句。。。

誰よりも、ほ、ほ、ほけん ひつようとちゃうん・・・」
と心の中でモゴモゴ言っていた。

頭の中は ?????????????

どぅいう意味だろう
ホントに健康だと思っているのだろうか
ほんとに、ほんとに治ったと思っているのか

いや! ありえない
だって、9月中旬の入院の前には
「ボクはステージ4なんや!」と言っていたはず

どういう気持ちで、こんな発言をしたのか
皆目解らない。

久しぶりに“火星人”発言!



しばらくして、ふと思った。
もしかしたら、彼って
本当に、自分をだますのがうまいのかも。。。
自分を騙し、本当にそのように思い込み
そして、がんを忘れて淡々としているのだろうか。

ん~  わからない
      解らない
        判らない













血小板2万!

2011-11-05 19:07:57 | 闘病
2011年 11月5日(土)

11月に入り、数十年ぶりらしい、暖かい秋が続いている。


6回目の抗がん剤治療を終えて
夫は、ここ数日
「体力が落ちた」
と何回か重ねて言う。

ほとんど体調のことは言わない人だけに
彼の直面している「ふらつき」「動悸」「頻脈」は
相当なものだと思われる。


抗がん剤治療が終わった直後は
血小板がなんと、2万になってしまった!
4万になった、と言って驚いていたのに
今回は2万まで下がった。
このようなことを繰り返していては
再生不良性貧血にでもならないか、と心配になる。

血小板は緩やかに回復してきているようだけれど
7回目の治療は出来るのだろうか。。。

普通の人なら、仕事など到底できないだろう。




「1日も長く、病気のことを考えないで、普通に暮らす」

その決意が、我々家族にもはっきり伝わっている。







膀胱がんについて

2011-11-02 01:10:59 | がん
11月2日(木)

扁平状のがんはタチが悪い
圧倒的に多いのは、がんが膀胱内に突出しているタイプです。
これにも、イクラのように表面がブツブツしたがんが
カリフラワーかイソギンチャクのように突出して茎の部分が細くて
プラプラしているタイプ(乳頭状の有茎性腫瘍)と、
茎が太くて岩のようにガッチリした腫瘍が突出しているタイプ(結節状の広基性腫瘍)があります。

前者の乳頭状の有茎性腫瘍の場合は、悪性度でいうとグレード1~2のがん細胞が中心です。
つまり、悪性度が低いのです。
「見た目にも、一緒に内視鏡で病巣をみた患者さんが、海底のサンゴのようですね」
というほどきれいだといいます。
こういうタイプのがんは、「根が浅く、表在性の場合が多いので、膀胱を摘出しないでも
がんを削り取るだけで治療ができることが多い」のです。

ただし、乳頭状のがんでも、崩れて壊死してきたり、結石のようなものがへばり付いてくると、
茎も太くなってくることが多く、「グレード1より2の細胞が多くなり、3の要素も出てきます」
と鳶巣さんは説明しています。
がんとしての性質が変化していくようなのです。

一方、茎が太くて岩のようにがっちりしたがん、つまり結節状の広基性の膀胱がんになると、
グレード3が中心になります。
つまり、同じように膀胱内に突出したがんでも、悪性度が高く、筋層に浸潤していることが
多いのです。
「筋層浸潤にもいろいろなタイプがあり、ピンポン玉大の内腔突出型のがんが
筋層に食い込んでいることもあれば、頭がつぶれて扁平で深く入っているものもあります。
扁平になったものは、スキルス胃がんと同じでタチが悪いのです」と鳶巣さん。
胃のスキルスがんも、胃壁を這うように急速に広がっていくタチの悪いがんです。

つまり、茎があって飛び出しているタイプはタチがよく、頭がつぶれて扁平になると
タチが悪くなるのです。これは、膀胱がんに限らず内腔に突出するがんに共通した現象だそうです。
したがって、「表在性であっても、フラットなものは意外に根が深いことがあるので、
治療を急がないといけない場合もあるのです」と鳶巣さんは語っています。

そして、膀胱を残して治療した場合、再発が極めて多いのも膀胱がんの特徴です。

[膀胱がんの病期分類]


表在性がんの治療
再発をいかに防ぐかがポイント
膀胱がんの治療は、どこまでがんが食い込んでいるかによって異なります。表のように、膀胱がんはその深さによって国際的にTISからT4にまで分類されています。このうち、膀胱を取らずに治療ができるのは、がんが粘膜下層までにとどまる表在性の場合、つまりT1までです。膀胱がん全体の約7割が表在性のがんですから、膀胱をとらずに治療できる人はかなり多いわけです。

さて、この場合は、尿道から内視鏡(膀胱鏡)を挿入し、病巣部を高周波の電気メスで削るように切除していきます。これが、「経尿道的膀胱腫瘍切除術」(TURBT)という方法です。手術時間は1時間ほどで、3~4日の入院が必要です。これで、がんのほとんどは切除できますが、問題は再発です。「再発しない人のほうが珍しい」といわれるほど、膀胱がんは再発が多いのも特徴なのです。そこで、TURBTとセットで再発の予防が行われます。

[膀胱鏡を用いて行う経尿道的膀胱腫瘍切除術の方法]


[膀胱がんの治療ガイドライン]


再発予防に膀胱内注入療法
再発予防法として、世界的に標準となっているのが、BCGの膀胱内注入療法です。BCGは結核の予防接種に使われることで有名ですが、膀胱がんの場合は、1アンプル(80ミリグラム)を40CCほどの生理食塩水を加えた懸濁液として、全量を膀胱内に注入します。これを週に1回ずつ、6~8回繰り返すのが一般的です。

これは、一種の免疫療法で、がんを殺す効果も再発予防効果も高いことが、すでに世界的に証明されています。TURBTで小さながんの取り残しがあっても、BCGで消すことができるのです。ところが、問題点はいまだ日本では独自のデータがないこともあり、保険適応になっていないことです。日本で、現在認められているのは、抗がん剤の注入療法です。そのため、アドリアシン(一般名アドリアマイシン)やミノマイシン(一般名ミノサイクリン)を膀胱内に注入する方法を行っている施設もあります。経尿道的切除直後に抗がん剤を膀胱内に注入する方法が再発予防の目的で有効であるとされています。

「大量の膀胱がんがあって、削り取ったときに細胞がバラバラになって膀胱内ががん細胞の鹸濁液のような状態になることがあります。こういう場合、削った直後に抗がん剤を入れて、再発予防を期待する考え方です」と鳶巣さん。さらに「経尿道的切除後に長期にわたり抗がん剤を注入する方法については、まだその有効性が確率していません」といいます。やはり長期的にみると多くの事例でBCGの膀胱内注入が、再発予防の世界標準と考えられるのです。

膀胱がんはなぜ再発が多いのか
膀胱を残して治療した場合、膀胱がんはきわめて再発率が高いのが特徴です。「再発しない人のほうが珍しく、よほどおとなしいがんか、1~2センチ以下の小さながん、単発のがんなどに限られる」といいます。

では、なぜ再発しやすいのでしょうか。その原因として、もともとがんができやすい畑なのか、あるいは畑が同じでもがんから種が落ちるのか、が昔から議論されています。現在、優勢なのは種まき説だそうです。

膀胱は尿を溜めたときには大きく膨らみますが、排尿するとペチャンとつぶれて小さくなります。つぶれたときには、膀胱壁の粘膜上皮がお互いにくっつきます。このときに、種がまかれて、がんが発生するのではないかというのです。