毎年この時期になると、東海地方にも日展がやってきます。
赤地に白のお馴染みのポスターを見かけると
今年も、あの「母の像」が見られるかもしれない・・・ひそかに期待し
私はそわそわしてしまうのです。
日展東海展は、愛知県美術館で行われ
日本画、 洋画、 彫刻、 書、 工芸美術の5部門で
今年も約600点あまりが展示されました。
その中に毎年出品され、特選、入選を重ねておられる洋画の「わが母の像」は
今年もあるのだろうか。
前回は頼りなげに車椅子に座っている「母の像」だったが
あの作家のお母様はご健在だろうか・・・
私は遠い知り合いに会いに行くかのように、会場に入りました。
入口から入ったところは、日本画部門です。
襖2枚ほどもある大迫力の入選作品がづらりと並んでいました。
日本画の伝統的な美しさを持った作品から、親しみやすい個性豊かな日本画まで
力作ぞろいで胸おどります。
じっと立ち止まって眺めたり、
すっと通り過ぎようとすると作品から「ちょっと、待って!」
と呼びかけられたような気がして、戻ってみたり(笑)
楽しみながらゆっくり、ゆっくり進みました。
洋画部門にきました。
今年もありました! あの「母の像」です。
ますます年を重ねた姿でも、面影は変わらずすぐわかりました。
それは、リクライニングベッドで少しばかり身を起こし
じっと目を閉じ横たわっている一段と老いた母の姿を描いたものでした。
前回は車椅子だったのに・・・
あ~あ、とうとうベッドになってしまわれたのか・・・
90歳を超したと思われるその姿は
白髪に、シミ、皺も深く、おそらく入れ歯もはずしているだろう口元は
深い老いを感じるものでした。
硬直しているような手足の堅実な描写は、観る側からはとても痛々しく
胸も押しつぶされそうになります。
しかし
母のどんなに小さなところも
決して見逃さないぞ!
決して忘れないぞ!
と、母を見つめる深い愛情が伝わってきて、
感動でしばしそこを離れることができませんでした。
かっては、お元気で、しっかりと意思を示した表情で見つめる和服姿の
「母の像」があり、またおぼつかなくとも立ち姿の「母の像」もありました。
毎年、毎年、老いていく母の姿を追い描きながら特選、入選を重ねられ
その絵は増々すさまじさを増していくように見えます。
「母の像」にまた来年も会えますように・・・
そっと、お母様のお体と作者伊藤寿雄氏のご活躍を祈りました。
出口で日本画部門の「特選」風の森
洋画部門 夢の途中
2枚のハガキを買いもとめました。
小さなハガキの印刷物になってしまうと、色彩もちょっと違います。
質感もなく実物から受けた感動も失せます。
やはり、実物は美しかった!
そう思いながら、美術館を後にしました。
外はまだまだ寒さは厳しい。でも、太陽の光はぐ~んと増してきました。
春は光から・・・ですね。
春へのカウントが始まったな。
そう思う日でした。
この記事の、伊藤寿雄さんの作品をネットで見ました。
「母の像」〜今年の作品も出てました。
あまりにもリアルで、痛々しい感じもします。
しかし、こうして老いて行くのは、現実なのですね!
絵画を見に行くことがない私、とても刺激と感銘を受けました。
機会があったら、実物も見たいですね!
私は毎年、「母の像」を見たくて、日展に通っているところがあります。
そしていつも、いつも老いていきながらモデルになる母の気持ち、母の老いを刻銘に追いながら描く作者の気持ちを想像してしまうのです。
若い美しい女性の肖像画が多数並ぶ中、私には特別の絵で、見た後はしばらく頭から離れません。