RC-NET(レイプクライシス・ネットワーク) BLOG.

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暴力無きところにヤミはない。

2010-09-02 07:16:03 | スタッフ雑感
ちょっと前の話になるのですが、なんとなく思い立って、時間があるときにガテンなバイトでもしたら、この運動不足な日々でそこら辺も解消できるしお財布も潤うし・・・言うことなしや!と、単発のお仕事を紹介している派遣会社に登録に行ってみたんですよ。

派遣の単発バイトって、10代後半から大分やっていた頃があったのですが、
もうその頃はとにかく毎日の生活費を稼ぐ事に必死だったので、いろんな思いはあったけど、「まぁ仕方ない」って思うしかなかったって言うところはあったけど、
その後の派遣法改正やら様々な事件を受けて、派遣会社も変わったんやろなぁーっていう甘すぎる期待がありました。
「暇な日にお小遣いかぜぎ!」って広告の言葉が実践されてるんちゃうか、と。(もちろん、ちゃんと働きたい人の枠とは別に)

昔は、本当に提示される金額も少なくて、そこから手数料だとか安全費(ってなんだ)とか、所得税だとか(ほんとにちゃんと申告してたのかな・・・源泉は貰ったことない)、ユニフォーム代だとかとひかれ、遠くまで行かされるのに交通費も出ず、その日に仕事があるか無いかもわからずただ耐えるのみ。
でも「学歴も資格もない自分はそれでも仕方ない。何もしないより、多少でもお金になれば生活出来る」と諦めというか、自己奮起というか、で、がんばっていた。
でも、心の中に「搾取」という言葉が渦巻いていたのは確かでした。


どんな感じなんかなーと、ちょっと胸躍らせ待ち合わせの場所に行くと、腰の低そうなおじさまが迎えてくれました。
一通り挨拶を終えると、にこやかに、
「とりあえず、社会人として当たり前の行動をしてくれたら大丈夫ですから」とおっしゃる。
はいはい、そうですね、大丈夫です!と、フンフン頷いていると、「例えば」と、

・当日連絡での欠勤は、如何なる場合も解雇要因になります。(病気だろうが、事故だろうが)
・月の内、2回以上指定日以外の休みを取られた場合も、連絡を頂いたとしても解雇要因になります。(病気だろうが、事故だろうが、冠婚葬祭だろうが)
・体調不良だろうがなんだろうが、欠勤遅刻早退は全て、自己都合の甘えです。
・上記の様なことがあった場合は、それまでに働いた給与も、全額は支給されません。
・上記のようなことがあった場合は、次に勤務される方が見つかるまでの損害賠償請求をすることがあります。
・最低賃金レベル以上の給与記載額は、成功報酬だと思ってください。給与を全額受け取れるか否かは、あなたの態度次第です。

他にも数多くの「人道的でない」契約事項をつらつらと語るおじさん(これ以上書くと、場所が特定されちゃいそうなので)
「えぇと、そんな感じで、社会人として、まぁ当たり前ですよね。とまぁ、こんな感じの条件が付きますが、大丈夫ですよね?」と。
その場にいた人々が、ちょっと硬い顔をしながらも「はい、大丈夫です」と頷いているのを横目に、
私は目が点になっていた。

・・・・変わって無さ過ぎる。
え?なんで?っていうくらい、変わってない。いや、悪化してはいないか。派遣労働者を取り巻く状況。


どうにもこうにも体調がすぐれない時なんて、絶対ある!
別に穴あけるつもりで仕事してるわけじゃないけど、それは人として生きてる以上仕方ないことじゃないですか。
事件事故に巻き込まれた時、それは本人だってそんなつもりじゃなくたって起きるし、
それが解雇要因になるなんて意味がわからない。
冠婚葬祭くらいは普通に滞りなく行いたいし、働いた分の給与を全額貰うなんて、言うまでもなく労働者の権利だし、
表だって公開してる給与が実は成功報酬なんですよ・・・とか、にやついていわれたら、その会社の脱税すら疑ってしまう。

「何か質問はありますか?」と言われ、
思わず「あの・・・例えば、仕事中に、生理痛がいきなり酷くなったりして・・・急な貧血とかで倒れたりしたら・・・私は解雇されるんでしょうか・・・?」
と、うつろな目をしながら、妙な心配事を聞いてしまった。これまで生理で貧血になって倒れた経験は持ち合わせていないのだが。

「あぁ、まぁそうですねぇ、自己管理の問題ですから」
といわれ、まだまだうつろな私は思わず、
「では、この仕事をするには・・・ピルとか飲んだ方がいいんでしょうか・・・・いえ、べつに生理痛が酷い方ではないんですが・・・」
と、非常に聞き取りにくい程の声で、伺いを立ててしまった。

すると、おじさまはいきなり厳しい顔になり、
「あなたは、今回登録されるおつもりはない、ということでよろしいのでしょうか?」
と言った。

もう、この時点で私は「無いです」と言ってさっさと帰ればよかったのだが、どういうわけか「暇な日にお小遣い稼ぎ!」の予定が、「ここで働かなければならない」という思いを非常に強く持ち出していたのだ。

そして何故だか、すごく自己否定感に苛まれていた気がする。
生理痛で苦しむことを自己管理が出来ていないといわれたこと、労働者たる自分が、全ての社会生活上の不都合を「自己責任」とされ、「社会人として当たり前のことが出来ていない」というレッテルを貼られてしまうことに。

そして、考えていた、例えば私が、その日どこかでレイプされるようなことがおこったら、私は解雇されないために(生活するために)、仕事に行かなければ断罪されるのだろうか、と。

そして、やはり、いや、そんなことはないよ、と思い、ここでは働かないことにした。

そして最後に、
「いや・・・派遣の仕事をするのにピルを飲むということまでは、考えていなかっただけなんです・・・すみません・・・」
と、もうここまで来ると、我ながら図らずもバカにしていたのではないかと思うのだが、
そう言って席を立った。
この時間にかかった人件費を「賠償請求」されたらどうしようとも思ったが、そんなもん請求されても払うかい!!と、逆に私のこの精神的打撃に対して損害賠償が欲しいくらいだ、と思った。

ただ、申し訳ないな、とも思った。
その場にいた、それでもそこで働くことを決めている人たちに対して、私はすごく失礼なことをしたのではないかと思った。
人には本当にそれぞれの事情がある。
この会社に対して、私は非常に嫌な気持ちになったが、そこにいた他の方々に対してはなんの思いもない。
しかし、私はどうも場所を崩してしまった。

なんだかすごい重い気持ちになって会場を後にしたのだけども、その時後ろから、一人の女の子が駆け寄って来てくれたのだ。

「私もやっぱりやめることにしました」と笑顔で。
まぁ、日銭はすごく大事だし、欲しいんですけど、違うとこ探します。私も、本当は話聞いててすごく嫌だったんだけど、仕方ないんだって思って諦めようとしてました、ありがとうございました。 と、笑顔で言って、じゃあ!と、お互い手を振って別れた。

いやいやいやーーもう、こちらこそありがとう!
本当に、涙が出るほど嬉しい。
あんな支離滅裂な言葉だったけど、私はやっぱり嫌だったのだ。
自分のカラダのことや、外的な要因であれ、自分の事情っていうものが、全て自己責任ですまされてしまって、
自分の問題だろ、と、都合良く使い捨てられることが。すごく嫌だったのだ。
でも、それによって誰かを傷つけたんじゃないか、バカにしたんじゃないか、と思って、すごく気持ちが重かった。

確かに、その場にいるしかできない人だっている。
それに対して私は責める気だとか、断罪する気なんて毛頭ない。でも・・・
やっぱり、そういう場所で虐げられることは、絶対にその場にいる人たちの自己肯定感を下げ続けることに繋がる。
そこで行われているのは、弱者に対するアビューズにすぎない。

選択肢のない環境の中で、人間として搾取され自己肯定感を奪われるということは、
如何なる場合であっても肯定はしたくない。
そこに見え隠れする暴力に、私は全力で抗いたい。というより、離脱したい。手放したい。

いくらそれが、社会人としてなっていないと言われても、その社会そのものを見つめ直したいと思う。
(私が社会人としてどうか、は、また別の話だけど)

暴力のある社会では暴力が生まれ続け、
闇も病みも生まれる。

まず私に出来ることは、とにかく私自身の中の暴力を手放すことだ。それがなかなかムズカシイことでもあるのだけど。

やっぱり、のんびりと生きたい。

暇な日は、暇でいいや、と、思ったのでした。


※今回書いたのは私がたまたまネット上で見つけた会社のことで、他については知らないし、そこがブラックな会社だというだけかもしれない。とにかく全ての派遣会社に対しての言葉ではないということだけは明記しておきます。
また、今後とも派遣労働を始めとしたあらゆる労働問題について、それぞれに改善がなされ、全ての労働者の権利が遵守さる日が来ることを願い、書かせて貰いました。

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