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RC-NET(レイプクライシス・ネットワーク) BLOG.

RC-NET STAFFによる、日常の些細な出来事から、お知らせまでいろいろなぶろぐ。

同意とった?で、いいのかな、という話。

2019-04-17 07:27:43 | スタッフ日記

同意、という言葉は、昨今の日本国内の性暴力イシューにおいて、本当に流行っている。
同意なき性交は性暴力、という当たり前、
そして同意をどのように定義するか、ということなわけですが、
ずっとひっかかっている。

同意が必要なのは、セックス。
要は、セックスの絶対的構成要素が、同意というものであり、
それを反転させることで性暴力になるのかどうか。

同意の有無を通常的に気にするのは、デートDVを始めとした、見知った関係における性暴力であろうと思う。
もちろん、他の被害も不同意問題はあるのだけど、
ちょっと考えてほしい。

あなたは殺人されることに同意しましたか?

あなたは強盗を盗まれることに同意しましたか?

あなたは傷害されることに同意しましたか?

あなたは強姦されることに同意しましたか?

おかしな質問だ。


暴力に関する同意問題がここまで“当たり前”になるのも、性暴力の特徴の一つでしょうね。
「レイプされることに同意しましたか?」と書きましたが、これは現実には「あなたは性交に同意しましたか?」という質問になるでしょう。
何故なら、そもそも不同意であるのがレイプなので、
レイプに同意というのは意味が分からない。
性暴力を「暴力だ」と認める社会では、「レイプに同意」の意味が通らないことを理解されるけど、
基本的にはレイプではなくセックス、と思ってる社会では「セックスか、レイプか」が重要。

性暴力は、セックスではない。

セックスの必要要素である同意についての説明は大変有意義だ。
パワーバランスの違いがないか、ある場合はそこを補う策はあるか、合意を覆す自由はあるか、
私たちはしっかりと合意の取り方を伝えていく必要がある。
はい、いいえの言葉だけではない、コミュニケーションとしてのセックスについて、もっと多様な語りが出てきてほしい。

しかし、やはり言いたいのは、レイプは暴力であるということ。
合意なんか、とろうと思ってない加害者たちがごまんといる。
合意があったと嘘をつく気満々の加害者がほとんどだ。
「合意がなければいけない」のは、多分、本当は、多くの人たちが理解している。
(もちろん、その合意の取り方についての学びはもっと必要)
だが、合意をとろうとも思わない加害者たちには、届かない。
合意が前提なセックスをしようとしているわけではないからだ。

幸せなセックスが拗れたのが性暴力だというわけではない。

僕の強さは君を傷つけるためにあるのではない、とMy Strength campaignをしていたMen can stop rapeは、2011年に「My strength campaignにサヨナラを言う」と宣言。
傍観者、第三者と呼ばれる人たちが介入していかなければ性暴力に関する状況は変わらないので、ということだった。
合意をとろう、という加害者側への呼び掛けは、多くが意味をなさないということだ。

国内の裁判でも、合意がなかった点は認められるが、抗拒不能とまでは言えない、と、合意の有無より、「逃げられたかどうか」がより強い基準になっている。
暴力から逃げられたか。

あなたは殺されることに同意しむしたか?
そしてあなたは殺される際に抗うことが困難なほどの暴行や脅迫を受けましたか?

突然のことに驚いてしまって、なんて言うと、「その間に逃げられたということですね」なんて言われてしまいます。
あまりの恐怖に立ちすくんでしまって、なんて言うと、「拒否は可能だった」と言われてしまう。

暴力であるということが明確であるということ以上に、
拒否したかを問われる。

問題は、同意があるかどうかではないのではないか?
よりよいセックスのためにではなく(それが大切なことを否定したいのではない)、
性をツールにした暴力から当事者たちを守るために、サバイバーにとって、より生きやすい社会のために、
これからの性暴力の話をしたい。


語る権利を当事者の手に。

2018-04-19 12:54:45 | スタッフ日記
岡田です。イラク日報のニュースを見ながら、ふと当時のことを思い出した。
バイト帰りとかによく梅田界隈でイラク派兵反対のデモとか署名活動とかに参加していて、その辺りとの交流が多くあった。
それこそ、高遠さんたちが拉致された件とか、そこまで知らない人ではない感覚で見ていた。
世論というものが如何に恐ろしいものかということについて実感を伴って感じたのもその頃、一連の流れでだった。
特に高遠さんへのバッシングはひどかった。女であること。そして、容姿。それだけで。私が見ているものと、「社会」には大きな壁があると思った。
そしてRC-NETを始めてからは顔出しで活動することが多くなって、メディアに顔写真が載れば概ね2chで無いこと無いことを書かれることになるのだと知った。「こんなブスがレイプされるはずはない。当事者の気持ちを理解させるためにこいつを(きもいけど)レイプしようw」とかいうやつから、
「お前頭悪いな、家族とかが被害にあったとかもあり得るだろ」というお優しい擁護(苦笑)。
同性婚関係でも同様。
私は結構、こうしたエゴサーチが好きで、「見ない方がいい」という声もあるけども、どうしても見てしまう。別にそれに反論したりはしない。ただただ単純に「社会は変わっていない」ことを理解する。

これが、 #MeToo を広がせない社会の構図だと思っている。
「日本では広がらない」と言ってる人たちにはぜひ、 #WeToo より #MeToo 出来る社会を目指して欲しいと感じる。
似通った人たちがあつまって励ましあい本当の社会と向き合わない社会運動より、
とことん孤独の中にいる人たちが、声を出したら信じてもらえる社会をつくってほしい。

また、被害の検証とか、冤罪を防ぐとか、それは司法の仕事であって、私たち市民の仕事ではない。
しかも、現段階で日本の刑法は、性暴力被害を適正に計ることが出来る法律を保持していない。刑法改正への声高まる中、古めかしい規範を振りかざす社会全体の暴力に、今日も当事者たちの声は握りつぶされている。

被害経験を語ることは、全ての人の権利である。
それを否定する権利は誰も有さない。

#MeToo を諦めない。

2018-03-08 14:00:29 | スタッフ日記

日本では #MeToo は早すぎる、ということで、 WeToo Japanというプラットフォーム、というか、団体が設立されたというニュースを見た。

諦めるのが早いのだな、と、正直思ってしまった。

日本で、欧米諸国の様なスピードでムーブメントが起きるとは思いがたい。だけれども、少しずつ、届いて行くはずだと思っていた。声は届く。きっと、どこかで一人悩み、苦しんでいる人に。 #MeToo の「あなたは一人じゃない」というメッセージは、きっと誰かに届く。そういうパワーを持っていると思う。

ムーブメントにならないから、終わりではない。静かに届き続けるのが、当事者の声だろうと思う。

ただ、「ムーブメントを作りたい」人には物足りないのだろう。

今、性犯罪を取り巻く状況はとても政治的なものがある。2020年、再度刑法を改正するか否かが決定する。その為に多くの団体が動いている。RC-NETも、Broken Rainbow Japanという、法改正のためのプロジェクトチームを作って活動を進めている。その為には、多くの人の「声」が必要になる。活動について賛同してくれる、サバイバーや、その他周囲の人等についてだ。だけど、それは…法改正に向けた活動、という中での話であって、そこ、明確にしなきゃいけない。

何故かというと、#MeTooは、サバイバーたちが自らの経験をアウトすることで、どこかにいるサバイバーたちに思いを繋ぐプラットフォームである。サバイバーによる、サバイバーのための。それらが世論を動かす事もある。だけど、あくまでも主体は、サバイバー自体。サバイバーの、立ち上がる選択なのだ。

それをWeと書き換え、当事者以外も含めた社会的活動にするということは、ただ単純に、別物なわけですよ。全然、「新しい団体作りました」という話なのです。別に悪いわけでもなんでもないけど、

「MeTooは日本では早いので」なんて大きなお世話。

私は、 #MeToo を諦めない。


「あなたの魂は強い」、私はそう思う。

2017-11-13 00:40:48 | スタッフ日記
「性暴力被害者の魂は殺されているのよ!」

一人のフェミニストが繰り返し私の隣で喚いていた。

私はとても暗い気持ちになった。
「その、魂殺されたらしい人があなたの隣で仕事してますよ」
そんなこと彼女は考えもせず、もう一言加えた。
「傷ついた心は戻らないのだから」。

いい加減にしてほしいと思った。

私は魂も殺されていて、
傷ついたまま戻らない心を持っていると言うのだろうか。

「私の魂は殺された」そう言った人の気持ちは痛いほどに分かる。
性暴力はその人に対する魂レベルでの攻撃だったのだから。

しかし、私たちの魂は死ななかった。
それどころか、生き延びるために、強くなった。
強く、賢く、生き抜くための心を、身体を持ち堪えさせてくれていた。

回復しない、というイメージを植え付けるべきではない。

私たちは思う。
あんな悪夢を二度と繰り返したくはないと。
私たちは思う。
二度と嫌だと。

どれほどの苦痛であったかを記すための言葉が足りない。
加害者を貶める言葉が浮かんでは消えながら、
私は、自分の苦痛を、時として「死」というワードで記したくなる。
だけれども、本当はそうではないということを知っている。

私は悪くないのだから。
私は何も失ってなどいない。
私が欠けているのではなく、欠けているとしたら加害者なのだ。

だけれども、
私の脳裏に浮かぶ「私が悪い」「私は欠けている」という声に同調する声が聞こえる。

「あなたの魂は死んでいる」と。

性暴力は魂の殺人です。と、自信満々に語る人たち。
あなた方の本当の仕事は、
「性暴力被害にあったからと言って、あなたの魂は死んでいない。それほどに辛い経験を、あなたがたは生き抜いた、本当にパワーのある人たちなんだ」
ということを伝えることではないのですか。

魂(という概念がしっくりくる人ばかりとは限らないけど)すら攻撃の対象となる。
それだけのインパクトを、性暴力の加害は生涯に渡り多くのサバイバーに与える。

魂を殺された、と、今も思いながらいる人がいるならば私は伝えたい。
そう思っているあなたの魂はそこにいて、いまこの時を、あなたと共に生き抜いているということを。
私達は、今、生きているのだということを。

性暴力被害に関する社会の意識/システムの変換を。

2017-06-14 15:44:58 | スタッフ日記

ここ数年、強姦罪改正についてや、ワンストップセンターの設立という事が性暴力に関する話題の中で大きな問題として扱われてきました。

もちろん、それぞれに大切なことです。ただ、それだけが大切な問題ではありません。

今回、詩織さんというサバイバーが、自らの被害経験から現状の日本の性暴力相談に関する状況や警察・司法の劣悪な状況についての訴えをしました。そのことをきっかけに、沢山のことを考えました。

詩織さんを応援する、と多くの人が書いているのを見ながら(もちろん、応援するとうだけではなく、驚く様な侮辱的発言を見る事もありました)、現実的には私たちはそれらを見聞きし、体験してきて、その中でなんとか踏ん張って声をあげて来て、それでもこの社会はあまり変わらなくて、という状況を考えていました。

応援するっていうことはもちろんだけど、一緒に頑張ろうって言いたい。

立ち上がった多くのサバイバーの声を「聞かないことにする社会」に向き合うために。 

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私たちがワンストップセンターに対して抱いている懸念については昨年以下の記事に書きました。

私がワンストップセンター乱立に反対の理由。

ここで、私たちが主に性暴力被害について、社会的に「すぐ出来る」対応として求めたものがありますが、今日はその各項目について、より詳しく書こうと思います。

・既存の相談機関に於いて性暴力被害に関する相談体制を構築する

まず、警察や司法、被害者支援センター、人権相談等公的資金で運営されている機関の相談事業による二次的な加害が多すぎます。警察による被害届の受理に関する状況や事情聴取の方法、現場検証の方法にも依然として被害感情への理解が欠如した実施の現状があります。単に相談を受けるということについても、必要となる説明すらせずに断定的な物言いをしたり、出来るはずの同行や情報提供を省いたり、被害にあった人のことを一瞬でも考えれば決してするはずが無い様な相談の実態は多くの相談事例から枚挙に暇が有りません。

そうした中で、研修といえば「当事者を呼んで話しを聞いた」「性暴力についての研修を1〜2時間受けた」程度のことでOK、実質的により具体的な学びやスキルが必要である性暴力サバイバーへの対応について明確に研修を受けたという事例についてはほとんど聞いたことがありません。そもそも、各機関に於いて性暴力被害相談の体制に関わるマニュアルがない、という状態は異常です。

明確に対応をすべき場所で、自らのマニュアルも十分に無い状態で相談を受けるということは、怠慢という他ありません。

・医師会を通じて、性暴力被害に関わる証拠保全についての通達を出す

ワンストップセンターに行けばいいように、と国は言うかもしれません。しかし、各地のワンストップセンターは全ての国民にとってアクセスがいい場所にあるのでしょうか。医療機関との連携、と言っても、その連携した病院は、全ての被害者の身近にある病院でしょうか。そして、その病院の在処は、果たして誰が教えてくれるのでしょうか。

どの病院に行ったとしても、最低限の治療を受けることが出来、また性暴力についての想定をしていただける、結果としてその場で治療や証拠保全に関する対応が受けられるようにならなければいけません。これについては、国、医師会の通知、通達により多くの病院が対応をする可能性が出てくるのではないでしょうか?

・レイプキット使用等、証拠保全に関わる資金を全国一律で助成する

性暴力に関する証拠保全に関しては、被害にあったことを訴える当事者が負担すべきものではありませんし、各医院が負担すべきものでもありません。これらを全国各地の医療機関に配置する為の予算についてを国で捻出すべきです。

ハコ物を作りそう知識の無い相談員を量産することにお金を使い続けることよりも、具体的な施作に予算を使って下さい。 

・民間の“多様な”性暴力被害に関する支援事業に助成する

性暴力被害にあうという状況も、その人たちの属性もそれぞれです。都市部に住む人、地方に住む人、日本語を使う人、日本語を使わない人、大人、子ども、女性、男性、トランスジェンダー、精神疾患や知的障害、また身体障害を持っている人、本当に様々ですし、また、そのそれぞれの人たちに対して、提供するべき情報は変わる可能性があります。

こうした事柄について、より特化して専門性を持った相談支援の実践を行えるのは民間の方が大きな可能性を持っています。また、そうしたそれぞれの属性、様々な状況について、今後より広く調査研究を推進していく必要があります。

これらについて、国から助成があるべきです。 

・各都道府県での被害者支援事業を一括で取りまとめせず、国内全域にまたがり各都道府県での支援に関わるマップ作成を行い、サバイバーに対してどのような支援があるのか選択肢を示す

○○県なら○○へ、というような、一括でのワンストップ機能には限界があります。例えば、被害直後ならどこなのか、ある程度時間が経ってからの相談はどこなのか、カウンセリングなら、自助グループはどこにあるのか、サバイバーには多くの選択肢が必要です。サバイバーの人生は点ではなく、連続性のあるものだからです。

医療・法律等で困る事もあるでしょう、また、就労や就学で困ることも、親族・パートナー・友人関係等で悩みを抱えることもあります。電話相談をしたら「うちはそういうことは聞かない」と電話を切られたということもあります。ここは何の相談を聞けて、どういった情報提供が出来て、どういう人が対象なのかを明確にした全国的なリストは絶対的に必要なものです。


 

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