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ざっきばやしはなあるき  

雑記林花或木 Since 2005-01-01 
美術とか映画とかなんとなくぶろぐ 

肉筆浮世絵展

2006-11-05 23:59:36 | 美術[な]
「江戸の誘惑」ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展@江戸東京博物館

 スペースインベーダーみたいな江戸東京博物館に浮世絵を見に行った。版画じゃなく、肉筆は、わしら貧乏人には手が出ない金持ちの発注品だそうで、それだけ貴重なものだ。ボストン美術館にはそんな肉筆浮世絵が700点も眠っていたようだ。良くぞご無事で、といったところだ。こういうものを守るためにも核戦争などしてはいけない、と、余計なことを思った。

・鳥文斎栄之 「隅田川渡舟図」・・・川を流れる小舟と乗客が、水墨画のような単色で描かれていながら、2人の遊女だけが色鮮やかに彩色されている。そこだけにスポットライトが当たっているかのようで印象的である。

・葛飾北斎「鏡面美人図」・・・立って髪を直している遊女、引き出しに立てかけた鏡にその顔が写っているという風変わりな構図。その姿を斜め後ろから見たら、鏡の中の顔は見えないはずだが、イメージとしては面白い。

・葛飾北斎「鳳凰図屏風」・・・極彩色の鳳凰。迫力もあるけれど、なんか目が妖しげで、着飾った遊女が変身したかのように感じた。

・葛飾北斎「提灯絵 龍虎」「提灯絵 龍蛇」・・・ちょうちんから剥がして保存されていたものを、ボストン美術館の人たちが再度、ちょうちんの形に復元したという逸品。ちょうちんはスチロールみたいな、なんだかそんな材質で作ってある。正確な形を出すまで6か月かかったとか。ダークサイドな雰囲気の色合いで渋い。

・葛飾応為「三曲合奏図」・・・北斎の娘。琴、三味線、胡弓を弾く遊女3人が向き合っている絵。黒い着物で後ろ向きで琴を弾く女、両手の指だけが琴の上を舞っている。胡弓を弾く女はこれでもかと首を横に傾けていて印象的。琴を弾く女はいたって普通だが、指がやたらと長い。3人3様の動きのある姿が面白い。

・鳥文斎栄之「見立三酸図」・・・大きな瓶の周りで3人の美女が楽しそうに世間話をしている。3人の美女とは、楊貴妃と小野小町と花魁。クレオパトラは非番らしい。優雅な花魁と楊貴妃に差をつけられたチビ小町が、団扇を振り回して「あたしゃもすこし背が欲しい」と騒いでいる図。と思ったら団扇を持っているのは楊貴妃の手か? なんのこっちゃ。

・鳥文斎栄之「象の綱」・・・春画である(^o^)。春画と言っても、風流如意袋まるだしで真っ最中の絵ではなく、本を読む遊女の後ろから小男がひょろひょろと着物の裾に手を伸ばし始めた図で、細密で深い色合いがとても綺麗だった。

・懐月堂(長陽堂)安知「縁台美人図」・・・縁台に座る遊女が手紙らしきものを口にくわえている。さわやかな青が引き立つ着物は「吾妻」などのでかい文字が書いてある粋な図案。その着物の輪郭が、浮世絵とは思えぬ厚みを持って描かれていてすごくいい。象形文字に色をつけたような感じがした。

 浮世絵を見た後は、荒木経惟「東京人生」写真展も見た。モノクロの写真が多かった。古い東京のどこか懐かしい写真や、洟垂れ坊主の写真。カラー写真では、着物を着てスイカを喰らう女がよかった。着物でしゃがみ込んだ女の足元には無残に割れたスイカが転がっている。女はスイカの切れ端を食いながらカメラを見つめている。なんかエロい。

 でかいペンタックスを担いで街中を歩きながらバシバシ撮影している荒木の映像が流れていた。「もうそのくらいにしとけよ」と言いたくなるくらいバシバシ撮っていた。早足でワシワシ歩いてはバシバシ撮っている。

 それからあのだだっぴろい常設展示場を徘徊していたら、時間なんぞあっというまに過ぎて行くのであった。
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日曜美術館30年展

2006-09-09 22:51:51 | 美術[な]
 日曜美術館30年展@東京藝術大学美術館

・黒田清輝 「読書」
・佐伯祐三 「ガス灯と広告」
・藤島武二 「黒扇」
・上村松園 「花がたみ」
・横山操 「雪富士」
・高島野十郎 「からすうり」
・鏑木清方 「嫁ぐ人」
・鏑木清方 「曲亭馬琴」・・・行灯に張り付くカマドウマを見つけてギョッと感激。

 芸祭で活気あふれる東京藝術大学、初日とはいえ、とりたてて混雑することもなく、ゆったりとマイペースで見て歩けた。会場内に、10分程度の番組のビデオ上映コーナーが6箇所あるので、強制的に休憩しながら見て回ればそれほど疲れない。そのビデオで紹介された作品が実際に展示してあるので、ビデオを見てから作品を見ればなお面白い。ビデオでは生前の画家や作家、漫画家などの姿を見ることもできて興味深い。期待通りなかなか見ごたえのある展覧会だった。ふと周りを見渡すと、客の年齢層がう~~~んと高い気がする展覧会でもあった。

 写真は、魔が差して買ってしまった、佐伯祐三「ガス灯と広告」のブックカバー。これはヤバい。おまけに使い込んで汚れても気づかないような色合いだし・・・。
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日本×画展

2006-07-31 22:28:06 | 美術[な]
 にほん×ガテン、横浜美術館にて、9月20日まで開催。藤井雷、松井冬子、しりあがり寿、中村ケンゴ、小瀬村真美、中上清の6人の作品を、横浜美術館所蔵の日本画と関連付けた展示をするという、一風変わった試みということで、まあどうなんでしょう。

 インパクトの強いのは、しりあがり寿のデカい空間。四方の壁も床も全て白い紙で覆って、なんか雪でできた巨大かまくらの中みたいな雰囲気に圧倒された。描いてあるのは「マンガ」だけどホントは天井部分も紙で覆いたかったんじゃなかろうかと、勝手に想像してみる。塗料だか糊だかシンナーだか、なんか酔いそうな臭いもした。そゆ意味でも危険な作品である。

 藤井雷の絵手紙。幅20センチくらいの絵が延々とクネクネと展示されている。まだまだ続いて、どんどん伸びていくらしい。

 松井冬子のちょっと精神的にヤバ目な作品、題名の付け方なんか共感を覚えるけど、意味不明だったりして・・・それにしてもやたら美人なんですけど。

 中村ケンゴの「ふきだし」模様、「間取り」模様、「Re:」模様など、日常生活でよく出会う形を組み合わせたコンポジション作品が面白い。

 小瀬村真美の微妙に動く映像作品、暗がりの中で畳の台に腰を下ろして、なんとなく動く映像を見ているとなんとなく落ち着く。

 中上清の微妙な模様のようなものが、幻想的な太陽の光に見え、ものすごく広大で深遠な宇宙を感じさせる。

 所蔵作品との組み合わせがうまくいっているかどうかは疑問だけど、見ごたえはあった。どうでもいいけど静岡県生まれが中上清、しりあがり寿、松井冬子の3人いる。
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