九州大学ワンダーフォーゲル部

2016年冬に作りました。九州大学ワンダーフォーゲル部公式のブログです。部活動の内容を紹介していきます。

第一三次背振山全山縦走

2016-11-28 01:23:03 | 個人活動(山)
荷上げ日:2016年11月13日
縦走日:2016年11月20〜21日
参加者:馬渡、光岡



 馬渡も光岡も、過去2度チャレンジし達成できなかった脊振山全山縦走。去年は雨のため中止、今年の春は始終雨の中強行突破した結果、三瀬峠で断念。三度目の正直、因縁の脊振山、果たして達成なるか。

 荷上げは縦走の1週間前。馬渡は福岡マラソンの後、光岡はアルバイトの後二人で行く予定だったが、馬渡は「マラソンを舐めていた」らしく、疲労で行けなくなったので、光岡一人で行くことに。そのかわり荷下げはよろしく!寝袋、食器、なくなりかけのEPIガスをカバンに詰め、途中で馬渡の家で寝袋と食器を回収して雷山避難小屋へ。食料は気分でスパゲッティー、α米、水(2L×2)を購入。ミートソースに外れなし。α米はモンベルで購入し、そこらのスーパーで買った「ちょっと雑炊」と一緒に食べる予定。水は、春より秋の方が水飲まないかなと思い、調理用と合わせて一人2L。避難小屋の九大ワンゲルの荷物置きスペースは定着してきた。ただ、いつから置いてあるかわからない未開封の2Lペットボトルの水があるのはきになる。

 ここ最近の脊振山全山縦走では、上原田公園で前泊が恒例となっているようだが、今年の春にそこで泊まった時は、臭い、うるさい、明るいで環境としてよくなかった。第四次の記録を見ると縦走当日の始発で原田駅に集まって縦走成功させた、という記録もあり、しっかり家で寝たかったのもありで、前泊はしなかった。

 縦走の1日目、始発で原田駅に集合、のはずが、光岡が寝坊。結局原田駅から歩き始めたのは40分遅れの7時半。11月の日照時間が短いこの頃でも、もうすっかり明るくなってしまった。天気は曇り。雨がふり出さないことを(今の所は)切に願いながら歩き出す。
7:30 原田駅出発
8:10 基山麓の水場
 水を補給。それぞれ3Lの水で歩き始める。
 前回失敗した反省の一つに、夜暗くなってから歩くスピードが一気に落ち、さらに迷いやすくなった、ということがある。現に、直接の失敗の原因は金山から下山するときのルートがなく、暗くなってさらに道に復帰できなかった、というところにある。さらに、知らない道を懐中電灯を頼りに歩くことは相当程度の恐怖を伴う。ということで今回は、明るいうちに少しでも距離を稼ぐことを目指した。特に、基山から脊振山までは0.5km間隔に表示がありいい目標となるので、「とりあえず背振まで」を目標に急いだ。

8:35 基山山頂
 半年前に歩いただけの道だが、道はほぼ完璧に覚えていた。原田駅から三瀬峠まで前回迷ってタイムロスしたところも迷わず、道に不安を覚えることなくズカズカ進めたのも良かった。さらに、基山や九千部山など山頂を踏まずに縦走できるところもあり、前回登ったので今回は飛ばしたのも、行動時間のカットにつながった。

 基山から九千部山までアルファルトの道が多い。基山から先は紅葉が綺麗だった。峠は2つあるが、休憩回数も減らすため大峠のみで5分休憩をとった。柿の原峠の手前、アスファルトの道から山道になるところは、木が倒れ道はかなり荒れていて歩きにくかった。少し遠回りでもアスファルトの方が快適に歩けるかもしれない。

11:11 九千部山
 もし山頂まで行くなら、山頂からすぐに降りようとせず一旦車道に戻るべき。下山道が多いので間違える可能性あり。
時間不明 七曲峠 10分休憩
 お腹すいた。お菓子ボリボリ。
 どこか忘れたが、馬渡が先頭を歩いている時に登山道にいた巨大な蛇を踏みそうになる。ボーと歩いていたらいつの間にか蛇の射程圏内にいるかもしれないので、最低限の注意は必要。馬渡曰く「ここ最近でもっとも驚いた」ちなみに光岡は、その蛇に驚く馬渡に驚きたじろいだ。

13:50 蛤岳 10分休憩
 蛤水道から左折した後、山頂まで0.6kmの激しい登りに備えよ。

15:00 脊振山 15分休憩
 脊振山に着く前に柿ピーをたくさん頬張り、喉を乾かせて脊振山にある自動販売機にいくモチベーションを高める。私は柿ピーをペットボトルに入れで、サブザックの横のポケットに入れている。ペットボトルだと柿ピーが丁度いい量出てくるので、登山しながらも食べれておすすめ。休憩回数を減らしたり時間を短くすることにつながると思っている。
 馬渡は前回の反省として「脊振山の自動販売機で炭酸500mlを買って飲みきれなかったので、今回は絶対に買わない」と縦走序盤に明言。見事にフラグを回収してくれスコールを購入。ちなみに光岡もスコール。やっぱ炭酸ないとやっていけない。自動販売機は縦走中の数少ないオアシス。

時間不明 柏原峠 5分休憩
 ようやく最初の目標、脊振山をクリア。柏原峠からの道は、岩がゴツゴツしてて早く歩けないし、金山まで地味に長いので好きではない。この日は特に、ここらから少し雨が降り出し、稜線上の道なので風も強買った。11月ということもあり暗くなるのも早い。金山に着く前に霧と木で目を凝らさないと道が見えないようになり、なんともこの世の果てのような薄暗い中黙々と歩いた。今から振り返っても不気味さと怖さが蘇る。
17:50 金山 5分休憩
 すっかり真っ暗になってしまった。ここでヘットライト。
 金山山頂に行くなら、ここも九千部山と同様、面倒でも一旦手前の縦走路に引き返した方が良い。前回はこの先に進んでしまい、道に迷って1時間以上、大変だった。
 三瀬山の手前が鞍部になっていて道がわかりにくかった。ここで十数分ロスした。金山から三瀬峠に下るだけのはずだが、何度か小さな丘のような登り坂がある。
19:30 三瀬峠 10分休憩
 ここから井原山までの登山道が工事中になっているのが問題。なんでも太陽光パネルを作るらしい。道は通行止になっているし、仮に強行突破しようとしても途中で道がなくなっている。三瀬峠から佐賀県側に道路をほんの少し降りたところから道路経由の迂回路がある。迂回路に入って20分ほど車道を歩いて橋を越えてすぐに右に曲がると井原山への登山口があるが、とてもわかりにくいので、「ヤマップ」などのGPS付きアプリを使用することをおすすめする。実際、ヤマップは全山縦走において、どこでも大いに役立った。特に迷った時にはなくてはならないアイテムかもしれない。地図をあらかじめダウンロードしておこう。
 そして新村開拓の登山口から井原山を目指すのだが、この道が荒れ放題。今回の縦走においてもっとも恐怖を覚えた道。テープは随所にあるものの、そのテープを追わないとすぐに道に迷うそうな谷の道。足元も悪く、川が流れいているので浸水する可能性もあり、ここだけは登山靴だったらと思った。ちなみに光岡はスニーカーで、馬渡は福岡マラソンから完全回復していないため登山靴。難易度が高い道なので、夜になりそうな場合は特に、夜歩行を十分練習してから望みたい道ではある。もしくは下見も効果的かもしれない。コースタイムにして30分で比較的歩きやすい縦走路に戻れる。
 井原山手前の登山道にはみ出した笹薮がやや邪魔。水滴がついていると、先頭を歩く人はズボンがぐしょぐしょに濡れる。
21:15 井原山 10分休憩
 糸島市の夜景が綺麗。家に帰りたい。ここから雷山までは知った道。ある程度安心。しかし雷山までが地味に長い。その間に光岡がゾンビになり、馬渡は幻覚を見る。道を知っているという安堵からか体の力が抜け、一歩ごとに肩が大きく左右に揺れるようになる。それがゾンビの歩き方になる。やってみればわかる。馬渡は一度蛇を踏みそうになったことから、とぐろを巻いた木の枝が蛇に見えて驚くようになってしまったらしい。

22:20 雷山 5分休憩
 一刻も早く小屋で濡れた靴を脱いで大の字に寝そべりたい。

22:30 雷山避難小屋 到着
 夜は小屋を見つけにくい。少し遠回りになるが、雷山の激坂を降りても当て感で小屋にショートカットせずに道に忠実に歩き、看板から曲がるのが、小屋まで迷わないコツ。スパゲッティーを食べて24時頃就寝。予定より早く寝れてよかった。



縦走2日目
5:15 起床
 朝ごはんはα米。
6:30 出発
 ここからは全く初めて通るコース。迷うところもいくつかあった。雷山から激坂を降りて林道出合から先は、林業のため木が倒されているところがあり、長野峠に着く前にテープを見失って道に迷ってしまった。というか、林業用のテープと登山者用のテープの見分けがつかなかった。結局ヤマップのGPSを頼りに崖を降りてなんとか車道に出られた。この林業用テープは2日目で最後の山までつきまとう問題だった。林業用は伐採する木に一時的にマークをつけておくためのもので、一般に木を一周するようにつけられている。ということは、登山のためにつけられているテープを見抜くコツは、枝にちょこんとつけられているテープを見つけることだ。特に雷山から羽金山を通って荒川岳までの道のりにおいては小さくて濃い赤テープが最も信頼できた。ピンクで木に巻き付けてあるテープは要注意だ。長野峠から少しだけ登ったところでも迷って、何度か道を引き返した。羽金山と長野峠の中間地点にある地図上の不明瞭というところでは、特に迷いそうなところはなかった。

9:00 羽金山 10分休憩
 鉄塔しかない。山頂には近づけないが、まあそれで十分。
 羽金山から20分ほど歩いた874mピーク付近でも迷った。地形図とにらめっこしながら、登り坂なのか降り坂なのかよく見ておくことが必要かもしれない。ここらの道は特に登山客に使われておらず(おそらく背振縦走する人がメイン)道がわかりにくいところもある。1日目にましてルートファインディング力が試される。荒川峠手前の地図上で不明瞭のところは確かに迷いやすそうだった。大きな迷いはなかったものの、テープを見つけてから動き出さないと確実に道を間違えるだろうな、というところはいくつもあった。羽金山から荒川峠まで休憩なしで迷いつつ行ったので、体感的には長かった。とにかく、この道で精神力を使うために前日小屋ではしっかり休んでおいてよかった。

11:04 荒川峠 10分休憩
 あと山3つ。ようやくゴールが見えてきた。女岳までの記憶があまりない。無心で登った。そう、無心になることは大事。ここら辺から偽ピークが多いというかつてのレポートをいくつか読んだ。あれが山頂だろうか、もう山頂に着くだろう、という考え方は捨てた方がいいのかもしれない。というか、捨てざるにはいられないだろう。大自然が作り出す道のアップダウンに対して人間は何もできない。ただ下を見て歩き通すのみである。現実をありのままに受け入れ、着実に、そして無心で足を動かすことが成功の鍵の一つかもしれない。自在に無心になれるようになれなら本物だ。僕は、個人的にリズムに乗せて足を動かすのが好きだ。特にテンポの速い曲(今2016年現在では流行りのPPAPなど)を口ずさみながら登ると自然と足も進む。これも一種の無心になる方法だと捉えている。とにかく、ヒョヒョイと女岳についた。
 そう、唯一覚えていることは、馬渡が先頭で歩いてかなり飛ばしたので、女岳山頂で馬渡の目は死にかけだった。

11:50 女岳 10分休憩
 荒谷峠からは浮嶽までは登山道にいくつか選択肢がある。車道を歩いていたら途中で浮嶽はこちら、と山道を勧める看板があるが一旦それを無視して車道経由の登山道を選んだら、途中でその道と合流できた。車道の途中で林業のため一部崖を切り崩して人が通れるようになっていたからである。
 浮嶽までは遠くから見ても、地形図を見てもわかるように単独峰で、山頂付近は登りくだり共に急である。これは十坊山も同じ。あと山1つとか2つとか考えながらがむしゃらに登るしかない。
13:00 浮嶽 5分休憩
 山頂から海が見える。あと一つ!白木峠まで猛スピードで降る。ただ早くゴールにつきたい一心だ。女岳の前からそうだが杉林ばかりで景色が変わらないので飽きる。

14:30 十坊山
 景色最高。ゴールにふさわしい山。大きな岩の上でゴリラポーズ。

15:45 まむし温泉
 まむし温泉は田舎の小さな銭湯かと思いきや、野菜も売っているような想像より大きな施設。露天風呂もいくつかあった。まさに天国。頼めば駅まで送迎バスを出してくれる。

 
脊振山全山縦走をする前に、心構え
 歩いているうちに、足の裏は一歩ことに痛くなり、肩と腰はバックで擦れ、精神状態も不安定になることもあります。達成したからといって、賞がもらえるというわけでもありません。しかし、全山縦走はヤンゲラーとして一つの関門のようなものと私は捉えています。可能な範囲でトライして欲しい、またその価値があるものだと思っています。アイディア次第では先人の記録を更新するような素晴らしい縦走にできるはずです。脊振山全山縦走は本来2泊3日ほどかける行程ですが、1日でやり遂げる人もいるそうです。逆コースもやってみたいですし、九州自然歩道はどのように九州を一周しているのか興味もわいてきました。何があるかわからない縦走、だから面白いです。

縦走するための工夫、アドバイス
<気候、服装面>
 雨は今回少し降ったが本降りにはならなかった。前回のように始終雨が降っていると足の裏はただでさえ痛くなるのに、雨で靴の中はぐちょぐちょになってそれを促進する。やはり大雨の中はやめた方がいい。
 11月という気温は最適だったように感じる。停まると少し肌寒い、がほぼずっと運動しているので夜以外は半袖で十分だった。だが、稜線上を歩くようなところもあるので、フリースのような羽織れるものと、ウィンドブレーカーと兼ねて雨具は必須。小屋泊は思っていたよりも寒くはなかった。冬用の寝袋があれば、薄着を着るだけで眠れた。寝る時用に持って行ったダウンは結局使わなかった。ただ寝袋なしでは不安。11月なら少なくとも寝袋は事前に荷揚げしておくべき。
 しかし11月の悪いところは、上にも書いたように日照時間が短いことだ。夜の行動は昼に比べて明らかに遅くなる。また迷いやすくなる。昼が短いことは圧倒的に不利になる。金山の前のあの不気味な世界や、三瀬峠に降りる前の道迷いも、暗くなるのが遅ければ防げたかもしれない。そういう意味では、11月より4~5月の方が向いているかもしれない。もし秋にするのであれば、出発時間を早めるか、できるだけ昼の間に距離を稼いでおくことだ。「背振までどれだけ早くいけるかが勝負」
 水は涼しいので二日目は一人2Lでよかったが、もっと暑くなればその倍くらいあった方が安心かもしれない。一日目は、僕らは3L用意して結局全部飲み切れなかったが、これも雨がやや降って湿度が高かったからあまり喉が乾かなかった体。人によっては5Lくらい持って行った方がいいかも。
<登山において>
 今回はヤマップを地図代わりとして持って行ったが、やはりいざという時にGPSはありがたい。もちろん、携帯の充電が切れたら使えないし、携帯のGPSは時に間違えることもあるが、それでも、地図の選択肢として一つ持っておきたい。特に山頂付近の細かい登山道が山と高原の地図には載っていない。
 これも上に書いたが、テープには2種類あることを覚えておきたい。林業用のテープをたどっていかないように、二通り道が考えられたら、立ち止まって方位を確かめて進むといいかも。
<計画において>
 今回のように上原田公園で必ずしも前泊しなくても縦走できた。むしろ家でしっかり寝た方が良いのかもしれない。ただこの場合、くれぐれも僕のように朝寝坊しないように。
 人数は2〜3人が最適のように思える。5〜6人の場合、休憩が毎回長くなる傾向がある。少人数だとペースも合わせやすく、休憩の回数も減らしやすい。これは成功できた要因の一つ。
<総括>
 ここまで長々と書いたことを読んでくれてありがとう。私は文章作成能力が低いので色々と表現を間違えっているかもしれません。どうぞご勘弁を。これから全山縦走される皆さん。かつて成し遂げてきた方のレポートをよく読んで、怪我のなきよう頑張ってください!応援しています!