不条理み○きー

当面、きまぐれ一言法師です

冗長の「美学」?

2008年07月22日 14時14分14秒 | Book

あまりにも間が空くと、アカウント無くなるという噂なので、ちょい更新。

「深海のYrr」

久方のブックレビュー、だけれど、印象はあまり良くない。
帯広告の「ドイツではあの【ダヴィンチ・コード】を抜いてベストセラー」という文言に踊らされて買った為に、あまりに期待が大きかったことも、印象が悪くなった一因だと思う。

つーか、読後に、ああ、なるほど「ドイツ」だから「ベストセラー」だったのか、とも思った訳なのだけれど。

まあ、とまれ、読み始めた。
以下、ネタバレ無しですが、先入観持ちたくない人は、読み飛ばしてください。


まず、基本的に、洋物は翻訳の善し悪しによって印象が変わる。
中には、ラヴクラフトみたいにぐだぐだの翻訳が逆に味になっている例もあるが(って、翻訳者失礼^^;)、まあ、その意味では、一応ハードSF風で科学解説の多い本書の訳にも、若干難があった事は否めない。

しかし、その翻訳の難を超えて気になったのが、物語が冗長でゆったりと始まることである。
個人的に、物語の始まりがだるい奴は嫌いである。
だが、「冗長」に書く狙いとしては、ちょいと読者をじらす、と言う効果と、後の伏線という部分があるのは確かである。

実際、最初のうちは、「冗長」な中にぱらぱらと散りばめられた「謎」が気になって、その「冗長」さを我慢して先に読み進んでいたのだから。

しかし、物語が進むにつれ、「あれ?あの場面、不要ぢゃね?」と思える所がちょくちょく出てくる。
どうかすると、ほんとに関係のないことをぐだぐだと書いてあったのでは?という印象を受けた箇所まである。

中盤以降、事態が急転し始めると、流石に冗長な部分は少なくなるが、それでもたまに、いや、ここでそこまでの描写はいらんだろう、と思える所がちょいちょい出てきて鼻につく。
その時に気付いた。
「あああ、この作家、こういう書き方が好きなのね」と。

おいら自身、この記事も含めて、回りくどく書くことが好きなので、ちょいと気持ちは分かるのだけれど、折角、良いテンポで物語が進んでいるのに、いきなりメインとは関係ないと思われる話をたらたらとされると、なんだか急に水を差された感じがして、最終的に、今ひとつ、物語に乗れないまま、読み終えてしまった。

しかも、物語自身も、後半、核心が見えて佳境に入るにつれ、ちょいとチープになっていく。
雰囲気、B級海洋ホラーという感じで、見たこと有るシーンが満載である。
なのに、最後の最後は、なんだか神秘主義というか宗教的というか、作者の思い入れだけの文章の羅列で締めくくられてしまい、そりゃねーだろ感がたっぷりなのである。

と言うわけで、着想も舞台設定も悪くないし、冗長だけれど、とっかかりは悪くなかったのに、読み終わってがっかりの本でした。

よって、星2つ  ★★☆☆☆


・・・実は、

「冗長」で「ぐだぐだ」になるところに腹が立ったのは、ちょいと近親憎悪だったのかもとおもったり



深海のYrr 上 (1) (ハヤカワ文庫 NV シ 25-1)
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