不条理み○きー

当面、きまぐれ一言法師です

「絆」

2005年04月02日 01時13分40秒 | Boyakky

 「キミに何が解る!」
 受話器に向かって怒鳴った瞬間、俺の全身を後悔の念が包み込んだ。

 突然の仕事、しかも、誰かの遣り残した仕事の手伝いを、急に命じられた。
 どう見ても、「尻拭い」
 なんの魅力も無い仕事。
 しかも、担当部署も仕事の役割も違う俺に、この仕事を振られる筋合いは無い。
 当然、即座に断ったのだが・・・。

 「君以外、任せられる奴がいないんだ。」
 乗せられ易い性格が災いした。 

 だが、現実は、予想以上に厳しかった。

 慌しい出張。
 山積みの問題。
 繰り返される会議。
 飛び交う怒号。

 三日で終わるはずの出張が、1週間、さらにまた1週間と延びる。
 ビジネスホテル暮らしも、まもなくひと月になろうとしていた。

 キミとはマメにメールでやり取りしていて、
「大丈夫、元気だよ。」
とは書いていたが、やはりあって話したい気持ちは、どんどん大きくなっていた。

 そして、夜中は当に過ぎていて、キミがぐっすり眠っているのは知っていたのだが。
 俺は、電話をかけたのだ。
 
「なーに?どうしたの?」
 少し、寝ぼけた声のキミ。
 ちょっと、目頭が熱くなる。
「いや、ちょっとね。」
 そう、ちょっとだけ、世間話をするつもりだった。
 しかし、キミの声を聞いた俺は、堰を切ったように話し出し、仕事の愚痴を延々とこぼし始めていた。
 そこに、キミの一言。

「気にしないほうが、いいよ。」

 思えば、俺を気遣っていった言葉。
 俺に、無理をするな、あなたの所為ではないという意味でかけた言葉。
 しかし、俺は一瞬、俺の全てを否定された気がしたんだ。
 ・・・気が付いた時には、怒鳴っていた。

 ああ、どうしよう。
 これは、俺の真意ではないんだ。
 俺は、電話の切れる音を予想していた。
 が、しかし、聞こえてきたのは・・・。

 「ルー。ルルルー。ルルルー、ルルルー、ルル ルールー
  ルールー。ルルルー。ルルルー、ルルルー、ルル ルールー
  ルールールー、ルールールー、ルールー、ルルルルー」

 キミの歌。
 あの日、あのホテルのバーで聞いた、あの歌。

 「Moonlight Serenade」

 俺は、何だか涙が出た。
 そして、気づくと一緒にハミングしていた。

 何度か声を合わせて歌った後、キミがちょっと眠そうな声でいった。
「たのしいねぇ。」
 俺も、うなづきながらいう。
「うん、楽しい夜だよ。」

 そして、そっと涙をふいた。
 電話でよかったよ。

「・・・大丈夫?」
「うん、大丈夫、頑張れる。」
「じゃ、また、メールしてね。」
「解った。おやすみ。そして、ありがとう。」
「おやすみ、そして、愛してる。」

 キミが、電話を切るのを確認して、俺は、そっと受話器を置いた。
 キミの歌声が聞こえている間、この窓の無い「ビジネスホテル」で、あの日の「満月」が垣間見えたよ。

 よし、明日は頑張る。
 何が何でも、終わらせて見せるぞ。
 
 そして、キミの元に帰るんだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
 昨日、今日、忙しかったとは言え、皆さんが「楽しそう」な事をやっているのに、参加もせず米せずで「斜」に構えて
「何してんだか」
と、ささくれ立った一日を過ごしてしまった私に、自戒の念をこめて。
 次は、ちゃんと「絆」に繫がりますゆえ。

 歌は歌わねど、ほっと一息つかせてくれた人に感謝。 

 【TB】今日は何の日? ♪おけんつれづれ日記♪ こと BLOG STATION
    Fly Me To The Moon  ELOG STATION こと ♪お玉つれづれ日記♪

 他、多数の企画参加者へは、感謝の念をTB^^

※上記、ストーリーはフィクションです。

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4 コメント

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目覚めてそして・・・ (お玉)
2005-04-03 00:10:51
枕元の携帯が震えて、あなたのメールが届いた。



「うーん」と延びをしながら、手を延ばして、ビジネスホテルからの郵便を確認した。





『昨日は怒鳴ったりしてごめん。でも、君が一緒にハミングしてくれて救われた』



ん、一緒にハミングですって?

そんな記憶、私にはない。





深夜、あなたからの愚痴を聞きながら、私は睡魔と戦っていた。

寝の国とうつつを行ったり来たりしているうちに、

いつのまにか眠ってしまっていたのだ。





開けた窓から見えた満月が、美しかったことだけ覚えている。









彼はきっと、夢でもみたのだろう。

夜中に『餃子とラーメン大盛り!特急で頼む!』などと、

時々寝言で叫ぶこと、これから先も私だけの秘密にしておこう。



いつまでも子供のような人。

愛しい人。



こっそりと撮った携帯の写真、大好きな寝顔に

そっとくちづけをした。







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「天使の・・・」 (ぷよぱぱ)
2005-04-03 01:11:05
早朝からの会議。

相変わらずの泥沼だ。



朝、キミにメールした時は

あんなに清々しい気持ちだったのに。



昨日、振り切った禍々しい黒い疲労が

再び、背中からはいずりあがろうとしていた。



繰り返される戯言に、俺は強烈な睡魔に襲われた。

 と、その時。



「?!」



 俺の頬に、キミの唇が触れた気がした。

 慌てて、頬を押さえる。

 かすかに、キミの香りが薫った。



 その時、天啓のように解決策が浮かぶ。

 何故、それに気づかなかった。

 睡魔が遠のき、覆いかぶさっていた疲労も消え去る。



 俺は、立ち上がった。

「御提案があります。」

 

 その日の昼食は、久しぶりに街中に出た。

 部下が嬉しそうに話しかけてくる。

「この先、有名なラーメン屋ですよ。

 待ちに待った餃子と大盛ラーメンで行きましょう。」



 この仕事中、出歩く時間も惜しんで、コンビニ弁当ばかりだったので、俺が散々、食いたいと言っていたメニューだ。



 しかし、仕事のピークを超えた俺の嗜好は違うのだ。

 「いや、その向かいに蕎麦屋があったろう。

  それも、この辺りの名物なんだ。

  それにしよう。」



 怪訝な顔をしている部下を残して、俺は歩き始めた。

 後で、キミにメールしなきゃ。



 『天使のキスの救われた。』



 そう思いながら、携帯の待ち受けに設定している

髪を切ったばかりではにかんでいる『天使』の笑顔をそっと見た。





 
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いいね (愛読者よよ)
2005-04-03 14:06:48
そんな相手が欲しいな。

返信する
あれれ? (ぷよぱぱ)
2005-04-04 16:49:19
★よよさん

 「月」で出会ったのでは?
返信する

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