「復活」
その言葉を聞くと、わたしはある男のことを思い出す。
ドナルド・K・スレイトン
アメリカの宇宙計画において、最初の宇宙飛行士として選ばれた7人のうちの一人である。
当時のアメリカのロケットは、殆どが発射と同時に「爆発する」という代物であり、その「爆発する」代物に搭乗する宇宙飛行士は、「命知らずのヒーロー」として、熱狂的にアメリカ国民には受け入れられていた。
しかし、ストレインの悲劇は、ここから始まる。
ごく僅かな不整脈が発見されたために、飛行リストから外され、宇宙飛行士として、「不適格」の烙印を押されてしうのである。
栄光の座を掴んだと思っていたストレインのショックは、計り知れないものであっただろう。
しかし、彼はNASAを去らなかった。
地上勤務のスタッフとしてNASAに残り、それ以降の他の飛行士のスケジュール管理、飛行中のバックアップに勤めたのである。
それは、単に「献身的」だったのではない。
ストレインは、こう考えていたのである。
「俺は、必ず飛べる。
俺には、十分な”資質”がある。
いつの日か、必ず、それを証明してみせる。」
そして、数々の宇宙飛行をサポートする中で、着々とデータを積み重ね、人が宇宙飛行に必要な資質とは何か、人は、どこまで宇宙旅行に耐えられるのかを纏め上げた。
そして、1975年 7月。
ついに彼は、宇宙開発史における画期的な計画「アポロ-ソユーズ計画」に、宇宙飛行士として参加したのである。
ストレインの例は特殊では有るが、さまざまな理由で仕事や学業を中断せざるを得なかった人が、それを再開するには、強い意志と非常な「パワー」が必要である。
それは、ある意味「最初の一歩」を踏み出した時よりも、多くのパワーを必要とする。
そして、今日、新しい友人の一人が、「復活」の日を迎える。
彼のこの「再出発」に幸多かれと祈っている。
【画像】The JSC Digital Image Collection
【イラスト】【玉猫戦隊】オーブブルー役の少女の苦悩 ♪お玉つれづれ日記♪ より
【参考書籍】ザ・ライト・スタッフ―七人の宇宙飛行士 中央公論社 ; ISBN: 4122010713
トム・ウルフ (著), 中野圭二, 加藤弘和