不条理み○きー

当面、きまぐれ一言法師です

「理由(わけ)」

2006年03月16日 23時45分38秒 | Tokusatsu

 いわゆる『早過ぎた名作』などと言う物がある。
 優れた水準なのに、それが世に出た当時は理解されず、埋もれてしまった作品のこと等を指す。

 今日、久しぶりに見た1968年に円谷プロとフジテレビで作成された「マイティジャック」も、「円谷特撮の最高傑作」と評されながら、低視聴率に苦しみ途中から相次ぐ路線変更をした挙句に終わってしまった作品である。

「マイティジャック」は、当初、「特撮」を主体とした日本初の大人向けのドラマとしてデビューした。
 出演者も二谷英明をはじめ、死神博士の天本英世、キーハンターの松岡きっこなど早々たるメンバーであり、音楽もジャングル大帝や後のシンセサイザーの草分けとなった富田勲が担当している。

 噂の特撮も、「サンダーバード」を意識したと言われるだけ有って、海底基地のドックに注水されるシーンや、海上から飛翔するシーンなどは、迫力がある。

 にもかかわらず、何故、度重なる方針変更をしなければならなかったかと言うと、その理由は、当時、円谷が持っていた最大のイメージ、「円谷=特撮=怪獣」にそぐわなかったから、という事になっている。
 多分、それはある意味正しいのだろう。

 だが、今回、見て思ったのは、円谷プロ自身が「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」と続く怪獣物の連続で、「怪獣」が登場しないドラマの作り方がわかっていないのではないか、とも思ってしまった。

 いや、実は怪獣物って、ある意味楽なのである。

 突然、不思議な事件が起こり、誰かが誘拐される。
 調べていくと、それは宇宙人が犯人だった事がわかる。
 宇宙人の基地を探知し、颯爽と救出に向かう隊員。
 だが、宇宙人の返り討ちにあって捕まってしまう。
 そこで、とうとう、ヒーロー登場。
 宇宙人も対抗して、怪獣を登場させる。
 後は、ヒーローがちょいと苦戦するが、最後に逆転して終了。
 宇宙人も基地も大爆発で消える。

 ほら、なんとなく、ウルトラっぽいでしょ?^^
 実際は、これに上手く肉付けして、同じような話にならないようにするのが、脚本家の苦労のしどころなのだが、上に書いたあらすじ、なんとなく、「マイティジャック」の初回に似ているのである。

 一つには、ほぼ同時期に「ウルトラセブン」もやっていたので、円谷プロの中でもゴタゴタしていたのだと思うが、やっぱり、監督も、脚本かも、上のような「怪獣物」の基本路線から、上手く抜け出せなかったのではないかとおもうのだ。

 その証拠に、確か、回を重ねるにつれて、ちょっとづつ良くなってきた覚えがある。
 回を重ねる事で、敵対組織Qの輪郭が見え始め、突然来襲した宇宙人とは違ってきた事もある。
 それにつれて、MJの隊員たちのキャラも見えてきた。
 何より、特撮もドックシーンと飛翔シーンだけ、やたら凄くて、空をとび始めると青い空をバックに「ぷーん」ととんでいただけのマイティ号が、1時間版の後半では、Qに乗っ取られて夜の東京上空を飛ぶシーンがあって、ビルや明かりの対比でマイティ号の大きさが際立つようになった。
 やっと、主人公の「メカ」の活かし方が解ったのだと思う。

 そうやって、だんだん、よくなっていたのに、イキナリ30分番になってしまい、対象年齢も下がったときには、私は、
「えーっ?なんでぇ?」
と思ったものである。

 あ?何の話をしたのだっけ?
 ああ、そうそう。
 だから、結局何を言いたいのか、つーと、「早すぎた名作」といわれる物をじっくり見ると、やっぱり時代だけではないそれなりの理由があるのだ、と思ったのである。

「スターウォーズ」だって、イキナリバカあたりしたように言われているが、それなりに、しっかりとした下準備やコンセプトを持っていたから、ヒットしたのである。
 
「マイティジャック」が、長続きしなかったのは、「大人向けの特撮」というコンセプトを充分理解せず、ある意味、特撮の神様 円谷英二が言った「空中戦間を主人公にした物語を作りたい」という言葉に、安直に乗っかってしまい、きちんとした準備や評価を怠ったフジテレビと円谷プロ自身のせいなのだなぁ、と、この作品をみて改めて思ったのである。

 でも、あたしゃ、「マイティジャック」、やっぱり好きだよ。
 



マイティジャック Vol.1

ビクターエンタテインメント

このアイテムの詳細を見る


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ガキオヤジ (壱男)
2006-03-19 09:24:07
「マイティジャック」が苦戦した理由を、私的に考えまするに、当時は大人が特撮番組を見る土壌ができてなかったからではないかと。

我々の世代は、幼少時より特撮映画、特撮番組に慣れ親しんできたゆえに、現在でもそういったものに抵抗は感じません(内容にイチャモンつけることはあってもw)が、当時の大人たちにしてみれば、そういうのは子供が見る物という先入観が先立ち、支持することができなかったのかもしれません。

現在は、深夜に大人向け特撮番組が放送されるまでになりました。今だったら「マイティジャック」も大いに支持されたやもしれません。

ただ、今のテレビ番組で、あのクォリティが出せるかどうかは、いささか疑問ではありますがw
返信する
何より (ぷよぱぱ)
2006-03-20 10:36:27
★壱男さん

 怪獣不在、というコンセプトの影響が大きかったようですね。

「ウルトラQ」の作成時も、どちらかというと大人対象の「本格的SF怪奇ドラマシリーズ」として作られたのですが、こちらも結局「怪獣」を出していますので、「円谷=怪獣」という結びつきは、予想以上に強かったのかもしれません。



 なかなか難しいですよねぇ。

返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。