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天地明察
冲方 丁
角川書店(角川グループパブリッシング)

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時代は、家綱の治世。安井算哲こと渋川春海は、世襲の碁打ちで、江戸城に出仕している実在の人物です。
数学や天文に詳しく、研鑽を進めるうちに、当時用いられていた暦と実際の日月星辰の動きに差異があることに気づく。そして春海は、同じ事実を知る人々とともに日本独自の暦作る大願を持つ。それが時の権力者に認められ、プロマネとして暦の改定を命じられるのだが、試練の連続。生涯ひたすら挫折を送り返しながら、新暦を完成させる物語だ

著者の沖方 丁(うぶかた とう)は、「マルドゥックスクランブル」他で有名な、確かな文章力をもつ気鋭のSF作家だ。その沖方初の歴史小説ということ、また新聞書評も良かったこともあり、本屋で手に取ったのだが期待にたがわぬ出来だった。

なぜ暦をテーマにしたのか?...その問いに作者は
「日本人独自のなにかを信仰するときのと感性は、経典とかではなく、暦である。自分はどんな日に生まれたのか...どんな月が出るのか...きょうはどんな日か...。人々は、日々、そいういうめぐり合わせの中で生きている。それは生き方、戒律や禁忌ではなく、もっと大まかなもの、吉兆とか聖俗で、ゆるやかな連続である。それはあいまいなものではなく、明確な信仰心なのだけれど、おおらかで、なにか言葉にはならない。その言葉にならないものを、具体的に、日常の中に反映させてしてすこしでもそれに近づいて行こうとする行為が日本人にとっての暦である」
と答えている。

暦ってはまるとおもしろいんだけど、それ、計算しろっていわれると、途方にくれるほど精緻なんですよね。ヨットの余興で、天文航法なん勉強すると、感嘆することしきりです

西洋とは独自に発展したいわゆる「和算」という数学体系と、独自の観測機器を武器に、宇宙に肉薄してゆく主人公たち。地球が丸いこともさることながら、自転・公転はすでに自明の理であり、公転軌道が楕円であること、近日点が移動することも気がついていたという。
当時の日本人の知性と洞察力、只者ではありませんなー。
また、北極星が真の北極を指してなくて、「空虚な点の周りを回っているように見える」って記述を世界で最初にしたのが中世の日本人だって言うから、この分野の伝統を、もっと知って誇りにしてもいいかもしれませんね

政治的駆け引きが出てくる終盤も見もの

みなさん 時には星を仰ぎましょう



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