繰り返し観る映画の地獄絵図
久しぶりに、『スターウォーズ』を通して観ようと思い立った。
ここは、公開順に行くかと、
まずは「エピソード4新たなる希望」から。
学生時代、休みの日はこれをひたすら観ていた。
レンタルビデオが流行していた時代、
何度も何度も観るうちに、セリフを完璧に覚えてしまった。
そして、ルーク・スカイウォーカーの勇姿に憧れて、
ハムスターに「ルーク」と名付けたことがあるほどだ。
(このハムが、やたら利口だったのは、偉大な名を授かり内なるフォースが覚醒したせいだろう)
だが、よくよく考えてみると、何故、あんなに何度も観ていたのかは未だに謎である。
さて、そんな私の映画愛が遺伝したのか、
我が娘も同じく「映画を繰り返し観る体質」になったらしい。
彼女がハマった映画、
それは『タイタニック』だった。
まだ娘が低学年だった幼い時代。
休みになると、朝から『タイタニック』を観始める。
まるで何かに取り憑かれたかのように、
映画が終わるたびに「巻き戻し」ボタンを押す、
彼女の手が止まらない。
幼い子供に内容が理解できているのかは全く疑問だ。
だが、私が心配したのは、
あの壮絶な沈没シーンではなく、
ジャックとローズのラブシーンだった。
つぶらな眸で一心不乱な娘は、
微動だにせずにそのシーンを観ていた。
私はその横で冷や汗かきながら、
心の中で
「どういう感情で観てるの!?」と叫んでいた。
でも、恐ろしくて何も云えず、ずっと震えている。
ただひたすら、虚しく、
「ジャックとローズよ、早く済ませて」
と心の中で祈り続けた。
娘の無表情からは何も読み取れない。
「なんか引く」って感覚なのか、
それとも密かに
「これが大人のロマンスか…憧れる」ってなっているのか、
全く見当もつかない。
でも結局、彼女の心は
こうなったんだろう。
「これは一体どういう状況だ?」
娘が画面を指差して、
「母、あの人たちは一体…」
と、云いだすのをひたすら恐れた母は、
繰り返された長い時間の中で
静かに崩壊していった。
せめて、娘が中学生になっていたなら、
問題にはならなかった。
そのシーンは美しいものとして、
少女の記憶に刻まれた事だろう。
だが、早かった。あまりにも。
まだ、トカゲと遊び、花占いを信じる年頃だったのだ。
そして、映画が終了。
娘は、無慈悲にもリモコンで「巻き戻し」ボタンを押して、
また映画が最初から始まる。
地獄の無限ループ。
娘! お願いだから、普通の子供のアニメを観てくれ。
とっとこハム太郎とか、プリキュアとか色々あるだろ!?
あの頃、娘がハマったのが『スターウォーズ』だったら、
どんなに良かったか。
今さらながら、そう思う。
だって、『スターウォーズ』ならたくさん語り合えるよ。
親子でフォースを語り、
帝国の闇を語り、
ジェダイの教えを語り、
「おまえの父は私だ!」と、
と叫んでベイダー卿になりきって遊ぶ。
なのに、現実は『タイタニック』。
ジャックとローズのラブシーンに微動だにしない娘を横目に、
私は動悸と戦っていた。
何故だ…、何故よりによって『タイタニック』なんだ…。
もしも娘が『スターウォーズ』にハマっていたら、
私たちは親子でこんな会話をしていたかも知れない。
「母よ、恋愛とは…」
「それはな、ハン・ソロとレイア姫のようなものだ」
「ほう」
「敵地のど真ん中で、キスをしてすぐに引き剥がされる。
そして極限の状況でこう云う。
レイア姫「愛してるわ」
ハン・ソロ「知ってたよ」
これを観た瞬間、私は天に召されたぞ!!
娘よ、これこそ究極のロマンスだ。
一瞬のキス、命がけの愛の言葉、
そして余裕たっぷりの返し。
これが最高なんだよ!!(力説しながら震えている)」
…どうでもいい事かも知れないが、
こんな母が、そのうちきっと
とんでもないラブシーンを書くよ。
娘がそれを読んでしまう世界線があるかも知れない。
「これは、仕方がなかった!」と言い訳する母に
今度は娘が、
「一体、どういう感情なの」と嫌な汗をかくのだろうか。
久しぶりに、『スターウォーズ』を通して観ようと思い立った。
ここは、公開順に行くかと、
まずは「エピソード4新たなる希望」から。
学生時代、休みの日はこれをひたすら観ていた。
レンタルビデオが流行していた時代、
何度も何度も観るうちに、セリフを完璧に覚えてしまった。
そして、ルーク・スカイウォーカーの勇姿に憧れて、
ハムスターに「ルーク」と名付けたことがあるほどだ。
(このハムが、やたら利口だったのは、偉大な名を授かり内なるフォースが覚醒したせいだろう)
だが、よくよく考えてみると、何故、あんなに何度も観ていたのかは未だに謎である。
さて、そんな私の映画愛が遺伝したのか、
我が娘も同じく「映画を繰り返し観る体質」になったらしい。
彼女がハマった映画、
それは『タイタニック』だった。
まだ娘が低学年だった幼い時代。
休みになると、朝から『タイタニック』を観始める。
まるで何かに取り憑かれたかのように、
映画が終わるたびに「巻き戻し」ボタンを押す、
彼女の手が止まらない。
幼い子供に内容が理解できているのかは全く疑問だ。
だが、私が心配したのは、
あの壮絶な沈没シーンではなく、
ジャックとローズのラブシーンだった。
つぶらな眸で一心不乱な娘は、
微動だにせずにそのシーンを観ていた。
私はその横で冷や汗かきながら、
心の中で
「どういう感情で観てるの!?」と叫んでいた。
でも、恐ろしくて何も云えず、ずっと震えている。
ただひたすら、虚しく、
「ジャックとローズよ、早く済ませて」
と心の中で祈り続けた。
娘の無表情からは何も読み取れない。
「なんか引く」って感覚なのか、
それとも密かに
「これが大人のロマンスか…憧れる」ってなっているのか、
全く見当もつかない。
でも結局、彼女の心は
こうなったんだろう。
「これは一体どういう状況だ?」
娘が画面を指差して、
「母、あの人たちは一体…」
と、云いだすのをひたすら恐れた母は、
繰り返された長い時間の中で
静かに崩壊していった。
せめて、娘が中学生になっていたなら、
問題にはならなかった。
そのシーンは美しいものとして、
少女の記憶に刻まれた事だろう。
だが、早かった。あまりにも。
まだ、トカゲと遊び、花占いを信じる年頃だったのだ。
そして、映画が終了。
娘は、無慈悲にもリモコンで「巻き戻し」ボタンを押して、
また映画が最初から始まる。
地獄の無限ループ。
娘! お願いだから、普通の子供のアニメを観てくれ。
とっとこハム太郎とか、プリキュアとか色々あるだろ!?
あの頃、娘がハマったのが『スターウォーズ』だったら、
どんなに良かったか。
今さらながら、そう思う。
だって、『スターウォーズ』ならたくさん語り合えるよ。
親子でフォースを語り、
帝国の闇を語り、
ジェダイの教えを語り、
「おまえの父は私だ!」と、
と叫んでベイダー卿になりきって遊ぶ。
なのに、現実は『タイタニック』。
ジャックとローズのラブシーンに微動だにしない娘を横目に、
私は動悸と戦っていた。
何故だ…、何故よりによって『タイタニック』なんだ…。
もしも娘が『スターウォーズ』にハマっていたら、
私たちは親子でこんな会話をしていたかも知れない。
「母よ、恋愛とは…」
「それはな、ハン・ソロとレイア姫のようなものだ」
「ほう」
「敵地のど真ん中で、キスをしてすぐに引き剥がされる。
そして極限の状況でこう云う。
レイア姫「愛してるわ」
ハン・ソロ「知ってたよ」
これを観た瞬間、私は天に召されたぞ!!
娘よ、これこそ究極のロマンスだ。
一瞬のキス、命がけの愛の言葉、
そして余裕たっぷりの返し。
これが最高なんだよ!!(力説しながら震えている)」
…どうでもいい事かも知れないが、
こんな母が、そのうちきっと
とんでもないラブシーンを書くよ。
娘がそれを読んでしまう世界線があるかも知れない。
「これは、仕方がなかった!」と言い訳する母に
今度は娘が、
「一体、どういう感情なの」と嫌な汗をかくのだろうか。