占星術思いつきメモ(天体位相研究カルデア)

占星術に関して思いついたことを書き留めるブログ。西洋占星術による地震予測、金融占星術の研究をしています。

キロン-異文化の中ではたらく治療者

2011-02-07 03:23:08 | 占星学
今日ふとキロンのことが頭に浮かび、記事を書きたくなった。ホロスコープを開くと2月新月図でキロンはうお座イングレス0度で、新しい課題を得るにふさわしい時期となっている。思いついたのでメモしておこう。

キロン(ケイロン)とは、木星と天王星の間を巡る直径166kmの小惑星だ。1977年、パロマー天文台でチャールズ・トーマス・コワルによって発見され、ギリシア神話に登場するケンタウロスの一人、ケイロンにちなんで命名された(wikipedia)。占星学では、「高度な医療」と「占星学」の意味を持つとされる。最近では周期彗星であるとの見方もあり、占星学上でも解読者により受け取るイメージが一定しないこともあって少し影の薄い存在だ。出生図でもマンデンでも、胡椒の一振り程度にしか利用されていない。しかし占星術とか治療者の意味を与えられるキロンを、実際の占星術で使わないのはもったいない。まずキロンとはどのような天体なのか、天文学的な側面から見てみる。

キロンは木星から海王星の間の軌道を公転する、ケンタウロス族に属する小惑星だ。これらの小惑星は冥王星から外側に属するエッジワース・カイパーベルトから海王星~木星の重力圏に呼び込まれたと考えられている。キロンの軌道を見ると、近日点は土星の内側近縁から遠日点が天王星の内側近縁という楕円軌道を描いている。興味深いことに、キロンは土星軌道と天王星軌道をつなぐ星間連絡船のような軌道を取っていることだ。

占星学上ではこのことから、キロンは土星と天王星の間を取り持つ性質を持っていると解釈しても良いだろう。先に述べた「高度な医療」とは、キロンと土星の、また「占星学」とは、キロンと天王星のそれぞれ複合的な象意を示したものだと思われる。実際、出生図にキロンと天王星のアスペクトを持つ人は、占星学に親しみを持ち、自ら学習したりするタイプが多い。

また何かと守旧派(土星)と改革派(天王星)の摩擦が多い現代社会において、これらの間を行き来するキロンの存在は、意外にもこれらの直接的な衝突を避け、高度な知識と技術によって穏健な改革を実現していくキーパーソンのような可能性が出てきた。キロンのパーソナリティとはどのようなものだろうか。

キロンの楕円軌道の中心は、軌道長半径13.709AUから近日点8.498AUを引いた5.211AUで、これは木星の太陽からの平均距離5.20260AUに大変近い。このことからキロンは占星学的に木星の性質を分与されていると考えるのが至当だ。そしてケンタウロス族、つまりこれは射手座の意味と同義。どうやらキロンは土星と天王星の間に放たれた、いて座木星の使命を帯びたエージェントであると見ることができるのではないだろうか。

キロンを予言者とか、スピリチュアル的なイメージで解釈する向きもあるが、それはちょっと的がずれている感がしてきた。海王星勢力圏にあるケンタウロス族の小惑星ならそのように見ることも可能だが、キロンは違う。もっといて座的な実際的な問題解決に取り組む力量に視点を向けたいところだ。

そういう意味では、外科治療も心理療法も、占星学やスピ系癒しさえキロンはあくまでツールの一つとして使うのである。ケンタウロス族の神話によればキロンの目的は高度な知識と技術で傷ついた人々を治癒すること。占星学で置き換えれば、異文化を保持する天体間の衝突を避け、また衝突により傷ついた者や社会、そして天体までも治癒し改良を施すことなのである。

なぜなら、キロンのはたらきの本質は、見える世界(太陽~土星)と見えない世界(天王星以遠~)の中間に立ち、それらが分離しないように取り持つことだからである。概して唯物的な力の発動は見えない精神を傷つけるものだ。社会問題なら戦争や暴動の混乱で人々は心身ともに傷つく。肉体的社会的身体と精神が分離してしまわないように、いて座木星の能力を分与されたキロンを使うこと。キロンの存在は、これにより見える世界と見えない世界の再統合を図るようにという、天の精妙な采配であるとさえ思えるのである。

ホロスコープでキロンが実際に天体と合を成すとき、いずれの場合も主天体の働きは一時的に抑えられる。イメージとしては人間ドックに入るようなものだ。レーシングカーならピットイン、金融関係なら銀行の保有する不良債権の影響を調べるストレステストに適合しよう。ここで各天体が太陽系を運行する間に蓄積した傷や負の要素をデトックスし、次のサイクルに向け改良が加えられることも期待されるものだ。

しかし、キロンのはたらきは実際のところ非常に目立たないうえ、どの程度効果があるのかも分かり難いのが実情だ。本当のところ、人類はこのキロンの性質と力をよく理解しておらず、うまく使われていない感がある。社会でもこういった立場に分類される人は稀だ。異文化衝突の現場で治療や生活支援を行うNGOなどはこれに当たるが、多くの人々に活動が理解されているとは言いにくい。

まして占星学や精神哲学など、直接見えない世界を扱う分野は、理解される以前に現状、実学としてはその対象分野の非常に浅い部分をなぞっているにすぎない。キロンのはたらきが深まるかどうかは、今後の人類の努力にかかわっているのだろうと感じている。

目に見える世界では、キロンは2009年から10年にかけて海王星と合を形成した。この間世界的に問題となったのはやはり金融危機。米サブプライム問題から端を発し、欧州のソブリンリスクにまで波及した金融システムの構造的問題は、この期間に一応の外科処置が施され、あとはこの2月の新月とともにうお座イングレスしたキロンによって、うお座運行中しばらくリハビリ期間が続くのだろうと見ている。

最後に余談だが、ケンタウロス族の小惑星の軌道は不安定で、予測から少しずつずれていくらしいが、軌道傾斜角6.93度と黄道12宮帯幅±8度におさまる軌道を持つキロンは、立派に占星学で使用する天体ファミリーの一員だ。またキロンは現在の軌道に囚われたのがいつなのか分からないので、1977年の発見以前の時代の分析には使えない。

しかし、ここからは筆者の妄想だが、案外もしかするとキロンが現在の軌道に囚われてから200年あまりしか経っていないのかもしれない。つまり1781年の天王星の発見はキロンが現在の軌道に入ったことが占星学的要因になったのでは、というシナリオだ。有史以来、強力なファイアーウォールで太陽系の内と外を遮断してきた旧世界の土星勢力圏に対し、太陽系外縁から飛んできたキロンが風穴を開けたとしたら・・、と考えるのも面白い。1774年4月の木星-キロン合の時の天体軌道は、木星と天王星の間をキロンがすべり込むような位置にきている・・。

─最後は与太話になってしまったが、いて座の筆者としては急にキロンに親しみが湧いてしまい、つい書きすぎてしまったようだ。以下にNASAのデータベースによる天体軌道図を載せて締めとしたい。






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2 コメント

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Unknown (hiyoka)
2011-02-09 04:14:45
今回も、とてもステキな記事をありがとうございました。わたしも太陽が射手座にあるせいか、半人半馬のカイロン(キロン)は気になる星です。しかも久々のサイン・チェンジを迎えるにあたって、色々考えていたところでした。軌道参入の仮説、とても刺激的です!本当にそういう可能性、あるかもしれませんね。。カイロンは他のケンタウロス族とは色んな意味で毛色が違っている気がします。乙女座支配説もありますが、6室的な要素も感じられることからそれもまた整合性あるようにも思えますし、これからもっともっと深く研究されるべき存在ではないかと思います。わたしも神話やパーソナル・アストロロジー的なカイロンについて、そのうちつたない文でも書いてみたくなっちゃいました。(^_^)
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Re:hiyoka (pneuma_2007)
2011-02-10 00:06:29
そういえば、いて座にキロンが回遊したとき、色々な面で助けてくれる存在が身近にいたなあ。。今年からはうお座出生の人にお助けマンが現れるかも? hiyokaさんの文も楽しみです。
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