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現代アート道楽の日々。

首都圏の展覧会の感想など。しばしば遠征。【不定期更新】

愛・地球博アートプログラム「幸福のかたち」

2005-03-28 | アート感想@遠征
大阪万博後に生まれた国内外の若手美術作家7名による野外美術展。1970年代に生まれた彼らは、ちょうど私と同じ世代。以前、青山のスパイラルで行われていたプロポーザル展の記事はこちら

アジア諸国のパビリオンが並ぶグローバル・コモン1の入口にあるのは、さとうりさの《player alien》(写真)。カワイイ姿をした高さ6メートルの立体作品だが、胸のパーツが欠け、前方に落ちている。こちらのページでさとうりさ本人が書いているように、人間が持っている何かを無くし、欠けてしまうことへの恐れや不安に対して、「人間は欠けているところがあっても構わないんだよ。」というのがこの作品に込められたメッセージ。作品の穏やかな表情と相まって、思わず目頭が熱くなってしまった。

北・中・南アメリカのパビリオンが並ぶグローバル・コモン2の国連館前にあるのは、名和晃平の《PixCell-Sacred Beast》。名和は様々な物体の表面に透明ビーズをびっしりと貼り付けた《PixCell-…》シリーズを展開していて、この作品はその巨大版。透明なボールがびっしり貼り付いた巨大なトラと錦鯉は圧巻だったけど、やっぱり普通の大きさの作品の方が名和らしい繊細さがあっていいかも。

ヨーロッパ諸国のパビリオンが並ぶグローバル・コモン3のイタリア館裏にあるのは、ハン・ジン=スーの《THE TREE OF A PUBLIC GARDEN》。照明塔に無数の人間のピクトグラムが吊り下がっているけど、遠目にはただの飾りにしか見えず、ちょっと損している感じ。

こちらもヨーロッパ諸国のパビリオンが並ぶグローバル・コモン4の入口付近にあるのは、イヴァナ・ファルコーニの《Guardian Angels》。巨大な小人の立体作品で、スケール感が面白い。でも、雨の日の休憩場所前で人はまばら。

アフリカ諸国のパビリオンが並ぶグローバル・コモン5のアフリカ共同館裏の壁にあるのは、澤田知子の《FACE》。世界各国の民族に変装したセルフポートレート作品で、ある意味万博にふさわしいけど、見逃してしまいそうな場所にあるのが残念。澤田本人は外見のコンプレックスからセルフポートレートを始めたそうだけど、見慣れるとカワイイかも。

西ゲート付近の西調整池の対岸にあるのは、テア・マキパーの《World of Plenty》。動物や人間が集う幸福な風景を表現した巨大な写真作品だけど、池の向こう岸にあって近くで観られないのが残念。

オセアニア&東南アジア諸国のパビリオンが並ぶグローバル・コモン6の中央にあるのは、フェデリコ・エレーロの《World Map》。2つのじゃぶじゃぶ池の底面に、サイズの違う4つの世界地図が色鮮やかに描かれている。さすがに雨降る寒い日に遊ぶ子供はいなかったけど、真夏になると大勢の子供たちが世界を舞台に遊ぶんだろうなあ(笑)。

貧しい芸術@豊田市美術館

2005-03-27 | アート感想@遠征
豊田市美術館に行ってきた。

この美術館を設計したのは、谷口吉生率いる谷口建築設計研究所。谷口吉生といえば、東京オペラシティアートギャラリーで4月8日から個展が始まる。これも行かなくては!

正面入口から入ったところの吹き抜けでは、壁一面に学者の名前をプリントしたジョセフ・コスースの《分類学(応用) No.3》と、高さ10mのLED電光掲示板によるジェニー・ホルツァーの《豊田市美術館のためのインスタレーション》が圧巻だった。

アルテ・ポーヴェラ/貧しい芸術

1960年代からイタリアで始まった芸術運動をまとめて取り上げた展覧会。

会場に入ると、スライド映写機がこちらを向いて光っていた。何かと思って手をかざし、前後に動いてピントを合わせてみると"VISIBILE"の文字が!この作品の題名が《Invisibile》というのも面白い!これはジョバンニ・アンセルモの作品。

ルチアーノ・ファブロの《接触―トートロジー》も良かった。作品のプレートはあったけど、作品が見つからずキョロキョロしていたら、仕切り壁を支える横棒だと思っていたものが、途中で二つに切れていた。これは気づかない人が多いかも。

この他にもミケランジェロ・ピストレットの《ぼろぎれのヴィーナス》や、ピエル・パオロ・カルツォラーリの《無題》が私は気に入った。

6月12日まで、月曜休館。

最後に常設展示を観る。マグリットの《無謀な企て》と、クリムトの《オイゲニア・プリマフェージの肖像》などなど。

荒川修作展@名古屋市美術館

2005-03-27 | アート感想@遠征
名古屋市美術館へ行ってきた。

この美術館の建物(写真)は、黒川紀章の設計によるもの。写真は建物の南側から撮ったものだけど、北側も全く違った表情を見せて面白い!写真の右下で寝そべっているのは、アントニー・ゴームリーの《接近Ⅴ》。この他にも美術館を囲むように屋外作品がいくつかあった。

「荒川修作を解読する」展

世界有数の荒川修作コレクションを持つ名古屋市美術館と、岐阜県美術館のコレクションによる展覧会。難解と言われる荒川作品を少しでもわかりやすくするため、作品ごとに解説シートがついていた。しかも、この解説シートは文章だけでなく、図版と各モチーフの説明まで書いてあって至れり尽くせり。そして、この解説シートを全て綴じると展覧会の図録が完成。これは良いアイデア!

会場に入ると、デュシャンの《大ガラス》に似た《デュシャンの大ガラスを小さな細部として備える図式》がお出迎え。《大ガラス》と同様に謎めいた美しい作品だけど、ガラスに描かれた矢印のおかげで作品内の流れがハッキリしていた。

《35フィート×7フィート6インチ, 126ポンド No.2》は、タイトルどおりの寸法・重さを持った作品。作品には大きく"MISTAKE"と描かれ、各文字ごとのブロックに"DUST", "WIND", "OCEAN"等の具体的な単語が小さく描かれている。これらの単語を見ると、頭の中に具体的なイメージが浮かぶけど、それは作家が考えたものとは別のイメージ、つまり「MISTAKE(まちがいをする)」!「まちがいをする」ことこそが創造の源なんだそうだ。これは目からウロコ!

《あの/眠っている心を/動かす/道徳性のある/ヴォリューム No.2》も印象的だった。荒川がこの作品で表現したかったのは、「従来の価値観が崩壊し、悲観主義が蔓延する風潮を打破し、新しい価値観・死生観を提示する。」ということ。そのための具体的な方法と、「使用前・使用後」の精神の状態が、「図式絵画」で描かれいている。このことをそのまま文章で書くと、宗教や哲学みたいでとっつきにくそうだけど、「図式絵画」で表現されていると抵抗なく受け入れられる感じ。

最後の《「何」を繰り返すこと。置き換えること。大地、いや、しかし、それは多くの瞬間的なもの。変わることなく不連続な世界に立ち返ること。この過程が問題だ》は、絵画とその前に置かれた傾いた台でできた作品。傾いた台に乗って作品を観るんだけど、「芸術作品」を踏んづけているという罪悪感と、傾いた台に乗っている不安定感のおかげで、感覚が研ぎ澄まされて、絵画に集中できるように感じた。この作品をさらに発展させたものがと養老天命反転地のような「体験装置」とのこと。

会場の出口に感想ノートがあったけど、「救われた気分だった」という感想がある一方、「この展覧会は失敗である」という感想もあり、完全に真っ二つに意見が割れているのが面白かった。もちろん私は前者で、難解そうで苦手だった荒川作品が、実はストレートなメッセージを持っているのが分かったのが大収穫だった。

5月8日まで、月曜休館。

常設企画展「荒川修作の建築作品を見る」

養老天命反転地、奈義町現代美術館志段味プロジェクトといった、荒川修作の建築的な作品の写真展。花粉が飛ばない時期になったら、養老も行きたいなあ。

このほかに常設展を鑑賞。目玉のモディリアーニ《お下げ髪の少女》なども良かったが、森村泰昌の《兄弟(虐殺1)》と《兄弟(虐殺2)》にどうしても目が行ってしまう(汗)。あと、地下1階ロビーのグルームス《ウールワース・ビルディング》と、ボロフスキー《ハンマリングマン》も印象的だった。

横尾忠則展@熊本市現代美術館

2005-02-27 | アート感想@遠征
福岡の次は熊本へ。熊本も朝は氷点下で寒かった。

路面電車にゴトゴト揺られ、上通の熊本市現代美術館(写真)へ。

展覧会の受付前の柱には、宮島達男の《Opposite Vertical on Pillar》があり、しばらく目が釘付けになる。これは恒久設置作品らしい。

横尾忠則―熊本・ブエノスアイレス化計画

「なんでブエノスアイレス?」と思った方は、こちらをどうぞ。なんとも横尾忠則らしいエピソード。

会場に入ると、正面のスクリーンにタンゴを踊る映像が映し出され、BGMももちろんタンゴ。そう、ここはブエノスアイレスなのだ(笑)。そして左右には《地球の果てまでつれてって》など、タンゴを描いた絵が並ぶ。この世とあの世の境目のような極限の状況なのに、なぜかタンゴ。ミスマッチなんてものを超越し、神秘的なものにさえ見えてくる。

今回のお目当ては、横尾忠則本人による公開制作。本人を拝見するのは初めてだったけど、とにかく若く見える。20歳くらいサバを読んでも大丈夫かも。少なくとも、私の会社の50代よりは若い!

熊本では、地元にゆかりのある芸能人を描いているそうで、この日は八代亜紀。顔が描き終わりあとは背景だけという状況で、公開製作開始。本人がYOKOO'S VISIONに書いているように、すごい集中力で描き始め、張り詰めた雰囲気が会場に漂う。思い切りの良いタッチで筆が進み、30分ほどでほぼ完成。

そのあと、リラックスした雰囲気で質問タイム。宇宙人との交信状況について質問が出たけど、さすがに「ここでは誤解されるので、別の機会にお願いします。」と回答したのには苦笑。横尾忠則の作品を観ていると、宇宙人と交信してても不思議じゃないと思うんだけどなあ。

そのほかにも、滝を描くようになったきっかけや、タカラヅカの話(質問者もヅカファン!)や、枝にびっしりと止まるスズメに癒しを感じたことや、その枝を切られて行政に苦情を言った話など、面白い話が盛りだくさんだった。

絵画の部屋を抜けると、大量の滝絵ハガキによるインスタレーション。本当の滝みたいで圧巻。本人の話によると、これは滝供養とのこと。絵ハガキが黒枠で囲ってあるのはそのため。

最後は、Y字路や銭湯のシリーズなどの新作絵画が中心。銭湯のシリーズが展示してあるところには暖簾がかかっていて、銭湯気分が味わえる。暖簾から出ると、目の前にはY字路の絵があるのも心憎い演出。あと、スイカが描いてある絵の前に本物のスイカが置いてあったり、制作中の絵の中央にセロハンテープで貼り紙がしてあるなど、遊び心満載の展示が楽しかった!

4月17日まで、火曜休館。

この美術館のライブラリーも良かった。書棚はマリーナ・アブラモヴィッチの《Library for Human Use》だし、天井にはジェームズ・タレルの《Milk Run Sky》があって美しい光を放っている。別の場所には、草間彌生の巨大万華鏡《INFINITY MIRRERD ROOM 早春の雨》があり、これも恒久設置作品。これだけ揃っているとは、熊本市民が羨ましい!

アニメイト。展@福岡アジア美術館

2005-02-26 | アート感想@遠征
地下鉄で中洲川端駅に移動し、福岡アジア美術館へ。この美術館は、地下鉄の駅と直結していて便利。

受付の前には、西山美なコの《ようこそあなたのシンデレラ・キッチュ》シリーズ(写真)が並んでいた。この作品の彩度は相当高いので、顔を入れて写真を撮るとショボい写りになってしまうらしい。勇気のある方は、顔を入れて撮影してほしい。

受付でチケットを買い、アジアギャラリーへ。なお、以下の展覧会のチケットは共通。

タン・チンクァン(陳振權) 青い夜

中国系マレーシア人の個展。版画作品と立体作品が中心だが、やはり立体《青い夜》のシリーズが観モノ。チェス盤のような床の上に、針金で縛られた人間が駒のように林立する姿には戦慄すら覚えた。

続いて、美術館の所蔵作品展。ファン・リジュンの《シリーズNo.3》や、ルオ三兄弟の《我、北京天安門を愛す》などが印象に残った。私は、中国の現代アートとも相性が良いのかも。

Animate。~日韓現代アートに見るアニメ的なもの~

マンガやアニメとともに育ってきた日韓の現代美術作家たちによる展覧会。作品をガラスケースで展示しているのが、古美術の展覧会みたいで妙。

なかでも強烈だったのは、やはり会田誠。《Body painting with Koe in Stockholm》は、有名コスプレイヤーの声(←彼女の名前)に、アニメのキャラクターをボディペインティングしたときの写真。外国の公園に全裸で立っているんだけど、不思議といやらしさは感じない。アニメ的な表現は、肉体的な性を消失させるのだろうか?あと、《みんなといっしょ》シリーズも良かった。バカバカしいモチーフが、テキトーなタッチで描いてあるんだけど、模造紙いっぱいの大きさに脱力。

韓国の作家では、チェ・ホチュルが印象に残った。《乙支路環状線》など、とにかく描き込みが凄い。イ・ドンギの《アトマウス》シリーズも、鉄腕アトムとミッキーマウスを融合したキャラクターに親近感を感じた。

3月29日まで、水曜日休館。また、3月5日にはドキュメンタリー「≒会田誠~無気力大陸~」の上映会もあり。九州の会田誠ファンは必見!



展覧会を観たあと、天神の丸善で『季刊プリンツ21』の会田誠特集号(2004秋)を発見!買いそびれてしまい、東京ではバックナンバーが見つからず諦めてかけていたけど、福岡で見つかってラッキー!さっそく、(こちらも今更ながら)森村泰昌特集号(2005春)と併せて購入。

藤浩志展@福岡市美術館

2005-02-26 | アート感想@遠征
今回の遠征の初日は福岡。九州に着いたらヤケに寒く、しかも雪!これでは九州って感じがしないなあ。

雪と寒さに耐えながら、大濠公園の一角にある福岡市美術館へ。

入口前では草間彌生の《南瓜(かぼちゃ)》がお出迎え。他にも李禹煥などの立体・彫刻作品があったが、やはりクサマのインパクトは強い。あと、館内のロビーや廊下にも、ジョージ・シーガル《次の出発》や、アニッシュ・カプーア《虚ろなる母》など、私好みの作品があって嬉しかった。

違和感を飛び越える術!―藤浩志展

藤浩志といえば、越後妻有や金沢21世紀美術館などでの「かえっこショップ」が記憶に新しい。展示室の前には、《表現以前のもやもや》としてガラクタの山!これも藤浩志らしい作品(?)。

展示室に入って最初に目に入るのが《P.N.G.》。これは、立体作品《戦闘機をひくヤセ犬》に加え、当時のノートを撮った写真で構成されたインスタレーション。パプアニューギニアでの経験が、彼の制作の原動力となっているらしいけど、なんとなくその雰囲気が伝わってくる感じ。

そして、今回の展示の目玉、《違和感を飛び越える術》。薄暗い会場内には、50近くの飛行機状のツール(Cross?)が並んでいて圧巻。この飛行機状のツールをよく見ると、古いおもちゃや機械部品などで作ってあって、なんだか懐かしいモノも。でも、その形は十字架にも見え、大量生産品の末路を見るようでなんだか複雑な感覚。これが違和感?

あと、《違和感を飛び越える術》の前にはマイクが置いてあって、キーワードをしゃべると映像作品が上映される仕掛けになっていた。鴨川のこいのぼり作品や、ワークショップの映像が特に面白い!

そのほか、中庭などにも《お米のカエル墓石となる》や《ヤセ犬の散歩》があり、こちらも必見!

4月3日まで、月曜休館。ただし、3月21日開館、3月22日休館。

金沢21世紀美術館再訪

2005-02-20 | アート感想@遠征
昨年末に行った金沢21世紀美術館に、また行ってきた。

最初に、有料ゾーン受付前の「運行表」を確認。予約制の作品はないみたい。

チケットを購入し、有料ゾーンへ。

金沢21世紀美術館 開館記念展覧会『21世紀の出会い―共鳴、ここ・から』[後期]

後期の展示で、特に印象に残ったのは次の3点。

ヨーン・ボックの《ゲスト》は、丸々太ったペットのウサギの映像作品。部屋の中で奔放にイタズラしまくるウサギがとにかく可愛らしい。生活用品や木材で作られた安っぽい罠がウサギの前に立ちはだかるけど、ウサギはそれらの罠を運良く(?)回避していく。ちょっとおかしくて爽快な作品だった。

モナ・ハトゥムの《地図》は、銀色の玉を床に並べた世界地図。28人のボランティアが6日間かけて制作した11m×20mの地図は圧巻。よく玉が転がらないなあと思ったら、海岸線の部分は両面テープでとめてあるらしい。なーんだ。でもすごい。

ヤノベケンジの《ビバ・リバ・プロジェクト―スタンダ―》は、金属製の子供の人形。放射線を20回検知すると立ち上がるんだけど、じわりじわりと立ち上がるの見ていると、思わず「立て!立つんだ!×××!」と叫びたくなる。単純な動きなんだけど、不思議な魅力のある作品。

会期は3月21日まで。

続いて、無料ゾーン。

金沢21世紀美術館開館記念企画 荒木経惟「石川ノ顔」展

アラーキーによる、地元の人700人のポートレイト。普通の人たちなんだけど、どの人も表情が豊かで役者みたい。さすが!

でも当日が最終日。せっかくの企画なのに、会期が短いのはもったいないかも。

須田悦弘の《雑草》は、CHINATSUさんのコメントのおかげで見つけることができた!どうもありがとう!

庭に出てみると、茶室(写真)の内覧会をやっていたので、さっそく見学。これは、前田家ゆかりの茶室を移築したもので、3つの建物と庭園がコンパクトにまとまっていていた。しかし、須田悦弘の《茶室》は、3月上旬の正式オープン以降でないと観られないとのこと。残念。

あと、LCM(フェルナンド・ロメロ)の《ラッピング》も、春先の完成予定。これも残念。

景観@せんだいメディアテーク

2005-02-19 | アート感想@遠征
続いて、せんだいメディアテークへ。

伊東豊雄の設計によるこの建物(写真)は、チューブ状の柱が吹き抜けになっているなど、見た目からしてユニークなもの。中には図書館もあって、多くの市民に利用されているみたい。

景観 もとの島

宮城県牡鹿半島沖の金華山をモチーフとした、3名の美術作家(中原浩大、高嶺格、関口敦仁)による展覧会。ここでいう「景観」とは、見た目の景色ではなく、群集生態学における生態系の集合体という意味らしい。難しい……。

中原浩大は、《ツバメ》が印象に残った。これは、京都・宇治川や奈良・平城京跡にて、ツバメの大群を撮った写真作品。夕暮れのバックが美しかった。

高嶺格のインスタレーション Noism04“Black ice”より《Black Garden》は圧巻!4方をほぼ囲まれた部屋の中には、シマウマ模様の布(?)で装飾された合板製の立体がゴロゴロ。また、天井近くで、“welcome”の文字の形のネオン管が、赤ん坊の笑い声に合わせて点灯していた。最近生まれた子供への祝福かも。あと、合板の立体の裏側には、六本木クロッシングで観た動物の頭蓋骨のようなものが隠れていたけど、これも意味があるのかなあ?とにかく謎が多い作品だった。

同じく高嶺の《2004年9月24日》は、高嶺の奥さん(推定)の出産直前(推定)の表情をアップで撮ったビデオ作品。しばらく観てたけど、長くなりそうだったので途中で観続けるのを断念。「決定的瞬間」は来るのかなあ?

関口敦仁は、鉄道模型(Nゲージ)を使った《Circle Model》、《Crossing Model》、《Cosmic Model》が面白かった。電車に乗せたカメラの映像は迫力があった。

全体的に玄人向けの展覧会だったと思う。東京から観に行った甲斐があったかどうかは微妙……。(汗)

2月28日まで。2月24日休館。
2月20日には、関口敦仁ワークショップ「鉄道も系」開催。

金沢21世紀美術館 その3

2004-12-23 | アート感想@遠征
再び無料ゾーンの作品を観て回る。

「タレルの部屋」こと、ジェームズ・タレル《ブルー・プラネット・スカイ―2004》は、期待通り素晴らしかった。天井を四角く切り抜いたこの部屋はちょっと寒かったけど、空ってこんなに美しかったんだと実感。雲の微妙な動きが分かったり、たまにハトが横切ったりするのも面白い。そういえば、同じくタレルによる光の館(新潟・川西町)は来年1月3日より再開。

屋外のプロジェクト工房では、ヤノベケンジ《子供都市計画》の製作作業の真っ最中。作りかけの「トらやん」の顔が沢山あった。今回もヤノベ所長を拝見!(前回の拝見記事はこちら

ただ、ちょっと心残りだったのが、須田悦弘《雑草》とLCM(フェルナンド・ロメロ)《ラッピング》を見つけられなかったこと。どこにあったの??

それにしても、現代アートの美術館とは思えないほどお客さんが沢山入っていた。とりわけ家族連れのお客さんの多いこと!たぶん、遊園地に行くような感覚で美術館に来ているんだろうなあ。しかも、この美術館は市内の小学生を平日に無料招待しているようだし、彼らが大きくなったときが楽しみ(末恐ろしい?)。

あと、この美術館は、カフェレストラン、ミュージアムショップ、託児室、アートライブラリーなどの施設も充実していた。これらの施設はガラス越しに外からも見えて、敷居が低そうな感じ。

開館前は「税金でガラクタを買うのか!」などの批判が一部であったみたいだけど、目標の年間入館者数30万人をわずか2ヶ月でクリアしてしまった金沢21世紀美術館。今後の発展に期待!

金沢21世紀美術館 その2

2004-12-23 | アート感想@遠征
昼食後、再びバスに乗って美術館に戻り、いよいよ有料ゾーンへ!

金沢21世紀美術館 開館記念展覧会『21世紀の出会い―共鳴、ここ・から』

受付を抜けると、山本基の《迷宮》が床一面に広がっていた。これは塩で迷路を描いた作品で、吹けば飛ぶような作品を良く作ったものだと感心。

オリファー・エリアソンの《反視的状況》は、巨大なフジツボのような作品。中はガラス張りになっていて、万華鏡の世界。外側のお客さんが穴から覗いたり、手をかざしてくれるのも面白い。

エルネスト・ネトの《身体・宇宙船・精神》は、行列ができていた。この作品は、ストッキングのような伸縮性の素材を作った空間に人が入る作品。中央には良い香りのする巨大なビーズクッション(のようなもの)があり、そこに寝転がると和んで癒される気分。この作家は、東京国立近代美術館でやっていた「ブラジル:ボディ・ノスタルジア」展にも、同様の作品を出展していたけど、今回の作品は青緑&ピンクと色鮮やかで、前作よりもエンターテイメント的?

アニッシュ・カプーアの《世界の起源》は、コンクリート打ちっぱなしの斜壁に、巨大な黒い楕円がある作品。この楕円は穴なのか、平面なのか、盛り上がっているのか……。答えはテレビで見て知っていたけど、不思議な感覚は十分味わえた。

カールステン・ヘラーの《金沢の自動ドア》も面白かった。鏡にもなっている自動ドアが延々と続く通路を歩いていると、永遠に自動ドアが続くかのように錯覚。

圧巻だったのは、ゲルダ・シュタイナー&ユング・レンツリンガーの《ブレインフォレスト》。ワタリウムで以前やっていた「エンプティ・ガーデン2」展でも同様の作品《くじらのバランス》を観たが、今回の方が圧倒的にスケールが大きい!ベッドに横たわり、天井を見上げるとしばらく言葉を失ってしまった。天井から透ける自然光も心地良い!

この他にも素晴らしい作品の数々で、金沢まで来た甲斐があったと実感。1月から一部作品が入れ替わるので、また行かなくては!

3月21日まで、休館日は月曜日(1/10、3/21開館)、12/29~1/3、1/11。

つづく

金沢21世紀美術館 その1

2004-12-23 | アート感想@遠征
念願の金沢21世紀美術館(写真)に行ってきた。

館内に入ったら、ちょうどクリス・バーデンの《メトロポリス》の実演が始まるというので、まずそちらへ。この作品は、模型の巨大都市の中を、モノレールがグルグルと回り、無数のミニカーがジェットコースターのように走るもので、観ていてとにかく楽しい!規模は全然違うけど、小さい頃にこんなおもちゃで遊んだのを思い出した。

ジェームズ・タレルの《ガスワークス》を予約するため、地下へ移動。比較的早い時間だったけど、すでに昼ごろまで予約が埋まっていた。予約帳には、どこから来たのかを書く欄があって、広島・名古屋・東京・大阪など遠方のお客さんばかりで思わず苦笑。

モダン・マスターズ&コレクション

《ガスワークス》の待ち時間を利用して、無料ゾーンのこの展覧会(本日最終日)を観る。導入部に近代作品や工芸作品を配置し、徐々に現代アートに持っていく展示は、一般の人にも取っ付き易そう。近代作品は、イセ文化基金や大原美術館などの所蔵品で、モネ・セザンヌ・ピカソ・ウォーホル・デュシャンなどの豪華な顔ぶれ。

所蔵作品も、デミアン・ハースト、ゲルハルト・リヒター、リュック・タイマンスなどと豪華。村上隆の作品は《コスモス》という1998年のアクリル画。近づいてみると意外なくらい手で描いた跡が残っていて面白い。でも、できれば村上の《シーブリーズ》も観たかったなあ。イ・ブルの作品は、大型作品2点とドローイング数点。《サイレーン》は、白い壁の明るい部屋に展示してあったけど、国際交流基金フォーラムでやっていた展覧会のように、暗い部屋に展示したほうが効果的だったかも。

この展覧会の目玉の一つ、ダグ・エイケンの《エレクトリック・アース》。この作品は8枚のスクリーンを使った映像作品。なかなか面白い映像ではあったけど、ダグ・エイケンはオペラシティで観た展覧会のほうが私好みかも。

そして、予約の時間が来たので《ガスワークス》へ。白衣を着たスタッフの指示で移動式のベッドに横たわると、CTスキャンのようにドーム内に収納される。内部は均一の距離感の無い空間で、眼の焦点が合わなくて戸惑う。次第に周囲の色が変化し、稲妻が光ったかと思うと、光の点滅が始まり、あっという間に10分が過ぎ終了。思ったより刺激は少なかったけど、色で自分の感情をコントロールされているような不思議な体験だった。

オープン直後とはいえ、これだけ質・量ともに充実した展覧会を無料で観られるのはすごい。最終日に間に合って本当に良かった~。

つづく

デュシャンと仲間達展、名和晃平展@大阪

2004-12-06 | アート感想@遠征
大阪淀屋橋のアート・遊にて開催中の「ゲンダイビジュツノハジマリ―マルセル・デュシャンと仲間達」展に行ってきた。前回、大阪に行ったときに行けば良かったんだけど、うっかりしてて……。(汗)

入口のところには、国立国際美術館関係の新聞の切抜きが何枚も。関東では読めない記事ばかりで、非常にありがたい。なのかさんのブログでも話題になった、まぶさびの「泉は泉ではない」もあった。街のいたるところで便器のポスターを見かけるし、大阪はデュシャン一色!?

デュシャンの作品は、≪大ガラス≫のミニチュアと、版画・メモ・カタログなど。国立国際美術館の後で観るとちょっと寂しい。しかし、「仲間達」の充実ぶりは素晴らしかった。エルンストやベルメール等は展覧会にしょっちゅう貸し出しているらしい。森村泰昌の作品は、≪光る足音≫とセルフポートレートが1点。

12月18日まで、日曜・祝日休廊。


御堂筋線、中央線と地下鉄を乗り継ぎ、深江橋へ。住宅と町工場の街に溶け込むようにプラントグラフィックス/ノマルエディションはあった。この建物(写真)前面のデザインは石丸信明によるもの。

ここには、版画工房・企画デザイン・現代美術ギャラリーの3セクションがあって、制作から発表まで一貫してできる体制が整っている。また、銀座のOギャラリーやINAXギャラリーで配布されている無料情報誌『RIPPLE』も、ここの発行。

今回の展覧会は、「名和晃平展 catalyst」。最近、飛ぶ鳥を落とす勢いの売れっ子で、某建設会社の本社ビルにも彼の作品が設置されたらしい。

入口を入って右手の"CUBE"では、グルーガンを使った作品が4点。天井に吊るされているのは、≪Light - Drops≫。これは、小皿状に固めた不透明のグルーガンを、何枚も重ねて照明を埋め込んだもの。まるで鍾乳石のような柔らかい輝き。それと、透明グルーガンをアクリル板に接着した≪Catalyst Unit≫が3点。安い材料でこれだけ神秘的な輝きを生み出すとはスゴい。

雑然とした版画工房を通り抜けた"LOFT"では、平面作品が17点。名和晃平の平面作品をこれだけ観られる機会は、そんなにないかも。ボールペンドローイングもあり。

12月11日まで、日曜・祝日休廊。

日比野克彦&宮永愛子@京都

2004-12-05 | アート感想@遠征
京都と大阪の府境にある大山崎山荘美術館に行ってきた。ちょうど紅葉が素晴らしい時期だったけど、地元のお客さん中心で比較的空いていた。ここは紅葉の穴場かも。

この美術館は、イギリスのチューダー様式の本館(元別荘)と、安藤忠雄設計の新館の二つの建物からなっていて、建築も楽しめる。特に新館は、コンクリート打ちっぱなし壁に挟まれた階段(写真)を下りて、地中の展示スペースに入っていく構造で、いかにも安藤らしい建築。

さて、現在開催中の「INDEXLESS ―ノブのないドア― 永遠に残る名品と永遠に残そうとしない作品 モネ・ドガ・クレー/日比野克彦・宮永愛子」は、美術館コレクション(陶器・西洋絵画)と日比野克彦・宮永愛子の現代アート作品による展覧会。

宮永のナフタリン作品で、日比野のダンボール作品を包んだり、逆に日比野作品の中に宮永作品を入れたりしたコラボレーションも良かったが、宮永によるモネ、ドガ、ルーシー・リーへのオマージュも観応えがあった。名作と対比して展示してあって、ある意味贅沢かも。日比野も、初期のダンボール作品から最近のワークショップ作品までと多彩な内容。

1月23日まで、月曜(祝日の場合火曜)及び年末年始(12/27~1/1)休館。

駅から近いけど、坂道が物凄いので無料バス(足の弱い人優先)がオススメ。また、JR山崎駅で前売り入場券を買うと、大人100円引き。

「これはデュシャンではない」、ですか。藤本由紀夫・森村泰昌二人展@MEM(大阪)

2004-11-06 | アート感想@遠征
続いて、大阪北浜のギャラリーMEMへ移動。

このギャラリーは、登録有形文化財にもなっている新井ビル(写真)の4階。風情のある階段をぐるぐる上ると、壁には森村泰昌の《身ごもるモナ・リザ》のトランプが!

今回の展覧会は、“「これはデュシャンではない」、ですか。藤本由紀夫・森村泰昌二人展”。前の記事でも書いたけど、これは国立国際美術館の関連企画。

部屋に入ると、後ろの壁に《モナ・リザとトランプが与えられたとせよ》があった。これは、招待状に《身ごもるモナ・リザ》のトランプが貼ってあって、19日の儀式で藤本と森村が髭を書き入れる予定のマルチプル作品。ちょうどデュシャンが《髭を剃ったL.H.O.O.Q》でやったのと逆。

また、この部屋には藤本・森村共同制作の《泉》も。デュシャンは便器でやったけど、藤本たちはゴミ箱。このゴミ箱には、シュレッダーがついていて《身ごもるモナ・リザ》のトランプを裁断できる(1回50円)。

隣のオフィス兼用の部屋には。森村泰昌の《身ごもるモナ・リザ》の大きなプリントがあった。トランプ大だと気にならないが、引き伸ばすと男性と女性の腕がつながっているのが分かって気持ち悪い。ちなみに、森村泰昌《身ごもるモナ・リザ》については、本人の著書『踏みはずす美術史―私がモナ・リザになったわけ』に詳しく書いてある。

この他にも、デュシャンを引用した作品の数々。国立国際美術館の後にどうぞ。もちろん、藤本由紀夫のオルゴール作品など、デュシャンと関係ない作品も。12月18日まで(日・祝休廊)。

国立国際美術館「マルセル・デュシャンと20世紀美術」展@大阪

2004-11-06 | アート感想@遠征
久しぶりの関西遠征。

最初は、大阪中之島の国立国際美術館(写真)。この美術館は11月3日に万博記念公園から移転オープンしたばかり。

地上部の翼を広げたような構造体は飾りみたいなもので、美術館の大部分は地下に埋まっている。平面的には、同じ敷地の大阪市立科学館(写真右側)を囲むようなL字型。地下1階はレストランや講堂があって、展示室は地下2・3階。地下3階でも自然光が入ってくるので、地下深くにいるような感じがしない。これは見事!

地下3階にて、開館記念展「マルセル・デュシャンと20世紀美術」。エスカレータを降りると、巨大なカラスがお出迎え。これは吉村益信による《大ガラス》。いきなりダジャレとは……。

気をとりなして展示室へ。まずはキュビズム風絵画のスペース。デュシャンって、普通の絵画を描いてた時期もあったんだ……と感心。同じ場所には、モナ・リザの複製画に髭を描き足した《L.H.O.O.Q》もあった。フランス語読みで「私のお尻は熱い」だったっけ?その隣には《髭を剃ったL.H.O.O.Q》、なんと招待状にモナ・リザのトランプを貼っただけ!もう髭なしではモナ・リザを想像できない!?

次のスペースは、《彼女の独身者によって裸にされた花嫁、さえも(東京ヴァージョン)》とその関連作品。この作品は、大きなガラスに象徴的な絵が描かれたもので、通称《大ガラス》。今回展示されているものは、デュシャンの許可を得て、デュシャン没後に、仕様書『グリーン・ボックス』に従い瀧口修造らが制作したもの。「オリジナル」と「レプリカ」の両方の性質を持つため、ここでは「ヴァージョン」という表記。で、所蔵は東京大学教養学部美術博物館。東大教養学部はフランス系に強いんだっけ?

有名な《泉》などの「レディメイド」作品と「出版」作品のスペースを抜けると、今回の目玉(?)《遺作》。この作品はフィラデルフィア美術館に備え付けてあるため、ここでは立体映像を公開。高さ2メートル以上のスクリーンに扉が投影してあって、その扉にある覗き穴から立体視するというもの。これは覗くべし!

続いて、デュシャンの影響を受けた作家として、ジャスパー・ジョーンズやリチャード・ハミルトンなどがあり、最後のスペースは日本人作家たちの作品。森村泰昌のセルフポートレイトじゃない作品は珍しいかも。13日には本人による講演会もあるみたい。藤本由紀夫は、デュシャンの講演に3拍子のリズムを感じとり、音楽にしていた。あと、《遺作》とデュシャンの肖像をモチーフにした横尾忠則の絵も良かった。気軽にデュシャンを引用しているような感じ。

大阪を代表する美術館の開館記念にふさわしい展覧会だったかも。12月19日まで(月曜休館)。その後、横浜美術館に巡回(1/5~3/21)。

それと、大阪北浜のMEMでも関連した展覧会が開催中。こちらについては後の記事にて。