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文化逍遥。

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わたしのレコード棚―ブルース75 、Kid Prince Moore

2019年08月02日 | わたしのレコード棚
 およそカントリー・ブルースと云われる音楽を演奏した人達の中で、レコードやCDなどを残すことが出来たのは1割ほどだろう、とも言われている。つまり、10人のブルースマンがいたとすると、その中で1人しか録音の機会に恵まれなかったことになる。残りの9割のブルースマンは、ひたすら演奏しつつ、おもにアメリカ南部を彷徨っていたことになる。
 キッド・プリンス・ムーア(Kid Prince Moore、ヴォーカルとギター)は、ピアニストのショーティー・ボブ・パーカー(Shorty Bob Parker)と共に録音を残せた幸運なブルースマンだった、と言えるだろう。1936年にニューヨークで7曲、1938年にノース・キャロライナで12曲を吹き込んでいる。その19曲がキッド・プリンス・ムーアの残した全ての録音だ。ギター・スタイルはブラインド・ブレイクに近い東部のものだ。ポール・オリバーのLP(WSE126)解説などにもあるように、おそらくイースト・コーストで活動していたと思われるが、詳しい事績はわかっていない。録音年から考えると、ブラインド・ブレイクより1世代ほど若い、20世紀初頭に生まれた人だったのではないだろうか。
 ギターやヴォーカルに派手さは無いが、しっかりしたピッキングで無駄がなく、ピアノのバックに回ってもシンプルだがしっかりピアノを引き立てている。個人的には好きなミュージシャンだ。おそらく週末などに演奏するソング・スターで、またゴスペルナンバーも含まれているので、教会などでも演奏していたのかもしれない。なんとなく「素人臭さ」を感じさせるところも、親近感が湧いてくる。陰に隠れて目立たないが、その人が生きた時代の息吹を感じさせてくれる。そんなミュージシャンの録音が残っていることに驚きを禁じ得ないが、またこういったLPを出してくれているSPレコードのコレクターにも感謝したい。


 オーストリーのWOLFレーベルのLP、WSE126。録音順に全19曲を収録。


 YAZOOレーベルのオムニバスLP、L-1022「Ten Years Of Black Country Religion 1926-1936」。その名のとおり、田舎の黒人によるゴスペルナンバー14曲を収録。キッド・プリンス・ムーアは、『Church Bells』と『Sign Of Judgement』の2曲。


 ドイツのレーベルAUTOGRAMのLP、TLP-1003「Guitar Evangelist」。「Evangelist」とは、「伝道者」ほどの意味になろうか。上のLPと同じく黒人ゴスペル16曲を集めたオムニバス盤。ムーアは、やはり上のLPと同じ2曲が入っている。しかし、LPジャケットの写真は合成されたものだろうが、意味が伝わってこない。ギターリストの顔の部分にキリストの磔像を合成したのだろうか。

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