文化逍遥。

良質な文化の紹介。

日暮 泰文著『ブルース百歌一望』(2020年Pヴァイン発行、ele-King bokks編集)

2024年10月01日 | 本と雑誌
 日暮泰文氏は、日本におけるブルース研究の第一人者で、P-ヴァイン・レコードを設立し、ブラック・ミュージックの紹介に尽力された方。この人の行動力と語学力、豊富な音楽的知識には、いつもながら驚かされる。
 本書は、雑誌『ブルース&ソウル・レコーズ』に連載された「リアル・ブルース方丈記」に加筆修正し、1世紀に渡るブルースの録音から101曲を選び、深層を掘り起こした労作になる。この本を読んで、言葉の意味について新たに得たことも多い。


表紙の写真は、著者が撮影したアーカンソー州ヘレナの船着き場。白黒写真だし、ずいぶん古い光景に見える。が、2010年に撮ったということなので、さほど古いわけではない。あるいは、現在はあまり使われていない、綿などを船に積み込むために使われる設備で、コンベアーのようなものなのかもしれない。

 日暮泰文氏は1948年生まれ、というので執筆時は70歳を超えていたろう。本書P170で「多くの部分ですっかり形骸化したブルースに何が欠けているのだろうか・・・」とある。わたしも今年2024年で67歳。時にブルース・セッションなどに参加して、若いプレーヤー達と演奏したり、ブルースについて話したりする。その時には、やはり「うまいが、形だけだ・・歴史的録音も聞いてない」と、感じることが多い。ロックやジャズの教則本に載っているものを、そのまま演奏してもブルースにはならない。オリジナルの演奏を聞き込み、彼らが何を伝えようとしてプレイしたのか、それを踏まえて自分なりのフレーズを編み出していかなければ、魂は抜けたままだ。この本の執筆動機として、今の音楽状況に対する危機感と憂慮があるような気がする。

 困難に直面し、重荷を負った者に対する「共感と励まし」。それこそが、ブルースを含めた民俗音楽の本質、とわたしは思って演奏している。

 さらに、わたしの1曲として・・サン・ハウスの「Grinnin' In Your Face」の一節を参考までに付け加えておこう。拙訳で、思い入れをこめて、かなりな意訳をつけた。

Don't you mind people grinnin' in your face (他人に小馬鹿にされたら、辛いもんだよな)
Don't mind people grinnin' in your face (そんな時は、気にせず我慢した方がいい)
You just bear this in mind, a tru friend is hard to find (どっちみち、人を馬鹿にして喜んでる様な奴とは友達になんか成れっこないんだ)
Don't mind people grinnin' in your face (他人に小馬鹿にされても受け流して自分の道をしっかり歩いて行けばいいんだ・・よく憶えておきなよ)

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プリンター買い替え

2024年09月24日 | 日記・エッセイ・コラム
 9月も下旬になり、やっと秋が近づいた、と思ったら、前線が活発化して北陸地方などを中心に大雨となり、崖崩れや河川の氾濫など大きな災害が発生している。お見舞い申し上げたい。

 さて、使っていたプリンターが故障した。修理をすると、かなり高額な費用がかかりそうなので、やむなく買い替えた。最低限のシンプルな機能のものが安く買えるので、どうしても故障したプリンターは処分せざるを得ない。


 キャノンのプリンターTS203。5000円弱だが、交換インクはカラーとブラックの2個買うと4400円する。ほかに選択肢が見当たらないのでこれにしたが、単純に計算すると、本体が600円ということになる。要は、インクで儲けるために本体を赤字で売っているわけで、首を傾げざるを得ない。インクが無くなったら、本体ごと買い替えた方がヘッドの消耗などを考えると合理的で得に感じる。そうなると、インクが無くなる度ごとに、大きな不燃ゴミが発生して、環境を悪化させてしまう。メーカーは、その問題を、もっと真剣に考えて欲しい。

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瑞庵2オープンマイク2024/9/13

2024年09月17日 | ライブ
 残暑が厳しいが、日の暮れるのは早くなっており、季節は移ろっている。わたしは血圧が低めで暑さに弱く、この夏の危険な暑さを考えて外出を控えていたのでセッションなどにも参加できずにいた。

 今年は、熱中症で亡くなる人や、救急搬送された人の数が毎日のように報道された夏だった。さらに、暑さにより持病が悪化する人や、心不全や脳梗塞を起こす人も多く、その数はある推計で3万人を超えるという。人は、冬の吹雪などには警戒するが、夏の晴天下の体温並みの暑さには警戒心が薄れるようだ。それでも、仕事で外出する人などは、やむを得ない事由があるともいえる。「不要不急」の意味は人それぞれだが、過信は禁物だ。そう言えば、地元千葉ロッテのナイターで、試合中にピッチャーが熱中症で具合が悪くなった、ということがあった。その日は夜でも気温・湿度ともに下がらなかったが、日頃から体を鍛えているプロ野球選手でも倒れるような危険な暑さになったわけだ。なので「夏」に関しては、認識を改める必要がある。特に、東京は、気温を測定している地点が気象庁近くの北の丸公園の中で、都心で最も涼しい場所だ。天気予報を鵜呑みにせず、予想気温にプラス5~8を足した感覚が必要になる。

 が、さすがに9月も中旬になり、夕方には気温が下がってくるようになったので、9/13(土)千葉のライブハウス「瑞庵2」でのオープンマイク「アコギで遊ぼ」に参加させてもらった。ホストの「マーシー」こと小川さんは、カントリーソングを得意とする方で、以前から面識があったのだった。

 

 スライドバーを使った自作曲「パーフェクト・サークル」を演奏中の、わたし。

 この日は参加した方も多く、こじんまりした会場は、ほぼ満席。ハーモニカの独奏や、キイボードとギターのデュオなど、多様な愛好家が集まっていた。皆さんしっかりした演奏で、聞くのも楽しかったし、お世辞抜きで勉強にもなった。また、参加したい。

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わたしのレコード棚ーブルース163 Dan Pickett

2024年09月10日 | わたしのレコード棚
 ブルースという音楽を特徴づけているものに「コール・アンド・レスポンスCall and response」がある。これは、ブルースに限らず様々な民族音楽にあり、日本の民謡などでは「合いの手」に当たる。ブルースマンが一人で演奏する時には、歌い、それに呼応する様に、ギターなどの楽器で「合いの手」を入れるがごとくに演奏する。そこには、様々な演奏パターンがあり、それがそのプレーヤーを特徴づけることになる。

 わたしもブルース・セッションに参加して様々なプレーヤーと演奏したが、このコール・アンド・レスポンスを大切にして演奏する人には、いまだに出会っていない。皆、それぞれに高い技術を持っているミュージシャンだが、自分なりの間合いを習得して「コール・アンド・レスポンス」を入れ、ブルースらしい演奏が出来ている人は皆無だ。わたしの友人は、SNSで公開されている、あるブルースセッションの映像を見て「(ブルースナンバーだが)ロックにしか聞こえない」と言っていた。それはセッションに参加している人が、ロック・ミュージシャンの演奏するブルース形式の曲しか聞いていないことに起因している。やはり、ルーツとなっているブルースマンの演奏を聴き込まなければ本当のブルースは出来ない。

 ダン・ピケットは、スライドギターを中心にしたブルースマンで、この人の演奏を聴くと「見事なコール・アンド・レスポンスだ」と感じる。特に、若い人にはぜひ聴いてほしいブルースマンの一人。

 この人に関しては、出自など長く不明とされており、下のCD解説では「"謎の“戦後カントリー・ブルース/スライド・ギターの名手」としている。が、今では彼の事がかなり判ってきているようで、ウィキペディアなどには、かなり詳しい記述がある。それによると、本名はジェイムス・フォウンティー(James Founty)。生まれは1907年8月31日アラバマ州のパイク(Pike County)。亡くなったのは1967年8月16日で、やはりアラバマ州のボアズ(Boaz)だった、という。


 P-ヴァインから1991年に出た、国内盤CDでPCD-2271。解説は、鈴木啓志氏。ゴーサム(GOTHAM)というレーベルに残した、1949年8月フィラデルフィアでの録音18曲。さらに、ターヒール・スリム(Tarheel Slim)の同年7月の4曲をカップリングして22曲を収録。後世に残すべき優れたCDなのだが、残念ながら今では入手が困難なようだ。ユーチューブなどで聴ける曲もあるので、若いプレーヤーには、ぜひ一度聴いて自分の演奏の参考にしてほしい。

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わたしのレコード棚ーブルース162 Bumble Bee Slim

2024年09月03日 | わたしのレコード棚
 バンブル・ビー・スリム(Bumble Bee Slim)は、本名エイモス・イーストン(Amos Easton)。1905年5月7日ジョージア州ブラウンズウィックで生まれ、1968年4月にロスアンジェルスで亡くなっている。

 日本では、あまりポピュラーなミュージシャンではない。が、1930年代のシカゴではかなりの人気者で、1931~1937年の間に複数のレーベルに160曲以上の録音を残している。芸名の「Bumble Bee」は丸花(マルハナ)蜂という蜜蜂のことらしいが、メンフィス・ミニーのヒット曲に由来しているらしい。あるいは、性的な意味が背後にあるのかもしれない。


 最近入手したCDで、オーストリアのWOLFレーベルのB.o.B6。1934~1937年のシカゴ録音23曲を収録。ジャケットではギターを構えているが、このCD内ではあまりギターは弾かず、歌が中心。バックでギターを弾いているのは、ビッグ・ビル・ブルーンジーやタンパ・レッド、ロニー・ジョンソンなど。ピアノは、ブラック・ボブなどで、当時のシカゴを代表する優れたミュージシャンばかり。
 バンブル・ビー・スリムは、1928年頃にインディアナポリスでリロイ・カーと出会い、友人になったという。その影響か、このCDには『How Long How Long Blues』など、カーの曲が含まれており、かなり原曲に近い演奏をしており、聴きごたえがある。

 しかしその後は人気が落ちたのか、1930年の中頃には故郷のジョージアに帰り、同後半には西海岸へ移ったという。戦後も西海岸で芸人として活動を続け、録音も何曲かしたが、戦前の様な人気は出なかったようだ。

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わたしのレコード棚ーブルース161 John Cephas & Phil Wiggins

2024年08月27日 | わたしのレコード棚
 John Cephas & Phil Wiggins(ジョン・シーファス&フィル・ウィッギンズ)のコンビは、東部ピードモントの伝統的な音作りで、ブルースにとどまらないレパートリーを持つギターとハーモニカのコンビ。

 ヴォーカルとギターのシーファスは1930年ワシントンDCの生まれで、生業は大工さんというが、60歳ころからは音楽に専念したという。ヴァージニア州ボーリンググリーン(BowlingGreen)で育ったので、「BowlingGreen John」とも呼ばれる。2009年にヴァージニアで亡くなっている。
 ハーモニカのウィッギンズは1954年やはりワシントンDCの生まれで、今年(2024年)の5月7日、70歳の誕生日前日にメリーランド州タコマで亡くなっている。

 シーファスはウィッギンズより24歳年長ということになり、親子ほど年の離れた二人だが、息の合った演奏を聴かせてくれる。二人の出会いは、1976年、ピアニストのビッグ・チーフ・エリスを中心としたセッションだったという。エリスの死後、コンビを組んで活動を続け、2001年には来日もしている。





 ドイツのL+RレーベルのLP42031。1980年の秋にワシントンDCでの録音11曲。これが、本格的な初録音で、この後アメリカのレーベルからリリースを続けることになる。ウィッギンズのハーモニカはサニー・テリーの影響が強く、リズミカルに音を切ってゆく演奏は、シカゴのハーピスト達とは違った魅力がある。シーファスの落ち着いたヴォーカルと柔らかい音のギターと相まって、個性的なフォーク・ブルースとなっている。2001年の来日時、わたしは公私ともに多忙で、聴きに行けなかった。惜しいことをした、と今になって思っている。

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わたしのレコード棚ーブルース160 Blind James Campbell & His Nashville Street Band

2024年08月20日 | わたしのレコード棚
 アーホーリー(ARHOOLIE)レーベルの、クリス・シュトゥラッハウィッツ(Chris Strachwitz)が、1962年から1963年にかけてテネシー州ナッシュビルでフィールド録音した音源からのLP。写真を見ると古く感じるが、さほど古い、というわけではない。街角などで演奏されていた、素朴でシンプルな「Colored Brass Band」の演奏を今に伝える貴重な音源。ある意味、素人っぽい、とも言えるが、そこが魅力で分かりやすい、とも言える。



 ARHOOLIEのLP1015。

 リーダーと思われるJames Campbellは、1906年ナッシュビル生まれで、1981年に亡くなっている。ギターとヴォーカルを担当し、Blindということで盲目のようだが、調べてみたら、化学肥料の工場の事故で目を傷めたらしい。ジャケット写真中央でギターを持っている人だろうが、何となく完全に失明しているようには見えない。
 12曲を収録。『John Henry』や『Baby Please Don't Go』などスタンダードなブルースをブラスバンド用にアレンジして、自分達なりの音を作っている。楽器編成・メンバーは、以下の通り。
Beayford Clayーフィドル・バンジョー
Bell Rayーセカンドギター・フィドル
George Bellートランペット
Ralph Robinsonーチューバ

 特に、チューバの低音が他の楽器とうまく絡み、独特な味わいを醸し出している。
 

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立秋過ぎても・・・

2024年08月13日 | 日記・エッセイ・コラム
 8/7(水)は立秋だったが、暑さは収まらず秋の気配は遠い。昨日12日は、台風5号が東北北部を横断し、雨の被害も出ている。お見舞い申し上げます。

 こちら南関東は夜も気温が下がらず、日が暮れてもなかなか30度を下回らない。それがために外出もままならず、ブルース・セッションの参加も見合わせている。冷房を効かせた場で電気楽器を使うのは、資源エネルギーの消耗になるようで、気が引ける。

 最近、我が家の古いエアコンは、外が34度位になるとガタガタと振動しうなりだす。今販売されているエアコンの多くは、すでに、外気温50度を想定して設計されている物がほとんどだ。が、ひと昔前のものは、40度の想定になっている。壁の近くや、直射日光にさらされる設置場所では、すでに、今年の猛暑には耐えられない。体温を超えるような暑さのところでは、エアコンが止まり、熱中症になる可能性もある。お年寄りの一人暮らしなど、暑さを感じにくい人は注意する必要がある。

 昨年も孟夏だったが、それがためにコメが不作。その影響が出て、スーパーなどで米の棚がスカスカになって「お一人様2袋まで・・・」と販売制限がかかっている。秋になり新米が本格的に流通すれば、品不足も解消するらしいが、今年も猛暑で米が焼けてしまったりして不作の見込みという。なので、主食であるコメの値段は高止まりの見込みだ。

 根本的な政策や、ライフスタイルの変更を余儀なくされるだろう。

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わたしのレコード棚ーブルース159Jim jackson

2024年08月06日 | わたしのレコード棚
 以前、ブルース・セッションで若い人と話していた時「俺は元々はアコースティックギターでやってたんだよ」と言うと、彼は驚いて「アコギでブルースやるんですかあ?」と言った。啞然として、次に発する言葉が出てこなかった。今思えば「エレキギターが出来るずっと前からブルースはあったんだよ・・」と言えば、納得してくれたような気もする。と、いうわけで、録音されたブルースの歴史の初期に活躍した、アコースティックなジム・ジャクソンを取り上げることにしよう。ちなみに、エレキギターが商品化されたのは1938年頃だが、その前年にジャクソンは亡くなっている。

 ジム・ジャクソン(Jim jackson)。生まれは、はっきりとしたことは不明だが、1890年頃としている資料が多く、下のLPレコードでは1884年頃としている。生地はミシシッピー州ハーナンド(Hernando)らしい。ショーをして薬などを売る「メディスン・ショー」や、エンターテインメント性の高い「ミンストレル」で芸人生活を送っていた人で、今風にいう「ブルースマン」というよりは「エンターテナー」に近い人だった。1927年10月にヴォキャリオンに吹き込んだ『Jim jackson's Kansas City Blues』がヒットし、1928年にはメンフィスへ移動、様々なプレーヤー達と演奏活動をしている。『Kansas City Blues』は、100枚のミリオンセラーだったという。が、それに見合った報酬は得られなかったのだろう、1930年に最後の録音をした後は故郷のハーナンドへ帰り1937年に亡くなった、という。ミリオンセラーを記録した人が、それに見合ったギャランティーを得られず、40代で亡くなる。これが、100年程前のアメリカの音楽業界の厳しい現実だったわけだ。


オランダのレーベルAGRAMのLPでAB2004。『Kansas City Blues』のパート1~4など、1927年から1929年までの16曲を収録。歌詞と解説付き。


同じレコードの裏面。中央が発売当時のVocalion(ヴォキャリオン)のSP盤のレーベルだろう。

 ブルースの歴史において注視すべき重要な点は、ジム・ジャクソンの「歌詞ー言葉」である。LPに付属している歌詞を見ると、後にシカゴで活躍したブルースマン達が、ここからフレーズを取ってきたと思われる言葉が多くあるのに気付く。「音」ではなく「言葉」が中心だった頃のブルースがここにあり、リズムはシャッフルではなく2ビートに近く、アイリッシュ系のマウンテン・ミュージックにも通じている。ここで聴かれる豊かな言葉、それら全てがジャクソンのものかは分からない。おそらく、当時のアメリカ南部の庶民達が歌っていた言葉を拾い、編集したのだろう。それはそれで、大きな仕事だったのである。

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セイモア・ダンカン、アンティクイティ・ハムバッカー

2024年07月30日 | ギター
 最近、ヤフオクでSEYMOUR DUNCAN / ANTIQUITY HUMBUCKER Neck(セイモア・ダンカン、アンティクイティ・ハムバッカー・ネック)の新古品を市価の半額ほどで入手したので、使った感想を書いておく。



 装着したのは、オリジナルのセミアコ。名前の通りエイジド加工され、見た目が始めから古く見えるように作られている。音質的にも、こなれて、ふくよかな感じ。ロックのミュ-ジシャンがレスポールなどを使うようになって、ハムバッカーの音質もかなり変化し、エッジの効いたパワフルなものに変わった。それに比べ、このアンティクイティ・ハムバッカーは、オリジナルなギブソンのサウンドに近い感じ。エフェクターを使う様な人にはお勧めできないが、古いブルースやジャズのプレーヤーには向いていると言える。

 別にリア・ピックアップもサウンドハウスの特売で購入したが、わたしは、ほとんどフロントのピックアップしか使わないので今のところフロントだけにしている。この方が余計なスウィッチなどが無い分軽く、切り替えの時のトラブルもない。さらに、損失が少ないので音質的にも良いように感じる。ただ、リアピックアップにも利点はある。チョーキング時のゲイン落ちが少ないし、ハウリングを起こしにくい。そして何より、音質的に明瞭で、ハーフトーンをうまく使えば豊かな音になる。なので、いずれは、リアもつけるつもりではある。


 こういうものを買っておいて使わずに売りに出す人がいる、ということ自体なかなか理解できない。落札する時も「ホントに使ってないのか?」と、半信半疑。しかし、実際に品物を手に取ってみると、まさしく開封しただけの新品だった。まあ、安く入手できたことを素直に喜んでおこう。

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2023年日本映画『大いなる不在』

2024年07月23日 | 映画
 7/17(水)千葉劇場にて。監督近浦啓、出演森山未來、藤竜也。

 人の心のあり様を表すのに「知・情・意」と言われる。すなわち「知性」「感情」「意志」で、それらの調和がとれた状態が「心の安定」と、いうことになる。

 藤竜也が演じる老教授は、かつて「感情」に溺れ家庭を捨て昔の恋人との生活に走り、老いた今、認知症で「知性」を失い「意志」も方向性を無くして、全てが崩壊してゆく。映画の画面は、あえて色調を抑え静かに現在と過去とを往復する。藤竜也の老練な演技はさすがだった。が、認知症だった母の介護と看取りをした経験から言うと、劇中、認知症の人の描き方や介護施設の様子などに違和感を感じた。俳優陣の頑張りが好感を持てる作品なだけに、その点が残念でもあった。



以下は、千葉劇場のホームページより引用。
『卓(森山未來)は、ある日、小さい頃に自分と母を捨てた父(藤竜也)が警察に捕まったという連絡を受ける。妻と共に久々に九州の父の元を訪ねると、父は認知症で別人のようであり、父が再婚した義理の母は行方不明になっていた。卓は、父と義母の生活を調べ始めるが―。第71回サン・セバスチャン国際映画祭のコンペティション部門で藤竜也がシルバー・シェル賞(最優秀俳優賞)を受賞。第67回サンフランシスコ国際映画祭では最高賞のグローバル・ビジョンアワードを受賞。(2023年製作/133分/G/日本)』

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フェルナンデス倒産

2024年07月16日 | ギター
 驚きであり、残念なことだが、国産ギターメーカーの「フェルナンデス」が倒産した。製造はOEMで国内のメーカーなどに委託し、主に初心者から中級者向けの、使い勝手の良いギターやベースなどを企画販売していた。奇抜なデザインも多く、ファンも多かったようだ。特に1990年発売の「ZO-3(象さん)」というアンプ内蔵の小型ギターは、ある意味、画期的なものだった。というのも、わたしは1980年代、出張で各地のビジネスホテルを泊まり歩くことが多く、夜にホテルの部屋で練習出来るようなギターが欲しかった。なので、その当時「ZO-3」が出ていれば買い求めていたと思う。


シンプルなタイプの「ZO-3」。すでにサウンドハウスでは、販売を終了している。欲しい人は、今のうちに楽器店の在庫分を探して買っておいた方が良いかもしれない。

 経営の悪化には、材の高騰がひとつの要因というが、若い世代があまりギターを使うような音楽に興味を持たなくなってきたとも言われる。パソコンで入力すれば作曲から演奏まで出来るので、それも時代の流れかもしれない。

 一方で、ビンテージ・ギターやカスタムショップ製の楽器は高騰している。ESPのカスタムショップなどでは、円安の影響で海外からの注文が多く、オーダーしても納品まで2年かかるという。セッションなどでは、盗難や破損の心配があるので良質な楽器を使うのを止めて、安価な楽器や、店の備え付けの楽器を使う人も多い。ミュージシャンにとって、環境は悪化しているように感じる。

 
 以下は、ウィキペディアより「フェルナンデス」の記事の一部を引用。
『1999年1月期には年間売上高40億円に達していたものの、その後中古市場の台頭や競争激化によって業績が悪化。巻き返しを目指すも、2022年1月期は売上高が1億6608万円まで落ち込み、2414万円の最終赤字を計上した。さらに直接の資本関係は無いものの、西日本地区の代理店として関係が深かった大阪フェルナンデスも、2020年の新型コロナウイルス感染拡大に伴う音楽活動規制が元で製品需要が減少したことで債務超過に陥り、2023年に大阪地方裁判所に自己破産を申請、同年4月に破産開始決定を受けていた。こうした事から当社の信用も低下、事業継続も困難となり、2024年7月11日までに事業を停止、弁護士に破産手続きを一任した旨を本社に掲示した。負債総額は2024年1月期決算時点で4億3389万円にのぼる。』

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ギターヘッド装着用タイに結束バンド

2024年07月09日 | ギター
 昨(2023)年、腰を痛めたりして、ギターを弾いていても、疲れが腰に出るようになった。そこでストラップを使い、色々と演奏する姿勢を変えて、腰に負担がかからない方法を模索している。

 所有しているほとんどギターのネックヒールにはストラップを付けるためのピンを打ってあるのだが、今はそれを使わずにストラップをギターのヘッドに付けて、高めの椅子に腰かけ、なるべく背筋を伸ばして練習するようにしている。今のところ、これが腰には楽で、疲れを感じたら、こまめに立ち上がったりしている。まあ、加齢のなせるところなのだが、若い頃は畳の部屋で胡坐(あぐら)を組んでギターの練習を長時間したりしていた。今思えば、背骨にかかる負担が大きく、そのツケがたまっていたようにも思える。若い人たちには、楽器に限らずパソコンやスマホなどを操作する時などにも、腰椎・頸椎への負担を考えて日頃から生活してもらいたい。

 さて、ストラップをギターのヘッドに固定する際には紐で巻き付けて縛るのが一般的だが、これは解(ほど)けたりする心配や、結び目が邪魔になったりする。また、マーチンやダダーリオなどでは専用のアイテムも発売されているが、結構高いし、どうもしっくりこない。
 そこで、安くて強度があり、簡単に着脱出来るようなアイテムを探してきた。再利用できる「結束バンド・リピートタイプ」というもの。ネット通販で、10本入り151円、送料230円を含めると381円。なので、1本あたり38円くらい。劣化してきたら早めに換えられる価格だ。


 幅8ミリ程で、長さは25センチのタイプ。耐荷重は約22キログラムあるというので、十分だ。使っているうちに丸まってきた。


 先端部のツメを押すと、固定が解除になり、繰り返し使える。


 わたしは、こんな感じでギターのヘッドにつけている。この位置が、演奏時に最も邪魔にならず、安定する感じ。傷がついたりしないか気になるところだが、ビニールの様な材質なので、今のところは大丈夫そうだ。わたしは、元々あまり傷は気にならないが、細かな傷等を気にする人にはお勧めしない。

 裏側。少し余っているが、気にならない程度だ。ギターのヘッドが小さい場合は、少しカットしても良いだろう。

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2023年アメリカ映画『ホールドオーバーズ』

2024年07月02日 | 映画
 6/26(水)千葉劇場にて。『Holdovers(ホールドオーバーズ)』とは、辞書によれば「残留者」の意で、アメリカでは「落第して留年した者」の意味もあるらしい。ここは、古風な言葉だが「居残り」とでもいったところ。監督アレクサンダー・ペイン。出演、先生役にポール・ジアマッティ、料理長役にダバイン・ジョイ・ランドルフ、生徒役にドミニク・セッサ。

 半世紀ほど前の、マサチューセッツ州にある全寮制の寄宿学校。クリスマス休暇で、ほとんどの学生や学校関係者が帰郷してゆく。が、3人の人物がクリスマスから年末年始を学校の中で過ごさねばならなくなっていた。親の都合によって帰る場が無くなった生徒、彼を監督・保護する教師、そして、食事の世話をする料理長。3人は、それぞれ心に深い傷を負い、トラウマに苦しんでいたのだが・・・。

 「グリ-フケア(深い悲しみからの回復)をテーマにした文学的な作品」と思った。登場する人物は多くなく、セリフの多くがこの3人の人物によって語られる。特に、先生役のポール・ジアマッティという俳優さんのいぶし銀の様な演技が心に残った。佳作といえる。
 


 以下は、千葉劇場のホームページより転載
『「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」
物語の舞台は、1970年代のマサチューセッツ州にある全寮制の寄宿学校。この高校で古代史の非常勤教師を務めるポール・ハナムはみんなからの嫌われ者。そして一人息子を亡くした料理長のメアリー・ラム、優秀だがトラブルメーカーのアンガス・タリー。それぞれ異なる事情を抱える3人が、クリスマスと年末を共に過ごすことに…。誰もいない学校のなか、ちょっとした冒険や災難を通じて、3人の間には小さな繋がりが生まれていく。第96回アカデミー賞では作品賞、脚本賞、主演男優賞、助演女優賞、編集賞の5部門にノミネートされ、ダバイン・ジョイ・ランドルフが助演女優賞を受賞した。(2023年製作/133分/アメリカ)』



映画とは関係ないけど、おまけで、梅雨時に咲く千葉公園の蓮。6/26(水)午前に撮影。

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漢詩とブルースの詩、その類似性

2024年06月25日 | 音楽
 かねてより漢詩と古いタイプのブルースの詩には類似性がある、と感じていた。わたしは、比較文化学の研究者ではないので具体的な論証が出来るわけではない。が、異なる文化に共通点を見出せれば、相互理解の一助になることもあるだろう。「突飛なこじ付け」と思われるかもしれないが、無理を承知の上で書いておきたい。

 漢詩と言うと、学校で教わったように、難関試験「科挙」に合格した文人エリートたちがたしなんだ教養のひとつで、それを型にはまった読み下し文にして理解しようとする人も多いかもしれない。が、その中には庶民生活を歌ったものも多く、漢字の知識さえあれば大まかな意味と脚韻の面白さを味わうことが出来る作品も多い。元々、漢詩も「楽府題(がふだい)」といって、歌の歌詞が源といわれる。白楽天(白居易)は、作った詩を自ら庶民の前で歌って聞かせ、意味が通じなければ書き直した、という言い伝えもあるらしい。日本の和歌なども、百人一首大会などでは節をつけて読み上げられている。基本、「詩」は「歌」なのだ。

たとえば「詩仙」と言われる李白の詩に、『山中対酌』というものがある。七言絶句、あるいは研究者によっては七言古詩。脚韻に注目。

両人対酌山花 一杯一杯復一
我酔欲眠君且去 明朝有意抱琴

(読み下し文の一例)
『両人対酌して山花開く 一杯一杯復(ま)た一杯
我酔いて眠らんと欲す 君且(しばら)く去れ 明朝意有らば琴を抱いて来たれ』

読み下し文では分かりづらいが、原文の太字にしたところが韻を踏んでいる。「平仄(ひょうそく)」というイントネーションのこともあるが、ここは日本語で、開(かいkai)、杯(はいhai)、来(らいrai)、と音で読めば音感がつかめる。ざっくばらんに、意訳してみると・・・

『裏山の花が咲いて昔馴染みと酒を酌み交わしている まあまあ一杯 と飲み続けていて切りがない
酔っちゃて眠くなった 君悪いが一旦帰ってくれないか 明日も来るなら琴を持って来て聞かせてくれや』


さて、ここでブルースの詩。ウィリアム・ハリスという人が1928年頃に録音した『kansas City Blues(カンザスシティーブルース)』からの抜き出し・・こちらも脚韻に注目。

I wish I was a catfish in the deep blue sea 青く深い海に住むナマズになりてえなあ
I'd have all these women just fishin' after me 泳ぎ回る娘たちを釣り上げてやるのに・・
(refrain) Then I'd move Kansascity・・・(彼女がカンザスに行っちまったから) 俺も行こうかカンザスへ・・

I wish I was jeybird flyin' in the air 空を飛ぶカケスになりてえもんだ
Build my nest some of these her brown hair あの娘の金髪の頭に俺の巣を作ってやる
(refrain) Then I'd move Kansascity・・・(彼女がカンザスに行っちまったから) 俺も行こうかカンザスへ・・

 下線部が脚韻を踏んでいるところ。この様な古い英詩の形式に沿った詩はモダンブルースではほとんど見かけないが、古いブルースでは珍しくない。『kansas City Blues』では、特に下段の flyin' in the airとしている部分に注目したい。「in the sky」とするのが普通だろうが、そこをあえて in the airとして脚韻を踏んでいる。そこに、わたしは漢詩と共通するものを感じる。中国語も英語も語順が意味を決める言語ということで、言語学的に脚韻を踏みやすいという共通した特徴もあるようだ。

 漢詩とブルース。脚韻の踏み方だけではなく、4連の漢詩「絶句」を8小節ブルース、8連の「律詩」を12あるいは16小節ブルース、と、スタンザ(詩の連)の形式に共通性を見い出すこともできる。

 と、まあ、こういうことは演奏してみないと実感できないところ。逆に言えば、学校で読み方や意味を教わっても、作者の気持ちや情趣までは伝わって来ない。学校で得る知識に価値がない、ということではない。その知識を身に沁み込ませるためには、自ら一歩踏み出して、作品と向き合う必要がある、ということだ。

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