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文化逍遥。

良質な文化の紹介。

2015年デンマーク映画『ある戦争』

2016年10月28日 | 映画
 10/27、木曜メンズデイの千葉劇場にて。デンマーク語の映画。英題は『A War』となっているので、邦題はそれの直訳らしい。原題は『Krigen』。デンマーク語のことは全くわからないが、ドイツ語で戦争は「Krieg」なので、「戦争」を意味しているのだろう。





 アフガニスタンに平和維持のために駐留するデンマーク軍の部隊長クラウス。部下や地域住民を失いながら、過酷な戦闘の中で空爆要請をせざるを得ない状況に陥る。が、その空爆により住民が巻き込まれ、子どもまで亡くなってしまう。彼は国際人道上の罪に問われ、本国での軍事法廷に臨むことになるが・・・。監督・脚本はトビアス・リンホルムという人で、監督及び俳優さんのレベルも高い。平和で便利なデンマークでの暮らしと、紛争に明け暮れる苦難に満ちた国とを対比する映像も効果的で、デンマーク映画も完成度が高いな、と感じた。

 武力に対して武力で対抗するしか手段がない状況の中で起こる不条理を描いた戦争映画の傑作と言える。
 

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CD『The Kentucky Colonels - Long Journey Home』,vanguard-VCD77004

2016年10月21日 | わたしのレコード棚
 自分の所蔵CDの中から、最近聞きなおしている一枚。ケンタッキー・カーネルズ。


 1964年、ニューポート・フォークフェスティバルでのライブ録音。アメリカでは公民権運動の盛んな頃、一方、東京ではオリンピックがあった年になる。基本的にはブルーグラス・ミュージックということになるだろうが、ギターのクラレンス・ホワイト(1944-1973)とドグ・ワトソン(1923-2012)のデュオが6曲入っていて、それが実に良い。ライブ演奏なので、ミスタッチもあるが、ライブゆえの緊迫感と高揚感が伝わってくる良い録音となっている。さらに、バンジョーの名手ビル・キース(1939-2015)とカーネルズの共演も4曲入っていてブルーグラスバンジョーの豊かさを聞かせてくれる。
 クラレンス・ホワイトは、マーチンにその名を冠するラージホールのギターモデルがあり、ザ・バーズのギターリストとしてロック・ミュージックの歴史にもその名を残しているが、29歳の若さで交通事故により亡くなっている。惜しいことだ。

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アンジェイ・ワイダ監督を悼んで

2016年10月12日 | 映画

 10月9日、映画監督アンジェイ・ワイダ氏が肺不全により亡くなった。90歳だった。
 わたしの観た同監督作品を年代順に並べてみる。括弧内は制作年。

「地下水道 Kanał」 (1957年)
「灰とダイヤモンド Popioł i diament」 (1958年)
「大理石の男 Człowiek z marmuru 」(1977年)
「悪霊 Les possédes」 (1988年)
「カティンの森 Katyń」 (2007年)
「ワレサ 連帯の男 Walesa. Czlowiek z Nadziei 」(2013年)

 どれも優れた作品だが、最も心に残っているのは「悪霊」だ。ドストエフスキーの原作だが、わたしのような文学部出身者はどうしても、言葉を重んずる傾向にある。ましてや、原作があまりに文学史上大きな作品で、観る前にすでに読んでいる場合はセリフばかりが気になるものなのだ。が、この映画は原作の言葉をかなり忠実に使っているだけでなく、映像も大変優れたものだった。
 さらには、アンジェイ・ムラクチク原作の「カティンの森 」。ワイダ監督のライフワークとも言える作品だろう。ポーランドのみならず、ヨーロッパ、あるいは世界の、あるいは人の心の暗部を描いた映画史上に残る作品といえる。


集英社文庫の『カティンの森』。

 言葉の真の意味で「文化を担える人」を世界は失った。合掌。

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