古代ローマの競技場で100年続いたオペラがあるそうなので、ちょうど100年目の2013年8月10日、ヴェルディの「アイーダ」を観てきました。
アレーナ・ディ・ヴェローナは、古代ローマの2000年近く前の競技場で、外側の壁は失われていますが、内側2層の壁とその上の観客席はほぼ完璧に残っています。このすごい舞台で、100年前から、国民的作曲家であるヴェルディのために始まったのがここの音楽祭で、そして今年はヴェルディ生誕200年のヴェルディイヤー。
装置は100年前の初演時のものを復刻して上演されています。
この日はまずヴェローナ市長が開演前に挨拶。イタリア語、英語、ドイツ語の順で噛みながら読み上げます。ドイツ人客は圧倒的に多いです。昔この辺はハプスブルグ家のオーストリアに占領されていて、そこからの独立と国土統一機運のシンボルになったのがヴェルディの音楽なんです。
このヴェローナの音楽祭は、ひと夏に何十回もの公演があり、数十万人が訪れます。そのためアレーナの周辺の商店は、オペラの前後に店を開けていて、アレーナ前の広場はお祭り騒ぎになります。オペラ自体が町の文化になっているのです。
肝心のオペラは、超一流の出演者とオケで、見事な水準の演奏をやってくれます。何と言っても古代エジプトの雰囲気が、しっくりこの競技場跡に合っていて、「ここでアイーダを上演しよう!」と考えた1世紀前の人びとの気持ちが良くわかります。
「アイーダ」は、国家や宗教という理不尽な重圧の中で、人びとの嫉妬と愛憎が渦巻き合う様を音楽でこれでもかとばかりに劇的に盛り上げる、まさにオペラ、まさにヴェルディという、鉄板演目です。最高の興奮を指揮者が盛り上げてくれます。演劇的カタルシスの極致ですね。日本公演に来るキャストがかなり出ていました。
第3幕 アイーダのオヤジであるエチオピア王が、娘に裏切りを強要する名シーン
最後はアイーダと恋人が死んで、アイーダの恋敵が「平和を」と歌って静かに舞台が終わりますが、その瞬間絶妙のタイミングで、スタンドから「ビバ・ヴェルディ!」のかけ声がかかり、みんなオペラに拍手しているのか、この声に拍手してるのかわからなくなりました。
おいしいところを全部持って行ったこの声の主は、ジャンカルロという、この町の有名人らしい。アレーナの隣の、トレ・マルケッティで食事していたら、店先を冷やかしに来ました。この人もついでに来日公演に加えてほしい。
オペラの前に食事でワインをしこたま飲むし、シャンペングラス片手に観ているので、オペラの中身はよくわかっていません(キリッ
まあそんなわけで、この町に染みついたオペラ文化を堪能して、午前1時半終演。みなさん家路についたのでした。