
財部誠一さんの新著
『シェール革命 繁栄する企業、消える産業』(実業之日本社)を拝読しました。
昨年取材の際の印象を伺ってはいたのですが、テキサスまで行って取材しただけあって、シェールガス・オイル開発の技術やビジネスの広がりを、一冊でとてもよく伝える本になっています。数値的なわかりやすい資料もたくさん載せていて、シェール革命を概観するにはちょうどよい本だと思いました。
「革命」と言っているくらいで、シェールガス開発は巨大な規模の経済的変化をもたらすということですが、その主な影響は新規ビジネスチャンスの創出の他に、燃料価格低下によるアメリカの製造業復権と投資価値の上昇。中国の工場立地としての価値喪失、空洞化。エネルギー産出国の立場の変化と、中東におけるアメリカの軍事的プレゼンスの変化の可能性などです。
まさに巨大な変化の波であり、この本ではそうした中で新規のチャンスを掴む日本企業が具体的にどの程度の売上を上げられるかまで予想されています。
アメリカでのシェールガスの価格は一時2ドル/百万BTUまで暴落し、今4ドル程度ですが、パイプラインの安全に依存しているという脆弱性もあって、将来も含めて安定的ではありません。
そしてわが国のようにシェールガスを液化天然ガスとして輸入する場合は、液化のコストがかかるため、エネルギーコストの圧縮効果はそう期待できるほどのものではないかもしれません(現在16ドル程度のLNG価格が10~12ドルに低下と想定)。
とはいえ、本書内でも指摘されていますが、過去の日本が原発導入に突っ走ったのは、発電コストが安いからではなく電気を安定的に調達するためでした。今後世界一のエネルギー供給国となることが確実なアメリカから、シェールガスを大量に輸入できるようになれば、中東依存から脱却できるため、エネルギー安全保障上計り知れない値打ちがあります。
コスト的にも、使用済み燃料最終処理の費用が一体いくらになるのか想像すらできない原発に比べれば、地に足の着いたエネルギー源と言えるでしょう。
ところで年末に、神戸にある某社の社長さんにお目にかかったのですが、その会社は高温超電導の直流送配電によって電力を減衰することなく遠隔地に運搬する技術の確立に成功しつつあるのだそうです。すでにNTTや蓄電池メーカーと北海道でプラントを作って実験しているとのこと。
この技術が確立されれば、アメリカやカナダでシェールガスで発電した低コストの電力(や水力発電の電力)を、日本が買えるようになるでしょう。もっと言うなら、夜間余っている電力を、地球の裏側の国に供給することによって、地球全体の電力効率を劇的に引き上げることも可能になるはずです。
それでも、問答無用で原発推進なんですかねえ。原発なんて半世紀前のパラダイムですよ。いま現在15万人が避難生活を送ってるんですよ。子どもが甲状腺がんになって、一生薬漬けになってるんですよ。
政策立案者は、みんな寝てるんですかねえ。海の向こうでは革命が起きているし、技術革新も日進月歩で進んでいるというのにねえ・・・