八国山だより

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NHK改革

2006-06-06 15:31:38 | ニュース・時事
一連の不祥事とそれに端を発した受信料支払い拒否をきっかけに、竹中懇談会、与党委員会、規制改革会議でさまざまな改革ブランが出されている。いずれも受信料義務化(規制改革会議では、「報道等は受信料で、娯楽は有料で」との案)とチャンネル数の削減が打ち出されている。

独立公正であるべき放送番組の編集に関し、政治家(安部、中川)に放送前に内容を打診し、政治家が注文をつけているのが事実であることは、朝日新聞とHNKの論争では曖昧なままだがインターネットでは明らかになっている。

このことは今は置いておいて改革がチャンネル減というサービスの低下とは妙な考え方だと思っていたら、ほかの点でも問題があることがわかった。*
NHKのBS放送は"「全国にあまねく」地上波放送を届けるための難視聴対策であった"にもかかわらずその経緯を無視してBS放送をなくそうとしているようである。これでは地震など災害に関する緊急時に必要なニュースを得られないところが出てくる。

また、同じく減らそうとしているラジオのチャンネルは、高齢者の楽しみを奪うことにもなる。

3つの会議はいずれも「有識者」が構成メンバーとなっているのだろうが、効率(コスト)ばかりを考えて公共性を見落としているのではないか。

* 毎日新聞の記事による
<以下引用>

デジタル放送の課題:政府が検討中の「NHK改革」の大間違い(8)

 竹中平蔵総務相の私的懇談会「通信・放送の在り方に関する懇談会」(座長・松原聡東洋大教授)が打ち出したNHK改革案の中核は、ラジオ1チャンネル、BS放送1チャンネルを削減し、受信料の引き下げを行うというものである。本末転倒としか言いようのない形式的な改革案に過ぎず、国民の期待を大きく裏切るものとなった。【西正】

◇BS放送スタートの経緯

NHKのBS放送は、今でこそモアチャンネルと位置付けられているが、そもそものスタートの経緯は「全国にあまねく」地上波放送を届けるための難視聴対策であった。

 日本国内には山間部など地形的に地上波が届きにくい地域や、多くの離島が存在しており、そうした地域にはBSという衛星を経由して放送を配信することが効率的であった。

 今では民放も含めてBSデジタル放送のチャンネル数は増えたが、その中でNHKのBS放送だけが階層伝送技術を取り入れて降雨減衰の対策にコストをかけているのも、地上波の難視聴対策としてスタートし、今もなおその責務を負っていることを示している。

 単なるモアチャンネルであるならば、NHKだけがコストをかけて階層伝送を行う理由はない。台風の時などに放送が切れてしまったのでは、災害情報などを放送する責務を果たせないからである。そうした側面を無視してBS放送のチャンネルを削減してしまうと、結果的に同じ日本国内に住みながら情報過疎となる地域を生み出しかねないばかりか、緊急時の放送責任を果たせなくなってしまう。

 チャンネルさえ減らせば、その分だけコストを下げられるので受信料も下げられるだろうという発想では、そうした地域に住む人たちの暮らしに大きな影響を与えることになるという認識が欠如しているように思われてならない。

 BS 放送については独自の編成を行ってはいるものの、地上波と同じ番組も多く放送されている。朝の連ドラや日曜夜の大河ドラマを、BS放送では時間を変えて流しているが、これはタイムシフトサービスが主眼なわけではなく、あくまで地上波が届かない地域の世帯に向けたサービスの一環なのである。

 NHK のBS放送チャンネルが、独自番組ばかりで埋め尽くされているのなら、1チャンネルを削減すればその分の制作コストが減少する計算になるが、地上波と同じ番組も多く放送している以上、単純に1チャンネルを減らしてもコストはそう大きくは下がらない。BS放送用に作られた番組が地上波で流されることもある。その場合もコスト削減効果は期待しにくい。

 民放キー局各社がBS局の経営を軌道に乗せるのに苦労しているのは、地上波局とBS局が別会社形式になっているためだと指摘されている。別会社であると、地上波とBSとの間で番組のやり取りを行う際に、通常の番組販売の形を採らなければならない。民放キー局各社が大きな制作予算を持っているのは地上波の方である。地上波で放送するために作った番組を、簡単にBS局が使うことはできない。

 NHK の場合には地上波もBSも同じ法人が放送している。そのため、番組のやり取りが自由に行える。民放キー局の中には、NHKと同じように一局二波を希望する局があるが、NHKが地上波とBSで同じ番組を流すことをいかにコスト負担の少ない形で行っているかを物語っていると言えよう。

 逆に言えば、BS放送の1チャンネルを削減したからといって、受信料を単純な割り算で下げるようなことをしてしまうと、全体の制作コストを圧迫することになり、結果的にNHKの番組のクオリティーを下げることにしかならないことが懸念される。

◇ラジオについての考え方

 NHKのラジオは受信料の対象となっていない。テレビ受像機を所有していることが受信料支払いの根拠となっていることからすると、受信料はテレビ番組の制作費にだけ充てられていると考えられがちだが、実際にはラジオ番組の制作費もまかなっている。

 そういう意味では、ラジオ1チャンネルを減らすことは、コスト削減につながることは間違いない。ただし、若者に人気のあるメディアの主流がテレビから、ネット、携帯電話へと変わりつつあるため、NHKラジオのリスナーの中核層は明らかに高齢者である。地方に行けば行くほど娯楽は少なくなる上に、年齢構成も高くなる。

 高齢化社会の到来と言いながら、その高齢者の人たちが楽しみにしているラジオのチャンネルを減らそうという考えである。「消費者の視点」で改革を行うと言いながら、あまりにも経済効率だけを優先しているように思えてならない。

 受信料を黙々と納めている高齢者から、ラジオのチャンネルを奪ってしまい、その結果、受信料を下げることができたとしても、そもそも誰のための改革なのかが不明瞭になるばかりだ。ラジオもテレビもあってのNHK受信料である。ラジオの料金は取っていないように見えるというだけでラジオの制作費を削減するというのでは、公共放送の原価構造についての知見の低さを見せつけられるだけだ。

 元々」の経緯を考えれば、今の受信料不払い問題は、NHKの一部職員が起こした不祥事に端を発している。国民が受信料不払いによって訴えたかったことは、テレビやラジオのチャンネルを減らしてほしいというものではなく、受信料を安くしてほしいというものでもなかった。

 根本的に解決が迫られているのは、NHKのコンプライアンスの在り方についてである。不祥事の起こりにくい体制にするにはどうしたらいいかということを、国民は皆、改革の成果として期待していた。

 肝心のコンプライアンスについては言及する程度の提案しか行わず、テレビやラジオのチャンネルを減らして受信料を引き下げるという「目に見える」改革案というのは、これまで散々批判されてきた「箱物行政」と何ら変わらないではないか。

 そうした姿勢がNHKラジオについての考え方一つから手に取るように明らかに見える。竹中総務相とその私的懇談会が提案するNHK改革がいかに的外れなものであるか、懇談会の議論を締めくくる時期になって、その馬脚を現すに至ったということだろう。

 2006年6月1日
</引用終わり>