京都 洛北の時計師 修理日記

時計修理工房「ヌーベル・パスティーシュ」京都の洛北に展開する時計修理物語。
夜久野高原で営業再開しました。

時計師の京都時間「京の大人時間」

2018-06-17 09:29:49 | 時計修理

6月17日日曜日。「父の日」
スーパーへ行って初めて今日は父の日だと知らされる。
何とも詫び寂びの父の日なのだ。
最近父の存在価値が急降下しているのをひしひしと感じる。
戦後からアメリカ社会をキャッチアップしてきたので当然の結果でしょう。
まだ銃規制だけは残っているのでまだいいのかと思う。

それにしても大学生になっても腕時計をつけていない通学風景を見てしまう。
左手はすっぴん。スマホがあるので腕時計は必要ない社会なのでしょう。
それは日常会話程度の語学力と一緒。ビジネス社会は甘くない。

「人時生産性」ますます高度なスピードが要求されるシーンでスマホを顔に張り付けいているおバカはすぐに戦力外。
もっとも政治家のお仕事ならそれでいいかもしれない。
国会では1年以上も夫婦の森友・加計による詐欺事件のグタグタを引っ張っている間に格差不況は進む。

時計業界でいうと70%の売上が関東周辺によるものです。地方の富裕層は東京・銀座で時計を買う。
工房は北区の高級住宅街にあるのでサイズ調整などお買い物の後始末を依頼されます。

「この時計が1週間で2分も進む!不良品じゃないのか?」と買ったばかりの機械式時計を持ってくる。
「そりゃ~ひどい不良品をつかまされましたね‼詐欺にあったのだからすぐに買ったお店に行って交換してもらいましょう!」
などと盛り上げたい気分だが正確な情報を伝える事になります。

販売店では機械式時計は遅れるというリスク説明を省いて接客する結果、こんな客が工房に来る。
パティック・フィリップ、オーディマ・ピゲ、バシェロンの高級時計3大トップブランドも機械式時計なら週二分程度進んで当たり前です。
コスパが高く正確で安い時計がお気に入りならヨドバシカメラの3000円くらいのサンフレームで十分です。
わざわざ東京まで行くことはない。

最近「京父の日プレゼントの売上」と「目利き」が急減してきた。
尊敬される父親が減ってきた結果だと思う。安倍のお坊ちゃまのような口先だけで生きているおやじが最近目立ちます。

「京都時間」
「田舎の三年、京都の昼寝」
ひと昔は京都で修行してきた!というとそれだけでブランドの価値がありました。
 特に最短時間でキャッチアップ能力、優先順位の選択スキルが身につく街でした。

例えば京都へ観光に来る旅行者一つにしても大切にする優先順位がある。
修学旅行者、大学生、東北/九州など遠方からの客の順。
一番粗末に扱われるのが京都から半径200キロ以内の日帰り客でしょう。利益にならない。

京都で一番大切な修学旅行の生徒です。
普通の3倍ほどの高額な費用をかけてポンコツ市バスでもみくちゃになってもクレームはない団体さんです。

岡山在住時代、中学生だった次女の旅行先が京都。不満たらたらの娘。
宿泊先は京都駅前にあるポンコツ旅館に不味いごはん。まるで子供だまし詐欺のような不幸話しでした。
宿泊先へ娘に会いに行った義母まで怒り出しました。
その後、京都の名水と言って水道の水を飲ませていたなど社会問題化されたので改善されたと思っていた。
先日おきた食中毒事件にがっかりします。

夕食でハンバーグ、刺身が出たという。
海の近くの日立市育ちの子供たちに古い刺身を出す神経がたまらない。

京都で一番大切なお客さまであるべき修学旅行生に毒を食わせるホテルがあったのだ。
楽しい思い出を体験してほしいのに予定を切り上げて地元へ戻った生徒たちの悔しさを想う。
「信長さんなら打首やでぇ~!」

私の学生時代アルバイト先の料亭で鍛えられた思い出がある。ここでも信長さんがよく出てきた。

野球でいうとリトルリーグの子供がいきなりメジャーリーグに入れられた。
オーケストラでいうといきなりベルリンフィルのメンバーになったようなもの。
京料理は世界トップレベルの存在です。
その経験があったから厳しい時計業界にも難なくこなせたと思う。
真冬にも関わらず足場には水をひっきりなしに撒く。真夏に汗をかいてはいけないなど不条理な世界。

手に少しでも傷があると中毒が怖いというより大切な食材に失礼なので即刻帰される。
もやしは頭としっぽをとる。鯖節、鰹節の削り方はそれぞれ厚みが違うのや~。
立ち位置の姿勢矯正から始まり歩き方も右足から一歩をだす足の運び、目線の先をまっすぐに歩くこと、食器などは必ず両手を使う。
私の場合常に両手を使うことを最後まで注意された思い出がある。
「田舎者は片手で済ませるのですぐに分かる。京都の大人を見ろ!いつも両手を使うことが自然に身について来るもんや!」

その後若い時計師に時計を両手で持つことを厳しく教えるようななった。私の部下はさぞかし迷惑な上司だったと思う。
「いま!反対に手はなにをしているのかなぁ~!」

一番厳しかったのが時間配分です。
煮炊きの時間やら食材の準備時間などすこしでも遅れると「腐る!」と捨てられてしまう。
「割烹」と「料亭」の大きな違いは出された料理の温度です。
熱々な状態なら割烹、お年寄りでも舌触りが優しいのが料亭です。
このためには食器の温度にも関係するので季節によって備える場所も変わる。

そんな料理を煙草をすいながらのんびり食べられると横で見ていてもがっかり。
「京都に目利きが少なくなった。」
今回の食中毒事件は残念ながらその表れなのでしょう。

「火事と中毒」には安全な街だったのが神話にならないように京都に小うるさい「京のこせじじい」がいるのだ。
「今日は父の日、京都には無駄なものは一つもない!」
娘婿さんから父の日のプレゼントでお酒をもらった。今日は早めに帰る。
お早めにお越しください。






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