池袋犬儒派

自称「賢者の樽」から池袋・目白・練馬界隈をうろつくフーテン上がり昭和男の記録

人生に成功する人と失敗する人

2022-04-22 16:55:31 | 日記
サーヴァッティのジェータ林にデーヴァター(神性とでも言うのか。神や主人を指すデーヴァの抽象名詞、女性形)がやってきて、ブッダに詩の形式で問答する。このデーヴァターは、身を隠す必要のある高貴な女性を指しているのではないかという学説もあるらしい。

これは、サンユッタ・ニカーヤの有名な一群の経典と同じ形式。
それがスッタニパータに入っている。

これらの経典は、弟子に説示するときと違って、ちょっと世俗のことに触れている箇所が多く、なかなか面白い。
同時に、これらの経典がどのように生まれたかを暗示しているように思う。

ここでデーヴァターは、「(世の中には栄枯盛衰があるが)滅亡する人とはどんな人か?」と質問する。

ブッダの答えの第一は、あっさりしたものである。
中村先生の訳がわかりやすいので、出しておく。

92.
‘‘Suvijāno bhavaṃ hoti, suvijāno parābhavo;
Dhammakāmo bhavaṃ hoti, dhammadessī parābhavo’’.
「栄える人を識別するのは易く、破滅する人も易しい。理法を愛する者は栄え、理法を嫌う人は滅ぶ」
bhavaṃは栄える人、dhammadessīは理法を嫌う人。



結局、自分と世界をよく見て理解している人が最終的に「栄え」に至るということだろう。

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シェークスピア・アンド・カンパニー

2022-04-17 14:43:49 | 日記
『シェークスピア・アンド・カンパニー』は、パリのセーヌ河岸にある本屋。英語専門の本が山積みになっており、内や外に椅子が置いてあり、座って読むことも可能である。
ヘミングウェイなど、パリに住んでいた英語圏の作家がよく通っていたらしい。
また、作家志望の青年たちにチャンスを与える本屋であったことも有名。
そこが、コロナ禍で経営難に陥ったのは2年前。オンラインの商品購入をお願いしていた。
さっそく、女房がノートやTシャツなどを注文していた。
もちろん、私もパリにいた時に何度か行ったことがある。ユニークな店である。
これをアドルフ・ダシエの動画のパネルにも使わせてもらっている。


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ライナー・マリア・リルケ【白】(森鴎外訳)

2022-04-16 13:37:02 | 日記
ライナー・マリア・リルケ【白】(森鴎外訳)


この読後感を何と表現したらいいのか、よくわかりません。現実と夢想、聖と俗、生と死、美と醜がまじりあい、不思議な世界を形作っています。
それにしても、鴎外の翻訳が素晴らしいですね。この翻訳が世に出たのは明治四十三年。ですから、まだ口語体というものが固まっている時期ではないはずです。なのに、現代で我々が採用している文体とほぼ同じ形で翻訳しています。日本語と外国語によほど通じていなければできない技でしょうね。
クレジットの通り、今回、はじめてVOICEVOXを使わせてもらいました。慣れないのでうまく編集できなかった点はご容赦ください。それにしても、こんな優秀なソフトが無料で使えるというのは素晴らしいことです。
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バーラドヴァージャ(スッタニパータのエピソード)

2022-04-15 12:52:53 | 日記

托鉢の列にいたブッダに、バーラドヴァージャは尋ねる。
(以下、正田先生の訳文を拝借)

「道の人よ。わたしは耕して種を蒔く。耕して種を蒔いたあとで食べる。あなたもまた耕せ、また種を蒔け。耕して種を蒔いたあとで食べよ」

まあ、早い話が「あんたは何も労働しないのに、労働した人から食べ物をもらっているじゃないか。ものを食べたいのなら、托鉢なんかしないで働け」ということだろう。

それに対してブッダは「私も耕して、種を蒔いて、食べる」と答える。

バーラドヴァージャが「あんたは耕作の道具も何ももっていないじゃないか」と言うと、ブッダは詩の形式で答える。

77.

世尊は答えた〕「信が、種子です。苦行が、雨です。わたしのばあい、知慧(般若・慧)が、軛[くびき]と鋤[すき]です。恥〔を知る思い〕(慚)が、轅[ながえ]です。意[おもい]が、結び紐です。わたしのばあい、気づき(念)が、鋤先と刺し棒です。


78.

身体[からだ]が守られ、言葉が守られ、腹において食が自制された者として、〔わたしは〕真理という草刈りを為します。わたしのばあい、温和〔な心〕が、解き放ち(放牧)です。



以下、ずっとこの調子で続く。
つまり、ブッダが耕作しているのは田畑ではなく「心」である。
食べ物より心が重要なのである。
食べて生き延びるだけなら、落ちているものを拾ってでも生きていけるが、心を耕作し、きちんと収穫するのは並大抵ではない。
心を優先したがために飢え死にしてもかまわない。それが出家の覚悟なのだから。

昔、日本の住職が、寺の墓地を抵当に入れて大量に宝くじを買い込み、ぜんぶ外れて大損をこき、檀家から怒られたという話を聞いたことがある。なんとも・・・
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青白い炎ーサミュエル・ベケット

2022-04-13 09:15:01 | 日記
このサムネイルに使ったのはベケット。
もちろん、この動画の根幹部分にベケットの作品があるからだ。
いかにもやせ細って虚弱な老人に見えるが、その一方で、この鋭い眼光が見る人を圧倒する。
彼は、極度の近視であり、目にいろいろなトラブルを抱えていたようだ。その点は、同郷の師匠ジョイスと似ている。
胃腸もだいぶ弱かったらしい。飲酒や喫煙をやめなかったことも影響しているのかもしれない。
満身創痍の老人なのに、この写真は、彼の精神性を輝やかせている。

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