水に浮かび物思う

カリフォルニアの海でカヤックに出会う。キャンプやハイキングの話も。

無人島キャンプトリップ 紀伊長島鈴島 その1

2008年03月09日 | カヤック

3月3日から5日まで二泊三日で三重県の紀伊長島へキャンプトリップへ出かけた。自宅から目的地まで高速をフルに使ってちょうど3時間。ぼくは、だんだんと深まる森の景色の中でうきうきした気持ちを鞠のようにはずませながら運転を楽しんだ。

途中で『ホップ ステップ 中部!』と書かれた看板を発見する。一体どのような効果を狙っているのかよく分からないのだけど、面白いから笑ってしまう。なんか日本ってこういった類の看板が多い気がする。まあ、べつにいいんだけど。

紀伊長島の道の駅「マンボウ」で県産品をいくつか買い込み、出艇地である三浦海岸へ到着した。ここでウィスパーを組み、パッキングをして、出発!



いやー景色がいいなあ。やっぱり舟の上から連続的に動く景色を見るのは格別だ。ずっとゴタゴタしていてカヤッキングから遠のいていたお陰で最初は体の座りが悪かったのだが、次第に舟との一体感が戻ってきた。水の上をすべる感覚って、いいなあ。漕いでいるだけで、楽しい。



はやくキャンプ地を見つけて安心したい。ぼくはバウを鈴島へ向けた。鈴島の西側には広めの浜がある。フムフム。そこからじっくりと観察しながら時計回りに島を5/4周した。



島の南側へ回ると太平洋のうねりを感じた。湾から漕ぎ出して、うねりに出会うとわくわくしてくる。荒々しい岩の模様に目を奪われる。絶壁にねじれた断層が顕(あらわ)になっている。小さな舟の上から眺めるとそれは圧巻であった。





島の西側は北風の通り道になっていそうだったので、島の北側の浜をキャンプ地に設定。玉砂利の浜に上陸し、風の少なそうな場所にテントを張った。



まずは一人で祝杯(無職のくせにビールはリッチ。これをいうのも今回が最後かー。というか、願わくば最後であってほしい)。かー!うんめー!



テントも張った。寝袋も出した。ウエアも替えた。ビールも飲んだ。さあ、焚き火の仕度でもしますか!一人ではとてもじゃないけど燃やしきれないほどの流木がある。それも水はけのよい玉砂利の上でからからに乾いた流木だ。ちょっと体を動かしたら必要な量の薪はすぐにそろった。



無洗米を水につけて、薪を組む。熊野の山々の向こうに沈む太陽を眺めて、十分暗くなったところで、ぼくは薪に火を入れた。



パチパチと気持ちのよい焚き火の音を聞きながら、ぼくは食事の仕度を開始した。小さなコッヘルに5cm大のネギを敷き、シイタケを乗せ、スライスの豚肉を上に置く。酒をどぼっと注いでふたをして、アルコールバーナーの上に置けば、あとは匂いが料理の完成を知らせてくれる。最後にショウユをかけたら ready to eat。ネギのとろみがスープに出て、冷めにくいのがよかった。シイタケがほどよく脂を吸って、うまい。

アルミフォイルでこぶしを包むくらいの大きさの「かまくら」を作る。球をすぱっと半分に切った形だ。このかまくらに皮をつけたままの里芋をいれて、焚き火に向けて地面に置いておく。手をかざして10秒我慢できない位の距離に置くといいと思う。焚き火の赤外線調理だ。アルミフォイルは素晴らしく赤外線を反射させるので、火に当たってない里芋の裏側にも熱がいく。アルミフォイルはなかったらなかったで、構わない。時々角度を変えてやればいい。

ごはんと酒蒸しを食べ終えて、ビールを飲みながら待つこと90分、ホクホクの里芋が出来上がった。ナイフで半分に割って、小さなスプーンでほじって食べる。うまい!!栗に勝るとも劣らない香り、キメの細かい滑らかな舌触り、適度な粘り。へええ、里芋っておいしいなあ!

ちびちびやっていた日本酒の瓶を脇に置き、ぼくは焚き火の脇の玉砂利の上に寝転がった。暖かいし、煙は上へ行くので目も痛くならない。星空がとても綺麗な夜だ。

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ただ存在しているだけの一年だった、と思う。仕事は無く、経歴がいくぶん特殊だったぼくは就職活動をしても一向に良い返事をもらうことが出来なかった。貯金がするすると減っていくのが怖くて好きな本すら買わないように努めていた。しかし好きな時間に風呂に入り、家族や友人に酒を奢ってもらい、適当に運動をし、少し机に向かう生活は、それはそれで悪くない。いやむしろ快適ですらあった。しかし、そんな幸せな生活を享受するに値する貢献をしていないことが、ぼくの心の足枷になっていた。

くすぶった一年から脱却して、ぼくは今次のステップに進もうとしている。これから新しいことがきっといろいろ起こるだろう。そういう前兆を感じる。助走の距離が少しばかり長かっただけだ。自分の足についていた足枷は、自分で作った幻想なのだ。足枷がなくなれば、思えばナカナカ楽しい一年だったと感じることが出来るようになる。いっちょキャンプトリップにでも行ってやろうって気になる。

ぼくは一人ぼっちのキャンプに特有な濃密な時間の中で、そんなとりとめのないことを考えていた。


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4 コメント

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狭くて多様な日本。事前調査の必要性が (miti)
2008-09-15 23:38:01
はじめましてがこんな文章ですみません。

鈴島は植生の特異さゆえ、許可なくしては上陸禁止の島です(調べると環境庁の許可が)。

よそのブログでの記述を借りますが(検索で出るでしょうがここでは伏せます)
>>今、流行りのシーカヤックをやっている連中は、時折無許可で上陸しているようです。上陸するだけなら、いいのですが、ゴミを置いて行ったり、貴重な植物を盗んで行ったりする輩がいるから困るのです。

そのような輩と同類扱いされるのは悲しいですが、通りすがりに見られれば一緒くたです。
ネットのブログに書かれているので、検索などで公開情報扱いされるのも問題だと思い、とりあえず一報入れさせていただきましたm(__)m
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追記 (miti)
2008-09-15 23:44:23
先の僕の書き込みは、僕の知った時点の情報を元に検索した結果を元に書いたもので、
現在は異なる可能性もあります。
そのことを述べ忘れておりました。
現状が違っていました場合はご容赦ください(^^;
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Unknown (サトウ)
2008-09-19 23:27:40
はじめまして。

>> 鈴島は植生の特異さゆえ、許可なくしては上陸禁止の島です

最初に訪れた時は鈴島が上陸禁止とは知らずにキャンプをしてしまいました。
二度目に紀伊長島に訪れた時にはこのことを知っていたので、上陸はしませんでした。
知らずにやったこととはいえ、情報収集を怠った自分に非があり、反省しています。
ご報告、ありがとうございました。

このブログを読んでいただいた方も、鈴島には上陸しないように注意してください。

管理人
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上陸禁止 (ykusa)
2009-04-30 18:39:23
 こんにちは。ブログを読ませていただき、少し気になったものですから
書き込みをさせていただきます。

自分もカヤックを一寸だけやっているものなのですが・・・
以前この件に関して調べたことがありましたので・・・


鈴島は上陸を法的に禁止しているということは無く。鳥獣特別保護区だから立ち入り禁止と
言うのは完全な間違いです。(暖地性植物群落内への立ち入りは規制されています)

鳥獣保護の活動を行っている方々の思いが強くその様に言ってしまったという事を聞いたことがあります。
少し乱暴だな~とも感じましたが・・・・自分達の仲間内では、とても大事にされているということから
上陸禁止では無く、自主規制で上陸を止めておこうという事にしています・・・・

カヤックで自然と親しむ事により逆に自然を大切にする事を学べると思うんですが・・・

以下に三重県庁のHP 等 参考になるアドレスを記載させていただきます。

長々と失礼いたしました。



http://www.pref.mie.jp/KOHO/voice/view.asp?NO=200600503&CTR=SEC&YY=2006&MM=&AREA=0&SECTION=5&WORD=&POLICY=&MEASURE=&ENTERPRISE=&PNO=



http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&ecoword=%C4%BB%BD%C3%CA%DD%B8%EE%B6%E8
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