水に浮かび物思う

カリフォルニアの海でカヤックに出会う。キャンプやハイキングの話も。

尾瀬の空は遥かに遠く

2008年06月28日 | 散歩・ハイキング

6月に入った。ぼくはまだ新生活気分が抜けず、平日も週末もあっちに行ってはあーイソガシ、こっちに行ってはあーイソガシとやっていたのだけど、つくばの友人が尾瀬に行こうと誘ってくれた。6月の尾瀬は格別だという。そういうわけでぼくははじめて尾瀬に行った。



前日の夜に友人宅にお邪魔して、朝は5時に出発。こんな早朝でも外は暗くない。あと10日もすれば夏至だ。ぼくらはザックやらギターやらを車に詰め込んで出発した。車を止め別の友人と落ち合い、バスに乗り鳩待峠へ。観光バスがずらっと並んでいて驚いた。これほどのハイカーがいるとは思っていなかった。やはりこの時期の尾瀬は人気が高いのだろう。






まるで梅雨などどこ吹く風とでもいいたげな空である。地上では高山植物たちがひそやかに礼儀正しく初夏を迎えていた。自然に詳しいHさんのレクチャーを聞きながらぼくらは時折歩みを止めて、高山植物を写真に収めたり池塘(ちとう。湿原にある沼のこと)の生き物を目で追ったり、双眼鏡でかわいらしい鳥を見たりした。少ない栄養をみんなで分け合って生きているような、邪魔をしてはいけないような世界のような気がした。こんなに長い木道を作ってくれて本当に感謝である。





昼は山小屋でカレーとビールを頂く。しばらく歩いているとだんだん人も減ってきた。これで人の列を気にせず立ち止まることが出来る。流れている川に手を浸すとかなり冷たかった。水の循環の遅い池塘と比べると驚くほどの温度差である。

見晴(みはらし)。一日目の目的地である山小屋に到着。広い和室一部屋がぼくたちのグループにあてがわれた。ラッキー。ここには温泉が湧いているのだ。夕食前にざぶっと一風呂浴びる。尾瀬の景色が眼前に広大に横たわっている。ガラスをぬぐって景色に見惚れるのもよし、風呂の湯気で曇らせるのもまたよし、である。



朝は冷えた。山小屋で働いている若い女性が、「まだ朝は寒いですよ。冬の朝だと思って覚悟してください」と言っていたのを思い出した。朝露が降りて半ば霜のようになっている。昨夜は、友達同士で和室で泊まるのがなんだか修学旅行のようでやけに楽しかった(おかげで少し飲みすぎる)。テント泊はもちろん好きだけど、こんな山小屋もいいと思う。

朝の散歩を少しする。ぼくらが泊まった山小屋の背後には燧ヶ岳(ひうちがたけ)がどーんと構えており、見事な景色だった。食事をして出発。



ところどころミズバショウの群生を目にした。水辺でひっそりと咲く姿は実に可憐である。木漏れ日の中で咲く小さなミズバショウを目にした時は心が少し震えた。本当に夢を見ているように咲いている。



尾瀬沼で一休憩。美しい池である。こんな穏やかな池だったらカヌーイストでなくたって手漕ぎの舟に乗りたいと思うことだろう。ハイカーが多いのは仕方が無いことだけど、それでもここは誰もが心に秘めている原風景のような場所ではないだろうか。新緑の歓喜のこだまの中に存在する池は本当に美しかった。

よーし、ぜひまた6月になったら尾瀬にこよう!