水に浮かび物思う

カリフォルニアの海でカヤックに出会う。キャンプやハイキングの話も。

無人島キャンプトリップ 紀伊長島鈴島 その2

2008年03月10日 | カヤック

二重にした寝袋の温かな誘惑に打ち勝ってぼくが起き出したのは、ちょうど午前6時だった。次の冬にはちゃんとした冬用の寝袋を購入しよう。冬のキャンプってゆっても、焚き火があって、暖かい寝袋があれば体が冷えることもない。かなり快適だ。

さあ。今日は漕ぐゾ!キャンプ道具はこのままここに置いておくことにして、空荷のウィスパーでツーリングしよう。

昨晩のごはんに水を入れて火にかけ、沸いたところでアオサと出汁とショウユを入れて即席のお茶漬けをつくり、朝食にした。さあ、島勝方面に行こうか、紀伊長島方面へ行こうか。地図を見ながら考える。そうだな、島勝浦方面、すなわち尾鷲方面へ行くことにしよう!

気合を入れて冷たいウェットスーツに着替え、いざしゅっぱーつ!

バウを南南西に向け、オドナ岩とダイヤ岩の間をとおり、大白浜に一旦上陸。ここは臨海公園になっていて、なかなか雰囲気のよい場所であった。散歩中の老夫婦に挨拶すると、ぼくのカヤックに興味を示してくれたみたいで、しばらく話を伺った。

ぼく 「今日は鈴島からきました。これから島勝浦に行こうと思います」
おじさん 「島勝の東は風が抜けるからな。自分も昔は船を出してようこの辺まわったもんだわ。で、島勝が抜けれたら、志摩のほうまで簡単に行く事ができたな」

さすが熊野灘、簡単な海域ではなさそうである。おじさんは、ぼくの話を聞いて、ほりゃ尾鷲までいかんならんわな、遠いぞ、と繰り返して言っていた。-_-; ちょっと尾鷲までの往復はキツイっす、と思ったけれど口には出さず、楽しんできますと言っておいた。





島勝浦に行く途中で見つけた穴に入る。今回気がついたのだけれど、ぼくはどうやら穴が好きらしい。こう、冒険心をくすぐられてしまう。しかし実際に入ると波のぶつかる音が響いてすごく大きく聞こえるので、ちょっとびびってしまうのである。けどすごい楽しい!

ぼくは島勝浦の東端に出た。南を見れば、そこは洋々たる太平洋だ。



ゆるやかな周期のうねりを感じる。水の透明度も上がったようである。このあたりの景色は本当にダイナミックで美しい。





次に見つけた江戸鼻の先の穴でしばらく遊ぶ。穴は海のうねりを飲み込んで、少しテンポをずらして吐き出していた。まるで呼吸をしているみたいだ。それにつられてぼくの舟も少し穴へ導かれ、そしてまた少し吐き出される。穴によって増幅されたうねりはぼくの舟をゆりかごにし、ぼくを赤ん坊の気分にさせてくれた。



穴に飽きるとぼくはまた少し沖へ戻った。だいぶ北風が強くなってきた。白波が少し出て、水面に皺がよっている。もう少し南のほうまで周り込みたかったけれど、帰りの向かい風を思うとここでUターンをしたほうが賢明だった。

強い向かい風の中を漕いでいった。きついけど、漕げば進むので向かい風はそんなに嫌いじゃない。強い横風なんかのほうがぼくにとってはしんどかったりする。キャッチが抜けないように、ひと漕ぎひと漕ぎ着実に前進するように意識した。途中で猛烈にハラが減ってきて、40%くらいの根性を使って漕ぐ。ダミだ。なんか食べたい!地図を睨むとすぐ近くに島勝の漁港があるのが分かった。地図記号によれば学校があるみたいだから、たぶん何か食事が出来るところもあるだろう。せっかくだからそこで食事をすることにしよう!



ぼくは漁港の近くの和具の浜(すっごいキレイ)というところで上陸し、集落を散策した。

古くてのどかでいい集落だ。しかし、なーんか静まり返っているのである。ぼくは立ち話をしていたおじいさんに思い切って声をかけてみた。

ぼく 「スミマセン。このあたりに食事が出来るところはありますか?」
おじさん 「それがなあ、ないんだわ」
ぼく 「(驚) ないですか?」
おじさん 「一つもないんだわ。昔はあったんだよ。旅館もたくさんあったし。小学校と中学校もあったよ。300人もいたんだがね。どっちも廃校になってしもうた」

ぼくは驚いた。ぼくの持っていた地図は古かったのだ。今はもうあの地図記号にあった学校はなくなってしまったのだ。ぼくは、それはさびしいですね、といい、「過疎」という言葉を飲み込んだ。外の人が集落の人にゆってはならない言葉のように思えた。

おじさん 「まあ、過疎の最たるもんじゃわな。お兄ちゃんはどこから来たの?」
ぼく 「カヌーで三浦海岸から鈴島に渡って、島勝浦をぐるっと回り込もうと思ったんですが、風が強くて途中で帰ってきました」
おじさん 「(絶句) はああ、カヌーでか!兄ちゃん、すごいな。地元は?」
ぼく 「名古屋です」
おじさん 「仕事は?」
ぼく 「ずっと仕事がなかったんですが、ついこの間就職が決まったのです。東京の仕事です。だから引越しちゃうまえに三重県の海を漕いでおきたかったんです」

そこからおじいさんは好奇心の赴くままにぼくに質問をし、そして最後にパンが買えるという雑貨屋の場所を教えてくれた。ぼくは礼をいい、教えてもらった雑貨屋さんに向かった。


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
なかなかにいい場所ですね (てっさん)
2008-03-11 00:31:48
日曜日は有難うございました。
あの日にきいたとおり、水質いいですね。常神に匹敵するようなレベルでしょうか。
太平洋らしく雄大な景色もなかなか。
一番上の写真、海の色をみると去年行った常神の裏側を思い出します。

そのうち僕も行ってみます。ただその前に忘れ物をとりに的矢湾から答志島を行ってみたいと思っています。

過疎についてですが、当方も瀬戸内の島を巡っている時に、地元の人と話するとたまにそういう話は出ますね。それも定期船がそれなりの本数は知っているような島で。民宿もへって人も出て行ってという、サトウサンがお聞きになって内容と似ています。仕方ないとはいえ物悲しいものですね。

Re: なかなかにいい場所ですね (サトウ)
2008-03-11 09:08:59
てっさんさん、こんにちは!
日曜日はどうもありがとうございました。
楽しかったですね。

熊野の海はぼくにとって最高でした。
おそらく真冬の水質はもっと良いでしょうね。
南へ行くほど水質はあがるでしょうが、また波も立ちやすく断崖が多くなるような気がします。その点、紀伊長島周辺は上陸可能な浜も多く、景観もよいので、ちょうどいいかなーって思いました。

ある意味われわれのしている遊びっていうのは、あえて過疎の地に出かけていくようなもので、出来る限り土地の人たちと友好的に接するべきなのだなあという思いを今回強めました。