諦めない教育原理

特別支援教育は教育の原点と聞いたことがあります。
その窓からどこまで見えるか…。

105 幸福の種 #4 使命感

2020年11月01日 | 幸福の種
富士山! 冬 富士吉田市街から 大きい!

幸福の種をテキストから拾う作業をしています。
少し単調ですがしばらく続けます。
今回は25~47/288頁を見ていくことにします。

テキスト:神谷美恵子『生きがいについて』みすず書房

2 生きがいを感じるこころ

 「使命感」という項から

 もし生きがい感というものが以上ののようなものであるとすれば、どういうひとが一ばん生きがい感を感じる人種であろうか。自己の生存目標をはっきりと自覚し、自分の生きていいる必要を確信し、その目標に向けって全力をそそいで歩いているひと ― いいかえれば使命感に生きているひとではないか。

 このような使命感の持主は、世のなかのあちこちに、むしろ人目につかないところに多くひそんでいる。肩書や地位のゆえに大きくうかびあがるひとよりも、そういう無名のひとびとの存在こそ世のなかのもろもろの事業や活動に生きた内容を与え、ひとを支える力となっていると思われる。例えば小・中学校の先生、僻地の看護婦、特殊教育に貢献するひとなど。
 しかし、つきつめていうと、人間はみな多かれ少なかれ漠然とした使命感に支えれて生きているのだといえる。
それは自分が生きていることに対する責任感であり、人生においてのほかならぬ自分が果たすべき役割があるのだという自覚である。

 ひとはどういうふうに、あることを自分の使命と感じるようになるのであろうか。性格や生活史のなかからうめれた必然性のようなものから、いわばひとりでに目がある方向え吸いつけられてしまうこともあるだろうし、意識的によく考えて選択することもあるだろう。そこにはまた外側から働く「偶然」との出会いも考えられよう。仏教的な「縁」ということばを使ってみてもよい。

 社会的のどんなに立派にやっているひとでも、自己の対してあわせる顔のないひとは次第に自己と対面を避けるようになる。心の日記もつけなくなる。ひとりで静かにしていることも耐えられなくなる。たとえ心の深いところでうめき声がしても、それに耳をかすのは苦しいから、生活をますます忙しくして、これを聞かぬふりをする。


 「使命感」は、生きがいを感じるキーワードである。
使命感のよって背筋をのばして、障害を乗り越えるファイトも沸いてくる。

 神谷さんは、実は小さな目立たないとこにこそ「使命感」はたくさんあるといっている。
自覚できている場合もあれば、取り組んでいる前提がそれでもうその域をを超えている場合もあるだろう。
もうそれをもってやっているひとは幸福論は無縁なのかもしれない。

 ただ、使命感は「感」なのであって、働きの中でより確かなものとなって現れるのであろう。
歩みをとめるとうすらぐ性質のもののようでもある。
ひたむきにやることその中に美しさを伴った生きがいがあるのではないか。
「そういう無名のひとびとの存在こそ世のなかのもろもろの事業や活動に生きた内容を与え、ひとを支える力となっている」
という。
学校の教育活動も(たぶんどんな仕事も事業も)結局は目立たない小さな働きかけや活動の集積である。改めてチームワークよくひたむきさを励ましあうことである。

 また、一方で、使命感との出合いというのもひとつのテーマである。
書の中では長い模索の時代から何らかの出合を通して、生涯の使命を得た例が文学者の記述を通じて書かれている。

逆にいえば、それだけ決まったプロセスがないのである。

 若いひとたちに日頃接している者ならば、だれでもおぼえがあろう。いったいどうして勉強などしなくてはならないのか、どんな目標を自分の前においたらよいのか、不安と疑惑にみちたまなざしで問いつめられたことを。このような問いに対してどのような態度をとり、どのような答えをなしうるか、ということが親たる者、教師たる者の試金石である。

という。
 つまり、明確な答えを出せないほどに「生きがいを求めるこころ」は多様だし、自分の孤独をかんじつつそれぞれが解を求める性質のものなのだろう。たぶんそれは原理的なものだ。

だから、それが決まった答えが出しにくい実態として、「社会的のどんな立派にやっているひとでも…」という一文になる。

 しかも、仕事感も生活感も変化の激しい時代にあって、若いひとたちの使命感へのアクセスはますますわかりにくくなっている。
「どのような態度をとり、どのような答えをなしうる」かが大人の試金石と言われても難しいのは全シリーズからのテーマそのものに通じる。
 そして、それを得るための無数のプロセスについて次回「生きがいを求めるこころ」に学びたい。 

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