夜噺骨董談義

収集品、自分で作ったもの、見せていただいた品々などを題材に感想談など

安南染付鳥草花文様茶碗

2011-10-02 00:46:42 | 陶磁器
下の作品に引き続き、安南茶碗と思える作品は本作品で二作目となります。

蜻蛉文様染付沓形茶碗箱入 
高さ78*口径97*高台49


購入時は見込み内にだいぶ茶渋で汚れていましたが、だいぶ洗うと落ちるようです。ものによっては化学薬品で古色を付けているものがありますが、本作品はそのようなものではなく、実際に使用したもののようです。



洗うと下の写真のように汚れがだいぶ落ちました。




安南染付鳥草花文様茶碗
合箱杉製
口径110*高さ78*高台径60



絵付けは呉須というより鉄釉のような発色になっています。上釉は透明釉ではなく粉引風です。重ね焼きのための見込み内の円形跡は、確かに重ね焼きの跡がありますが、釉がかかっており、2度焼いている可能性もある。不思議な作品ですが、新しいものではなくかなりの古さがあります。おそらく焼きが甘くなり、呉須が青になりきれず、釉薬も違う感じなった感があります。しかし小さめながら、実に堂々とした茶碗です。

高台内に茶渋がかかったような色合いになっているのも安南茶碗の特徴、約束ごとのひとつです。一作目の「蜻蛉文様染付沓形茶碗」はこうはなっておらず、少し時代が若いことや国焼の可能性があることがこのことから判断されます。




最近は資料の作成に専念していますので、説明文は長文になる傾向にあります。調べるに当たってはインターネットの効力が大です。

安南(あんなん):安南(べトナム)で作られた陶磁器の総称。安南焼・安南手とも。

「安南」の語は唐朝が辺境地域の支配のために設置した六都護府の一つ安南都護府に由来するそうです。ベトナムでは中国陶磁器の影響のもとに早くから白磁・青磁が焼かれていたそうですが、14、5世紀から染付・赤絵の製作も始まり、室町末期から江戸前期にかけて多くの安南が舶載されました。

その文様は竜・獅子・鳳凰・鹿・鶴などの動物文と魚・蝶・蜻蛉のような魚虫類、草花は牡丹文・唐草文などがありますが、絵付けがゆるいと言われています。染付に用いられた胎土は、良質なカオリンが産出しないため純白にならず、全体に白化粧が施され、その上に文様を描き、灰分が多いため灰青色をおびた透明釉がかけられています。そのために肌合いに磁器のような透明感がなく乳濁し、元・明染付に比べ柔らかい印象となります。

透明釉が釉裏の呉須をにじませて流れるような景色のものを「絞手(しぼりで)」と呼び、茶陶として喜ばれています。茶碗・水指・花入・鉢などがあり、安南染付・安南赤絵などがります。



安南焼:ベトナムの焼き物の総称として用いられている言葉。 現在のベトナムと中国との国境付近は、その昔Annamと呼ばれていた。ベトナム北部では、質の良い陶土が多く採土されていた(いる)そうです。

日本では、ベトナムのやきものは、主に茶陶として、古くからこの名称で親しまれてきました。 英語の“Aannamese”の名も、実は日本語「安南焼」の音読みからつけられたもので、1954年に奥田セイイチ氏が、初めてベトナム陶磁器について集大成した書物「安南陶磁図鑑・安南焼」に由来します。しかし、この安南焼/Annameseという言葉、当のベトナム人にはあまり好まれていないそうです(国名の由来などから)。 なので、良識的な文献等ではベトナム陶磁/“Vietnamese”という言葉をを使う例が多いそうです。



安南茶碗:使いにくい感じがします。口縁は、ざらざらしているし、見込みは、重ね積みのため、無釉の部分があることが多いです。とはいうものの、中国染付とも違うし、李朝ものとも違う、独特な雰囲気があり、根強い人気を保っています。

染付茶碗は高台が高くなっており、国内向けの茶碗であるという。高台が低くなっているものは輸出用の茶碗であるという。どちらがいいか、好みの問題ですが、高台が高いほうが人気が高いようです。灰分が非常に多い釉薬を使っているために流れやすく、釉薬とともに呉須の文様も流れてぼやけたものが多いのが特徴です。



資料より
『万宝全書』には「安南は染付の色あしくから物の下品なり云々、今渡りの類は沢山にして珍とせず、古きは重宝とす、道具模様いろいろなれども元来下手ものなり、水指、ふか鉢等多くは絵あり云々」とある。昔から安南ものとして茶人の間で愛玩されているものに無地安南と呉須安南の二種がありどちらも侘びた趣に富んだものである。安南焼はすべて輪焼きで、土は白色、地釉は青みがかった中にやや黄色がかった色合いである。模様のないものは無地安南と呼ばれ伝世品はまれである。普通の製品には文字とも模様ともわからないものを呉須で描くため呉須安南と呼ばれ上製のものには釉ひびはない。安南焼として伝えられるものには染付けのほかに青磁、赤絵安南もみられ器物としては安南呉器、安南啜香などがあり、さらに安南織部、安南絵高麗、安南絵堅手などに小分けする。わが国の安南写しとしては陳元贇の御深井焼が有名であり、ぼやけた染付けではあるが近代陶業者の安南焼は交趾焼が硬化したようなもので、伊賀、信楽、播磨国、明石などから製出された。これらは粗陶器の上に不透明な青または緑の地釉を掛け、その上に白泥で暦手様の盛上げ文を描いている。たぶん交趾焼の装飾手法から転化したものとみられる。

さてこれからどう使いましょうか





下の写真はインターネットで見つけた安南茶碗です。なかなかよさそうな作品です。
このような古格のある安南手の器は市場には非常に少なく、そのすべてが日本製を含めて近代作のようです。



参考作品:紅安南茶碗  
16世紀。安南=現在のベトナムで焼造された赤絵の茶碗。その色味や意匠が唐物や高麗物と違う独特の雰囲気を醸し出している。中国元様式の赤絵をもとに発達した紅安南の茶碗は、16~7世紀にかけて多数輸入され、茶碗として珍重された。


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