
帰郷するルートは幾つかあるのですが、今回は往復共々東北新幹線と奥羽本線の乗り換えでした。

奥羽本線の車中からは津軽富士(岩木山)の眺めが最高です。

弘前付近の川を前景にした場所は撮影スポットですね。

さて表具師さんに依頼して継続的に所蔵する掛け軸をメンテしていますが、本日はメンテの処置が完了した作品の紹介です。

まずは表具の天地部分が傷んでいたために天地交換のみを改装した作品です。この作品については以前に投稿されています。

天地交換 大地小興 伝山口蓬春筆
絹本着色軸装 軸先象牙 合箱二重箱
天地交換+多当紙新調
全体サイズ:縦2100*横657 画サイズ:縦1298*横500


掛け軸は巻いて保存するためにこの天地から痛むことが多いようです。天地が痛むと鑑賞や保存に支障をきたし、次第に本紙も痛んできますので、早めに天地交換ですむうちに改装することをお勧めします。

次は共箱の作品であった作品の共箱の交換です。改装によってそれまで納めていた箱がキツくなることがあります。その箱が共箱であった場合は共箱の板を嵌め替える必要があります。

共箱の交換 磯千鳥 横山大観筆
絹本着色軸装 共箱→太巻2重箱誂え
全体サイズ:横550*縦1970 画サイズ:横426*縦1106


きつくなった箱にそのまま収めておくと皺になったり、蓋が閉まらないことから湿気をよんだりします。

作品によっては太巻きをあつらえるのもいいでしょう。

本作品がその例です。作品を痛まないように太巻にして、もともとの共箱の共板を大きくした箱に嵌め込みます。こうしておくと取り扱いさえきちんとしていれば作品はかなりの期間は大丈夫でしょう。
念のために紙タトウの外箱があるとより一層湿気対策となります。

次は天龍道人の作品の改装です。

天龍道人の作品はそれほど著名ではないがゆえ?に痛んでいる作品が数多くあります。時には屏風や襖の作品が剥がされた状態でボロボロになっている作品があります。

葡萄図 天龍道人筆 89歳 1806年(文化4年)
紙本水墨軸装 軸先 誂箱
全体サイズ:縦1680*横410 作品サイズ:縦1060*横290
落款には「天龍道人八十九歳併題」とあり、1806年(文化4年)の頃の作と推定されます。


5年ほど前はインターネットオークションで廉価で天龍道人の数多くの面白い作品が入手できましたが、今は殆どいい作品は出品されいません。
現在のようにインターネットオークションを活用する方が多くなってしまうと、前のように掘り出し物の作品は数が少なくなりましたね。

(2023年5月 誂箱改装+多当紙 ¥25,000)
*本紙が古く画賛部分の文字は裏打ちの紙に書かれているため剥いだ時、文字がなくなる可能性あり。

まだまだメンテした作品、メンテしたい作品はあります。下記の作品は外箱の新調したものですが、以前に紹介した作品ですので省略します。掛軸の紐の交換や軸先の欠損したものなど、掛け軸のメンテには表具師さんの協力が必要ですね。
秋山雨後 寺崎廣業筆 三本廣業時代 大正5年(1916年)
絹本水着色軸装 軸先 年紀有(大正丙辰:大正5年 1916年 50歳)共箱二重箱
箱に合わせて外箱を新調(黒塗箱)¥25,000 多当紙新調
全体サイズ:縦2370*横720 画サイズ:縦1380*横500

メンテした作品には胡散臭い作品もありますが、それもそれでメンテする時はするものです・・・。物も体も精神もメンテしないと廃れていくもののようです。
」