
本作品は明から「東南アジアに大量に輸出された明末染付」か、「下手な安南茶碗として明末から清初にかけて大量に製作されたもの」のどちらかと判断に迷うところです。
本作品のような洒脱な草文様の作品は元の染付からの流れがありますが、全体の感じから安南手としました。
明末の染付茶碗などの下手の作品はフィリピンやタイに大量に輸出されたものですが、完品が少なくなり補修したものを完品として売られているようです。本作品も共色で模様をペイントされもので、稚拙な補修と言われていますが、うまく補修されています。ただ補修した作品を茶器として用いるのであれば、金繕いするのがよいでしょう。
本作品は傷を共色で補修して染付をペイントし、土をつけて発掘品に見せて売られていたのですが、そういう売り方をすることでこれは「贋作」と断定されます。売り方ひとつでいいものも贋作となるようです
安南手や明末の下手の器に関しては完品が少なくなり、さらに傷物を補修する傷物も少なくなり、とうとう本物がなくなって、日本や東南アジアの模倣品が横行しています。古唐津などもそういう傾向の作品群ですが・・。
安南手は本物にしても下手の作品ですから、高くても数万円程度の作品群ですが、なぜかしら模倣品の多い作品群です。
永楽や三浦竹泉という京都の陶工がそれなりの昇華して茶器としての作品を作り上げたことが影響していると推察されます。また染付の滲み具合が日本人の趣味にマッチしていたのでしょう。
ただ本物は茶碗というより鉢といった感じの作品が多く、茶碗として使えそうなものはそんなには多くないようです。
本ブログで安南にからむ作品は五作品目です。
①蜻蛉文様染付沓形茶碗 箱入 高さ78*口径97*高台49
これは安南手ですが安南焼ではなく日本の模倣品でしょうが、いい味が出ています。
②安南染付鳥草花文様茶碗 合箱杉製
口径110*高さ78*高台径60
高台が高い茶碗ですが、焼成温度によって、呉須が茶色に発しています。
③安南青花染付花鳥唐草花樹紋香合 口径74*高さ35*底径40
氏素性が分からない部類に入ります。
④安南絞り手茶碗 合箱
口径126*高台径60*高さ75
本日の作品と同じ分類としましたが、冒頭のように明末の染付茶碗ではないかと迷うところです。そうだとすると説明がまったく違ってきます。
安南手茶碗としては三作品目です。
唐草染付安南茶碗(補修品)その3 17~18世紀
合箱
口径145*高台径*高さ63

安南手について
このような染付碗や鉢は明時代に中国から東南アジアに大量に輸出され、その影響もあってかベトナムで製作され、安南手として流通しています。決して高価なものではない作品群ですが、さすがに時代のあるものは少なくなったようです。とくに完品が少なくなり傷物を解らないように補修して、現地では日本人相手に売っていました。それが本作品のようなものです。
最近は近代作の模倣品が数多く出回っているようです。
本作品は下手な安南茶碗として明末から清初にかけて大量に製作された作品として評価されているようです。高台の高い作品群は王宮用としてランクが上に区別されて評価されています。
本作品のような洒脱な草文様の作品は元の染付を模倣したように推察されます。このような形の碗は茶碗というより鉢という感じのものが多く、模倣品もそうですが、茶碗として用いるのには渋みがないものが多いようです。本作品はその点でサイズもよく、絵柄もいい感じです。
安南手の作品は高台内に渋薬((鉄銹:てっしゅう)が塗られているのが特徴ですが、たまにないものもあるようです。作品の高台内は土が見えているのが基本のようです。

白濁釉が高台外の畳付までかかり、高台内は土見となっており、見込みには重ね焼きの蛇の目があり、茶溜りに福・寿などの吉祥文字が書いてあるものもあります。

外部の絵付は草花、吉祥文字などがあり、特に蜻蛉(とんぼ)の絵を描いたものは安南蜻蛉手と呼んで喜ばれています。呉須が粗悪なため、窯中で流れて絵が滲んだものを、特に絞り手と呼んで珍重しています。また全然絵や文字のないものは無地安南と呼び、これも数が少ないところから歓迎されています。特別なものに、紅や緑をほどこした紅安南がありますが、わが国では一例をみるだけです。 このような高台が高いものは王宮用に作られた作品とされています。
上釉が高台内まで掛けられた作品はないことはないようですが、基本的に近代の模倣品で、発掘品として売られているものも含めて、現在市場にある作品はほとんどが模倣品で、とくに日本で作られたものが多くあります。模倣作品は重ね焼きや高台内にも渋薬を塗るなど素人には判別が難しくなっています。内外含め釉薬が「てかてかした感じ」のものは模倣品のようです。安南焼はやはり古いものがいいように思われます。
本作品の見どころ
本作品は紋様がいいので入手したもので、茶碗として使えるものとして選択しました。磁器の作品は薄いと熱伝導率が高いので、点てたお茶の熱さで茶碗が持てないことがあります。冬に使うお茶碗には磁器や備前は向いていない理由のひとつです。
本作品は持つところが厚手にできており、胎土も間隙がありそれほど熱伝導率がたかくないようで、抹茶のお茶碗として使い勝手がいいようです。また飲み干したところで見えてくる見込みの紋様も魅力のひとつです。
本作品の見込みには意味不明で宝珠のような紋様があります。東南アジアには宝珠というのはあるのでしょうか???
こじんまりとした模倣品とは違い高台内も荒々しく、見どころになりそうです。ただ、あくまでも下手な作品ですので、替茶碗としてこの手の茶碗は用いられることが多いようです。
この手の作品の魅力はなんといっても呉須の絵付けの滲みですね。この朦朧とした味わいが日本の茶人に好まれ、茶の世界に溶け込んでいった作品群です。

そしてもう一つの魅力は釉薬の貫入です。いやらしい貫入と違い、柔らかな温かみのある磁器の優しさがあります
本作品は完品ではなく、補修されています。この手の茶碗の補修については別冊太陽の「やきものの真贋の鑑定」という本に掲載されています。

日本人が騙されているようです。

本作品の補修跡が解りますか?

本作品はいかにも発掘品に見せるがごとく、土が付着していました。洗い落とすと色が黄ばんでいる部分があることに気がつきます。

パテで補修し共色で塗り、ペイントで草文様を描いています。紋様に滲みがないので補修跡と解ります。

さて本作品は少し使い込んでみましょう。箱は菓子鉢が入ってたような変な箱?? 共色補修を職人さんに頼んで金繕いしていい箱をあつらえるとそれなりにいい茶碗になりそうですが・・
まずはお薄を一服・・。

見込みの茶溜まりも良好で、宝珠紋様。

家内には浜田庄司・・。

鉄絵茶碗の出来のいいもの。
本作品のような洒脱な草文様の作品は元の染付からの流れがありますが、全体の感じから安南手としました。
明末の染付茶碗などの下手の作品はフィリピンやタイに大量に輸出されたものですが、完品が少なくなり補修したものを完品として売られているようです。本作品も共色で模様をペイントされもので、稚拙な補修と言われていますが、うまく補修されています。ただ補修した作品を茶器として用いるのであれば、金繕いするのがよいでしょう。
本作品は傷を共色で補修して染付をペイントし、土をつけて発掘品に見せて売られていたのですが、そういう売り方をすることでこれは「贋作」と断定されます。売り方ひとつでいいものも贋作となるようです

安南手や明末の下手の器に関しては完品が少なくなり、さらに傷物を補修する傷物も少なくなり、とうとう本物がなくなって、日本や東南アジアの模倣品が横行しています。古唐津などもそういう傾向の作品群ですが・・。
安南手は本物にしても下手の作品ですから、高くても数万円程度の作品群ですが、なぜかしら模倣品の多い作品群です。
永楽や三浦竹泉という京都の陶工がそれなりの昇華して茶器としての作品を作り上げたことが影響していると推察されます。また染付の滲み具合が日本人の趣味にマッチしていたのでしょう。
ただ本物は茶碗というより鉢といった感じの作品が多く、茶碗として使えそうなものはそんなには多くないようです。
本ブログで安南にからむ作品は五作品目です。
①蜻蛉文様染付沓形茶碗 箱入 高さ78*口径97*高台49
これは安南手ですが安南焼ではなく日本の模倣品でしょうが、いい味が出ています。
②安南染付鳥草花文様茶碗 合箱杉製
口径110*高さ78*高台径60
高台が高い茶碗ですが、焼成温度によって、呉須が茶色に発しています。
③安南青花染付花鳥唐草花樹紋香合 口径74*高さ35*底径40
氏素性が分からない部類に入ります。
④安南絞り手茶碗 合箱
口径126*高台径60*高さ75
本日の作品と同じ分類としましたが、冒頭のように明末の染付茶碗ではないかと迷うところです。そうだとすると説明がまったく違ってきます。
安南手茶碗としては三作品目です。
唐草染付安南茶碗(補修品)その3 17~18世紀
合箱
口径145*高台径*高さ63

安南手について
このような染付碗や鉢は明時代に中国から東南アジアに大量に輸出され、その影響もあってかベトナムで製作され、安南手として流通しています。決して高価なものではない作品群ですが、さすがに時代のあるものは少なくなったようです。とくに完品が少なくなり傷物を解らないように補修して、現地では日本人相手に売っていました。それが本作品のようなものです。
最近は近代作の模倣品が数多く出回っているようです。
本作品は下手な安南茶碗として明末から清初にかけて大量に製作された作品として評価されているようです。高台の高い作品群は王宮用としてランクが上に区別されて評価されています。
本作品のような洒脱な草文様の作品は元の染付を模倣したように推察されます。このような形の碗は茶碗というより鉢という感じのものが多く、模倣品もそうですが、茶碗として用いるのには渋みがないものが多いようです。本作品はその点でサイズもよく、絵柄もいい感じです。
安南手の作品は高台内に渋薬((鉄銹:てっしゅう)が塗られているのが特徴ですが、たまにないものもあるようです。作品の高台内は土が見えているのが基本のようです。

白濁釉が高台外の畳付までかかり、高台内は土見となっており、見込みには重ね焼きの蛇の目があり、茶溜りに福・寿などの吉祥文字が書いてあるものもあります。

外部の絵付は草花、吉祥文字などがあり、特に蜻蛉(とんぼ)の絵を描いたものは安南蜻蛉手と呼んで喜ばれています。呉須が粗悪なため、窯中で流れて絵が滲んだものを、特に絞り手と呼んで珍重しています。また全然絵や文字のないものは無地安南と呼び、これも数が少ないところから歓迎されています。特別なものに、紅や緑をほどこした紅安南がありますが、わが国では一例をみるだけです。 このような高台が高いものは王宮用に作られた作品とされています。
上釉が高台内まで掛けられた作品はないことはないようですが、基本的に近代の模倣品で、発掘品として売られているものも含めて、現在市場にある作品はほとんどが模倣品で、とくに日本で作られたものが多くあります。模倣作品は重ね焼きや高台内にも渋薬を塗るなど素人には判別が難しくなっています。内外含め釉薬が「てかてかした感じ」のものは模倣品のようです。安南焼はやはり古いものがいいように思われます。
本作品の見どころ
本作品は紋様がいいので入手したもので、茶碗として使えるものとして選択しました。磁器の作品は薄いと熱伝導率が高いので、点てたお茶の熱さで茶碗が持てないことがあります。冬に使うお茶碗には磁器や備前は向いていない理由のひとつです。
本作品は持つところが厚手にできており、胎土も間隙がありそれほど熱伝導率がたかくないようで、抹茶のお茶碗として使い勝手がいいようです。また飲み干したところで見えてくる見込みの紋様も魅力のひとつです。
本作品の見込みには意味不明で宝珠のような紋様があります。東南アジアには宝珠というのはあるのでしょうか???
こじんまりとした模倣品とは違い高台内も荒々しく、見どころになりそうです。ただ、あくまでも下手な作品ですので、替茶碗としてこの手の茶碗は用いられることが多いようです。
この手の作品の魅力はなんといっても呉須の絵付けの滲みですね。この朦朧とした味わいが日本の茶人に好まれ、茶の世界に溶け込んでいった作品群です。

そしてもう一つの魅力は釉薬の貫入です。いやらしい貫入と違い、柔らかな温かみのある磁器の優しさがあります

本作品は完品ではなく、補修されています。この手の茶碗の補修については別冊太陽の「やきものの真贋の鑑定」という本に掲載されています。

日本人が騙されているようです。

本作品の補修跡が解りますか?

本作品はいかにも発掘品に見せるがごとく、土が付着していました。洗い落とすと色が黄ばんでいる部分があることに気がつきます。

パテで補修し共色で塗り、ペイントで草文様を描いています。紋様に滲みがないので補修跡と解ります。

さて本作品は少し使い込んでみましょう。箱は菓子鉢が入ってたような変な箱?? 共色補修を職人さんに頼んで金繕いしていい箱をあつらえるとそれなりにいい茶碗になりそうですが・・

まずはお薄を一服・・。

見込みの茶溜まりも良好で、宝珠紋様。

家内には浜田庄司・・。

鉄絵茶碗の出来のいいもの。
