腐れゲー道

プレーしたゲームの感想文を、ダラダラと粘着質に綴ります。

勇者のくせになまいきだor2

2012年02月12日 23時54分29秒 | PSPゲーム感想文
「3Dクラシックス パルテナの鏡」に続き、タダゲーである。
去年、世界中で大問題となったPSネットワーク情報流出事件に対する「感謝とお詫び(何が感謝だ)」
の一環として、該当者にDLプレゼントされたゲームのうちの一本である。
失態と言えどルール違反を犯したわけではない任天堂と違い、PSNの方はクレカ情報流出という、洒落にならん事態である。
なのにお詫びはSCEの指定したソフト(の中からユーザーが決定)で、しかも数年前に発売された、償却済みのタイトルばかり。
更にDLさせるシステムが矢鱈と分かり難いものだったり、期間が短すぎたり、
日本だけPSストアの復旧が遅れまくったりで、誠意は全く感じられなかった。
公式サイトに上げられた平井一夫氏の謝罪ムービーも、何か全然すまなそうに見えず、
「謝っただろ? ん?」と言いたげだった。穿ち過ぎか。
俺は別に、ユーザーに謙るのが絶対に正しいとは思わない。良い物を提供してさえいれば、後はユーザーが判断することだ。
だが情報流出という「全く良い物を提供できていない」失態を犯したのに謝罪の態度がこれでは、カッコ悪いと言うしかない。
実際、あの事件で一番残念だったのは、情報流出そのものより、
それを許したソニーの技術力低下だったという人は多いのではなかろうか。
あのソニーが、凄腕ハッカーと言えど、シロートに良い様に遊ばれた。そして世界中に恥を晒した。
なのに謝罪対応もどこか大上段に構えていて、己のダメさを反省する態度が見えないと言うか。
ソニー精神の悪い面ばかりが出ていると思う。そういやVITAの不具合問題にも同じことを感じたなぁ。



で、「勇者のくせになまいきだor2」である。
感謝とお詫びのプレゼントタイトルが発表された時、俺は今作の選出を真っ先に決定した。
その程度には気になっていたとソフトなのである。まぁそれ以外のタイトルに正直目ぼしいものが全くなかったのだが……。
俺と今作の縁は、前作「勇者のくせになまいきだ。」の体験版に遡る。
更にその体験版をプレーした理由は、有名ゲームブログ「Re:戯言」だったりする。

戯言の管理人さんは、とにかくゲームを買いまくる。プレーしまくる。
最近は読まなくなったんでさっき久々に覗いてみたんだが、相変わらず多数のゲームを毎週のように購入し、プレーしまくっていた。
ゲームブログなんて腐るほどあるし、その中には戯言氏より大きな所もある。
が、氏ほどゲームを購入し、プレーしている人はいないんではなかろうか。
どんなにゲームが好きでも、年を取れば色々とアレになってくるのは、俺自身も痛いほど実感している。
また仕事をするようになれば思うように時間を取れなくなるし、ブログ更新そのものにも時間と労力を吸い取られる。
戯言氏は立派に社会人をやっていて、更にあれだけ頻繁に更新するブログをやっているのに、
あれほどのゲーム購入とプレーを常に続けている。ハッキリ言って信じられん。マジ尊敬する。
あれ個人ブログだよな? ステマや企業疑惑は取り敢えず無しとする。とにかく、凄い。
今はアフィを貼ったりもしているが、実際にあれだけゲームを買ってプレーしている以上、なんちゅーかモノを言う資格があると思う。
業界ネタにどんなに詳しくても、ゲームファンは何よりもまず、ゲームをプレーしなければならない。
「ゲームをあまりやらないゲーム業界通」なんて、少なくとも俺は認めない。そして最近はそういう人が多いように思う。
俺自身も強く自戒する所である。業界ネタが楽しいのは事実だが、それに傾倒しちゃいかん。そん時はいっそ完全に卒業しろ。
戯言氏はこれをハイレベルに両立させているという時点で非常に稀有な人だと思うのだ。凄いよなぁホント。
でもブログは何時の間にか読まなくなったんだよな。字が小さすぎるのが好みでなくて……。

戯言氏は夥しい数のゲームをプレーし、簡単ながらプレーの感想をブログで書いている。
しかしさすがに触るタイトルが多すぎるからか、その感想はどれも簡素だなぁと俺は感じていた。
派手に叩くこともなければ褒めることもなく、実に淡々としている。お勧めなのか避けるべきなのかよく分からない。
随分勝手な事を言ってるが、完全読者目線なので勘弁。うっはー。

そんな戯言氏が、当時初代勇なまの体験版について「すげぇ面白い」と語っていたのである。それは強い印象を俺に残したのだった。
あの戯言氏がベタ褒め。俺は濃い読者ではなかったが、初めて見た表現だった。これは凄いゲームなのではないか?
俺が勇なまに興味を持った原因はこれで、今も忘れられず、感謝とお詫びでor2を速攻選んだ理由にもなった。
こういうこともあるんだから、何が他人に影響を与えるか分からんもんだな。有名ブログの存在は色んな意味で大きいよ。

んな事があったもんだから、俺も当然初代の体験版をDLし、プレーした。
……が、正直面白さが分からなかった。つまらなかったではなく、よく分からなかったと言うのが正しい。
深く追求する気も起こらずそのまま終了し、製品版に手を出すこともなかった。あれももう4年以上前なのか……。
ちなみに戯言氏が製品版をどう語っていたのかは覚えていない。変な話だなぁ。体験版の事ももしかしたら俺の記憶違いかも。
まぁ今更どうでもいいや。一つのゲームソフトとの縁を結んでくれたと思えば、俺にとって損は何もないんだからな。


こんな感じで、勇なまは「プレー感触が悪かったけど良い印象が強い」という変なゲームとして俺の中に存在し続けていた。
よって、パッと見で欲しいソフトがなかった感謝とお詫び作品の中では一番興味のあるタイトルだったのである。
遅すぎるPSストアの復旧にイライラしたが、復活後速攻DLした。3DSの無料ゲーと同様、DL時には奇妙な虚しさを覚えたりもした。
今作は2作目だが、基本システムは変わっておらず、前作を飛ばしてプレーしてもさほど問題はないだろう。
4年越しで、今度こそ勇なまに正面から取り組んでやる。果たして「すげぇ面白い」のかどうか?
きっかけはともかく、ここからは俺だけの感覚の世界だ。全てはプレー内容が明らかにしてくれる。


……うーん。感想としては、「すげぇ難しい」かな。それは言い過ぎにしても、「すげぇ骨太」かな。
いやぁ、これは凄いわ。おちゃらけた雰囲気からは想像できないほど、非常にガチなゲームである。
俺がプレー開始したのは去年の8月なんだが、難しさによる逃亡放置が長期に渡り、一応クリアーできたのはつい先日である。
それも攻略wiki(今作公認だったりする)首っ引きにしての結果だ。自力じゃ絶対無理だったと断言してやる。
今作独自のルールに、アクセントとしての運要素、覚えることもややってて慣れるべきことも膨大。
これは誤用だから好きじゃないんだが、「敷居が高い」と表現するのがピッタリなゲームである。
ああそうそう、ジャンルはRTS、「リアルタイムシミュレーション」になるのかな。このリアルタイム性がまた、難度を高めているのである……。

つっても今作、操作はとても簡単である。
破壊神ことプレーヤーがやる事は、基本「ツルハシを使ってダンジョンを掘る」だけ。先に進んでも新たにやれることが増えたりはしない。
舞台となるダンジョンは方眼紙のような升目で区切られていて、アナログ要素は皆無。非常に分かり易い。
そうしてダンジョンを掘ると、手駒となる様々な魔物が出現する。だが魔物は自動で勝手に行動し、直接操作はできない。
そんなモンスター達をダンジョンの形によって誘導し、目指すべき強力な布陣を頑張って作り上げる。
そうするうちに敵である「勇者」がダンジョンを訪れるので、準備した布陣によりこれを迎え撃ち、ぶっ殺す。
今作はこういうゲームである。普通のゲームとは逆で、魔物側に立って勇者を撃退するわけだな。

取り敢えず、オリジナリティ溢れる作品である。パロディに関しては後で述べるとして、斬新なゲームである事は間違いなかろう。
魔物はダンジョンを掘って生み出すだけでなく、ダンジョン内の栄養を吸ったり下位魔物を食ったりして、数を増やしていく。
この生態系は今作の大きな特色であり、面白い部分である。
戦うだけなら強い魔物の方が当然有利だが、餌となる弱い魔物がいなければ数を増やせない。
だからバランス良く魔物を増やすべきだが、あまりにバランスに拘ると肝心の勇者との戦闘で勝てなくなる。
最終目的は勇者打倒であり、美しい生態系の構築ではないのだ。
また魔物達にはレベルアップの要素があり、最下級の雑魚も強化次第では十分主力になる。
強化は限られた回数しかできないので、どの魔物を強くするかがまた迷い所だ。雑魚人海戦術にするか、少数精鋭で行くか……。
こういった要素に計画的に、或いは臨機応変に対応しながら、理想のダンジョンを作り上げ、勇者を滅殺する。
何とまぁ新しいゲームなことか。今作、正確には前作の製作者は、己の創作を誇っていいと思うよ。
今のご時世(今作はちょっと古いが)、これだけ独自性のあるゲームを出すだけで凄いことなのだ。
その上今作は新しいだけでなく、驚くほど纏まっていて、整然としている。完成度が高い。素晴らしいゲームである。
SCEは任天堂にも負けない、斬新な発想のゲームを打ち出す優れたゲームメーカーである。とステマっておく。俺の意思でな。チッ。


そんな斬新で筋が通っていて奥深く、そして面白い今作だが……難しい。無茶苦茶難しい。
チュートリアルは充実してるし、それこそ公式扱いされてるwikiを見てもいいが、それでも難しい。
ルールや魔物の種類、進化のタイプや突然変異、勇者のタイプに行動パターン、とにかく覚えることが多い。あまりにも多い。
そんな覚えるべきことが、基本的に最初から全てプレーヤーに解放される。まぁもちろん最初から全てを必要とはされないけど。
だが先に進めば当然高度なプレーを要求され、しかもそれをリアルタイムで動くゲーム上で実現しなければならないのだ。
序盤は良かった。割とテキトーでも勇者を倒せるし、負けてもそこで教えられるヒントを元に対策を練れば突破できて嬉しかった。
偶然作れた強い魔物でTUEEEプレーを楽しんだり、ゲーム自体のおちゃらけ雰囲気もこの頃は存分に楽しむことができた。
……が、終盤、いやゲーム後半から様相は一変する。
今作のストーリーモードは全8エリアなのだが、その後半、5エリアから、本性を剥き出しにし始めるのだ。

まぁその、単純に、エリア5からは難しい。エリア4以前とは比べ物にならないほど難度が上がり、ド詰まりする。
別にエリア4までも鼻歌気分でやれるわけではなく、ゲームオーバー毎に対策を練り、新たな手を試したりして突破してきた。
だがエリア5ではそんな俺の浅知恵などマジ何の役にも立たず、惨敗惨敗また惨敗。バカイシンさまと陰口叩かれっぱなしだった。
単に難しいだけならまだいいんだが、エリア5からはステージがかなりの長丁場になるのもネックだった。
各エリアで襲ってくる勇者は一人だけでなく、複数パーティ存在する。準備→勇者襲来→準備→勇者襲来 を繰り返すわけだ。
それが後半はとにかく数が多く、序盤の勇者は倒せても後になると息切れして敗北。そしてまた最初からやり直し。
死にまくりゲーにおいて非常に大事な「再挑戦環境」が今作は整っていないというか、一切の配慮がない。非常に厳しい。
いつしかやり続ける気力が失せてしまい、長期放置に入ってしまった。だが俺の実力では仕方なかったと思う。
せめて4回目の勇者辺りで一旦セーブさせてはくれないものか。最初からやり直しではあまりにも……。はぁ。

そうなってしまえば頼るのは比類なきインターネットの烏合の衆が生んだ叡智の結集、攻略wikiである。
クリア前に頼るなどもちろん不本意だが、そんな事を言ってられる難度じゃない。誰かに助けてほしかったのだ。
で、結果的にはここで学んだ攻略でクリアーできた。俺が選んだ手段、それは「コケ地獄」というものだった。
今作は割と理路整然としたゲームなので、所謂セオリーが幾つか存在する。コケ地獄はその中でも最も一般的で、最も強力なものだと思う。
これは最下級魔物であるコケ(スライムみたいなもん)のレベルを上げ、ある程度の戦力を持たせた後に、
一箇所に夥しい数を集合させ、そこに勇者を誘い込むことにより、小さな力の猛連打で一気にぶち殺すという作戦だ。
コケ単体では弱くても数百匹も集まれば凄まじい力を発揮する。大抵の勇者は1秒ほどで処理落ちしながら死ぬ。
コケ類は動きに法則性があり、一箇所に誘導させやすく、また一旦集まれば逃げていかないという習性もありがたい。
あれだけ苦戦していたエリア5も、ラストであるエリア8も、偉大なる大破壊神・コケ様の力によって突破できた。
攻略wikiさまさまである。まぁwiki見てんだから当然だな。誰にでもやれるよこんなの。攻略とは呼べねーよ。


……と言うわけでもない。確かにコケ地獄は超強力だが、それを知ったからといって即座にゲームが楽になるわけではない。
コケ地獄を作用させる為には「強いコケ」を集める必要があり、弱いコケで実行するとあっさり潰されてしまう。
よってコケをレベルアップさせなければならないのだが、その為には堀パワーが必要で、最初の勇者を華麗に屠らなければならない。
今作では勇者を少ない手数・魔物で、更に短時間に倒せば、堀パワーという言わば魔物の経験値が多く貰えるのだ。
つまりエリア序盤の勇者を効率的に倒すことで経験値を多く稼ぎ、それを使ってコケを強化し、コケ地獄でエリア終盤の勇者に備えるというわけだ。
コケ地獄のやり方は分かっていても、エリア序盤を効率的にこなすには結局腕や経験、スピードがある程度は必要になる。
wikiは大変役に立ったが、それだけで全部解決できるほど甘いゲームではなかった。そう考えると見事なバランスだな。
つーわけで序盤の突破の仕方にも途中からのコケ地獄構築にも、何だかんだで苦労し、何回も何回もやり直した。
wiki熟読してこれかよ、と我ながら心底情けなかった。いやこのゲーム、マジ難しくないか? どうして俺はこう……はぁ。

でもまぁ苦労の末エリア5を突破できれば、後は割と早かった。
一旦コケ地獄を組み立てられればほぼ無敵状態なので、いちいち勇者の来襲を待たず、敢えて呼び込んだりもできた。
ラスボスである勇者「ああああ」も我が名無しのコケどもにかかればスライム同然。2秒で殺せた。
そしてこの瞬間、自分の仕掛けた狙いが見事にハマって勇者をボコボコに出来た瞬間には、非常に強い快感があった。
このゲームの面白さの一つはこれだと思う。自分の考えたダンジョンが狙い通りに作用する、これは最高だよ。
もちろん本当は自力で考えてこれを味わいたかったが、もう言うまい。
自力でも、エリア4までは結構上手く行った時の快感を楽しめたからな。
コケの動きの法則を知れば、確かにコケ地獄は思いつくと今なら分かる。後出しジャンケンだな。はぁ。

上に書いたように、今作は弱い勇者を余裕を持って倒し、得た経験値で強い勇者に備えるというのがとても大事だ。
不満があるならこの作りだろうか。ある意味では序盤の方がずっと大事で、そこがダメだと終盤はまず突破不可能になる。
それを一連の流れとするには後半のステージは長すぎて、対策を考えようにもちょっと規模が大きすぎる。
生み出すだけでもそれなりに面倒なトカゲ男やリリスなども、後半の勇者には一撃であっさり殺される。
自力で頑張って作り上げたつもりの軍団が、慈悲も何もなく一撃で消し飛んでいく。そりゃもう絶望的な画面だったね。
今作はゲームシステムは素晴らしいと思うが、バランス調整はちょっと尖がり過ぎである。辛すぎる。
中途セーブを用意するか、幾つかのセオリーもチュートリアルで教えるかぐらいはしても良かったんではないか。
初代ならともかく2作目なんだし。2作目からでもオッケーと楽観していたが、やはり初代から慣れておくべきだったか。
よく出来たゲームなのに、難しさをキッチリ楽しめなかったのは大変残念である。ヘボくてごめんなさい。はぁ。




さて、今作はゲームシステムだけでなく、世界設定も大変斬新で、とても凝っている。
「勇者のくせになまいきだ」というタイトルで分かるが、今作は魔王が勇者を倒すという、一般常識とは逆のゲームだ。
つってもこういった「剣と魔法のRPGを茶化す」文化は実は割と一般的で、今やネット上ではそっちの方が主流なくらいだ。
日本RPGの代表格であるドラクエシリーズが「勇者と魔王」の世界であることも、このパロディが成り立ちやすい土壌になっていると思う。
今作はそんなドラクエ的世界だけでなく、他のRPG、いや2次元作品全般、ネットネタ、ありとあらゆるものをパロりまくっている。
そのパロっぷりは徹底していて、台詞等は多分全部元ネタがあると思う。ここまでやっていればいっそ潔い。
王道を茶化した世界設定に、これでもかと言うほどのパロネタ。要するに同人的なんだな。今作は同人的ゲームである。
これがハードメーカーたるSCEから発売されたというのは実に興味深い。SCEは良い意味で実に面白い会社だと思う。褒め言葉だ。

で、そんだけパロ塗れな作品ではあるが、今作は十分オリジナルを名乗れる出来の作品でもある。
何より単純に、パロの質が高い。単に元ネタがあるというだけでなく、その事実をきちんと笑いのある方向に持って行っている。
同人ネタというのは諸刃の剣であり、その馴れ馴れしさが時には不快に感じることもある。が、今作にそれは一切なかった。
ユーザーである俺も毎回「プッ」と吹き出したし、想像だが元ネタの製作者も今作でのパロは皆ニヤリとしてしまうのではなかろうか。
非常に抽象的な話になるが、今作には決して元ネタを馬鹿にする意図がなく、逆にこれまで連綿と培われてきたRPGというジャンル、
2次元文化にネットネタ、そういったものに対する敬意がきちんと含まれていると思う。だから不快に感じず、ただ笑える。
極めて骨太なゲーム性も、その意味では正しい。ガチなゲームだからこそ、過剰なパロにも負けてないのだ。

パロネタを除いても、語り部である「魔王」の口調やグラフィックなどから伝わる不真面目さが素晴らしい。
魔王が台詞を喋ると「ギュワゴアギィア」てな感じの効果音が出るのだが、これも言葉に出来ないくらい合っている。
世界設定の根幹が「勇者と魔王」を茶化すことだから、キャラクターにもそれを徹底させている。完璧である。
また魔王は魔王でありがなら戦闘力がゼロで、勇者に簀巻きにされて拉致されるというのも大変面白い。最弱魔王、面白い。
しかし勇者は魔王を引き摺ると能力が落ちるので、実は魔王を囮にする作戦は攻略上とても大事だったりする。これも面白い。
魔王のキャラクターは今作を象徴する出来栄えである。文句の付け所がない。非常に優れた製作者のセンスをビンビン感じる。
いやぁ、大したものだ。パロディに甘えるのではなくそれを強化する独自要素。なんて理想的なんだろう。

それだけでなく、ゲームのグラフィックがドット絵だったり、BGMが物悲しいリコーダー主体だったりするのも、
今作の雰囲気にいちいち合っている。システムもそうだが、今作は全体的にデザイナーが極めて優れた仕事をしていると思う。
よくもまぁ、これだけピッタリな要素を集められたもんである。殆ど奇跡的な作品、と言うと褒めすぎだろうか。
ちなみに今作は、PSPというハードにもまたピッタリ合ってる。
ダンジョンは結構大規模で、常時なるべく広い範囲を表示したいので、PSPの大きな液晶が非常によく合う。誂えたかのようだ。
またダンジョンが進展すると膨大な魔物が蠢くことになるが、ハードはそれに負けず、きちんと処理していた。
表示能力も処理能力も、PSPの性能があってこそ可能なゲームだと思う。一見地味なゲームだが、ハードを使いこなしている。
まぁ無茶なプレーで増やしすぎると処理落ちどころかフリーズするらしいが、狙わないとまず起こらないから可としよう。

愛のあるパロネタと、それに負けない魔王のキャラ、ドット絵、BGM、そしてゲーム性。
オリジナリティ溢れるゲームだと断言しよう。PSP素晴らしい。モンハン専用機? 言いたい奴には言わせておけ。
俺自身PSPをあんま使いこなせてないんで、こんな「PSPならでは」のゲームをプレーできて良かった。
まぁ難度についてだけは残念だが……これは今作の売りでもあるだろうからなぁ。うーん。



ゲームはストーリーモード以外にも、課題に挑むトレーニングモードがあり、まだ幾つか残っている。
他、魔物を出現させて埋めていく図鑑なんてのもあるが、ねんがんのストーリーモードクリアーは達成したんで、後は流れでやろうと思う。
いやホント、よくクリアーしたよ俺。wikiガン見でもそう思うよ。一時はマジで諦めかけたからな。
……もう少し、自力のレベルを上げておかんとなぁ。ホント情けない。嗚呼情けない。


で、前作と、3作目である「勇者のくせになまいきだ:3D」はどうしよう。
今作を突破できたから前作には通用すると思うが、3作目はまた新要素が入って一筋縄ではいかなくなるだろう。
3作目では高難度の反省か難度選択機能が加わったらしいが、それはちょっと違うんだよな。易しいでクリアーしても嬉しくないよ。
取り敢えずは安値の縁でもない限り見送りだな。一応続編等の展開は注目しておこう。
基本システムは変わらんからこれ以上の発展は難しいかもしれんが、3作で終わるならそれはそれで美しいな。
斬新なシステムで濃いファンを掴み、3作目まで目一杯詰め込んで走り抜けた。
販売的にどうだったのかは知らんが、幸せなシリーズだったのではなかろうか。そう思いたい。
俺も今作のスタッフには敬意を表したい。タダ入手になっちまったのがアレだが、
それはソニーのせいですから恨むならあっちにして下さい破壊神さま!
……つまらん。良質のパロディって難しいなぁ。はぁ。



とことんまでふざけた世界の今作だが、ゲームをクリアーすると流れる魔王のメッセージは印象的だった。
正確には覚えていないから文章は全然違うが、論旨は変えてない。書いてみる。


「お疲れさまです破壊神さま。これで今回の戦いは終了です。
破壊神さまにとっては、この戦いなど片手間のもので、恐らくすぐにお忘れになってしまうのでしょう。
ですが、私はそれでもいいと思うのです。
破壊神さまの生きておられる世界は、『たたかう』『どうぐ』『ぼうぎょ』『にげる』などのコマンドで
物事が進むような単純なものではないと聞いております。
そんな厳しい世界での疲れや悩みを、この世界での戦いで少しでも癒すことができれば……私は嬉しいのです。
ですので、また癒しがほしくなられたら、いつでもこの世界にお戻り下さい!
破壊神さまのツルハシ捌きで懲りない勇者どもをフルボッコに致しましょう!!」


……こんな感じ。随分違うな。まいいや。
最後の最後でしんみりさせてくれた。だが余計な要素とは感じず、寧ろ非常に良い感触を残してくれた。
やはり今作のセンスはどこまでも優れていた。素晴らしい。惜しみない賛辞を贈ろう。

でもな、魔王よ、俺にとって、そちらの世界はとても片手間でやれるもんじゃなかったよ。
まぁこちらの世界が一筋縄じゃいかないってのは確かだ。攻略法なんてないし、もちろんwikiもない。
お前みたいに楽しい喋りで盛り上げてくれる部下もいないしな。ったく明日はゲツーヨーだよ。こっち用語で悪夢って意味さ。
それでもこっちで生きてかないとそっちに降臨することも出来ないんだから、何とかやれるだけやっとくよ。
また機会あればそっち行くから、それまで新しいネタたっぷり仕込んでおけよな。なんてな。あばよ魔王。
つーかずっと思ってたけど、なまいきなのは勇者じゃなく魔王、お前なんじゃないのか? 負ける度に馬鹿にしやがってよう!!

……いや負けなければいいんですよね。ヘボ破壊神ですみません。こっちの世界でもホントダメダメで……。
はぁ。












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2 コメント

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Unknown (SdK)
2020-08-10 07:58:26
こんにちは。「勇者のくせになまいきだ。」シリーズは個人的にもわりに気に入っているタイトルです。

「勇なま」シリーズは「ポピュラス」や「テーマパーク」等のゴッドゲームというジャンルを生み出したピーター・モリニュー氏の名作「ダンジョンキーパー」やネバーランドカンパニーの隠れた傑作「カオスシード」などの所謂ダンジョン・マネジメントゲームの系譜にあたるものなんじゃないかと思うのですが、そういったジャンルの中にあってしっかりとこのタイトル独自の魅力を備えていると思いますね。

>いやぁ、これは凄いわ。おちゃらけた雰囲気からは想像できないほど、非常にガチなゲームである。
私もこのゲームには結構苦戦させられましたね。3作目の「3D」では要望が多かったのか、難易度選択が導入されていましたが正直あれではシステム上初心者には大した救済にはならないのではないかと思います。バグやハメ技のようなものはそこそこあるとはいえ。

>破壊神ことプレーヤーがやる事は、基本「ツルハシを使ってダンジョンを掘る」だけ。
シンプルな操作形態から奥深い戦略性、みたいなものを生み出すのはゲームとしては理想的かもしれませんが、やっぱり実現するとなると中々難しい事だろうと思うのです。
だからこそ、このゲームの基本的には「ツルハシを振るうだけ」というとても単純なアクションと、そこから生まれるディープなプレイフィールは高く評価されるべき点だと感じます。

>そうなってしまえば頼るのは比類なきインターネットの烏合の衆が生んだ叡智の結集、攻略wikiである。
私も攻略wikiには大変お世話になりました。このゲームのwikiは公式ネタで推薦されているだけあって充実していますね。読んでいるだけでも楽しいです。
あと凄腕プレイヤーの動画なども動画投稿サイトにたくさん上げられていますが上手い人はほんとに驚くような手際ですね。凄いです。

>王道を茶化した世界設定に、これでもかと言うほどのパロネタ。要するに同人的なんだな。今作は同人的ゲームである。
個人的には茶化した設定とかパロディの多用に代表されるような同人的なノリってあんまり好きじゃないんですよね、ゲームに限らず。だからフリーゲームなんかもあまり好まないんですが、「勇なま」のそういった部分に関しては全く気にならず、むしろ楽しめた自分がいました。
それは記事でおっしゃっている通り元ネタに対しての敬意がきちんと含まれており、ちゃんとこのタイトルに独自の骨子があってその芯の太さのようなものをしっかりと感じられるからなのだと思います。
そういった細かい箇所の徹底したバランス感覚みたいなものやユーモアのセンスについてもプロの力量が遺憾なく発揮されていました。

>それだけでなく、ゲームのグラフィックがドット絵だったり、BGMが物悲しいリコーダー主体だったりするのも、今作の雰囲気にいちいち合っている。
味のあるドットもノイジークロークの手掛けたノルタルジックな音楽についてもそれ単体でもとても素晴らしいものですがいずれもゲーム全体の雰囲気にベストフィットしていて、ゲームというメディアとしてもよくまとまっていますよね。
とくに現状の本編最終作「3D」のエンディングなんてまさにその到達点だったと言える出来なのではないか……と思います。

>で、前作と、3作目である「勇者のくせになまいきだ:3D」はどうしよう。
「3D」は魔水や水棲魔物、知能システム、多彩な種類のツルハシ、そしてもちろん新規の魔物などもたくさん導入されてより複雑になったという感がありますが、私としては集大成として完成されたタイトルだったと思いましたね。図鑑のポップアップ機能追加なんかでパロディ・小ネタ要素もしっかりパワーアップしてますし。まあ高難度は相変わらずで、下手すれば過去最高の難しさ(――といっても過去作がクリアできるならそれほど問題はないぐらいですが――)じゃないかなと思いましたが。

>最後の最後でしんみりさせてくれた。だが余計な要素とは感じず、寧ろ非常に良い感触を残してくれた。
「勇なま」シリーズ全体の根底に流れる基本的に明るいのに時にはしんみりとしたこの雰囲気も素敵ですよね。前述のぴったりと合ったアートワークやBGMも相まってすっきりとした後味を残してくれます。

「勇者のくせになまいきだ。」、今でも正当な続編を希望してやまないシリーズなのですが、望みは薄いのでしょうかね……。
Unknown (ota)
2020-08-14 04:10:53
SdKさんこんにちは。

>ネバーランドカンパニーの隠れた傑作「カオスシード」などの所謂ダンジョン・マネジメントゲームの系譜にあたるものなんじゃないかと思うのですが
へぇ……カオスシードもこれ系なんですか。知りませんでした。サターン版をそのうちやるつもりです。なるほど。

>私もこのゲームには結構苦戦させられましたね。
正直、このゲームには完敗しました。後半の面には全く歯が立ちませんでした。今持って自力でやれる気が全くしません。
相当な妙手を見出さないと太刀打ち出来ず、ハッキリ言って難しすぎだと思います。表面くらいはもう少し下げてほしかった。

>このゲームの基本的には「ツルハシを振るうだけ」というとても単純なアクションと、そこから生まれるディープなプレイフィールは高く評価されるべき点だと感じます
やることは極めて単純で、後はプレーヤーの思考次第。甘くはないけど懐の深いゲームです。俺には難しすぎるんですがw

>あと凄腕プレイヤーの動画なども動画投稿サイトにたくさん上げられていますが上手い人はほんとに驚くような手際ですね。
おお……確かにこのゲームは内容的に動画に向いてますね。でも観たことないんで、今度チェックしてみます。

>元ネタに対しての敬意がきちんと含まれており、ちゃんとこのタイトルに独自の骨子があってその芯の太さのようなものをしっかりと感じられるからなのだと思います。
この感想を書いてからも、ゲームに限らずラノベやなろう界でも、勇者茶化しは止めようがないほど蔓延してますね。
どう考えてもやり過ぎだけど、止める権利は誰にもないから歯止めがかからない。残念ながらもう手遅れですね。
今作のように高品質な茶化しゲーは貴重ですね。そして本家であるガチの勇者と魔王な世界は今やもっと貴重。皮肉なもんです。

>いずれもゲーム全体の雰囲気にベストフィットしていて、ゲームというメディアとしてもよくまとまっていますよね。
本当に。世界設定がスタッフ全体で完全に共有されているんだと思います。プロの仕事ですなぁ。

>とくに現状の本編最終作「3D」のエンディングなんてまさにその到達点だったと言える出来なのではないか……と思います。
おお。そのうちVITAでセットものが出ると予想してたんですが、なかったですね。単品は正直手を出しにくいです。

>「勇者のくせになまいきだ。」、今でも正当な続編を希望してやまないシリーズなのですが、望みは薄いのでしょうかね……。
なんかVRで出てましたが、どんな内容なんでしょうねw VITAで続編がなかったことから、3で既にやり尽くしたのでしょうか。
据え置き機でリマスターというのが一番現実的ですかね。望みは薄いけど、しんみりと待ちましょう。どんなだよ……。

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