不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

古稀背包客放浪記

古稀バックパッカーの東南アジア見て歩る記

虎跳峡の星

2009-09-26 19:55:04 | 日記
その6 還暦背包族(bei bao zu)ベイバオズ

2009年9月9日(水)

昨夜のNOVA先生の話で、今日虎跳峡に行くことにした。何人で行くのか聞くと3人との事なので同行させてもらうことにしたのだ。しかし、宿で手配して呉れたのは、宿から虎跳峡入口までのミニバスだけで、NOVA先生とは別々のバスに乗って、その後何処ででも一緒にはならなかった。結局、最初から、一人旅であった。

出発地の橋頭からの登山道の取り付きが解かりづらい。林道をブラブラ行くが近道と思い直登すると、とんでもない方向に出てしまった。偶然通りかかった地元の人間に虎跳峡と聞くとずうっと下の道を指差す。結局関係の無い道を登っていた。仕方なくトラヴァースしてもと来た道へ戻る。四五十分のロスをする。最初はダラダラとの中を行く。牛の糞と羊の糞が友だ。柔らかそうなのは踏まないように注意して歩く。

前後には誰も居ない。真夏の太陽が直射する。

蓄積した疲労がジワジワと表われてくる。汗が吹き出る。日陰で息を整える。今、休憩すると動き出すのが嫌になるので、休まず、ゆっくりゆっくり登る。遅々として行程は進まない。それでも休まず、ゆっくりゆっくり登る。それこそ長年の経験で克服してやると思うが、さすが年と高度と暑さには勝てない。

やっぱり止めよう。前後に誰も居ないし、さっき二人連れの若い欧米人に追い抜かれただけで、行きかう人も地元の人も見かけない。少し離れた斜面で、鈴をつけた牛が草を食んで、時々カランコロンと音がするだけだ。

やっぱり止めよう。峠まではまだ標高差で300m以上はあるし、もう疲れてふらふらする。峠に着いてもそこから最初の宿まで更に3時間は必要だ。5時間はどうしても掛かる。誰も居ないし、野宿する訳にもいくまい。まあ、七時位までは明るいが、未知のルートでしかも標高2500m前後もあるし、右側は断崖絶壁で金沙江まで4~500mは落ち込んでいる。どう考えても止めた方が良さそうだ。

だけど、悲しい山屋の性なのか、ツイツイ何時もの癖で頑張ってしまう。あそこまでだったら行けるだろう、やってみなよ、男が泣くよ。騙し騙し、騙され騙されツイツイ頑張ってしまう。そして、リミットぎりぎりの14時には何とか2650mの峠に辿り着いた。本当に辿り着いたという表現以外の何物でもない。何十年ぶりの経験だ。

峠からの長い下りもきついが、惰性に任せて歩く。金沙江を挟んだ対岸の姿をやっと眺められる。今更にその大きさに言葉が出ない。日本の谷川岳一の倉沢の岩場の千倍、いや一万倍位の迫力と壮絶さで迫ってくる。標高差で優に3500mは有る。玉龍雪山の西斜面はまさに、大絶壁だ。今は足を止めじっくり見る余裕は無い。今日の予定の宿まではマダマダ有るのだから。

前に人影は無い。後から来るような気配も無い。とにかく、急がねばならない。中国の虎跳峡で日本人が一人遭難したとあっては申し訳ない。

とにかく、それからの道も苦しかったとだけ記しておこう。

宿で飲んだ啤酒の味は格別だ。そこからの、絶壁の眺めも最高だ。夕間暮れの絶壁も最高だ。満天の星が最高だ。

小生の30分位後に着いた一人旅のドイツ娘は25,6才位の可愛い子だ。後に人が居たのだ。

啤酒が一日の疲れを吹っ飛ばしてくれた。頑張ってよかった。本当に素晴らしい風景だ。

可愛いドイツ娘は上海からベトナムへ行き、また中国へ入国し、ここ虎跳峡へ来たのだ。驚くことにその行程の殆どは自転車で来たとのこと。そして更に驚くことに日本語が話せるのだ。実に十日ぶりの日本語が話せる。最高だ。

満天の星だ。流れ星が降るようだ。ロマンチック度2000%だ。
一人身が身に滲みる。


2009年9月10日(木)

8時に出発する。宿で一緒になった連中だ。ドイツ娘と韓国の青年、彼も日本語が少し出来ると、中国人の四人組、男二人女二人、それに小生を入れて7人だ。少し前にガイドを連れた英国人二人が出発していった。それでその宿の宿泊客全員だ。

中虎跳峡のハイライトだ。下り気味の道が山肌を縫って行く。右側は相変わらずの断崖絶壁だが、少しずつ下って金沙江に近づいている。そして対岸には相変わらず、数千mの岸壁が迫っている。見飽きるということが無いほどの迫力だ。何と言って表現すれば良いのか言葉が無い。見上げれば首が痛い。息を呑む。

中虎跳峡で更に20元の追加料金を払って、金沙江の水面まで断崖絶壁の道を下って虎跳石を見る。そして梯子を使って断崖絶壁の道を昇る。老体にはきつい。

爽やかな空気の中の5時間のトレッキングは実に快調だ。晴れ上がった空に岸壁が一段と映える。金沙江の水面高はわずか1800mだ。

中国人四人組みは、インターネット友達で、今回始めて会い、尚且つ四人での始めての旅行との事。出身地もバラバラなら、学歴、職業も全て違う。始めて会って、その後に二週間の旅を一緒にするとの事。今はこんな関係の旅人も居るのかとマジに思う。男男、女女の部屋なのか、男女の部屋なのか聞きそびれた。

四人組の次の目的地は香格里垃なので、彼らがチャーターした車をシェアーする事にして同乗する。昨日の入口のまで車で戻ることにした。本当は違う別のルートを歩いて、そう歩いて行きたかったのだが、体力が無い。断念する。

そうです。我々が二日間歩いた虎跳峡の断崖絶壁の四五百メーター下には、川岸にへばり付いた様に曲りくねった車道があるのです。常に落石の危険にさらされたその道は、やっと車が一台通れる狭さなのだが。

入口のそのには日が暮れようとする頃に着いた。
内容の濃い、かつ長い二日間だった。

数十年ぶりの山歩きだ。爽快!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする