うちの芝生が一番青い

Tokyoに暮らす、ごくごく平凡で標準的な【ナイスサーティーズ】の奮闘記。

書評 ~ 幸田 文 全集 第11巻

2010年10月17日 | 書評
東京サラリーマン生活に戻り、やや忙しくなってきました。

しばらくおさぼりしておりました書評です。
今週のチョイスは 「幸田 文 全集 第11巻」

図書館でかりてまいりました。





著者の幸田 文さんは昭和を代表するエッセイストである。

さまざまな新聞や雑誌にシリーズもののエッセイを掲載し、その多くが身近なことをつづったもの。
今でいうところの、「人気ブロガー」といったところかも知れない。

でもその感性の豊かさ、文章の瑞々しさ、表現の美しさ、どれも素晴らしい。
現在の芸能人をはじめとするブログの「軽ーい」文章と比較するのは失礼というものだろう。

幸田さんは言うまでもないが、文豪 幸田露伴の娘である。
早くに妻を亡くした幸田露伴は、男手ひとつ、「日本の習慣」や「美しい生活の仕方」を
文字どおり英才教育したのだそうだ。


けっして硬い文章ではない。
けっこうくだけた表現もおおいのである。

が、文章が美しい。選ぶ表現の一つ一つが流れるような美しさであり、
日本の四季折々の風景や色が浮かんでくるようなのである。



少し抜粋してご紹介。


  ~たしかに月初めにくらべると、月末はずっと春に近づいたとおもう。
   
   明け方は牛乳屋がきまって坂の上からあがって来るが、
   その牛乳壜の触れあう音はほどよくゆるんできた。
  
   寒いとカチリカチリと聞こえ、このころは からんからん ちろんちろんと聞こえるようになった。
   ん の字だけ余計に伸びたのである。

   遠い汽車の笛なども ぷおうと曳くように聞こえる。



  ~柳はいま、やわらかさの限り。

   色もやわらかいし、糸もやわらかいし、蛙でなくとも飛びついて 
   ちょいと引っ張ってみたい青である。



秋の夜長、「日本の美しさ」に触れた気がした一冊でありました・・・。

最新の画像もっと見る