富田林百景+ 「とんだばやし」とその周辺の魅力を発信!「ええとこ富田林」

大阪の東南部に位置する人口10万ちょっとのごく普通の町、富田林。その魅力を、市民の手で発見していきます。

岸本記念自然緑地公園(中野竹林)のヒメボタルはなぜ大発生したか?

2024年06月18日 | ホタル

2024年5月27日 17:03 富田林市中野町二丁目7 岸本記念自然緑地公園(中野竹林)を東側からみたところ。河岸段丘崖にあたります。

 

上段は段丘面に当たるのでほぼ平ら。真竹の背の高い竹が茂り、昼なお暗い感じ。

 

昔からある看板。すでに「ホタルの出る場所」と明示されています。地元中野町の方はホタルの存在をすでに10年以上前から認識されていたようです。

 

2020年5月29日 20:41 体調1cm程度のヒメボタル

地元の方の話では、ホタルは50年以上前から確認されていて、まわりの水路で見かけたそうです。その頃はどうもヘイケボタルと思われていたようです。

 

2020年5月29日 20:29 飛翔する直前を捕らえました。

このように竹藪でほそぼそと生きながらえていたと思われるヒメボタルがいたのですが、その頃は竹藪が整備されていず、中に入れなかったので詳しいことは解らずじまいでした。

守る会の方に聞いた話では、整備開始の2009年、当時の現況は枯竹や倒竹で足の踏み入れ場のないほど荒れた竹藪であったとのこと。道を作るためにロープを曳くだけで一ヶ月かかったそうです。

 

2021年5月22日 21:44 富田林市域で発生しているヒメボタル 

細々と命をつなげてきたヒメボタルが地元の方に幾分知られるようになるのがざっと10年前。

2009年、今から15年程前に「富田林の自然を守る会」が地権者岸本忠三氏をはじめ4名の依頼で、竹藪の整備と保全をされるようになりました。古い竹の間伐を中心に竹藪整備、遊歩道の設置、法面の草刈りなど徐々に整備されていきます。

つまり中野竹林を自然再生と地域の憩いの場としての整備に着手されていきます。

 

2023年5月21日 19:48

10年後、2019年に竹材をおがくず状にする高価な機械チッパーを導入し、黄色くなった古い竹を間伐しチッパーでおがくずとしてその場所に戻しました。

またこれにより、整備作業は飛躍的に進みました。チッパーを上の面に自走させるための西側法面のスロープの造成や北側入り口の門の設置も完成します。

 

2024年5月23日 20:58 

それにより微生物や無脊椎動物の分解により腐葉土状になった土壌に、ヒメボタルのエサになる陸生の巻貝のキセルガイやオカチョウジガイなどが多く発生し、その結果ここ3,4年のホタルの大発生につながったと思われます。

チッパーによるおがくずの散布(5年前)とヒメボタルの大量発生の時期(3、4年前)が合致します。

つまり、管理を任された「富田林の自然を守る会」がこのような真竹の整備された密生度の高い竹林を維持し、古い竹を間伐整備し、さらにその竹をチッパーでおがくず状にして、その場所に戻して腐葉土状にしたことが大発生につながっているようです。まさに自然に力による再生です。

さらにまたむやみに人がはいらないよう通常は出入口を閉鎖し、竹林の遊歩道は人がはいれる場所とはいってはいけない場所を区画したのが良い結果を生んでいるようです。(観察可能期間のみ出入口を開放しています。)

 

今年を含めた5年間の出現状況をご報告します。

これは「富田林の自然を守る会」と「富田林百景」の役員をされている楠本孝一氏の過去5年間の資料です。

2024年 最大発生数 540匹(2024.5.24)・・・ 岸本記念自然緑地公園(富田林市移管後)2年目

〈画面をクリックすると拡大します〉

 

〈画面をクリックすると拡大します〉

2023年 最大発生数 570匹(2023.5.28)・・・ 岸本記念自然緑地公園(富田林市移管後)2年目

 

〈画面をクリックすると拡大します〉

2022年 最大発生数 570匹(2022.5.27)・・・ 富田林の自然を守る会 維持管理

 

〈画面をクリックすると拡大します〉

2021年 最大発生数 350匹(2023.5.23)・・・ 富田林の自然を守る会 維持管理

 

〈画面をクリックすると拡大します〉

2020年 最大発生数 約200匹(2023.5.28)・・・ 富田林の自然を守る会 維持管理

チッパーの導入 2019年2月。

それ以前の統計はありません。記録に残る他のデータ

2018.5.24 22:33 その数300匹以上

 

2021年5月28日 21:27 出現数は250匹。

 

2022年5月28日 21:54 メスは写真のような後翅はねが退化して飛べないそうです。

 

成虫になると水以外はほとんど取りません。幼虫時の捕食の栄養分だけで一週間くらい生きています。

口元は牙ではなく、ひげ状の突起。これで草に降りる朝露などを取るようです。

 

2022年5月27日 21:06 残念ながらクモに捕らえられました。自然界はきびしいですね。

 

5月27日 22:30 1~2週間の短い成虫期を終えて、子孫を残し得たのでしょうか?自然に還ります。

 

2022年5月27日 21:30 ひげ状の口。成虫は口が退化していて捕食することが出来ず、水しか飲まないそうです。朝露などでしのいでいるようです。

幼虫は肉食で、陸生の貝(キセルガイなど)をモリモリ食べて、成虫時のエネルギーも蓄えるそうです。ヒメボタルの幼虫は川にはいません。陸生のホタルです。

 

2023.5.27 21:26 遊歩道で踏みつぶされたヒメボタル。

 

 

チッパーによる竹のおがくず。

 

あちこちにまかれています。

 

きれいな真竹の竹林と筍

これがホタルのエサになる陸生の巻貝の発生を助け、腐葉土として竹の肥料にもなります。自然の再生です。

 

整備しないで以前の状態を残している部分

真竹は5年位で幹の緑を失い黄変します。そしてなかなか腐って倒れないため立ち枯れしています。この状態から現在の美しい竹林になるまで15年を要しました。

 

現在も続く古い竹の伐採。おがくずとして自然に戻す。これが自然再生の原点。

 

高価なチッパー。助成金により導入。

【ヒメボタルとは】               
ヒメボタルは、大阪府レッドデーターブック準絶滅危惧種に指定されている貴重なホタルです。

ヒメボタルは、ゲンジボタルやヘイケホタルと 異なり、陸生で幼虫は竹薮や林の落ち葉の中で、カタツムリの仲間の陸生の巻き貝キセルガイなどを食べて生育します。

ヒメボタルのメスは後翅が退化し飛ぶことが できず、行動範囲が限られているので、生活環境が破壊されるとそこを移動して生活できず、絶滅し再生は不可能となります。 現に富田林市須賀の西除川支流の谷のヒメボタルは絶滅寸前になっています。(2020年5月28日の出現数3匹です。)        
発光の色はゲンジボタルが、やや緑がかった白(関西は2秒周期)に対し、ヒメボタルは白っぽく、発光の間隔がチカチカと短いため、観測数が多いとまるでクリスマスツリーの電飾のようになります。                                 
観測数は天候や時刻において変動しますが、20時30分から21時30分頃までが 多く光ります。                                      
また、ヒメボタルの発生は年により変動がありますがゲンジボタルより早く、5月中旬より発生しピークは5月下旬から6月上旬(5月28日頃が最大のピーク)で、石川上流部 のケンジボタルの6月上旬から下旬(最大のピークは6月15日頃)よりかなり早いです。

 

2023年4月4日、2021年に中野竹林の地権者、岸本忠三氏ほか4名の方から富田林市に寄贈され、自然緑地公園として整備されていましたが、工事が完了して「岸本記念自然緑地公園」と命名され、吉村善美富田林市長初め行政の方々及び地権者岸本忠三氏初めご来賓の方々、大勢の地域の方々をお迎えして「岸本記念自然緑地公園」オ-プニングセレモニーが開催されました。

 

南側出入りに設置された記念の案内板

ここで今後の課題を考えてみましょう。

・遊歩道上の地下茎を切って外から砂(真砂)入れたことへの影響。この部分はホタルのエサなる巻貝に必要な腐葉土がなくなりました。両側の竹藪の分断による影響も出てくると思われます。結果的の生活域を分断したことになります。

生活域を絶対分断してはいけません。特にヒメボタルはメスが後翅が退化して飛べませんのでなおさらです。幅2.5mも腐葉土を除去しては、メスは遊歩道の向こうに行くことができないと思われます。生活域の孤立化は避けるべきです。

 

現在の竹藪

・遊歩道を2m弱から2.5mに広げることにより、太陽の直射の影響。土壌の乾燥度や直射を嫌う微生物、ダニや節足動物、陸生の巻貝への影響が懸念されます。

直射日光が入るほど竹を切りすぎてはいけません。他の地域でこれにより発生数が激減した事案があります。

 

現在の遊歩道

・遊歩道上もホタルの子孫を残す出会いの場所になっていますが、人の往来が今後増加するに当たり、ホタルを踏みつぶしてしまう危険性。

シーズンに857人(2024年度5/5~/30)も暗い遊歩道で歩き回ると気温の低下により活性が落ちたホタルが地面で休んでいると踏みつぶされることになりますので注意が必要です。

 

「富田林の自然を守る会」田渕会長(右から2番目)と「富田林百景」のメンバー(一番左が楠本氏)。

2022年4月22日 整備前の遊歩道 竹のおがくずがまかれているのが解ります。

この遊歩道の腐葉土と竹の地下茎、それと不用意にホタルの生活域に入らない垣根が重要です。

移管後、現在は富田林市により地下茎が断ち切られ、腐葉土を取って他地域の真砂が入れられ、垣根が取り払われてしましました。

 

岸本記念自然緑地公園整備後の竹林

空気がおいしい気がするすがすがしい真竹の竹林

・夜に街灯が点灯(ホタル期間は消灯)しますが、それがホタルの生態系にどうゆう影響を及ぼすかが解りません。

このため現在24時間消灯しております。

以上のような課題を今後検証していく必要があるかと思います。

 

岸本記念自然緑地公園(中野竹林)のヒメホタル(2022.05)   小島氏撮影

60秒間シャッターを開けて撮影とのこと(一枚の写真で合成ではない)

 「ホタルに優しい環境は、人にも優しい。」

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富田林のヒメボタル 2020 (1) 2020.5.27

ようこそ、おかえりヒメボタルー富田林市域で(最後に現在の状況あり) 2019.6.5

富田林市および周辺のホタル情報はこちらをご覧ください。

  • ホタル(26) 26記事あります。
  • 今までヒメボタルの場所については、①地元中野町への影響、②環境の保全に考慮して公表を差し控えてきましたが、岸本忠三氏を始め地権者4名の方が中野竹林を富田林市に寄贈され、「岸本記念自然緑地公園」として整備されるにあたり、当クラブのブログでも場所を公表することといたしました。

撮影日:2024年5月26日ほか

2024年6月18日 アブラコウモリH

 

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