1. 社会時間、交流時間、組織時間
「働き方改革」の主たるテーマの一つに「長時間労働の改善」があります。
残業時間の上限を定め、働く時間を適正化させようとする取組が進められています。
このシリーズでは、私たちが、日頃、意識せずに当たり前と思っている「時間」について考えてみたいと思います。
大袈裟に言えば、『人生時間』の中での「時間」の意味とは!
ところで、皆さんは「労働時間」とは何か?を考えてみた事ありますか。
私たちは、無意識のうちに、限りある「人生時間」を仕事や暮らしに「配分」し、残りの時間を睡眠や休息等に当てながら日々を送っています。
組織社会で仕事をする多くの方々は、会社や組織側が定めた「就業規則」等に従って職務を果たしています。雇用者と被雇用者の関係です。
そして、一般的な固定勤務者には、法令や社会通念で規定・適用されたルール(雇用契約や就業規則等) より、「労働時間」が定められています。
この「労働時間」とは、個々人の「自由時間」に制約を与える「組織時間」と看做され、この時間内に提供する役務価値への対価として賃金が支払われる!という構図です。
ところで、「時間」とは何でしょうか。
ジョアン・キラーウ女史の「The Working Life」では、「時間」には、
「社会時間」
「交流時間」
「組織時間」
「暮らし時間」
「自由時間」
といった考え方を示しています。
「社会時間」とは、一般的な人生の筋道、つまり「いつ何をすべきか」を規定します。
これにより、いつ寝るのか? いつ食べるのか? いつ会社に行くのか? いつ引退するか...を知ります。
そして、交流時間!
其々の「文化」は、私たちが他者と過ごすさまざまな交流時間をも規定します。
「対話」や「コミュニケーション」は文化的に規定された交流の在り方です。
さまざまな状況下で、人が与えられた役割に応じたどのような間隔で話すかは文化的に規定された「交流時間 」によってきまります。
「社会時間」「交流時間」には、「時の流れ」はありますが、必ずしも「時計時間」に縛られるものでありません。
一方、「組織時間」は「時計時間」に拘束されます。組織で働く人々は、「就業規則」により「労働時間」ないし「勤務時間」が定められています。
組織と個人の間で交わされた「雇用契約」により、例えば、9:00-17:00の「勤務時間」内は、働く人々は「組織時間」に拘束され「自由時間」が無い!と考えるのが普通です。
さて、ここで私からの問題提起ですが、この常識って、本当に人間の価値創造活動を支援するのに有効なものか!
という事。
時間規則に縛られた「管理・監視社会」に於いて、人間の価値創造力は十分発揮出来るのか!
との問題意識です。
2. 「時計時間」が及ぼす社会的スティグマと知識労働の在り方!
仕事時間は「時計時間」により規定されています。
週40時間の労働とか、一月の残業時間の上限は45時間とか....日本の年間労働時間1,729時間(2015調査, 因みにドイツ1,371時間)といったように、「時計時間」で働く時間が決められ、そして測られています。
また、パートタイムジョブなど時給1,000円という働き方などは、1時間という時計時間単位で役務提供を行う働き方でもあります。
仕事に従事する以上、「時計時間」に基づく労働時間や「組織時間」を意識する事は大切です。
然し乍ら、組織社会で働く人々、特にナレッジ・ワーカーの実態を観察してみると、「時計時間」で規定された「就業時間」の範囲内だけでナレッジワークをしているわけではありません。
組織で「勤務」する場合、「通勤」を強いられる事になります。都心部ですと平均50-60分/片道が費やされています。この時間は「勤務」前の時間ですが、仕事のことを考えたり、業務メールを対処した場合、これは労働時間として見做されるのでしょうか?
当たり前の事ですが、今の固定勤務の「時計時間」縛りの就業規則では、労働(勤務)とは見做されません。
また、就業時間中であれど、パソコンに向かい作業仕事をしたり、アイデアを考えたり、また、社内調整に走り回ったり....といった行動全てに於いて、雑念もなく一心不乱にずーっと集中し没頭し続けている人など一人もいません!
言わずもがなですが、人間には「心身のエネルギー許容値」があるからです。
エネルギーを消費すれば、必ず回復と再充電が必要になるのは、誰もが知っています。
然し、組織社会では、休憩時間とされる「時計時間」以外の時間に再充電(コーヒーを飲んだり瞑想?したり...)しているの人に対し、「あいつ、またサボっている!」といったスティグマが多く存在していますから、そう見られたくない人は、仕事をしているフリをしながら再充電している人もいるでしょう!
残念な事だと思います。
日本社会に見られがちな、このような企業風土や相互監視・管理社会の体質こそが問題!
誰もが望んでいないのに、組織の働き方伝統的スタイルといった組織の思い込みが、個の能力を発揮させることを阻害しているように感じます。
何故このようになってしまっているのでしょうか。
「時計時間」に縛られているからです。
就業時間外であれば、上司から「さぼるな!」とはいわれませんよね。
次回は、人間が働くという事、つまり価値を生み出す活動のプロセスと時間の関係を「働き方改革」の視点を踏まえ考察して見たいと思います。
-続く-