ナラの木 津軽版 鳴海真澄さん訳

ずんぶ強ぇ風 吹いだもんだじゃ
昼まも ばげも
ナラノギの葉っぱば みんな吹ぎ飛ばしてまって
枝こば びゅんびゅど揺らして
木の皮も剥がしてしまうほどだったんだぁ
したっきゃ とうとうナラノギ 丸裸になってまったんだ
したばって ナラノギ 地面さどっかど立ったままだったんず
ほがの木はみんな 倒れでまったんだばって
おたってまった風は あぎらめで しゃべった
「ナラノギ なして まんだ立っていられるんだ」
ナラノギ 答えだど
「オメはワの枝こば折るごとも
葉っぱばぜんぶ 吹ぎ飛ばすことも
枝も幹もむつけら ワサワサど揺らがすごともでぎるっきゃ
したばって
ワには大地さ広がる根っこあるんだね
ワは生まれだとぎがら
わんつかずづ強ぐなってきたんだ
オメがこの根っこさ絶対触られねずごと
わがるべ?
根っこはワの一番深けぇどごだぁ
ほんとは今まで ワはよぐわがってねがった
オメのおがげで わがったじゃ
ワはワが思っていだより
もっともっと強(つよ)ぐなったんだじゃ」
Johnny Ray Ryder Jr.原作, Copyright Hallmark Inc.

ずんぶ強ぇ風 吹いだもんだじゃ
昼まも ばげも
ナラノギの葉っぱば みんな吹ぎ飛ばしてまって
枝こば びゅんびゅど揺らして
木の皮も剥がしてしまうほどだったんだぁ
したっきゃ とうとうナラノギ 丸裸になってまったんだ
したばって ナラノギ 地面さどっかど立ったままだったんず
ほがの木はみんな 倒れでまったんだばって
おたってまった風は あぎらめで しゃべった
「ナラノギ なして まんだ立っていられるんだ」
ナラノギ 答えだど
「オメはワの枝こば折るごとも
葉っぱばぜんぶ 吹ぎ飛ばすことも
枝も幹もむつけら ワサワサど揺らがすごともでぎるっきゃ
したばって
ワには大地さ広がる根っこあるんだね
ワは生まれだとぎがら
わんつかずづ強ぐなってきたんだ
オメがこの根っこさ絶対触られねずごと
わがるべ?
根っこはワの一番深けぇどごだぁ
ほんとは今まで ワはよぐわがってねがった
オメのおがげで わがったじゃ
ワはワが思っていだより
もっともっと強(つよ)ぐなったんだじゃ」
Johnny Ray Ryder Jr.原作, Copyright Hallmark Inc.
ナラの木 津軽版 堤勝彦さん訳 2011.4.7

うだでぐ つえ風っこ吹いだ
昼間もばげもなぐ
ナラの木の葉っぱこば みな吹ぎ飛ばしてまって
枝っこばびゅんびゅんて揺らめがへで
木の皮もなんもかも はぁ 引っ剥がすほどだったど
しまいにはナラの木 丸はだがになってまったど
したばって地面さ あづましぐ立っていだんだ
ほがの木はみんな倒れでまった
こえぐなってまった風っこは
あぎらめで言ったど
「ナラの木よ、どへばほしてまんだ立っていられるんだば?」
ナラの木は言ったど
「おめさは、わの枝っこば折るごとも
葉っぱこばみな吹ぎ飛ばすごとも
枝っこば揺らすごとも
わばゆさゆさって揺するごともでぎる
したばって わさは大地さ張った
根っこがあるんだ
わは生まれだどぎがら
わんつかづづ つえぐなったんだ
おめさはこの根っこば どしたって壊すごとはでぎね
わがるべさ
根っこはわの いぢばん ふけどごだんだ
ほんとは今日まんで
わはよぐわがってねがったんだ
わが どったらごとさ耐えられるのが
したばって、今おがげでわがった
わがわがってるよりも
わはもっとつえぐなったんだ」
Johnny Ray Ryder Jr.原作, Copyright Hallmark Inc.

うだでぐ つえ風っこ吹いだ
昼間もばげもなぐ
ナラの木の葉っぱこば みな吹ぎ飛ばしてまって
枝っこばびゅんびゅんて揺らめがへで
木の皮もなんもかも はぁ 引っ剥がすほどだったど
しまいにはナラの木 丸はだがになってまったど
したばって地面さ あづましぐ立っていだんだ
ほがの木はみんな倒れでまった
こえぐなってまった風っこは
あぎらめで言ったど
「ナラの木よ、どへばほしてまんだ立っていられるんだば?」
ナラの木は言ったど
「おめさは、わの枝っこば折るごとも
葉っぱこばみな吹ぎ飛ばすごとも
枝っこば揺らすごとも
わばゆさゆさって揺するごともでぎる
したばって わさは大地さ張った
根っこがあるんだ
わは生まれだどぎがら
わんつかづづ つえぐなったんだ
おめさはこの根っこば どしたって壊すごとはでぎね
わがるべさ
根っこはわの いぢばん ふけどごだんだ
ほんとは今日まんで
わはよぐわがってねがったんだ
わが どったらごとさ耐えられるのが
したばって、今おがげでわがった
わがわがってるよりも
わはもっとつえぐなったんだ」
Johnny Ray Ryder Jr.原作, Copyright Hallmark Inc.
ナラの木 青森県・津軽地方・外ヶ浜版 小川ひかるさん訳 2012.6.2

たげ つぇー風が ふいでだんだど
昼まも ばげもねぐ
ナラのぎぃのはっぱば みんな吹っとばして
枝っこば びゅんびゅど揺らすて
木の皮も ひっぺがすほどだったんだど
したっきゃ ナラのぎぃは えっとまがに すっぱだがになってしまったんだど
したばって 地面さ しっかど 立っていだんだど
よそのぎぃだっきゃ みぃんなひっぐりがえってしまったど
こえぐなってまった風は
あぎらめで ゆったど
「ナラのぎぃよ、おめ なして まだ立ってられるんだべ?」
したっきゃ ナラのぎぃは 言(ゆ)ったど
「おめは わの枝っこば もぐごとも
わの じぇんぶのはっぱば 吹っ飛ばすこども
枝ば ゆつけることも
わば ゆさゆさでゆつけることもできるべな
んだばって わさは 大地さ広がる根っこあるんだね
わが うまれだどぎがら わんつかずつ つえぐなったのさ
おめさは この根っこだっきゃ ぜってぇさわれね
わがるべさ
根っこだっきゃ わぁの いぢばん深ぇどころなのさ
じづは 今日まで わは よぐわがってねがったのよ
わぁ自身が どんき ものごどさ我慢できるのがを
んだばって 今 おめのお陰でわがったのさ
わぁがしってだよりも
わぁは たげ強ぐなったんだね」

たげ つぇー風が ふいでだんだど
昼まも ばげもねぐ
ナラのぎぃのはっぱば みんな吹っとばして
枝っこば びゅんびゅど揺らすて
木の皮も ひっぺがすほどだったんだど
したっきゃ ナラのぎぃは えっとまがに すっぱだがになってしまったんだど
したばって 地面さ しっかど 立っていだんだど
よそのぎぃだっきゃ みぃんなひっぐりがえってしまったど
こえぐなってまった風は
あぎらめで ゆったど
「ナラのぎぃよ、おめ なして まだ立ってられるんだべ?」
したっきゃ ナラのぎぃは 言(ゆ)ったど
「おめは わの枝っこば もぐごとも
わの じぇんぶのはっぱば 吹っ飛ばすこども
枝ば ゆつけることも
わば ゆさゆさでゆつけることもできるべな
んだばって わさは 大地さ広がる根っこあるんだね
わが うまれだどぎがら わんつかずつ つえぐなったのさ
おめさは この根っこだっきゃ ぜってぇさわれね
わがるべさ
根っこだっきゃ わぁの いぢばん深ぇどころなのさ
じづは 今日まで わは よぐわがってねがったのよ
わぁ自身が どんき ものごどさ我慢できるのがを
んだばって 今 おめのお陰でわがったのさ
わぁがしってだよりも
わぁは たげ強ぐなったんだね」
ナラの木 八戸版 鈴木美穂子さん訳

たまげで 強い風が吹いだずぅ
昼まも ばんげ も
ナラの木の みんな葉っぱば吹き飛ばし
枝っこば びゅんびゅんど 揺らして
木の皮っこも はがすほどだったずぅ
したきゃ とうとう ナラの木は
丸はだがになってしまったずぅ
そやって 地面さしっかり 立ってらずぅ
ほがの木はみんな倒れでしまったずぅ
つかれでしまった風は あぎらめで しゃべったずぅ
「ナラの木よ なして立ってられんだ」
ナラの木はしゃべったずぅ
「あんだは おらの 枝っこば 折るごども
みんな葉っぱば 吹き飛ばすごども
枝っこば 揺らすごども
おらを ゆさゆさど 揺するごども でぎるべぇ
でも おらには 大地さ張った 根っこが あったんだぁ
おらが 生まれだ どぎがら
わんつがずづ 強ぐ なってきたんだぁ
あんだは この根っこさば どやっても さわられねんでぇ
わがるべぇ
根っこは おらの 一番深いどご なんでぇ
ほんとは 今まで おらさば よぐ わがって いながったぁ
おら自身 どれだげものごどに たえらるがば
でも 今 おがげで わがったぁ
自分が知ってらったよりも
おらは もっと 強ぐなったんだぁ」
Johnny Ray Ryder Jr.原作, Copyright Hallmark Inc.

たまげで 強い風が吹いだずぅ
昼まも ばんげ も
ナラの木の みんな葉っぱば吹き飛ばし
枝っこば びゅんびゅんど 揺らして
木の皮っこも はがすほどだったずぅ
したきゃ とうとう ナラの木は
丸はだがになってしまったずぅ
そやって 地面さしっかり 立ってらずぅ
ほがの木はみんな倒れでしまったずぅ
つかれでしまった風は あぎらめで しゃべったずぅ
「ナラの木よ なして立ってられんだ」
ナラの木はしゃべったずぅ
「あんだは おらの 枝っこば 折るごども
みんな葉っぱば 吹き飛ばすごども
枝っこば 揺らすごども
おらを ゆさゆさど 揺するごども でぎるべぇ
でも おらには 大地さ張った 根っこが あったんだぁ
おらが 生まれだ どぎがら
わんつがずづ 強ぐ なってきたんだぁ
あんだは この根っこさば どやっても さわられねんでぇ
わがるべぇ
根っこは おらの 一番深いどご なんでぇ
ほんとは 今まで おらさば よぐ わがって いながったぁ
おら自身 どれだげものごどに たえらるがば
でも 今 おがげで わがったぁ
自分が知ってらったよりも
おらは もっと 強ぐなったんだぁ」
Johnny Ray Ryder Jr.原作, Copyright Hallmark Inc.
楢の木
秋田県北版、成田心さん訳, 2011.9.20

たいす*た 強ぇ(つえ)風(かんじぇ*) 晩んげも昼間も 吹いだど。
楢の木の葉っぱっこどご 皆(んな)飛んばすて
バギバギど 枝(えんだ)っこどご 折(おんだ)って
バリバリど 皮どご 剥いんで
はぁ 楢の木 丸裸(まるはんだが)なってしまったど。
んだばって 楢の木 まんだ しっかり 立ってあったど。
周りさある 他(ほが)の木だっきゃ 全部(じぇんぶ) 倒れであったぁず。
こえぐなった 風(かんじぇ) 諦めで(あぎらめで) こぉ 言ったぁず、
「なすて お前(おめ)まんだ 立っていられらぁずや?」
楢の木 こぉ言ったど「お前(おめ)だば、
俺(おえ)の枝(えんだ)っこどご 折(おんだ)って、
俺(おえ)の葉っぱっこどご 吹ぎ飛んばすて
俺(おえ)の体(からんだ)どご ワサワサど揺らすごど でぎるべ。
んだばって 俺(おえ)さだっきゃ 土(つぢ)の中(なが)で
広んがってら根っこ あらったいば。
生(ん)まれでがら わんつかづづ 強ぇ(つえ)ぐなってきたぁずだ。
お前(おめ)だっきゃ 何(なん)とすても 触らいね。
分がっぺ。
根っこっきゃ 俺(おえ)の一番(いぢばん)深ぇ(ふけ)どごだ。
今日まんで、分がんねがった、
どごまんで 俺(おえ)耐えらえるが。
すたばって 今 お前(おめ)の御陰(おがんげ)で分がったでゃ
思ってあったより 俺(おえ) 強ぇ(つえ)ぐなったった」
*「ん」は次の字の発音を鼻母音化し、「ん」は、無声化した「し」と「す」の中間音、ふはf音を示します。訳をされた成田さんの表記はアルファベットで慣れないと読みづらいと判断して高槻がこのように表記しました。成田さんの表記は「資料」にあります。
秋田県北版、成田心さん訳, 2011.9.20

たいす*た 強ぇ(つえ)風(かんじぇ*) 晩んげも昼間も 吹いだど。
楢の木の葉っぱっこどご 皆(んな)飛んばすて
バギバギど 枝(えんだ)っこどご 折(おんだ)って
バリバリど 皮どご 剥いんで
はぁ 楢の木 丸裸(まるはんだが)なってしまったど。
んだばって 楢の木 まんだ しっかり 立ってあったど。
周りさある 他(ほが)の木だっきゃ 全部(じぇんぶ) 倒れであったぁず。
こえぐなった 風(かんじぇ) 諦めで(あぎらめで) こぉ 言ったぁず、
「なすて お前(おめ)まんだ 立っていられらぁずや?」
楢の木 こぉ言ったど「お前(おめ)だば、
俺(おえ)の枝(えんだ)っこどご 折(おんだ)って、
俺(おえ)の葉っぱっこどご 吹ぎ飛んばすて
俺(おえ)の体(からんだ)どご ワサワサど揺らすごど でぎるべ。
んだばって 俺(おえ)さだっきゃ 土(つぢ)の中(なが)で
広んがってら根っこ あらったいば。
生(ん)まれでがら わんつかづづ 強ぇ(つえ)ぐなってきたぁずだ。
お前(おめ)だっきゃ 何(なん)とすても 触らいね。
分がっぺ。
根っこっきゃ 俺(おえ)の一番(いぢばん)深ぇ(ふけ)どごだ。
今日まんで、分がんねがった、
どごまんで 俺(おえ)耐えらえるが。
すたばって 今 お前(おめ)の御陰(おがんげ)で分がったでゃ
思ってあったより 俺(おえ) 強ぇ(つえ)ぐなったった」
*「ん」は次の字の発音を鼻母音化し、「ん」は、無声化した「し」と「す」の中間音、ふはf音を示します。訳をされた成田さんの表記はアルファベットで慣れないと読みづらいと判断して高槻がこのように表記しました。成田さんの表記は「資料」にあります。
ナラの木
秋田県南地方・横手版 畑 則子様訳 2011.12.7

たいした強ぇ風こ 吹いだもんだんしな
昼間どねぐ 晩げどねぐ
ナラの木(ぎ)の葉っぱこ みんな吹ぎ飛ばして
枝っこどご びゅんびゅんど 揺らせで
木(ぎ)の皮っこも 剥がされでしまうほどだったけなぁ
したば とうとうナラの木(ぎ)丸っぱだがに なってしまった
んだども ナラの木(ぎ)まだ 地面さ どがっと立ってだな だんし
ほがの木(ぎ)だば みんなきゃってしまった
くたびれでしまった風こ あぎらめで聞いたけど
「ナラの木(ぎ)ナラの木(ぎ)なしてまだ立ってるに ええなよ?」
ナラの木(ぎ)言ったけど
「おめだば おらの枝っこ折っちょる事も
葉っぱこ がえーっと吹っ飛ばす事も
枝っこ揺さぶる事も
おらどご ゆっさゆさど 揺っつがす事もできるべ
んだども おらどさなばな 大地さ広がる根っこあるおん
おら生まれだ時(じぎ)から
さっとかずづ強えぐなってきたなだ
なんぼ おめだって この根っこさだば
なっただ事したたて 触られねぇ
わがるべ
根っこはおらの一番深けえどごさある
ほんとは 今日まで おらもわの事わがってねがった
おら自身 どれだげのどごまで がまん でぎるがってな
んだども 今 おがげで わがったんしでゃ
わが おべでだよりも
おら もっともっと強ぇぐなっていだなだんし」
秋田県南地方・横手版 畑 則子様訳 2011.12.7

たいした強ぇ風こ 吹いだもんだんしな
昼間どねぐ 晩げどねぐ
ナラの木(ぎ)の葉っぱこ みんな吹ぎ飛ばして
枝っこどご びゅんびゅんど 揺らせで
木(ぎ)の皮っこも 剥がされでしまうほどだったけなぁ
したば とうとうナラの木(ぎ)丸っぱだがに なってしまった
んだども ナラの木(ぎ)まだ 地面さ どがっと立ってだな だんし
ほがの木(ぎ)だば みんなきゃってしまった
くたびれでしまった風こ あぎらめで聞いたけど
「ナラの木(ぎ)ナラの木(ぎ)なしてまだ立ってるに ええなよ?」
ナラの木(ぎ)言ったけど
「おめだば おらの枝っこ折っちょる事も
葉っぱこ がえーっと吹っ飛ばす事も
枝っこ揺さぶる事も
おらどご ゆっさゆさど 揺っつがす事もできるべ
んだども おらどさなばな 大地さ広がる根っこあるおん
おら生まれだ時(じぎ)から
さっとかずづ強えぐなってきたなだ
なんぼ おめだって この根っこさだば
なっただ事したたて 触られねぇ
わがるべ
根っこはおらの一番深けえどごさある
ほんとは 今日まで おらもわの事わがってねがった
おら自身 どれだげのどごまで がまん でぎるがってな
んだども 今 おがげで わがったんしでゃ
わが おべでだよりも
おら もっともっと強ぇぐなっていだなだんし」
ナラの木
岩手県下閉伊郡岩泉町釜津田版
佐々木二美香さん(高校1年生)訳
2012.2.9

昼でもなく夜でもなぐ してぇ風が吹いとったんだど
ナラん葉っぱぁ 全(すぺ)ておっ飛ばし 枝もびゅんびゅんゆさってよ
木の皮(かば)もはがしてったんよ
どでぇナラば すっぽんぽんになってもうたんよ
そんでも土(つぢ)さしっかりおっ立っておったんだど
他(ほか)ん木ば全(すぺ)ておっ倒(たお)れてしまったんだと
こえぐなった風ば あぎら*めで こんなごど言ったど
「ナラん木よ、なしてそんたに立ってられるって」
「なんしゃ、なんしゃ お前(め)はんば、枝ぁ折っこども、
全(すぺ)てん葉っぱぁ吹き飛ばすごども
枝っこゆすぶんのも 出来っぺさ。
だけんど、オレにゃぁ下(しだ)さ広がる根っこがあんのよ
オレが生(う)まった時(とぎ)から
少しつーず 少しつーず 強くなってきたんよ
お前(め)はんは、こん根さば、などにしても触るこたぁできんよ
分かっぺさ
こん根ばオレの一番深ぇ部分なんよ
ほんとば今日まで よく分かっとらんかっだよ
オレ自身がどんだけ いろんなごどさ耐えられっか
だどもよ、今おかげで分(わ)がったよ。オレが知ってだんよりも
もっどもっど強(つえ)ぐなってだってよ」
*「ら」に「゛」
岩手県下閉伊郡岩泉町釜津田版
佐々木二美香さん(高校1年生)訳
2012.2.9

昼でもなく夜でもなぐ してぇ風が吹いとったんだど
ナラん葉っぱぁ 全(すぺ)ておっ飛ばし 枝もびゅんびゅんゆさってよ
木の皮(かば)もはがしてったんよ
どでぇナラば すっぽんぽんになってもうたんよ
そんでも土(つぢ)さしっかりおっ立っておったんだど
他(ほか)ん木ば全(すぺ)ておっ倒(たお)れてしまったんだと
こえぐなった風ば あぎら*めで こんなごど言ったど
「ナラん木よ、なしてそんたに立ってられるって」
「なんしゃ、なんしゃ お前(め)はんば、枝ぁ折っこども、
全(すぺ)てん葉っぱぁ吹き飛ばすごども
枝っこゆすぶんのも 出来っぺさ。
だけんど、オレにゃぁ下(しだ)さ広がる根っこがあんのよ
オレが生(う)まった時(とぎ)から
少しつーず 少しつーず 強くなってきたんよ
お前(め)はんは、こん根さば、などにしても触るこたぁできんよ
分かっぺさ
こん根ばオレの一番深ぇ部分なんよ
ほんとば今日まで よく分かっとらんかっだよ
オレ自身がどんだけ いろんなごどさ耐えられっか
だどもよ、今おかげで分(わ)がったよ。オレが知ってだんよりも
もっどもっど強(つえ)ぐなってだってよ」
*「ら」に「゛」
ナラの木
岡澤敏男さん訳、盛岡地方版1

うんと強え風っこ吹いだのす
昼まも よぴても
ナラの葉っぱをみんなふっとばし
枝っこをびゅんびゅんゆさぶり
木の皮っこも むげるくれぇであんした
おしめぇに ナラはまるっきり裸であんしたが
ほんでも地面さ すっかど立っていたのす
ほかの木はみんなぶったおれあんした
こやぐなって風っこは
あきらめで聞いたのす
「ナラっこ、なしてまだ立ってるのすか」
ナラはしゃべった
「おめぇはおらの枝っこ折ることも
ずっぱり葉っぱを吹っ飛ばすことも
枝っこ揺さぶることも
おらをゆさゆさ揺することも
できるンべど
おらには大地さひろがる
根っこがあるのす
おらが生まれたときから
びゃっこづつ強えぐなったのす
おめぇさんは根っこさは なじょしても触れねぇのす
わかるンべ
根っこはおらのいずばん深けぇどこさあるンだべ
ほんでも、今日まで
おらもよぐわからねがったのす
おらはどれくれぇのこと がまんせるべがと
そだども、ありがてぃことに 今わかりあんした
おらの知ってたよりも
おらは強ぇぐなっていたのでがんすよ」
Johnny Ray Ryder Jr.原作, Copyright Hallmark Inc.
岡澤敏男さん訳、盛岡地方版1

うんと強え風っこ吹いだのす
昼まも よぴても
ナラの葉っぱをみんなふっとばし
枝っこをびゅんびゅんゆさぶり
木の皮っこも むげるくれぇであんした
おしめぇに ナラはまるっきり裸であんしたが
ほんでも地面さ すっかど立っていたのす
ほかの木はみんなぶったおれあんした
こやぐなって風っこは
あきらめで聞いたのす
「ナラっこ、なしてまだ立ってるのすか」
ナラはしゃべった
「おめぇはおらの枝っこ折ることも
ずっぱり葉っぱを吹っ飛ばすことも
枝っこ揺さぶることも
おらをゆさゆさ揺することも
できるンべど
おらには大地さひろがる
根っこがあるのす
おらが生まれたときから
びゃっこづつ強えぐなったのす
おめぇさんは根っこさは なじょしても触れねぇのす
わかるンべ
根っこはおらのいずばん深けぇどこさあるンだべ
ほんでも、今日まで
おらもよぐわからねがったのす
おらはどれくれぇのこと がまんせるべがと
そだども、ありがてぃことに 今わかりあんした
おらの知ってたよりも
おらは強ぇぐなっていたのでがんすよ」
Johnny Ray Ryder Jr.原作, Copyright Hallmark Inc.
ナラの木
小野寺瑞穂さん訳、盛岡地方版2

てぇした強え風っこ吹きあんした
昼といわず晩げといわず
よっぴてナラの葉っぱこみんな吹っとばし
木の枝も何(な)もびゅんびゅんと揺さぶり
木の皮も むげるくれぇであんした
終(すめ)ぇにナラはまるっぱだかになってしまいあんした
ほんでも地面さ すっかりと立っていあんした
ほかの木はみんなぶったおれてしまいあんした
こえぐなってしまった風は
あきらめで聞いたど
「ナラの木よ、なしてまだ立ってるにいいのょ」
ナラの木は答えたど
「おめぇさまはおらの枝(いだ)っこ折るごとも
葉っぱもみんな吹っ飛ばすことも
枝っこ揺さぶることも
おらのこどゆさゆさ揺するこどもでぎるンべぇ
でも おらには大地さ広がった 根っこがあるのす
おらが生まれたときから
べっこづつ強えぐなって来(き)あんした
おめぇさんはおらのこの根っこさ なじょしても触(さわ)れねえ
わかるンべ
根っこはおらのいずばん深けぇところにあるからなす
ほんとは今日まで
おらにはよぐわかっていねかったのす
おれ自身(じすん)どれだけのことにがまんできるものなのか
そんだども、今おかげでわかりやした
おらが思(おべ)てたよりも
おらはもっともっと強ぇぐなっていたったのス」
小野寺瑞穂さん訳、盛岡地方版2

てぇした強え風っこ吹きあんした
昼といわず晩げといわず
よっぴてナラの葉っぱこみんな吹っとばし
木の枝も何(な)もびゅんびゅんと揺さぶり
木の皮も むげるくれぇであんした
終(すめ)ぇにナラはまるっぱだかになってしまいあんした
ほんでも地面さ すっかりと立っていあんした
ほかの木はみんなぶったおれてしまいあんした
こえぐなってしまった風は
あきらめで聞いたど
「ナラの木よ、なしてまだ立ってるにいいのょ」
ナラの木は答えたど
「おめぇさまはおらの枝(いだ)っこ折るごとも
葉っぱもみんな吹っ飛ばすことも
枝っこ揺さぶることも
おらのこどゆさゆさ揺するこどもでぎるンべぇ
でも おらには大地さ広がった 根っこがあるのす
おらが生まれたときから
べっこづつ強えぐなって来(き)あんした
おめぇさんはおらのこの根っこさ なじょしても触(さわ)れねえ
わかるンべ
根っこはおらのいずばん深けぇところにあるからなす
ほんとは今日まで
おらにはよぐわかっていねかったのす
おれ自身(じすん)どれだけのことにがまんできるものなのか
そんだども、今おかげでわかりやした
おらが思(おべ)てたよりも
おらはもっともっと強ぇぐなっていたったのス」
ナラの木
立木浩子さん訳、遠野版 2011.4.13

うんと強え風っこ吹いだずもな
昼まも 夜ながも
ナラの木の葉っぱ まるっきり吹っとばして
枝っこびゅんびゅん揺さぶって
木の皮も むげるくれぇだったずもな
おしめぇに はぁ ナラはまるっきり裸だったずが
ほんでも地面さ どっかど立ってらったずもな
ほかの木は みんなぶっ倒れでしまったずも
こえぐなってぇ風っこは
あぎらめて聞いたんだず
「ナラっこぉ、なしてまだ立ってられるんだべ?」
ナラはしゃべったずも
「おめぇはおらの枝っこ折るごども
葉っぱまるっきり吹っ飛ばすごども
枝っこぉ揺さぶるごども
おらをゆっさゆっさど揺するごども
できるごったぁども
おらさはぁ 大地(こご)さ広がる
根っこある
おらぁ生まれたどぎがら
ぺっこづつ強えぐなったもや
おめさんはおらの根っこさ
なんちょにしても触れねぇんだが
わがんべ
根っこはおらのいぢばん深けぇどこさあるがらなぁ
だぁれ今日まで
おらもそのごど よぉぐわがってねがったじゃ
おらがどれくれぇのこと がまんでぎんべがずぅごど
んだども、今おがげではぁ わがったもや
おらが おべでらったよりも
おらぁ うんと強ぇぐなってらったじゃ」
立木浩子さん訳、遠野版 2011.4.13

うんと強え風っこ吹いだずもな
昼まも 夜ながも
ナラの木の葉っぱ まるっきり吹っとばして
枝っこびゅんびゅん揺さぶって
木の皮も むげるくれぇだったずもな
おしめぇに はぁ ナラはまるっきり裸だったずが
ほんでも地面さ どっかど立ってらったずもな
ほかの木は みんなぶっ倒れでしまったずも
こえぐなってぇ風っこは
あぎらめて聞いたんだず
「ナラっこぉ、なしてまだ立ってられるんだべ?」
ナラはしゃべったずも
「おめぇはおらの枝っこ折るごども
葉っぱまるっきり吹っ飛ばすごども
枝っこぉ揺さぶるごども
おらをゆっさゆっさど揺するごども
できるごったぁども
おらさはぁ 大地(こご)さ広がる
根っこある
おらぁ生まれたどぎがら
ぺっこづつ強えぐなったもや
おめさんはおらの根っこさ
なんちょにしても触れねぇんだが
わがんべ
根っこはおらのいぢばん深けぇどこさあるがらなぁ
だぁれ今日まで
おらもそのごど よぉぐわがってねがったじゃ
おらがどれくれぇのこと がまんでぎんべがずぅごど
んだども、今おがげではぁ わがったもや
おらが おべでらったよりも
おらぁ うんと強ぇぐなってらったじゃ」
ナラの木 岩手県・水沢版 冨田祐一さん訳 2012.6.2

だんがだんがどまんつ強ぇ風ぁ吹いだった
真っ昼間っからずーと夜っぴで
ナラの木の葉っぱばみんな吹っ飛ばし
枝ばばっつぁばっつぁど揺がし
木の皮もビリビリッと引っぱがす位ぇでぁんした
何たらやぁナラの木ぁ素ッ裸になっつまった
だども、地面さ真っつぐに立ってらった
ほがの木だハァみんなぶっ倒れでしまったっけ
吹ぎくたぶれですまった風はハァ
呆れけぇって言ったったのス
「ナラの木よォ、なすてまだ立ってぇられんだべ?」
したれば、ナラの木ぁしゃんとして言ったっけ
「あんだハ、俺ぁの枝ッコ折るごども
葉っぱどいう葉っぱば全部吹っ飛ばすごども
枝ッコほろぐごども
俺ぁをゆっさゆっさど揺ぶるごどもでぎやすっぺ
だども俺ァにはハァこの大地さ広がる
根ッコつうものがありぁす
俺ぁが生まれだどぎがら
びゃっこづづ強ぇぐなりゃんすた
あんだハ、この根ッコさハァ、絶対ぇに触れねェべ
わがりぁすぺ
俺ぁの一番深ぇどごにあるのがこの根っこだったのス
実はハァ今日びまで
俺ぁには分がってねぇがったのス
俺ぁ自身が、どんだげ物ごどに我慢し耐えるごどでぎるのが、ってごどを」
んだども今の今、お陰さんではっきり分がりぁすた
俺ぁが思っていだよりも
俺ぁはハァ、もっともっと強ぇぐなっていだったのでがすヨ」

だんがだんがどまんつ強ぇ風ぁ吹いだった
真っ昼間っからずーと夜っぴで
ナラの木の葉っぱばみんな吹っ飛ばし
枝ばばっつぁばっつぁど揺がし
木の皮もビリビリッと引っぱがす位ぇでぁんした
何たらやぁナラの木ぁ素ッ裸になっつまった
だども、地面さ真っつぐに立ってらった
ほがの木だハァみんなぶっ倒れでしまったっけ
吹ぎくたぶれですまった風はハァ
呆れけぇって言ったったのス
「ナラの木よォ、なすてまだ立ってぇられんだべ?」
したれば、ナラの木ぁしゃんとして言ったっけ
「あんだハ、俺ぁの枝ッコ折るごども
葉っぱどいう葉っぱば全部吹っ飛ばすごども
枝ッコほろぐごども
俺ぁをゆっさゆっさど揺ぶるごどもでぎやすっぺ
だども俺ァにはハァこの大地さ広がる
根ッコつうものがありぁす
俺ぁが生まれだどぎがら
びゃっこづづ強ぇぐなりゃんすた
あんだハ、この根ッコさハァ、絶対ぇに触れねェべ
わがりぁすぺ
俺ぁの一番深ぇどごにあるのがこの根っこだったのス
実はハァ今日びまで
俺ぁには分がってねぇがったのス
俺ぁ自身が、どんだげ物ごどに我慢し耐えるごどでぎるのが、ってごどを」
んだども今の今、お陰さんではっきり分がりぁすた
俺ぁが思っていだよりも
俺ぁはハァ、もっともっと強ぇぐなっていだったのでがすヨ」