昨日、イラクの国民議会選挙が終了し、その結果多数派のイスラム教シーア派政党が優勢の見通しとなった。
懸念されていた広範囲でのテロ行為はイラク軍と多国籍軍による厳戒態勢によって市民30人と警察官6人が死亡、約100人がけがにとどまった。治安が安定している国であれば、選挙でこれだけの死傷者が出れば極めて異常な事態であるが、アメリカ軍の進攻以来、テロによる死者が日常のように発生しているイラクでは、残念ながら「とどまった」という表現を使わざるを得ない。国連のアナン事務総長を初め、EU諸国、特に戦争に反対したフランスまで選挙を成功と評価した。儀礼通過に過ぎないがまずは一歩前進というところではないだろうか。
しかしながら民主国家としてイラクがひとり立ちするまでの道のりは決して平坦ではなく、今回の選挙の過程・結果からも前途は決して明るくないことは想像に難くない。まず数は少数派ながらフセイン政権下では主流派だったスンニ派が選挙に参加しなかったこと(シーア派の勝利は当然ですね)。またシーア派でもイスラム教シーア派の最高権威シスターニ師の意向を反映した勢力が主流となりそうな一方で、反米強硬派で民兵を率いたムクタダ・サドル師は直接参加せず、近いとされる候補が20人近く含まれるにとどまった。選挙がシスターニ師やアメリカに近い勢力に占められれば、イラク国民全ての民意を反映した議会とは言い難いだろう。最終的な投票率は予想を下回り60%程度だと言われている。
またシーア派が主流となった場合、サウジなどスンニ派が主流の国との関係悪化、あるいは同じシーア派の多いイランとの接近により米国との関係悪化も懸念される。また選挙に参加しなかったスンニ派や反米強硬派が議会や政府に協力せず、反政府活動に走り治安が悪化し、内戦状態になる可能性もある。
しかし、現在の政府に不満がある勢力が一番望んでいることは多国籍軍が撤退することである。イラク国内の治安が安定すれば、多国籍軍が駐留する必要はない、派遣も長期に及んでいるため治安が安定すれば渡りに船とばかり多くの国は撤退するだろう。そうなった後で自由な選挙を行えばよいのである。そのときアメリカに望ましくない勢力が政権を握っても民主的な手続きを踏んで成立した政権なら、アメリカに手出しはできないはず(アメリカは民主的な手続きを踏んで成立した政権をCIAなどを用いて転覆させた前科はあるが)である。
繰り返しになるが、イラクが民主国家としてひとり立ちするには、これからも紆余曲折があるだろう。国際社会は特定の国家を背景にした勢力や国際テロ勢力が跋扈することのないようイラクを注視する必要があるだろう。
イラク国民議会選、シーア派が勝利宣言 (朝日新聞) - goo ニュース
懸念されていた広範囲でのテロ行為はイラク軍と多国籍軍による厳戒態勢によって市民30人と警察官6人が死亡、約100人がけがにとどまった。治安が安定している国であれば、選挙でこれだけの死傷者が出れば極めて異常な事態であるが、アメリカ軍の進攻以来、テロによる死者が日常のように発生しているイラクでは、残念ながら「とどまった」という表現を使わざるを得ない。国連のアナン事務総長を初め、EU諸国、特に戦争に反対したフランスまで選挙を成功と評価した。儀礼通過に過ぎないがまずは一歩前進というところではないだろうか。
しかしながら民主国家としてイラクがひとり立ちするまでの道のりは決して平坦ではなく、今回の選挙の過程・結果からも前途は決して明るくないことは想像に難くない。まず数は少数派ながらフセイン政権下では主流派だったスンニ派が選挙に参加しなかったこと(シーア派の勝利は当然ですね)。またシーア派でもイスラム教シーア派の最高権威シスターニ師の意向を反映した勢力が主流となりそうな一方で、反米強硬派で民兵を率いたムクタダ・サドル師は直接参加せず、近いとされる候補が20人近く含まれるにとどまった。選挙がシスターニ師やアメリカに近い勢力に占められれば、イラク国民全ての民意を反映した議会とは言い難いだろう。最終的な投票率は予想を下回り60%程度だと言われている。
またシーア派が主流となった場合、サウジなどスンニ派が主流の国との関係悪化、あるいは同じシーア派の多いイランとの接近により米国との関係悪化も懸念される。また選挙に参加しなかったスンニ派や反米強硬派が議会や政府に協力せず、反政府活動に走り治安が悪化し、内戦状態になる可能性もある。
しかし、現在の政府に不満がある勢力が一番望んでいることは多国籍軍が撤退することである。イラク国内の治安が安定すれば、多国籍軍が駐留する必要はない、派遣も長期に及んでいるため治安が安定すれば渡りに船とばかり多くの国は撤退するだろう。そうなった後で自由な選挙を行えばよいのである。そのときアメリカに望ましくない勢力が政権を握っても民主的な手続きを踏んで成立した政権なら、アメリカに手出しはできないはず(アメリカは民主的な手続きを踏んで成立した政権をCIAなどを用いて転覆させた前科はあるが)である。
繰り返しになるが、イラクが民主国家としてひとり立ちするには、これからも紆余曲折があるだろう。国際社会は特定の国家を背景にした勢力や国際テロ勢力が跋扈することのないようイラクを注視する必要があるだろう。
イラク国民議会選、シーア派が勝利宣言 (朝日新聞) - goo ニュース