2007年10月19日
自動車リサイクル法の最終回は、制度外の課題、として廃タイヤ、廃バッテリーを取り上げます。
【自動車リサイクル法制度外の課題】
20世紀以降、自動車はまさに近代化産業の花形であり続けました。また、私たちの生活に欠かせないものであるともいえます。自動車は発明以降、次第に機能も強化され、今では1台の自動車から排出さえる廃棄物はかなりの量・書類となります。このうち、自動車リサイクル法の対象となるのは、シュレッダーダスト・エアバッグ・フロン類(カーエアコン)の3つです。それ以外のものは法制度の枠外にあり、預託金によるリサイクル費用は計上されていません。つまり、廃タイヤや廃バッテリーなど、環境負荷の可能性の高いものは、市場価格においてリサイクルするか適正処理をするか、ということになります。
1.廃タイヤ
廃タイヤは、野積による不適正保管や自然発火による火災など、だいぶ以前から社会問題となっており、その行政対応について2000年7月24日に環境省から2本の通知が出されています(平成12年7月24日衛環65号及び衛産95号)。そのなかで、廃タイヤの定義及び占有意思等の判断基準が次のように明示されています。
(1)定義(平成12年7月24日衛環65号)
①廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物をいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものであること
②占有者の意思とは、客観的要素からみて社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思であること。
③占有者において自ら利用し、又は他人に有償で売却することができるものであると認識しているか否かは、廃棄物に該当するか否かを判断する際の決定的な要素になるものではないこと。
④占有者において自ら利用し、又は他人に有償で売却することができるものであるとの認識がなされている場合には、占有者にこれらの事情を客観的に明らかにさせるなどして、社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思を判断すること。
⑤使用済みタイヤが廃棄物であると判断される場合において、長期間にわたりその放置が行われているときは、占有者に適正な保管であることを客観的に明らかにさせるなどして、客観的に放置の意思が認められるか否かを判断し、これが認められる場合には、その放置されている状態を処分として厳正に対処すべきこと
本通知では、①の通り、いわゆる総合判断説を引用しつつも、③④にあきらかなように、有償に関する客観的証拠を求めています。そして、この証拠等は次のように記述されています。
(2)占有意思等の判断基準(平成12年7月24日衛衛産95号)
①前記通知((1)④)における占有者に明らかにさせる事情としては、次のいずれかを挙げることができること
□溝切り等を行いタイヤとして利用する、土止め、セメント原料又は燃料として利用するなど使用済みタイヤを自ら利用するものであって、これらの目的に加工等を行うため速やかに引渡しを行うことを内容とし、かつ履行期限の確定した具体的な契約が締結されていること
□上記のとおり利用するために、使用済みタイヤを他人に有償で売却するものであって、これらの目的のため速やかに引渡しを行うことを内容とし、かつ履行期限の確定した具体的な契約が締結されていること
②前記通知((1)⑤)における「長期間にわたりその放置が行われている」とは、概ね180日以上の長期にわたり乱雑に放置されている状態をいうものであること
③前記通知((1)⑤)における占有者に明らかにさせる事情としては、次のいずれかを挙げることができること
□溝切り等を行いタイヤとして利用する、土止め、セメント原料又は燃料として利用するなど使用済みタイヤを再生利用するものであって、これらの目的に加工等を行うため速やかに引渡しを行うことを内容とし、かつ履行期限の確定した具体的な契約が締結されていること
□上記のとおり再生利用するために、使用済みタイヤを他人に有償で売却するものであって、これらの目的のため速やかに引渡しを行うことを内容とし、かつ履行期限の確定した具体的な契約が締結されていること
つまり、有償売買契約の具体的な締結が証拠であり、保管の期間は180日がリミットということになります。しかし、現実には、有価物か廃棄物かの判断は行政にとっても困難であるといえるでしょう。
なお、現在は、石油・石炭の値上がりが影響して、ボイラーの燃料として廃タイヤチップはまずまずの価格で取引されている状況です。受け入れ先もセメント会社主流から製紙会社も含めた幅広くなりつつあることから、当面は需要が続くものと思われます。
2.廃バッテリー
自動車、二輪車、農業機械、建設機械、小型船舶等のエンジン式の機器の始動・点灯・点火などに使用される鉛蓄電池(自動車用バッテリー)は、年間2,500万個程度が国内市場に投入されています。一方、自動車用バッテリーが使用済みになった場合には、鉛や硫酸を含むことから他の廃棄物と比べ処理が困難であり、従来から市町村での処理が行われてきませんでした。
現在の自動車用バッテリーリサイクルシステムは、厚生省及び通商産業省(当時)の要請に基づき、1994年10月から国内バッテリー製造事業者が自主的に再生鉛を購入することで、回収・リサイクルする仕組みとして構築されてきました。しかしながら、近年における輸入製品の増大、鉛相場下落時における不法投棄の懸念の増大から、現在の仕組みを将来にわたり維持していくことが困難となりつつあり、回収・リサイクルシステムの再構築が必要な状況となってきました。
このような背景から、持続可能な社会の形成や環境の保全に資する継続的・安定的な自動車用バッテリーの回収・リサイクルシステムを構築し、関係主体が果たすべき役割や実効性を確保するための方策等について検討を行うため、産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会電気・電子機器リサイクルワーキンググループの下に自動車用バッテリーリサイクル検討会が、また、中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会の下に自動車用鉛蓄電池リサイクル専門委員会が設置され、2005年5月から両審議会合同による検討が重ねられ、2005年8月11日に『自動車用バッテリーの回収・リサイクル推進のための方策について(報告書案)』がとりまとめられ、パブリックコメントを経て、12月、報告書として公表されています。
(1)見直しの方向性
同報告書においては、国内バッテリー製造事業者による自主的な回収・リサイクルの取組は、これまで一定の実効性・機能性を有してきたものの、以下の課題があると整理しています。
①輸入バッテリーの販売比率の増大(四輪車補修用バッテリーの輸入販売比率、1994年度約8.3%、2003年度約13.2%)等により、現在の自主的な回収・リサイクルシステムでは再資源化が担保されていない自動車用バッテリーが増加してきていること
②鉛相場の下落時などには、一部の地域で使用済バッテリーの逆有償化が進み、回収が停滞する事態が発生するなど、路上放置や不法投棄の懸念が増大してきていること
上記の課題整理から、国内バッテリー製造事業者の自主的な取組による回収・リサイクルシステムの実効性の確保が困難となりつつあるため、回収・リサイクルの停滞による使用済バッテリーの不法投棄等の問題が顕在化する前に見直しを行う必要がある、とし、新たな制度設計を(2)のように提言しています。
(2)システム再構築の制度設計
自動車用バッテリーを取り巻く現状や流通実態等を踏まえ、回収・リサイクルシステムの再構築に当たっては、以下のような視点や措置が必要
①システム再構築に当たっての基本的考え方
□新しいシステムの基本的在り方:自動車用バッテリーの回収・リサイクルシステムの再構築に当たっては、現在の国内バッテリー製造事業者による自主的な回収・リサイクルシステムの維持が困難となりつつある要因を踏まえ、鉛や硫酸による環境汚染の防止や鉛という有害・有用物質を含むものの適切な回収・リサイクルを目的として、以下の要素を備えたシステムを構築する必要がある。
□輸入バッテリーを含む国内に投入される自動車用バッテリーの回収・リサイクルの実効性が確保されるシステム
□鉛相場の影響を受けない継続的・安定的なシステム
②不法投棄等の防止
□自動車用バッテリーは小型で比較的持ち運び易い製品であることから、排出時に費用を徴収する方法は不法投棄につながるおそれがあり、また、自治体の一般廃棄物と一緒に排出される可能性もあることなどから、自動車用バッテリーの関係者に対しては使用済バッテリーを無償で回収する取組を求めていくべき
□新しいシステムの開始後数年間において回収対象の多くを占めると考えられる既販の自動車用バッテリーについても、不法投棄防止のため、無償で回収することにより、実効性が確保できる仕組みを構築することが必要
新たな制度設計については、現在、関連する各業界のすり合わせが行われている段階であり、今後の議論の進展に期待したいと思います。
(3)現状の問題点 鉛価格の国際的高騰
近年、鉛の国際価格高騰に伴い、使用済鉛バッテリーが中古利用名目でベトナムや香港等に大量に輸出されています。しかし、これまでに環境省が行った調査では、我が国から輸出された使用済鉛バッテリーがベトナムや香港で中古利用されている実態はほとんど確認されておらず、それらはリサイクルされているおそれがある、とされています。
リサイクル又は最終処分の目的で輸出入される使用済鉛バッテリーは、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分に関するバーゼル条約(バーゼル条約)及び特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル法)によって輸出入が規制されています。バーゼル条約では、輸出国は、輸入国等に規制対象物を輸出する旨を通告し、輸入国等からの同意回答がない限り、輸出を許可することができないとされています。このため、バーゼル法では、規制対象物を輸出する場合には、輸出者は経済産業大臣の輸出承認を受けることが義務づけられています。
環境省の調査結果通り、使用済鉛バッテリーが中古利用名目で輸出された後に輸出先国等でリサイクルされた場合には、経済産業大臣の輸出承認を有していないためバーゼル法等の違反として輸出者等が罰せられるほか、バーゼル条約で認められていない不法輸出に当たるため、国際問題に発展するおそれがあります。また、使用済鉛バッテリーは鉛や硫酸の有害物を含有するため、途上国において未熟な技術によりリサイクルされた場合、環境汚染等を引き起こすことも懸念されます。
このため、経済産業省及び環境省では、リサイクル目的の使用済鉛バッテリーが中古利用名目で輸出されることのないよう、事前相談時に使用済み鉛バッテリーが輸出先国において確実に中古利用されることの詳細確認を行うこととされ、以下の書類の提出が義務づけられています。
①中古利用が可能なものを収集・選別していること(収集及び選別方法の説明)
②外観に破損がないこと(写真)
③輸出前に全量の通電検査を行っていること及び通電しないものは除去されていること(通電検査方法及び検査結果の説明(メーカー、型式、製造年及び測定結果等)及び写真)
④屋内で適切に保管がなされていること(保管方法の説明及び写真)
⑤適切に梱包・積載されていること(梱包・積載方法の説明及び写真)
⑥輸出先国の販売店等の名称、住所及び写真
【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。
【行政情報ウオッチング】
環境省
「1人1日1kgのCO2削減」応援キャンペーンの協賛企業について
女性のためのエコロジーイベント「エコリュクス2007」への大臣視察等について
クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)第二回閣僚会合の結果及びインド森林環境省との協力強化について
中央環境審議会大気環境部会健康リスク総合専門委員会(第8回)の開催について
第9回 化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究ワークショップの開催について
環境技術実証モデル事業 小規模事業場向け有機性排水処理技術分野における実証対象技術の選定について(大阪府)
平成19年度「食品リサイクル推進環境大臣賞」の決定について
薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会PRTR対象物質調査会、化学物質審議会管理部会、中央環境審議会環境保健部会PRTR対象物質等専門委員会 合同会合(第1回)の開催について
「第三次環境基本計画の進捗状況・今後の展望について(案)」に関する意見の募集について
ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法に基づくポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画の変更に係る意見募集の結果について
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会家電リサイクル制度評価検討小委員会、産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会電気・電子機器リサイクルWG合同会合(第15回)の開催について
経済産業省
省エネ家電普及促進フォーラムの設立及び今後の活動内容について
リチウムイオン電池の安全確保策について(携帯機器用リチウムイオン電池自主回収促進協議会の設立等)
CDMプロジェクト政府承認審査結果について(申請者:中国電力株式会社、エコバンク株式会社、住友商事株式会社、丸紅株式会社)
「平成19年度京都メカニズムクレジット取得事業」の結果について
石油等消費動態統計(平成19年8月分)
国土交通省
気候変動に適応した治水対策検討小委員会(第3回)の開催について(お知らせ)
【判例情報ウオッチング】
新しい情報はありません。
【ISO14001】
◆毎週更新中!「環境法令管理室」に「10月8日から10月14日までに公布された主な環境法令一覧」を更新しました/2007.10.14
◆毎週更新中!「環境法令管理室」に「10月8日から10月14日までに発表された改正予定法令一覧」を更新しました/2007.10.14
自動車リサイクル法の最終回は、制度外の課題、として廃タイヤ、廃バッテリーを取り上げます。
【自動車リサイクル法制度外の課題】
20世紀以降、自動車はまさに近代化産業の花形であり続けました。また、私たちの生活に欠かせないものであるともいえます。自動車は発明以降、次第に機能も強化され、今では1台の自動車から排出さえる廃棄物はかなりの量・書類となります。このうち、自動車リサイクル法の対象となるのは、シュレッダーダスト・エアバッグ・フロン類(カーエアコン)の3つです。それ以外のものは法制度の枠外にあり、預託金によるリサイクル費用は計上されていません。つまり、廃タイヤや廃バッテリーなど、環境負荷の可能性の高いものは、市場価格においてリサイクルするか適正処理をするか、ということになります。
1.廃タイヤ
廃タイヤは、野積による不適正保管や自然発火による火災など、だいぶ以前から社会問題となっており、その行政対応について2000年7月24日に環境省から2本の通知が出されています(平成12年7月24日衛環65号及び衛産95号)。そのなかで、廃タイヤの定義及び占有意思等の判断基準が次のように明示されています。
(1)定義(平成12年7月24日衛環65号)
①廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物をいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべきものであること
②占有者の意思とは、客観的要素からみて社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思であること。
③占有者において自ら利用し、又は他人に有償で売却することができるものであると認識しているか否かは、廃棄物に該当するか否かを判断する際の決定的な要素になるものではないこと。
④占有者において自ら利用し、又は他人に有償で売却することができるものであるとの認識がなされている場合には、占有者にこれらの事情を客観的に明らかにさせるなどして、社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思を判断すること。
⑤使用済みタイヤが廃棄物であると判断される場合において、長期間にわたりその放置が行われているときは、占有者に適正な保管であることを客観的に明らかにさせるなどして、客観的に放置の意思が認められるか否かを判断し、これが認められる場合には、その放置されている状態を処分として厳正に対処すべきこと
本通知では、①の通り、いわゆる総合判断説を引用しつつも、③④にあきらかなように、有償に関する客観的証拠を求めています。そして、この証拠等は次のように記述されています。
(2)占有意思等の判断基準(平成12年7月24日衛衛産95号)
①前記通知((1)④)における占有者に明らかにさせる事情としては、次のいずれかを挙げることができること
□溝切り等を行いタイヤとして利用する、土止め、セメント原料又は燃料として利用するなど使用済みタイヤを自ら利用するものであって、これらの目的に加工等を行うため速やかに引渡しを行うことを内容とし、かつ履行期限の確定した具体的な契約が締結されていること
□上記のとおり利用するために、使用済みタイヤを他人に有償で売却するものであって、これらの目的のため速やかに引渡しを行うことを内容とし、かつ履行期限の確定した具体的な契約が締結されていること
②前記通知((1)⑤)における「長期間にわたりその放置が行われている」とは、概ね180日以上の長期にわたり乱雑に放置されている状態をいうものであること
③前記通知((1)⑤)における占有者に明らかにさせる事情としては、次のいずれかを挙げることができること
□溝切り等を行いタイヤとして利用する、土止め、セメント原料又は燃料として利用するなど使用済みタイヤを再生利用するものであって、これらの目的に加工等を行うため速やかに引渡しを行うことを内容とし、かつ履行期限の確定した具体的な契約が締結されていること
□上記のとおり再生利用するために、使用済みタイヤを他人に有償で売却するものであって、これらの目的のため速やかに引渡しを行うことを内容とし、かつ履行期限の確定した具体的な契約が締結されていること
つまり、有償売買契約の具体的な締結が証拠であり、保管の期間は180日がリミットということになります。しかし、現実には、有価物か廃棄物かの判断は行政にとっても困難であるといえるでしょう。
なお、現在は、石油・石炭の値上がりが影響して、ボイラーの燃料として廃タイヤチップはまずまずの価格で取引されている状況です。受け入れ先もセメント会社主流から製紙会社も含めた幅広くなりつつあることから、当面は需要が続くものと思われます。
2.廃バッテリー
自動車、二輪車、農業機械、建設機械、小型船舶等のエンジン式の機器の始動・点灯・点火などに使用される鉛蓄電池(自動車用バッテリー)は、年間2,500万個程度が国内市場に投入されています。一方、自動車用バッテリーが使用済みになった場合には、鉛や硫酸を含むことから他の廃棄物と比べ処理が困難であり、従来から市町村での処理が行われてきませんでした。
現在の自動車用バッテリーリサイクルシステムは、厚生省及び通商産業省(当時)の要請に基づき、1994年10月から国内バッテリー製造事業者が自主的に再生鉛を購入することで、回収・リサイクルする仕組みとして構築されてきました。しかしながら、近年における輸入製品の増大、鉛相場下落時における不法投棄の懸念の増大から、現在の仕組みを将来にわたり維持していくことが困難となりつつあり、回収・リサイクルシステムの再構築が必要な状況となってきました。
このような背景から、持続可能な社会の形成や環境の保全に資する継続的・安定的な自動車用バッテリーの回収・リサイクルシステムを構築し、関係主体が果たすべき役割や実効性を確保するための方策等について検討を行うため、産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会電気・電子機器リサイクルワーキンググループの下に自動車用バッテリーリサイクル検討会が、また、中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会の下に自動車用鉛蓄電池リサイクル専門委員会が設置され、2005年5月から両審議会合同による検討が重ねられ、2005年8月11日に『自動車用バッテリーの回収・リサイクル推進のための方策について(報告書案)』がとりまとめられ、パブリックコメントを経て、12月、報告書として公表されています。
(1)見直しの方向性
同報告書においては、国内バッテリー製造事業者による自主的な回収・リサイクルの取組は、これまで一定の実効性・機能性を有してきたものの、以下の課題があると整理しています。
①輸入バッテリーの販売比率の増大(四輪車補修用バッテリーの輸入販売比率、1994年度約8.3%、2003年度約13.2%)等により、現在の自主的な回収・リサイクルシステムでは再資源化が担保されていない自動車用バッテリーが増加してきていること
②鉛相場の下落時などには、一部の地域で使用済バッテリーの逆有償化が進み、回収が停滞する事態が発生するなど、路上放置や不法投棄の懸念が増大してきていること
上記の課題整理から、国内バッテリー製造事業者の自主的な取組による回収・リサイクルシステムの実効性の確保が困難となりつつあるため、回収・リサイクルの停滞による使用済バッテリーの不法投棄等の問題が顕在化する前に見直しを行う必要がある、とし、新たな制度設計を(2)のように提言しています。
(2)システム再構築の制度設計
自動車用バッテリーを取り巻く現状や流通実態等を踏まえ、回収・リサイクルシステムの再構築に当たっては、以下のような視点や措置が必要
①システム再構築に当たっての基本的考え方
□新しいシステムの基本的在り方:自動車用バッテリーの回収・リサイクルシステムの再構築に当たっては、現在の国内バッテリー製造事業者による自主的な回収・リサイクルシステムの維持が困難となりつつある要因を踏まえ、鉛や硫酸による環境汚染の防止や鉛という有害・有用物質を含むものの適切な回収・リサイクルを目的として、以下の要素を備えたシステムを構築する必要がある。
□輸入バッテリーを含む国内に投入される自動車用バッテリーの回収・リサイクルの実効性が確保されるシステム
□鉛相場の影響を受けない継続的・安定的なシステム
②不法投棄等の防止
□自動車用バッテリーは小型で比較的持ち運び易い製品であることから、排出時に費用を徴収する方法は不法投棄につながるおそれがあり、また、自治体の一般廃棄物と一緒に排出される可能性もあることなどから、自動車用バッテリーの関係者に対しては使用済バッテリーを無償で回収する取組を求めていくべき
□新しいシステムの開始後数年間において回収対象の多くを占めると考えられる既販の自動車用バッテリーについても、不法投棄防止のため、無償で回収することにより、実効性が確保できる仕組みを構築することが必要
新たな制度設計については、現在、関連する各業界のすり合わせが行われている段階であり、今後の議論の進展に期待したいと思います。
(3)現状の問題点 鉛価格の国際的高騰
近年、鉛の国際価格高騰に伴い、使用済鉛バッテリーが中古利用名目でベトナムや香港等に大量に輸出されています。しかし、これまでに環境省が行った調査では、我が国から輸出された使用済鉛バッテリーがベトナムや香港で中古利用されている実態はほとんど確認されておらず、それらはリサイクルされているおそれがある、とされています。
リサイクル又は最終処分の目的で輸出入される使用済鉛バッテリーは、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分に関するバーゼル条約(バーゼル条約)及び特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(バーゼル法)によって輸出入が規制されています。バーゼル条約では、輸出国は、輸入国等に規制対象物を輸出する旨を通告し、輸入国等からの同意回答がない限り、輸出を許可することができないとされています。このため、バーゼル法では、規制対象物を輸出する場合には、輸出者は経済産業大臣の輸出承認を受けることが義務づけられています。
環境省の調査結果通り、使用済鉛バッテリーが中古利用名目で輸出された後に輸出先国等でリサイクルされた場合には、経済産業大臣の輸出承認を有していないためバーゼル法等の違反として輸出者等が罰せられるほか、バーゼル条約で認められていない不法輸出に当たるため、国際問題に発展するおそれがあります。また、使用済鉛バッテリーは鉛や硫酸の有害物を含有するため、途上国において未熟な技術によりリサイクルされた場合、環境汚染等を引き起こすことも懸念されます。
このため、経済産業省及び環境省では、リサイクル目的の使用済鉛バッテリーが中古利用名目で輸出されることのないよう、事前相談時に使用済み鉛バッテリーが輸出先国において確実に中古利用されることの詳細確認を行うこととされ、以下の書類の提出が義務づけられています。
①中古利用が可能なものを収集・選別していること(収集及び選別方法の説明)
②外観に破損がないこと(写真)
③輸出前に全量の通電検査を行っていること及び通電しないものは除去されていること(通電検査方法及び検査結果の説明(メーカー、型式、製造年及び測定結果等)及び写真)
④屋内で適切に保管がなされていること(保管方法の説明及び写真)
⑤適切に梱包・積載されていること(梱包・積載方法の説明及び写真)
⑥輸出先国の販売店等の名称、住所及び写真
【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。
【行政情報ウオッチング】
環境省
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クリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)第二回閣僚会合の結果及びインド森林環境省との協力強化について
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第9回 化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究ワークショップの開催について
環境技術実証モデル事業 小規模事業場向け有機性排水処理技術分野における実証対象技術の選定について(大阪府)
平成19年度「食品リサイクル推進環境大臣賞」の決定について
薬事・食品衛生審議会薬事分科会化学物質安全対策部会PRTR対象物質調査会、化学物質審議会管理部会、中央環境審議会環境保健部会PRTR対象物質等専門委員会 合同会合(第1回)の開催について
「第三次環境基本計画の進捗状況・今後の展望について(案)」に関する意見の募集について
ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法に基づくポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画の変更に係る意見募集の結果について
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会家電リサイクル制度評価検討小委員会、産業構造審議会環境部会廃棄物・リサイクル小委員会電気・電子機器リサイクルWG合同会合(第15回)の開催について
経済産業省
省エネ家電普及促進フォーラムの設立及び今後の活動内容について
リチウムイオン電池の安全確保策について(携帯機器用リチウムイオン電池自主回収促進協議会の設立等)
CDMプロジェクト政府承認審査結果について(申請者:中国電力株式会社、エコバンク株式会社、住友商事株式会社、丸紅株式会社)
「平成19年度京都メカニズムクレジット取得事業」の結果について
石油等消費動態統計(平成19年8月分)
国土交通省
気候変動に適応した治水対策検討小委員会(第3回)の開催について(お知らせ)
【判例情報ウオッチング】
新しい情報はありません。
【ISO14001】
◆毎週更新中!「環境法令管理室」に「10月8日から10月14日までに公布された主な環境法令一覧」を更新しました/2007.10.14
◆毎週更新中!「環境法令管理室」に「10月8日から10月14日までに発表された改正予定法令一覧」を更新しました/2007.10.14