環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

廃棄物処理法にみる行政処分と刑事処分 ①行政処分には情状酌量の余地はない?

2007-10-29 05:43:03 | 廃棄物適正処理
2007年10月29日
 行政処分とは、行政庁が行う処分及び裁決のことで、許認可等の申請に対する処分や不利益処分などのことを言います。相手方の任意の協力を前提とする行政指導とは異なり、①法律や条令の規定に違反した処分であっても、権限ある機関(上級庁や裁判所等)が正式に取り消さない限り有効(公定力)、②命ぜられた義務を相手方が履行しない場合に、行政庁が、裁判所の判決を受けることなく強制執行を行える(自力執行力)、というとても強い力を有しています。
 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)では、①許可取消、②事業停止、③措置命令、④改善命令、の4つの行政処分が規定されています。廃棄物処理業は、許可制による規制産業ですので、許可に値する各種基準に適合しなくなった場合には、許可取消・事業停止の重い行政処分が下されることになります。措置命令は、基準に適合しない廃棄物処理が行われたために、生活環境の保全に支障をきたす場合及びその恐れがある場合に、不適正処理をした者(廃棄物処理業者、排出事業者)に対して、その支障の除去、是正処置などが命ぜられるものです。改善命令は、基準に適合しない廃棄物処理が行われた場合に、そのやり直し等を、期間を定めて命ぜられるものです。
 一方、刑事処分は、違反行為があった場合に告発等を受けて検察官が、公訴を提起するか、しないかを決定する処分をいいます。廃棄物処理法との関係でいえば、行政処分を課した行政庁が、その重大性によって告発する場合、公益通報者保護法などによって内部告発がおこなわれる場合、住民等からの告発などの場面が考えられます。
 平成17年8月に発出された『行政処分の指針について(環廃産発第050812003号)』では、両者の目的を次のように整理しています。
行政処分:将来にわたる行政目的の確保
刑事処分:過去の行為の評価
 刑事処分については、刑事訴訟法第248条によって、検察官は、『犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる』とされており、違反事実があったとしても、酌量される余地があり得ますが、行政処分については『行政処分の指針について』のなかで『過去の行為を評価する刑事処分とはその目的が異なるものであるから、それを理由に行政処分を留保することは不適当であること。むしろ、違反行為に対して公訴が提起されているにもかかわらず、廃棄物の適正処理について指導、監督を行うべき行政が何ら処分を行わないとすることは、法の趣旨に反し、廃棄物行政に対する国民の不信を招きかねないものであることから、行政庁として違反行為の事実を把握することに最大限努め、それを把握した場合には、いたずらに刑事処分を待つことなく、速やかに行政処分を行うこと』として、情状による酌量を否定しています。
 
※明日は、自治体による行政処分の温度差について考察します。

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