環境法令ウオッチング

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3R推進月間特集 ⑨家電リサイクル法 その2 制度見直しの視点

2006-10-09 08:18:55 | リデュース・リユース・リサイクル
006年10月9日  
 3R推進月間特集第9回は、佳境に入っている家電リサイクル法の制度見直しの視点についてふれていきます。
 施行後5年を経過した特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)の見直しの議論は、中央環境審議会と産業構造審議会において、6月以降4回の合同会合を開催し、8月28日には『家電リサイクル制度等の見直しに当たっての検討課題(案)』が公表されています。
 これまでの5年間を振り返り、問題となっているのは『見えないフロー』の問題です。対象となるテレビ・エアコン・冷蔵庫・洗濯機の昨年の年間排出台数は、約1,886万台から約2,317万台と推計されていますが、このうち家電リサイクル施設において処理されたのは約1,162万台と全体の約50%とされています。つまり残りの約1,000万台については、家電リサイクル法のルートに乗っていないことになります。このうち不法投棄されたのは約17万台とされており、本法施行時に比べ約40%増となっています。また、不明なもののうち『中古品』として輸出されたものも相当数に上るとみられており、いわゆるE-Waste(電気電子廃棄物)問題(海外とくにアジアでの不適正処理による有害物質の流出)につながっています。なぜ、家電リサイクル法のルートに乗らないものが相当数存在するのかを解明し、適正なシステムへとバージョンアップさせることが、今回の見直しの命題であるといえるでしょう。
 その検討課題の一つとしてあげられているのが『リサイクル料金の負担方式について、排出段階で負担を行う方式(廃棄時負担方式)と販売段階で負担を行う方式(販売時負担方式)について、考え得る様々な方式のメリット・デメリットを比較検討すべきではないか』とされているリサイクル料金の負担方式です。現行の廃棄時負担方式の採用をめぐっては、立法時から論争がありましたが、①約3億台にのぼる既販品のリサイクル料金をあらかじめ徴収することが難しかったこと、②製品購入時には、廃棄時点でのリサイクルにかかる費用を予測することが難しいこと、③前払い制度を取った場合、製品購入から廃棄までの間に製造業者等が倒産・撤退した場合、その製造業者等の製品のリサイクル費用の手当が困難になること、④市町村の粗大ゴミの有料化や、小売業者の廃家電引取の有料化の拡大の動きを踏まえ、排出時負担によってコストを意識できる方が製品の長期使用、ごみ減量化に資すること、を理由として廃棄時負担方式が採用されています。しかし、その後成立した使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)では、販売時負担方式が採用されており、今回の見直しにおいても最大の争点となることは間違いないでしょう。
 この論争をめぐっては、小売業者側は販売時負担方式を、製造業者側は廃棄時負担方式をそれぞれ主張しており、消費者側は販売時負担方式を推す声が多いというのが現状です。私自身は、①不要となったものにお金をかける、という意識が低いこと、②あらかじめ料金設定することで、環境配慮設計(DfE:Design for Environment)に結びつきやすいこと、を考慮すると、販売時負担方式のほうがよいと考えています。ただし、定着しつつある制度を変更するには相応の準備・コストなどが必要となりますから、慎重な議論がなされることを期待したいと思います。
 その他の検討課題は以下の通りです。

1.環境配慮設計の促進
 環境配慮設計の促進は、拡大生産者責任の考え方に基づき、現行制度下で製造業者等が物理的な処理責任を負うことの大きな理由となっていることから、これまでの製造業者等の取組状況を評価するとともに、今後、企業間の競争を通じて、環境配慮設計を一層促進する観点から、制度の在り方を検討すべきではないか。

2.3Rの推進
 現行制度を3R(リデュース、リユース、リサイクル)の推進の視点からどのような成果があったか評価し、今後、この取組を一層充実させていく方策を検討すべきではないか。

3.リサイクル料金の在り方
 家電リサイクル法の施行以来、同一料金のまま変更されていない主要な製造業者のリサイクル料金について、実際にこれを負担している消費者理解促進の観点から、コスト状況を明らかにするなど、料金の決定根拠等の透明性を確保しつつ、市場原理の下で、料金が低減していくような制度を検討すべきではないか。

4.対象品目の在り方
 現行法制定当時にはあまり普及していなかった液晶テレビの今後の普及状況等を踏まえた対応など、個別品目について、対象品目として追加すべきかどうか検討すべきではないか。その際、現行の特定家庭用機器の4つの要件(市町村による処理困難性、資源の有効利用性、環境配慮設計促進の可能性、配送品該当性)についての考え方を整理すべきではないか。

5.再商品化率の在り方
 現行の再商品化率の算定の考え方について、量的のみならず質的な観点から見直すべき点があるか。テレビのガラスカレットの海外における需給状況やブラウン管テレビの生産状況等の影響を十分勘案した上で検討すべきではないか。また、同じ処理内容でも再商品化率に算入されなくなるケースについてどう考えるか。

6.効率的な収集運搬システムの整備
 指定引取場所がA・B2グループに分かれている現在の引取体制、インターネット販売の増加等の販売形態の多様化の影響や義務外品への対応等について関係者の役割サービスの在り方等も含めシステムの効率化の観点から検討することが必要ではないか。

7.離島における収集運搬に係る負担軽減
 離島地域においては、合理的な運搬等により収集・運搬料金の軽減に努めているものの、海上輸送を伴うため、その分、収集運搬料金が本土と比べて高くなっており、その負担軽減のための措置が必要ではないか。

8.消費者等に対する普及啓発
 消費者小売業者製造業者等の関係者に対し家電リサイクル制度の趣旨仕組み、成果や、消費者による適正な排出等の各主体の責務等について、効果的に普及啓発を行うにはどのような手法があるか。

9.既存業者の取扱い
 既存業者の処理内容の透明性の確保や、環境配慮設計の促進という観点を踏、まえながら製造業者等が再商品化義務を負うことを前提とした仕組みの中で既存業者の取扱いについて検討すべきではないか。

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【行政情報ウオッチング】
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