環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

号外 石綿含有のタルク見つかる 情報は、整理・分析・周知・教育してこそ意義がある

2006-10-18 07:16:10 | 化学物質・有害物質
2006年10月18日
 タルクという素材をご存知でしょうか? タルク(Talc)は、滑石という鉱石を微粉砕した無機粉末で、白色及び灰色をした滑らかでしかも脂肪感に富んだ素材です。『蝋石』と言えば多くのかたに馴染みがあるかも知れません。タルクの化学名は『含水珪酸マグネシウム(Mg3Si4O10(OH)2)』といい、SiO2約60%、MgO約30%と結晶水4.8%を主成分としています。物理的な性質としては、無機鉱物中、最も硬度が低く(モース硬度1)耐熱性に優れ、しかも化学的に安定した物質であることから、配合充填材(Filler)として多くの分野で幅広く使用されています。
 素材として優れているタルクのなかには石綿を含有するものがありました。労働安全衛生法施行令等の改正により、本年9月1日から、石綿をその重量の0.1%を超えて含有する製剤その他の物の製造、輸入、譲渡、提供又は使用することは禁止されています(労働安全衛生法施行令第16条)。しかしながら、厚生労働省の調査によると、施行日以後、石綿を含有するタルクが製造されていたことが判明しています(現在は、製造されていません)。
 厚生労働省の発表内容を読む限りでは、違反製造が行われていた理由などは明らかにされておりません。いずれにせよ、年月が経過し、同製品が大量に出回る前に食い止めることができたのは、幸いであったといえます。企業にとって、コンプライアンスは重要な経営事項です。会社法においても、大会社に対して内部統制システム等の整備の基本方針の決定が義務づけられ、大会社の取締役等は内部統制システムの構築・運用が義務づけられています。
 環境法令違反の影響は、その罰則規定もさることながら、社会的イメージの失墜も見逃せません。法令の制定・改廃情報は、収集しただけでは意味がありません。自社にとって必要なものを整理し、対策を構築するための分析をし、社員へ周知し、理解するための教育を施すことにより、初めて経営システム足りえます。ISO14001にせよ、内部統制システムにせよ、そのようなシステム構築がなされなければ、真の意味でのリスク管理はできないと言えるでしょう。

※本号は、3R推進月間特集⑱ 環境配慮事業活動促進法です。

3R推進月間特集⑱ 環境配慮事業活動促進法 環境経営の視点 環境報告書の意義

2006-10-18 06:34:20 | リデュース・リユース・リサイクル
2006年10月17日
 3R推進月間特集第18回目となりました。昨日に引き続き、環境経営促進と環境保全支援に関する法律を扱っていきます。
 環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮した事業活動の促進に関する法律(環境配慮事業活動促進法)は、2004年6月、『環境を保全しつつ健全な経済の発展を図る上で事業活動に係る環境の保全に関する活動とその評価が適切に行われることが重要であることにかんがみ、事業活動に係る環境配慮等の状況に関する情報の提供及び利用等に関し、国等の責務を明らかにするとともに、特定事業者による環境報告書の作成及び公表に関する措置等を講ずることにより、事業活動に係る環境の保全についての配慮が適切になされることを確保し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与すること』を目的として制定されました(2005年4月1日施行)。
 環境配慮事業活動促進法の制定に際しては、中央環境審議会での検討が重ねられ、2004年2月に『環境に配慮した事業活動の促進方策の在り方について』が意見具申されています。そのなかで環境報告書とは、『いわば事業者が社会や市場に対して開いた窓であり、事業者と様々な利害関係者との間の重要なコミュニケーション手段。各主体のパートナーシップによってこそ、環境に配慮した事業活動がいっそう報われるものとなるものと期待される。そのためには、環境報告書の取組の裾野を拡大するための制度的枠組みが必要』と整理されました。
 そして、制度的枠組みの構築に当たっては、①民間の事業者については、環境報告書の作成等を義務付けるのではなく、むしろ事業者の任意に委ね、国の関与は最小限とすることにより事業者の自主性が最大限活かされるようにすること、②特に公的性格を有し、環境への配慮に不足があってはならない独立行政法人等については、環境報告書の作成等を義務化すること、とされ、環境配慮事業活動促進法の骨格へと繋がっています。
 なお、同答申ではさらに、事業者の環境配慮の取組の裾野を広げていくためには、社会や市場の側においても、環境配慮への積極的な取組への高い評価を具体的な行動へと反映させていくことが重要とし、金融・資本市場、消費者市場及びサプライチェーン市場のグリーン化を推進することが必要であると提言されています。こうした仕組みが社会インフラとして整備されるためには、環境省だけでなく経済産業省等も取り込んだ総合的な政策形成が不可欠であると言えます。環境省の管轄では、製品の設計・製作、流通、販売、資金調達などの経済活動にまで踏み込んでいくには無理があるからです。
 また、環境配慮事業活動促進法制定以前より、大企業においては既に環境報告書への取組は進んでおり、その有効性あるいは独自性による営業ツールとしての可能性の検証及びその結果として中小企業への広がりが今後の課題であるといえるでしょう。

環境配慮事業活動促進法の概要
1.国等による環境配慮等の状況の公表(第6条、第7条)
 国は、その環境配慮等の状況を毎年度公表すること、地方公共団体においては、その環境配慮等の状況を毎年度公表するように努めることとされています。

2.事業活動に係る環境配慮等の状況の公表(第8条~第11条)
(1)環境報告書の記載事項等
 主務大臣は、事業者、学識経験者等による協議会等の意見を聴いて、環境報告書の記載事項等を定めることとされており、以下の7項目が定められました。
①事業活動に係る環境配慮の方針等
 環境報告書には、事業者(法人であるときは、その代表者)の緒言及び事業活動に係る環境配慮についての方針又は基本理念を記載し、又は記録するものとする。
②主要な事業内容、対象とする事業年度等
 環境報告書には、主要な事業内容及び事業所並びにその記載又は記録の対象とする事業年度又は営業年度及び組織の範囲を記載し、又は記録するものとする。
③事業活動に係る環境配慮の計画
 環境報告書には、事業活動に係る環境配慮についての目標及び当該目標を達成するために行う取組を定めた計画を記載し、又は記録するものとする。当該計画の記載又は記録に当たっては、数値を用いることが望ましい。
④事業活動に係る環境配慮の取組の体制等
 環境報告書には、事業活動に係る環境配慮についての目標を達成するために行った取組に係る体制及びその運営方法を記載し、又は記録するものとする。
⑤事業活動に係る環境配慮の取組の状況等
 環境報告書には、事業活動に係る環境配慮についての目標を達成するために行った取組の状況及び事業活動に伴う環境への負荷のうち一以上の重要なものの程度を示す数値を記載し、又は記録するものとする。事業活動に伴う環境への負荷のうち一以上の重要なものの決定は、事業者が当該環境への負荷の程度及び環境報告書の利用者にとっての有用性の程度を考慮して行うものとする。
⑥製品等に係る環境配慮の情報
 環境報告書には、事業者が環境への負荷の低減に資する製品その他の物の製造等又は役務の提供を行ったときは、当該製品その他の物又は役務に係る環境への負荷の低減に関する情報を記載し、又は記録することが望ましい。
⑦その他
 環境報告書には、環境関係法令に基づく規制について行った対応、その利用者等との間において行った意見交換等の概要を記載し、又は記録することが望ましい。

(2)環境報告書が最低限満たすべき基本的枠組み
特定事業者は環境報告書を作成し、毎年度公表すること、特定事業者は記載事項等に従って環境報告書を作成するように努めるほか、自己評価を行うこと又は第三者審査を受けること等によりその信頼性を高めるように努めることが規定されています。なお、自己評価については『環境報告書の信頼性を高めるための自己評価の手引き【試行版】 』が作成されています。

(3)環境報告書の審査における遵守事項
 環境報告書の審査を行う者は、独立した立場において審査を行うよう努めるとともに、審査の公正かつ的確な実施を確保するために必要な体制整備等を図るように努めることと規定されています。

(4)環境報告書の公表等(民間の事業者)
 大企業者に対して努力義務規定として、①環境配慮等の状況の公表を行うように努めること、②記載事項等に留意して環境報告書を作成すること等により、作成した環境報告書等の信頼性を高めるように努めること、が求められています。また、国は、中小企業者に対して環境配慮の状況の公表の方法に関する情報を提供することが規定されています。

 環境報告書は義務として作成しても、そこに何らかのメッセージがない限りは、無味乾燥で味気ない報告書となってしまいます。自分たちが何を伝えたいのか、そのためにはどうような取組をしていくのか、といった熱い思いがあってこそ、読者をひきつける、ひいては営業的要請にも応えることのできる環境報告書ができるのだと思います。最低限の記載事項を守ることは重要かも知れませんが、それ以上に大切な思いを大胆に描いてみてはいかがでしょうか。

【官報ウオッチング】
号外 第239号
〔省令〕
海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行規則等の一部を改正する省令(国土交通省令102号)
1 海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律施行規則の一部改正(昭和46年運輸省令第38号の一部改正)
 有害液体物質記録簿の記載、通報等を必要とする排出量、有害液体物質記録簿の様式を改正。
施行日:平成19年1月1日
2 危険物船舶運送及び貯蔵規則の一部改正(昭和32年運輸省令第30号の一部改正)
 平水区域のみを航行する液体油脂ばら積船」については、有識者等による検討会における対応方針を踏まえ、液体化学薬品ばら積船としての構造・設備要件等の適用を除外することなど。
施行日:平成19年1月1日
3 船舶安全法施行規則の一部改正(昭和38年運輸省令第41号の一部改正)
 平水区域のみを航行する液体油脂をばら積運送する艀」については「危険物ばら積船」としての船舶安全法の適用を除外することなど。
施行日:平成19年1月1日
4 海上における人命の安全のための国際条約及び満載喫水線に関する国際条約による証書に関する省令の一部改正(昭和40年運輸省令第39号の一部改正)
 国際液体化学薬品ばら積船適合証書の指定の様式への改正。
施行日:平成19年1月1日
5 海洋汚染防止設備等、海洋汚染防止緊急措置手引書等及び大気汚染防止検査対象設備に関する技術上の基準等に関する省令の一部改正(昭和58年運輸省令第38号の一部改正)
 全ての有害液体物質ばら積船に、ストリッピング装置、予備洗浄装置、有害液体物質水バラスト等排出管装置、喫水線下排出装置及び通風洗浄装置を義務付けることなど。
施行日:平成19年1月1日
6 海洋汚染防止設備等、海洋汚染防止緊急措置手引書等及び大気汚染防止検査対象設備の検査等に関する規則の一部改正(昭和58年運輸省令第39号)
 ばら積みの有害液体物質の運送のための国際汚染防止証書の様式が変更されることから、指定の様式への改正等。
施行日:平成19年1月1日
7 船舶設備規程等の一部を改正する省令(昭和61年運輸省令第25号の一部改正)
 別記様式2などの改正。
施行日:平成19年1月1日
8 海洋汚染防止設備等に関する技術上の基準を定める省令等の一部を改正する省令(昭和61年運輸省令第40号の一部改正)
 附則第二条第二項の改正。
施行日:平成19年1月1日

〔告示〕                    
船舶による危険物の運送基準等を定める告示の一部改正(昭和54年運輸省告示第549号の一部改正)
 油類似物質を定める規定を削除し、液体油脂を定める規定を新たに追加することなど。
施行日:平成19年1月1日

【行政情報ウオッチング】
環境省
扇島パワーステーションに係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会食品リサイクル専門委員会(第3回)、食料・農業・農村政策審議会総合食料分科会食品リサイクル小委員会(第9回)合同会合(第2回)の開催について
中央環境審議会第8回総会の開催について
第1回「国立・国定公園の指定及び管理運営に関する検討会」の開催について
「環境放射線等モニタリングデータ公開システム」の稼働について

経済産業省
2005(平成17)年度エネルギー需給実績(速報)
産業構造審議会環境部会第14回廃棄物・リサイクル小委員会について
第3次産業活動指数(平成18年8月分)
特定サービス産業動態統計確報(平成18年8月分)

厚生労働省
タルクへの石綿含有可能性調査結果について
第9回石綿に係る疾病の業務上外に関する検討会議事概要
厚生労働省における環境配慮の方針

資源エネルギー庁
2005(平成17)年度エネルギー需給実績(速報)

東京都
東京水道長期構想に関する意見を募集
2004年度 都における温室効果ガス排出量(暫定値)

【判例情報ウオッチング】
新しい情報はありません。

ISO14001
◆「環境法令管理室」に「10月9日から10月15日までに公布された主な環境法令一覧」をアップしました/2006.10.14
◆「環境法令管理室」に「10月9日から10月15日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2006.10.14