環境法令ウオッチング

2006年7月から2007年12月までの環境法令情報・行政情報・判例情報を掲載。

号外 廃棄物の定義 廃タイヤとは何か

2006-10-05 12:14:34 | 廃棄物適正処理
2006年10月5日
 宮崎県で、20年にも及び収集・野積みされた2,000平方メートル、高さ5メートル超の古タイヤの撤去が始まった、とのニュースがありました。このケースでは、所有者が死亡し、遺族が相続放棄をしたため、古タイヤの所有者が存在しなくなったために、行政代執行をすることができず、県の呼び掛けで県トラック協会などが撤去のボランティアに参加し、撤去作業が行われることになりました。
 県は、再三撤去を勧告、指導していたそうですが、改善命令を課すまでには至らず、結果として古タイヤの山が構築された、というのが今回の事件の経緯です。廃棄物処理法上の改善命令が課されるには、古タイヤが廃棄物である必要があります。当時、所有者は「輸出すれば売れる」「自分の財産である」と主張していたそうです。廃棄物であるかどうかの指標は、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったもの、とされ、これに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断する、といういわゆる総合判断説に基づいて決められることとなります。
 特に廃タイヤについては、2000年7月24日の環境省通知『野積みされた使用済みタイヤの適正処理について』において、上記の総合判断説によることとしながらも、①占有者において自ら利用し、又は他人に有償で売却することができるものであると認識しているか否かは、廃棄物に該当するか否かを判断する際の決定的な要素になるものではないこと、②占有者において自ら利用し、又は他人に有償で売却することができるものであるとの認識がなされている場合には、占有者にこれらの事情を客観的に明らかにさせるなどして、社会通念上合理的に認定し得る占有者の意思を判断すること、とされています。そして、『使用済みタイヤが廃棄物であると判断される場合において、長期間にわたりその放置が行われているときは、占有者に適正な保管であることを客観的に明らかにさせるなどして、客観的に放置の意思が認められるか否かを判断し、これが認められる場合には、その放置されている状態を処分として厳正に対処すべきこと』と通知されています(一般的には、2005年8月12日の『行政処分の指針について(通知)』を参照)。
 今回の古タイヤがどのようなものであったかわかりませんが、これだけ長く改善命令が出されていないという事実からすると、廃棄物と断定するには何か困難な理由があったのかも知れません。これらのタイヤは、県内の製紙工場に運搬し、燃料に利用されるそうです。

【官報ウオッチング】
新しい情報はありません。

【行政情報ウオッチング】
環境省
新規化学物質の製造(輸入)届出等について(1月届出予定分ヒアリング案内)

経済産業省
可塑性爆薬に含める物質等を定める告示の一部改正に関する意見の募集について
鉱工業出荷内訳表、鉱工業総供給表速報(平成18年8月分)

厚生労働省
ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会第1回議事録

ISO14001
◆「環境法令管理室」に「9月25日から10月1日までに公布された主な環境法令一覧」をアップしました/2006.10.2
◆「環境法令管理室」に「9月25日から10月1日までに発表された改正予定法令一覧」をアップしました/2006.10.2

※本号―3R推進月間特集もあわせてお読みください。本日は、資源有効利用促進法です。

3R推進月間特集 ⑤1Rから3Rへ 資源有効利用促進法

2006-10-05 08:30:28 | リデュース・リユース・リサイクル
2006年10月5日 
 3R推進月間特集第5回は、資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)についてみていきます。
 高度経済成長期移行、とくに1980年代後半にはじまるバブル景気は、社会の有りようを大量生産・大量消費・大量廃棄型の経済社会へと一変させました。このため、廃棄物の最終処分場の逼迫、資源の将来的な枯渇の可能性等が深刻な社会問題としてクローズアップされるようになりました。こうした背景を受け、通商産業省(当時)は産業構造審議会に対し、循環型社会の具体的なあり方についての検討を委嘱。同会地球環境部会、廃棄物・リサイクル部会の合同基本問題小委員会において約1年に渡って審議を行い、1999年7月に「循環型経済システムの構築に向けて(循環経済ビジョン)」と題する報告書がとりまとめられました。同報告書においては、循環型社会の形成のために、従来のリサイクル対策(廃棄物の原材料としての再利用対策)の強化に加えて、リデュース対策(廃棄物の発生抑制対策)とリユース対策(廃棄物の部品等としての再使用対策)の本格的な導入が提言なされています。
 そして2000年、「再生資源の利用の促進に関する法律」の抜本的な改正がなされ、法律名も資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)に改めるとともに、関連政省令の整備を行われました(2001年4月施行)。

資源有効利用促進法の概要
1.基本スキーム
 資源有効利用促進法の前身である「再生資源の利用の促進に関する法律」は、3業種・30品目についてリサイクルを規定していましたが、2000年改正により、10業種69品目が、廃棄物の発生抑制(リデュース)対策や部品等の再使用(リユース)対策も含めて対象とされることとなりました。
 具体的には、①資源有効利用促進法に基づいて具体的な義務が課せられる業種・製品について政令で指定、②主務大臣(事業所管大臣等)は、当該業種・製品の製造事業者等の「判断の基準となるべき事項」(判断の基準)を主務省令で定め、指導・助言により対象事業者の取組を促進、③対象事業者であって、その生産量等が一定規模以上のものの取組が「判断の基準となるべき事項」に照らして著しく不十分である場合、主務大臣は当該事業者に対して判断の根拠を示して勧告を行うことができる、とされています。
 こうした勧告を行っても、事業者の取組が改善しない場合、主務大臣はその旨の公表を行うことができ、それでもなお事業者の取組が改善しない場合、主務大臣は関係審議会の意見を聴取した後、当該事業者に対して命令を行うことができます。当該命令の違反者に対しては罰金50万円が課せられることとされています。

2.廃棄物の発生抑制(リデュース)対策の対象=指定省資源商品(第18条以下)
 以下に掲げる製品の製造事業者(自動車については製造及び修理事業者)は、原材料等の使用の合理化、長期間の使用の促進その他の使用済物品等の発生抑制に取り組むことが求められています。
①自動車
②家電製品(テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、衣類乾燥機)
③パソコン
④ぱちんこ遊技機(回胴式遊技機を含む。)
⑤金属製家具(金属製の収納家具、棚、事務用机及び回転いす)
⑥ガス・石油機器(石油ストーブ、ガスグリル付こんろ、ガス瞬間湯沸器、ガスバーナー付ふろがま、石油給湯機)

3.部品等の再使用(リユース)対策=特定再利用業種(第15条以下)、特定再利用促進製品(第21条以下)
(1)特定再利用業種
 以下に掲げる業種に属する事業者は、再生資源又は再生部品の利用に取り組むことが求められています。
①紙製造業
②ガラス容器製造業
③建設業
④硬質塩化ビニル製の管・管継手の製造業
⑤複写機製造業

(2)特定再利用促進製品
 以下に掲げる製品の製造事業者(自動車については製造及び修理事業者)は、再生資源又は再生部品の利用の促進(リユース又はリサイクルが容易な製品の設計・製造)に取り組むことが求められています。
①自動車
②家電製品(テレビ、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、衣類乾燥機)
③パソコン
④ぱちんこ遊技機(回胴式遊技機を含む。)
⑤複写機
⑥金属製家具(金属製の収納家具、棚、事務用机及び回転いす)
⑦ガス・石油機器(石油ストーブ、ガスグリル付こんろ、ガス瞬間湯沸器、ガスバーナー付ふろがま、石油給湯機)
⑧浴室ユニット、システムキッチン
⑨小形二次電池使用機器(電動工具、コードレスホン等の28品目)

4.事業者による回収・再生資源、副産物の発生抑制・再生資源(リサイクル)対策=特定省資源事業者(第10条以下)、指定再資源化製品(第26条以下)、指定副産物(第34条以下)
(1)事業者による回収・再生資源(リサイクル)対策=指定再資源化製品
 以下に掲げる製品の製造事業者及び輸入事業者は、自主回収及び再資源化に取り組むことが求められています。ただし、小形二次電池については密閉形蓄電池を部品として使用している製品の製造事業者及び輸入事業者も、当該密閉形蓄電池の自主回収に取り組むことが求められています。
 また、2003年から家庭用パソコンも追加され、製造業者等による新たな自主回収・再資源化の仕組みが開始されています(制度実施後の新規販売パソコンのリサイクル費用は、販売時徴収/制度実施前に販売されたパソコンのリサイクル費用は廃棄時徴収)。
①パソコン(ブラウン管式・液晶式表示装置を含む。)
②小形二次電池(密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池、密閉形ニッケル・水素蓄電池、リチウム二次電池、小形シール鉛蓄電池)

(2-1)副産物の発生抑制・再生資源(リサイクル)対策=特定省資源事業者
 以下に掲げる5業種に属する事業者は、副産物の発生抑制等(原材料等の使用の合理化による副産物の発生の抑制及び副産物の再生資源としての利用の促進)に取り組むことが求められています。
①パルプ製造業及び紙製造業
②無機化学工業製品製造業(塩製造業を除く。)及び有機化学工業製品製造業
③製鉄業及び製鋼・製鋼圧延業
④銅第一次製錬・精製業
⑤自動車製造業(原動機付自転車の製造業を含む。)

(2-2)副産物の発生抑制・再生資源(リサイクル)対策=指定副産物
 以下に掲げる副産物に係る業種に属する事業者は、当該副産物の再生資源としての利用の促進に取り組むことが求められています。
①電気業の石炭灰
②建設業の土砂、コンクリートの塊、アスファルト・コンクリートの塊、木材

5.容器包装等の分別回収のための表示=指定表示製品(第24条以下)
 以下に掲げる製品の製造事業者及び輸入事業者は、分別回収の促進のための表示を行うことが求められています。
①スチール製の缶、アルミニウム製の缶
②ペットボトル
③小形二次電池(密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池)
④塩化ビニル製建設資材(硬質塩化ビニル製の管・雨どい・窓枠、塩化ビニル製の床材・壁紙)
⑤紙製容器包装、プラスチック製容器包装
⑥小形二次電池(小形シール鉛蓄電池、密閉形ニッケル・水素蓄電池、リチウム二次電池の追加)

6.判断の基準
(1)特定省資源業種
 判断の基準として目標の設定、設備の整備、技術の向上、設備の運転の改善等、統括管理者の選任、規格又は仕様による加工、販売又は加工の委託、計測及び記録、情報の提供について規定。例えば製鉄業に属する事業者は、生産工程における工夫によってスラグの発生抑制に取り組むとともに、スラグがセメント、路盤材等の原料として有効利用されるよう、スラグを一定の品質に加工することなどの取り組みが求められています。

(2)特定再利用業種
 判断の基準として設備の整備、技術の向上、計画の作成、情報の提供等について規定。例えば複写機製造業については、使用済みの複写機から駆動装置等の再生部品を取り出し、洗浄・検査等を行った後、新たに製造する複写機の部品として再利用することが求められています。

(3)指定省資源化製品
 判断の基準として原材料等の使用の合理化、長期間の使用の促進、修理に係る安全性の確保、修理の機会の確保、安全性等の配慮、技術の向上、事前評価、情報の提供、包装材の工夫について規定。例えばパソコンについては、部品等の軽量化を推進するとともに、アップグレード(処理能力の向上)が可能な製品の設計・製造等が求められています。

(4)指定再利用促進製品
 判断の基準として原材料の工夫、構造の工夫、分別のための工夫、処理に係る安全性の確保、安全性等の配慮、技術の向上、事前評価、情報の提供、包装材の工夫について規定。例えば自動車について、自動車の設計・製造段階において分解が容易となる構造上の工夫や汚れにくく、再生部品として利用しやすい部品の採用等が求められています。

(5)指定再資源化製品
 判断の基準として以下の事項が規定されています。
①自主回収の実効の確保その他実施方法に関する事項
②再資源化の目標に関する事項
パソコン(平成15 年度までに達成):デスクトップ形パソコン50%
ノートブック形パソコン20%
ブラウン管式表示装置55%
液晶式表示装置55%
小形二次電池:密閉形ニッケル・カドミウム蓄電池60%
密閉形ニッケル・水素蓄電池55%
リチウム二次電池30%
小形シール鉛蓄電池50%
③再資源化の実施方法に関する事項
④その他自主回収及び再資源化の実施に関し必要な事項
(注)密閉形蓄電池を部品として使用しているものとして指定された製品電源装置、電動工具、誘導灯、火災警報設備、防犯警報装置、電動アシスト自転車、電動車いす、パーソナルコンピュータ、プリンター、携帯用データ収集装置、コードレスホン、ファクシミリ装置、電話交換機、携帯電話用装置、MCAシステム用通信装置、簡易無線用通信装置、アマチュア用無線機、ビデオカメラ、ヘッドホンステレオ、電気掃除機、電気かみそり、電気歯ブラシ、非常用照明器具、血圧計、医薬品注入器、電気マッサージ器、家庭用電気治療器、電気気泡発生器、電動式がん具

 資源有効利用促進法は、上記のように企業の自主性に重きを置く制度であり、技術的・経済的にリサイクル可能なもののみを対象としています。そのため、事業者の再生利用が不十分であっても、指導・助言・勧告・公表による対応が基本とされ、公表後なお正当な理由なく従わないときに、主務大臣が関係審議会の意見を聴いたうえで措置命令を課すことができ、その違反に対してはじめて罰則が定められています。
 環境省は毎年度、『資源有効利用促進法に基づく自主回収及び再資源化の実施状況について』において、事業系パソコン・小型二次電池(ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウム二次電池、小型制御弁式鉛電池)・家庭系パソコンの自主回収・再資源化の実施状況について公表されていますが、現在のところ順調に再資源化がなされていることが伺いしれます。また、現在のところ、措置命令は一度も発動されていません。

※【官報ウオッチング】以下は、号外でお読みください。